都議会選挙で共産党は歴史的勝利を勝ち得たのか?



令和3(2021)年7月8日


 7月6日の赤旗は、志位委員長の発言として、19議席への議席増は大きな勝利―――"都議選3連勝"の歴史的快挙という記事を載せています。


 確かに今回の都議選では、共産党は、それなりに踏ん張ったことは事実ですが、歴史的快挙と言うのはヌカ喜びだと思っています。
 東京の都議会には42の選挙区があり、共産党が議席を獲得したのは19議席でしかありません。これは4年前の当選者数と同じです。(共産党は解散時の18議席と比較しあたかも勝利した様に宣伝しています)
 今日の朝の羽鳥のモーニングショーで、政治評論家の田崎史郎氏は、共産党は獲得票数で前回選挙より1ポイント落としていると共産党勝利論に水をさす主張をされました。確かに、共産党の獲得票数が前回より伸びたかの判断は難しく、数字上では前回の獲得票数773722票、今回は630158票で相当減らしているように見えます。これは、投票率が低かったことが影響しています。獲得票率で比較した場合も、前回は13.83%、今回は13.5%とやはり今回の方が低く見えます。
 しかし、これにもからくりがあり、野党の選挙協力で共産党は幾つかの区で候補者を降ろし、立憲民主党候補の当選に力を貸した経緯により、得票率は前回より減っています。この選挙協力の結果はすさまじいものがあり、渋谷区や中野区や武蔵野市や小金井市では立憲の候補者が突き抜けてトップ当選しています。
 また同時に共産党の候補者も立憲の支持を得て、2人区でも文京区や北多摩4などでトップ当選するという新たな成果を上げています。(日野市でも2人区で共産党は議席を確保し、自民党議員が落選しています。)
 評論家の田崎氏は、一部だけを見て今回の都議選では共産党は後退していると語ったが、自民党の代弁者のセリフであり正しい評価をしていない。この選挙協定は相当の威力があることを今回示しました。
 ただ選挙戦の勝ち負けは何をもって判断するかは難しく、本来なら、42選挙区での議席の獲得を第一に充てて選挙に臨むべきです。つまり野党で過半数を獲得することが重要です。その課題は相当難しく一長一短では実現するものではないので、その目標の何合目に来たのかその分析が必要だと思います。その課題は難しく横に置くとしても、少なくとも前回の選挙戦での支持(獲得票)をどれだけ増やしたかの総括が必要です。
 前回選挙と今回の選挙を比較する場合、一番の要素は、何人当選したかが一つの基準になります。共産党は前回の当選者も19人、今回も19人であり、歴史的快挙といえるような勝利ではありません。意識的に現有勢力と比較してことさら勝利感に浸る姿は評価できません。

4年前の選挙から共産党は歴史的快挙というくらい前進したのか?


選挙結果をより深く分析するにはやはり得票数こそが一番民意がどこにあるかの根拠になると思います。
共産党の票を前回と比較すると、4年前から増えているかとみた場合、必ずしも増えていません。今回共産党が当選を果たした19選挙区で前回より票を減らした選挙区が4カ所あります。(新宿、太田、板橋、町田)一方前回より10%以上得票数を増やしたところがあります。(文教、日野、北多摩4)の選挙です。これは大きな躍進に見えますが、先ほどにも言いましたが、立憲民主党と棲み分けを図った結果だと見ています。
 赤旗では立憲民主との競合区は、共産党が7カ所下げ、立憲が5カ所下げたという趣旨の報告を読んだ気がします。
 事実立憲民主の勝利した選挙区は異常な票数が出ています。立憲民主は、渋谷で31.11%、中野では、29.22%とっています。また立川37.03%。(これは共産党の自主支援)武蔵野46.60%、三鷹(共産党は候補者を下した?)42.85%獲得しています。

野党共闘は大きく成長したが、今後の見通しは明るいのか?


 共産党、立憲民主党は今回選挙戦でいい結果を得ることが出来ました。共産党が2人区で勝利するこれは確かに画期的なことだと思います。小選挙制でも野党が協力すれば勝ち抜けるという展望を今回の選挙は示しました。しかし野党連合はこの成果を踏まえ衆議院選挙でも力を発揮することが可能でしょうか、気になる点があります。
 都議選の開票日(4日)の深夜番組で、アナウウサーが、「立憲民主党の躍進は、その背景に野党共闘の成果あるのでは、衆議院選挙でも共闘態勢で戦うのか」と立憲民主党幹事長福山哲郎氏に尋ねた際に、福山市は少し言葉に詰まりながら、「今回の選挙戦の総括と共に社民党・国民民主党と話を進めています。」と答えた。
 立憲民主の今回の躍進は、共産党が選挙協力に忠実に従い戦いを推し進めたことにあるのに、福山市は共産党隠しを敢えて行った。

「今回の選挙戦で得た物は」、と志位委員長に問うたら、「立憲民主党との選挙協力が上手く進んだ」と答えるであろう。しかし立憲民主党は、共産党の票はほしいが、本当に連合政権を創ろうとは思っていない。そういう意味では、共闘が進んだと言う総括には怪しさがある。

小池氏の暗躍が今回の選挙戦で自民党の敗北につながった?


 今回の選挙戦の特徴は、都民ファーストという小池の作った地域政党が、命運尽き、それに代わって自民党が復活するという下馬評があちこちで語られていた。小池氏は自らが作った都民ファーストを裏切り、自公に恩を売り今後の都政運営が上手くいくように、あるいは国政に打って出る段取りをしているのではという噂も出回っていた。自民党や公明党が一番恐れていたのは、小池都知事が、オリンピックの開催は無観客で行うと宣言し、オリンピックで主導権を握り、菅首相の優柔不断な態度に楔を打ち込み、小池さんの人気上昇を狙っているというものであったが、そんな雰囲気は何もなく、小池さんは都民ファーストを見殺しにして、自民党や公明党に寄り添っていくのかとみていたが、小池氏は「腐っても鯛」である。体調不良で入院し、選挙戦最終日に復活し、「私はたとえ行き倒れになっても頑張る」と言うメッセージを発信し、都民ファーストの候補者の応援に回った。
 新聞等のマスコミの報道を見ると、彼女のその演出で都民の中に小池同情論が一気に吹き上がり、都民ファーストへの支持が増え、自民党は大敗し、都民ファーストは生き残ったと言われている。
 マスコミ等の選挙戦の最終予想は、自民党が50議席以上、公明党が23議席を占め、与党が安定多数を占め、都民ファーストは一桁の数字になるかもと言われていた。
 この話が本当であるのだとすれば、選挙というものの怪しさを感じる、一大詐欺師が表れれば国民は組織されてしまうのかもしれない。民主主義の危うさを感じる。私は前々から共産党の選挙戦略を批判し、国民は何をもって選挙での行動を行うのか、その分析を抜きに、赤旗が増えれば選挙で勝利するという馬鹿げた屁理屈を撤回しない限り共産党は選挙で勝てないと言い続けてきた。
 選挙戦で勝利する最短の方法は、優秀な者を育成し、国民の安全や安心が如何にしたら獲得できるのか宣伝する能力が必要だと思っている。政治家にはカリスマ性が必要だと思っている。赤旗と選挙戦の勝利は全くないと思っている。人の心をつかめるか否かが最大の武器だと思っている。
現在の政治家では、菅首相は人気が出ない、詐欺師の様に口が回らない。小池氏は画策することにたけており、彼女の主張(哲学)など何もないが、人を翻弄する手腕にたけている。これが求められる政治家とは思わないが、多くの国民は小池氏を支持する。
 今回の選挙でも都民ファーストの票を見たら30%以上の票を獲得した選挙区が19カ所ある。これが政治だとだと思う。一番高いのは青梅市の選挙区は62.15%都民ファーストに票を入れている。練馬区では7人中2人も都民ファーストが占めている。
 大阪では吉本が受けそれに乗っかった大阪維新に莫大な票が集まる。議員の不祥事が一番多いのは維新だがそんなものは全く影響しない。彼らはアメーバーの様に増えていく。一方では東京は小池百合子という一人の政治家にみんながひきつけられる。小池氏の支持は57%ぐらいあり菅首相の支持は35%ぐらいしかない。大阪から見れば東京の人はなぜ小池百合子に騙されるのだと思うが、東京から見れば、なんで吉本に政治が握られるのか不思議でたまらないであろう。(大阪ではコロナワクチンの接種を促すため、吉本の若手座員が接種している場面を映し、接種推進の働きかけを行っている)
 何が言いたいのか、それぞれの個人の行動の判断は様々であり、アカハタガ増えれば世の中が変わると言うことを信じる者もおれば、信じられない者もある。しかしこのことが間違っていると言う主張は絶対にできない。党の最大の課題を否定するものが現れたら党はつぶれてしまう。なぜ科学的に物を見ようとしないのか、大阪も東京も投票行動において判断基準は政治をしっかり見ているのか疑わしい面もある。

今回の選挙の収穫は共産党に対するアレルギーが減ってきたことを証明している。


 私は今回の都議選の結果を見て、共産党と一般大衆との間で、共産党に対するアレルギーみたいなものが減ってきていると感じた。前回の都議選の結果の時か別の時か忘れたが、共産党は国民の中に忌避意識があり、20%の壁は絶対に超えられない。ついでに公明党(創価学会)は30%の壁は絶対に乗り越えられないと主張した。たとえ共産党の候補と自民党の候補が戦っても、共産党は20%以内であり、相手側は80%とると断言した。
 今回の都議選で共産党が30%以上獲得した選挙区が文京区35.84、日野市33.75%、北多摩34.81%とっている。これは共産党にとってはうれしい数字だ。しかしこの20%を超えた部分は、野党間の政策協定で生まれた票だと思われる。共闘関係が崩れれば文京区で35.84%も入らないと思う。
 ただ、野党共闘が進んでお互いに相手を支持する協定が結ばれたら本当に票が動くと言うことを今回初めて知った。共産党に対する忌避意識は薄まりつつあると思われます。ただこれも共産党は協定をしても35%の壁がまだある。これに対して、立憲民主の場合は、共産党が協力すれば、45%位まで票が出る。例えば武蔵野市の立憲民主の候補は46.69%で断トツの1位である。
 更に言うと東京都議会選挙で無所属の候補者は、泡沫候補と一般的に思われているが、票を一人で独占する兵もいる。小金井市の無所属の候補者は、45.40%で断トツの1位である。これを日本共産党が推薦しているらしいが45.40%は共産党には考えられない数字である。
 ついでに公明党についても触れておくが、公明との候補者で30%以上の得票を獲得した者は一人もいない。最高が27.23%である。(私の理論が当たっている。)共産党は、今回疑似的に一部克服した。この点は成果である。

共産党・公明等の国民の忌避意識の克服は深刻な課題である。


 この忌避意識はどこから来るのか、それは政党の持っている民主主義の考え方に国民は反対しているのだ。その一番重要なカギは反対意見を包括できる度量の広さである。誰とあっても同じ話であれば、そこには個性が尊重されていないと読み取られる。高槻市の市会議員選挙で候補者ポスターを顔写真だけ変えてすべて同じものを張り出した。そこには個人の持っている個性を完全に踏みにじった主張がある。私は金太郎飴みたいなポスターで市民は納得できるか、これは私たちには個性がありませんと宣伝しているように見えると批判した。この現象から卒業できていないところに、この二つの政党が成長できない根本的な理由がある。
 更に、一般大衆は選挙で投票する場合何を基準に投票しているかである。共産党は政党を前面に出し赤旗を読んでいる人が共産党に入れると思っているがそうではなく多くの人はその人が信用できるか否かで入れている。個人の魅力・個性を大切にしない限り、共産党の候補者の票数は増えない。
 何処の新聞かテレビのニュースか忘れたが、若者の投票率が低いのはなぜかでアンケートをとったら信頼できる人物がいないが35%くらいで断トツの1位であった。選挙での投票行動は政党で決める人と人物本位で決める人は半々だと思う。(あえて言えば人物本位の方が多いと思っている)そうであるならば人物をもっと押し出す選挙運動をすれば得票はもっと稼げる。選挙の立候補者の肩書か共産党の事務職員というようなばかげた公報を出す奴(最近の尼崎市の落選者)は、選挙のイロハが分かっていない。

今回の選挙戦の争点は分かりやすかった。(敵失が招いた勝利)


 今回の東京都議選は、コロナ対策と、東京5輪の是非であったので、争点が分かりやすく国民の要求に寄り添った主張であったので、今回の戦いは共産党にとって有利な戦いが展開できた。敵失が招いた勝利だ!

 共産党は最近、戦う共産党のイメージを封印して、一定の成果を上げている。今回の例では、コロナ禍の中でオリンピックの開催に否定的な国民が多く、たとえ開催しても無観客するべきだがアンケート調査では一番多かった。
共産党は「オリンピックよりも命が大切」と明確に言い切りその支持を固めた。国民の持っている願いに寄り添った政策で勝利を導いた。その点は評価できるが、東京都の課題は何かなど本質論で戦わず、国民によりすぎた政策だけでは世の中は変わらない。
 そうした点では今回は成功したが、そのような手法だけで選挙に勝っていけるのか、今後の展開がどうなるのかは分からない。
 共産党という政党の本質を理解していただいたのかは若干の疑問が残る。