第二弾 「イスラム国」問題 しんぶん赤旗は矛盾だらけ


平成27(2015)年2月14日


しんぶん赤旗はマスコミとして「今、何を伝えなければならないのか」使命感がない

 2月12日「『イスラム国』問題 しんぶん赤旗は矛盾だらけ」という記事を書いたが、2月15日付赤旗日曜版を見てビックリした。これまでの赤旗の論調と全く違う記事を載せている。
 この日曜版の二面は、「日本共産党の躍進で暴走阻止、政治転換を」志位委員長が訴えという記事を載せている。この記事は2月11日の赤旗の記事と同じ見出しであり同じ演説会の内容を伝えたものである。しかし、その内容が全く違うものに出来上がっている。赤旗の編集体制がどうなっているか、それぞれ別の記者がいるのか私は全く知らないが、今回の記事は日曜版の方が圧倒的に優れている。
 私の今までの認識では、赤旗本紙の記事の論調を緩めて日曜版に載せていると理解していたが、今回の日曜版を見る限りでは、別の編集権があるように見える。

2月10日の演説会(東京体育館)を「赤旗」及び「日曜版」はどう伝えたか

 まず赤旗であるが、2月11日1面トップで以下のように伝えたかを私が書いた2月11日「志位委員長の安倍政権支持は確信犯」を以下に引用することで示したい。
【しんぶん赤旗の報道】

志位委員長の「イスラム国」敵視は確信犯・・・これが戦争への道という事が理解できない。

 しかし本日(11日付)赤旗の一面トップの記事「日本共産党躍進で暴走阻止、政治の転換を」「いっせい地方選挙 志位委員長が全国遊説」(東京・演説会)という記事を見て、これは「ダメだな」、志位委員長の安倍政権支持は確信犯だなとつくづく思った。
 この演説会で志位氏は、まず「イスラム国」問題を語っている。その主張は「イスラム国」が「最も野蛮で無法な組織が相手」・・「国連を中心に、国際法、国際人道法を厳格に守って行動することがなによりも重要であり、そういう態度を堅持してこそテロリストを追い詰めていく一番の力になります」と主張している。
 彼の思考は、中東問題の混乱が誰によってもたらされたのか、現在中東の国民がこの戦争に巻き込まれ、どれだけ多くの人が生命を落とし、飢えと貧困にあえいでいるか等の苦しみの解決より、「イスラム国」の解体にポイントをおいてしまっている。
 さらに決定的に重要なことは、今回の「イスラム国」問題は、安倍首相が「挑発」し引き起こした疑いが濃厚であるのに、それに触れず、さらに安倍首相はこの「イスラム国」問題を利用して、集団的自衛権行使を実現し、日本を「海外で戦争をできる国」へ変質する企みを着々と行っている現状を批判せず、「イスラム国」解体だけを切り離し演説している姿である。
 志位氏は、「イスラム国」の次に述べたのは「日本共産党の躍進」です。彼は安倍政権批判より、「イスラム国」批判を行い、「共産党の躍進」へつなげようとしている。この企みが如何に危険であるか彼は全く理解していない。
【赤旗日曜版の報道】
 これに対して、赤旗日曜版は、赤旗本紙が書かなかった志位委員長の「『イスラム国』を追い詰める」の後の大事な演説内容を伝えている。以下引用する
 志位委員長は「悲劇を繰り返さないためにも日本外交の冷静な検証が必要」という立場から「日本政府の三つの問題点」を指摘しました。
 第一は、安倍政権が「テロに屈することになる」の一言で冷静な検証を拒否する態度をとっていることです。
 第二は、安倍政権が事件を機に「海外で戦争する国」づくりを推進する動きをしていること首相は空爆などの支援も「憲法上は可能」とし、自衛隊の海外での「邦人救出」作戦を含め「法整備を進めていく」とのべました。相手を制圧する軍事作戦は憲法違反です。
 第三は、「イスラム国」のような集団がなぜ生まれ、勢力を拡大したか、歴史的検証が必要なことです。
 大きなきっかけは米政権による、アフガニスタン報復戦争(2001〜)「イラク侵略戦争(03〜)です。これらの戦争の混乱から過激集団が生まれました。マレーシアのナジフ首相は「一人の悪魔を攻撃して、より大きな悪魔が現れた」と批判しました。
 「戦争でテロはなくせない」というのが教訓です。ところが、日本政府はこれらの戦争を支持し、自衛隊を派遣」してきました。
 志位氏は「真の教訓を引き出し、世界から無法なテロを一掃し、平和で公正な世界をつくるため全力をつくす」と表明しました。
 長い引用で申し訳ありませんが、この演説会で志位委員長は結構まともな発言をしています。にも関わらずしんぶん赤旗は、「イスラム国」解体を主張した「声明」の立場だけを報道し、志位氏が論調を変えていることを伝えていません。(これは赤旗記者が全く馬鹿なのか、意識的なのかは分かりません。)
 ただ赤旗にはこれと同じ前科があります。原発問題で、志位委員長はメーデー会場で「原発ゼロ」宣言を突如行いました。この発言を一般紙は大きく注目し取り上げましたが、翌日の赤旗は、共産党の隊列は「安全優先の原子力政策」をシュプレヒコールしながら行進しましたという記事を載せていました。(幹部の政策変更が赤旗記者まで伝わっていない)
 今回も志位「声明」が「イスラム国」の「解体」と暴走してしまったために、それを補うための発言であったのではと私は思っていたが、赤旗記者は、志位演説の「肝」が何かを把握できず、どうでも良い「枕詞」の方を記事にしてしまったのではと推測している。

共産党の政策変更は、一般的に把握が難しい。

 志位「声明」が暴走してしまったので、その修正を赤旗日曜版で行ったのかも知れない。(あるいは、本紙側は検閲がひどく自由に書けないが、日曜版は芸能記事などが多いから、検閲が緩いのかもしれない。)このような混乱がなぜ起こるのか、それは、共産党は常に一貫していると主張するため、政策変更がいつ行われたのか把握が難しいからである。
 例えば安倍首相は、今回の「イスラム国」の蛮行を捉え「償わせる」という発言をおこなったが、これは軍事的行動を指すのではなく、「法的に裁く」という趣旨だとはっきりと修正を行っている。オバマ大統領の発言を聞いていても、「捕まえて法的に裁く」と主張している。志位委員長は、「イスラム国」を包囲し解体すると「声明」で述べた。これは軍事的殲滅をめざすというようにとれる。この説明を明確にせず、論調を変えた演説をしても赤旗記者でもその変更に気がつかなかったのでないか。

2月15日付日曜版は、他の記事も赤旗本紙と一線を画している

 3面に「東京大空襲で家族を失う」という海老名香葉子さんの記事を全面で取り上げ、戦争反対を明確に打ち出し、5面で「『イスラム国』勢力拡大」「米のイラク侵略が契機」という大見出しを掲げている。まずアメリカのイラク戦争が契機という記事を赤旗本紙で見たことがない。さらにイラク戦争と書かず、「イラク侵略」という言葉を使った。始めて赤旗らしさを出した。(この同じ紙面の志位演説も「イラク侵略」という言葉を使っている。)
 今回の「イスラム国」問題の主要な原因は、アメリカのイラク侵略にあることを表明したのは画期的なことだ。(当たり前のことだが、今日まではこれに触れず、「イスラム国」解体のみを主張していた。)
 さらにこの紙面にはもう一つ重要な中見出しがあり「人質事件の対応『誤り』」、「安倍政権に国内外から批判」と始めて安倍内閣批判を行っています。この中に「しかも安倍首相は、今回の人質事件を機に、在外邦人『救出』を口実にした自衛隊の海外派兵拡大を『国の責任だ』と主張。集団的自衛権の行使容認を具体化する法整備も推進する構えです。」と書いています。
 この記事がなぜ重要かと言うと、赤旗は「誰々がこう言っている。あるいは外国の新聞にこう書いてある」というような言い方を多発し、共産党はこう思っているという主張を出す事を避けています。
 2月15日の日曜版の編集方針は、明らかに「イスラム国」問題を利用した、安倍政権の「海外で戦争できる国」づくりに反対の方針で編集されています。

赤旗本紙は志位「声明」を守りながら、国民の運動はそれとなく報道している。

 それに対して赤旗本紙は志位「声明」に逆らってはならないとの思いから、「イスラム国」解体の立場を前面に出し、安倍政権批判は、海外の新聞報道にあるとか、青年たちのでも行進を伝え、その青年の発言「テロを口実に集団的自衛権行使容認の流れが進められ、本当に戦争する国になってしまう危機感がある」を通してのみ安倍政権を批判しています。
 これは原発問題で学んだ赤旗編集局が今後の方針転換に備え、赤旗も「イスラム国」問題を利用した安倍政権の海外で戦争できる国づくりが具体化した段階で、いや赤旗もそのことは批判してきたと宣伝するための保障でこれらの記事を入れていると思われます。

赤旗本紙と日曜版は明らかに編集方針が違う

 赤旗本紙は志位「声明」の呪縛から逃れていません。本日付赤旗は、「イスラム国」問題を全くというほど取り上げていません。(日曜版とは大違いです。)取り上げているのは、一面「大阪が変われば、日本変わる、維新の野望を打ち破ろう」躍進のつどい、山下書記局長訴えの中で、演説の最初で「世界から無法なテロを一掃し平和で公正な世界を築く決意をのべ総選挙での日本共産党の躍進の意義や・・・・」この記事の書き方は、11日の志位委員長の演説と同じです。(「イスラム国」解体に主眼がある)
 2面では、「『イスラム国』資金封じ強化」「安保理決議 身代金支払い阻止」という記事を載せています。安倍首相の「ビタ一文」支払わないという立場を肯定する内容です。さらには、「安保法政自公が協議再開」「米軍のあらゆる戦争に参加」という記事を載せています。この最後の結びは「安保法正は憲法9条の制約をことごとく取り払い、米国と肩を並べて海外で戦争する体制をつくるものです」という記事を書いていますが、「イスラム国」問題を利用した悪乗りという視点は書かれていません。
 さらに同じ2面に「中国中央テレビが小池氏にインタビュー」という記事が載っています。ここでも「イスラム国」問題には触れていませんが。「『積極的平和主義』どころか“積極的軍事路線”にほかならない」という発言を載せています。
 さらに7面【国際】に「地上部隊要請せず」「イラク外相、米に不快感」という記事を載せています。

昨年の春闘記事と今年の春闘記事が全く違う。(「海外で戦争できる国」づくり反対がない。)

       (労働組合は「イスラム国」解体を受け入れていない?)

 私が一番注目するのは、5面【国民運動】の紙面で、「春闘集会」「建設業に賃上げを」「若者に仕事に就けるよう」と割と大きな記事がありますが、この記事に、「イスラム国」問題を利用した安倍政権の暴走批判が全くなく、消費税値上げ反対すらありません。赤旗のその場の写真がありますが、労働者が一斉に上げているボードには「賃金上げろ」「建設業に若者を」だけです。(完全に要求を絞り込んでいます。)
 私は前に春闘を特集した記事の中に「賃上げ」という言葉が全く入らず政治的課題だけが取り挙げられている。非常に馬鹿げた春闘記事だと批判(赤旗の春闘記事に「賃上げ要求」が一言もない、春闘は、「賃上げや労働時間の短縮など労働条件の改善を勝ち取る戦いである」)したことがありますが、今回は全く逆で、政治的課題を全く掲げない春闘記事になっています。
 おそらく共産党は「イスラム国」問題を労働組合に下ろすことができない状況にあるのではと見ています、労働組合の幹部は、基本的には志位委員長の「声明」で述べた「イスラム国」解体の方針を持ち込むことを拒否していると思います。平和を求める立場からの運動方針を確立しない限り、「イスラム国」解体は労働組合運動の方針にはなりえないと思います。
 労働組合がもしこれをスローガンとして戦えば、日本国が完全に右翼に乗っ取られた姿になります。おそらく組合幹部は悩み、政治課題は後ろに下げ、賃上げ一本で春闘を闘おうとしているのではと思います。
 春闘記事一つとっても、赤旗が正義の見方真実の友とは言えないことは明らかである。

 最後に、元経産官僚であった古賀茂明さんは、「イスラム国」問題について朝日放送ニュースステイションで、「イスラム国」問題で始めて政府批判の口火を切っりました。そして、番組内で、「I AM NOT ABE」と言った。その彼がのツイッターで以下のように書いていた。

【独裁と戦争に向かうホップ、ステップ、ジャンプ】
今はステップに入っていますね。
1.ホップ:報道の自由への抑圧
2.ステップ:報道機関自身が体制迎合(大政翼賛会)
  と国民の洗脳
3.ジャンプ;選挙による独裁政権の誕生
そこからは、戦争への道をまっしぐら
 古賀茂明 2014年12月1日23:16

 この視点が共産党にはない、あるのは共産党の票を増やすことだけである。