重要な政局での志位委員長の発言の精彩のなさが気になる。



令和2(2020)年9月5日

 
 8月28日安倍首相の辞意表明を受けて国会内で記者会見した志位委員長の発言が9月6日付赤旗日曜版に掲載されている。この赤旗日曜版は、志位委員長だけではなく、元財務相、元民主党顧問の藤井祐久氏、作家の室井さん、さらにはNHK討論に出演した小池書記局長の発言も載せている。この中で志位氏の発言が一番しょぼい。
 前回コロナ問題でも赤旗日曜版は志位発言と尾崎東京都医師会会長の記事を同時に載せて志位発言のおかしさを描きだしたが、今回も同じことを赤旗日曜版は行っている。
 赤旗日曜版は意識的に志位委員長を落とし込めているのか、逆に志位委員長が一番と信じ込んでこんな記事の構成を行っているのかわからない。
 私には志位発言がいかに間違っているかの検証を行っているように見える。以下、具体的に見ていきたい。

 まず志位委員長の発言は、8月28日の国会内での記者会見での発言である。


1.やめた理由とその評価
 志位委員長:病気が理由での辞任ということですから、これはやむを得ないと考えます。じっくりと
 治療され、健康を回復されることを願っています。と発言している。
 藤井裕久氏:安倍首相が病気で辞任しました。ご本人はさぞ残念でしょう。ですが本質的には、内
 政・外交ともに行き詰っていたからだと思います。
 室井佑月氏:安倍さんは、民主主義や国民の暮らしなどを多くのものを破壊しました。意見の違う
 人を罵倒するような社会の対立や分断を進めました。(これが出だしの文書です)
 小池書記局長:辞任表明は、政治の深刻な行き詰まりの結果であり、これまでの安倍政治 と決別し
 て、いよいよ新しい政治に転換する時だ。
2.安倍なきあとの国政の課題
 志位委員長:国政はコロナ対応をはじめ、一刻の空白あるいは地帯も許されないことは言うまでもあり
 ません。ですから、速やかに臨時国会を開催し、後継首相を指名し、新首相もとで、衆参の代表質
 問、予算委委員会しっかり行う、そして国政の基本問題について十分な審議を行うことを強く求めた
 い
 藤井裕久氏安倍政権が終焉を迎えたことは率直に言って「よかった」と思っています。これから
 は「安倍亜流」政治を許さず、野党が結束して政権交代を実現することです。
 室井佑月氏「森友・加計」、「桜を見る会」疑惑は安倍さんによる国政の私物化です。首相を
 辞めても説明する責任があります。次の首相には、そうした問題の検証をきちんとしてくれる人がなっ
 てほしい。
 小池書記局長:安倍政権の7年8カ月が民主主義も暮らしも外交も破壊してきたとして次の点を強調
 しました。
  @集団的自衛権の行使容認の閣議決定など
  A2度の消費税増税による国民生活と日本経済への打撃
  B沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設
 その他外交問題、改憲への固執とその破たん、コロナ対応の¥デノ迷走等を批判
3.今後の戦い方
 志位委員長:わが党としては、7年8か月の安倍政権に対してあらゆる方面で正面から対決たたかってき
 ました。今後も市民と野党の共闘の力で、自民党政治の抜本的な転換を求めてたたかっていきたいと決
 意しています。
 藤井裕久氏安倍さんの歴史観、国家間には基本的に間違っています。安倍さんは立憲主義を理
 解していません。これを変えることが」できるのは野党の共闘です。共産党や市民団体としっかり協
 力して「安倍政治」を大きく転換していくことを願っています。
 室井佑月氏:次の首相には、そうした問題の検証をきちんとしてくれる人がなってほしい。"安倍
 政治"の継承といっている人には無理です。野党が力を合わせていくことが重要です。
 小池書記局長立憲主義、民主主義の回復、国民の暮らし応援を第一に揚げ、多様性を尊重し個人
 の尊厳を守り抜く政治を実現することー。こうした旗を立てて、いままでの安倍政治に代わる選択肢
 を、野党として責任を持って示す時だ。

 赤旗日曜版からそれぞれの話を引用したが志位委員長だけが、まったく無意味な発言になっていることが分かる。これは今回の発言だけではなく。この間の志位発言は特徴があり、内容が全くない。この志位委員長の記者会見の見出しを赤旗日曜版は「速やかに臨時国会を」「新首相のもとで十分な審議をせよ」という見出しを掲げているが、これは単なる手続き論であり、国会を正常に開けば、そこで審議を十分に行えば、世の中が変わるような幻想を国民に与えるものであり、議会主義の頂点に来た政治姿勢である。政治は議会だけでは変わらない国民の大きな支持を受ける戦いは、議会での議論からだけ生まれるものではない。
 大衆的な運動をおこし、多くの国民が自ら政治に関与して初めて意識が変わることができきる。国会さえ開けば、審議さえすれば世の中が変わるような幻想を振りまく非常にばかげた記者会見になっている。
 この記者会見の記者からの質問は具体的に書かれていないが、志位氏の回答から記者の質問が分かります。一つは安倍首相の退陣問題について聞かれている。志位氏は、「今回の辞任は、直接的には健康問題によるものだと思いますが、一つの新しい激動的な時代が始まったと私たちは受け止めております。」優等生の回答だが、共産党の委員長の回答ではない。先にも述べたが藤井氏は、「本質的には、内政・外交」ともに行き詰っていたからだと思います。と発言しています。小池書記局長の発言の見出しは「行き詰っての辞任表明」です。
 二つ目は、選挙戦での戦いが聞かれ、「市民と野党の共闘で自民党政治を倒すという立場でのぞむと答えています。
 三点目の質問は「森友・加計」「桜を見る会」疑惑の質問が出ています。これは志位氏がこの問題について発言しない不自然さを補うために質問がなされたと思いますが、志位氏の回答は木で鼻をくくったような回答です。「これは国政をゆがめられたという問題ですから、あいまいにはしません。」と答えただけです。この次元の回答なら「石破議員でも行っています。」室井佑月さんの主張の方が優れています。

政党間の戦いは、党首の力量が大きく、赤旗の部数などでは決まりません。


 共産党は、赤旗が増えれば世の中は変わると言いますが、赤旗の編集自体が全く面白くなく編集方針がしっかりしていません。9月4日の赤旗を見て1面トップに志位委員長が現れ「志位委員長の表明」という記事があります。見出しは「『安倍政治』とのたたかい 決着は総選挙でつけよう」という勇ましいものです。さらに記事を読むと、志位委員長は、「特別月間」成功のとり組みと一体に「解散・総選挙がいつあっても対応できるとりくみ」の必要性を訴え、「国民の中に広く打って出て、宣伝・対話を広げることが情勢の急変の中できわめて重要な活動になっている指摘。」という記事が載っています。
 私はこの記事を見て驚きました。共産党は1紙で間に合う新聞を標榜し、朝日新聞や毎日新聞を読まずとも1紙で間に合う新聞づくりを目指していたはずです。記事の掲載は他の新聞と同じような構成にし、党員向けの紙面は【党活動】という紙面に載せるものだと思っていました。赤旗新聞の拡大「特別月間」の記事が赤旗の1面に載せるのであれば、それは党員向けの機関誌になってしまいます。この志位委員長の発言の下に、「特別月間」「共産党が都道府県委員長会議」という記事も載せています。私から見ればこれは、一紙で間に合う新聞だと読者を説得して購読させた経緯からみて、読者に対するルール違反だと思います。
 大切なことは、安倍退陣という政治情勢を正しく読者に伝え、それぞれ国民が何をすればいいのか、どのように立ち上がればいいのか、その方向性を明確にして、国民に訴えていくことです。政治家としての魅力を打ち出すことが大切です。志位委員長が赤旗一面に現れ赤旗の拡大こそが最大の課題だと訴えることは、一般の国民から見れば「どっちらけ」だということに気が付かなくなっています。
 つい最近箕面市の選挙結果を書きました。赤旗はこれを大勝利だと書き、関係者が万歳をしている写真を載せましたが、大阪維新が4年前からどれだけ票数を増やしたか、まったく触れていません。市長選挙では79.74%も獲得して当選しています。市会議員選挙では29.56%を獲得し、前回選挙の1.62倍の票数を獲得しています。それに対して共産党は確かに立候補者3名全員当選しましたが、得票率は9.60%であり、前回選挙の10.00%から0.04%落としています。共産党はこの得票率の減少に触れず、全体の得票数が今回は53207票、前回は49308票だったため、共産党の得票数が前回よりも180票増えたことをとらえ大躍進だと騒いでいます。
 共産党は大阪での選挙の結果報告は、維新との比較を加えるべきであり、維新は倍々ゲームのような勢いが止まりません。その陰で共産党はじり貧を続けています。なぜこのようなことが起こるのか、しっかりした情報分析を行うべきです。
 私はこの現象は政治家の力の差、魅力の差があると思います。同時に情報発信力の強さの違いだと思います。維新は様々な改革案を提案しています。そこに「やる気満々の姿」が見えるのです。共産党の候補者には「華がない」まじめだけど、説得力に欠ける話しかできていません。
 例えば大阪維新は「大阪都構想」を掲げていますが、これ自身何を目指しているのかはほとんどの市民は理解していないと思います。同時にこの「大阪都構想に対する共産党の批判」も極めてしょうもない視点です。だいぶ前に書きましたが橋下徹と共産党の府会議員がこの件で討論しましたが、共産党の主張は、「プールの数が減る」だけでした。この時私思わずはテレビに向かって「大馬鹿もん」と叫びました。
 今日(9月5日)日、大阪民主新報が我が家に配達されました。一面全紙面を使って大阪都構想を批判しています。その見出しに「『住民サービス維持』は大うそ」「市民プールなど大幅削減」という見出しが相変わらず輝いています。こうした低次元の批判を行うのではなく、大阪都構想の狙いは何か政治的な思考が重要です。どうしてもプールの次元で戦いたいのであれば、コロナ禍の今、なぜ保健所や病院つぶしを行ってきていることを批判しないのかそのピンボケ差にあきれ返ります。
 この総裁選挙で石破氏は、コロナ対策で安倍政権との違いはと聞かれた際、保健所がこの間大幅につぶされてきた、保健所の2倍化が必要だと答えている。プールの数が行政の正当か否かの判断基準になりえるのか共産党の主張におおきな疑問を感じる。
 

志位発言は、自民党や右翼に脅かされ、踏み絵を踏まされているようで情けない。


 安倍晋三氏の退任にあたって、自民党や右翼は、記者会見で安倍氏に対する「お疲れ様」や最後に「拍手で送りだす」ことをしなかったのは異常だという世論の形成を行っています。
 志位委員長の記者会見はこれら一部の人の策動に配慮し、記者会見のコメントで記者の「首相の退陣は病気だからやむを得ない」あるいは記者の質問に「今回の辞任は、直接的には健康の問題によるものだと思いますが」と安倍首相の退陣理由を正しいものとして話を組み立てている。しかし世間では、「病状の悪化」は嘘だという情報も多くあり、少なくとも「悪政これ極まり」で行き詰まり退陣であり、1回目の職場放棄の構図と全く同じだという意見が多くある中で、安倍首相の退陣理由を前提に語りだしている姿は、右翼的な潮流にひれ伏した感がある。さらに今後どうするのか、新総理の行うべき課題を全くつきつけない会見になっている。志位氏が述べたのは「速やかに臨時国会を」「新首相のもと十分な審議をせよ」(以上志位氏の記者会見の赤旗の見出し)としか主張していない。何を議論するべきなのか、共産党はこの臨時国会で何を勝ち取るのか一切触れていない。
 これは志位委員長の記者会見の特徴である。新型コロナの記者会見も、PCR検査を大規模に至急やるべきだが志位委員長の指摘であったが、なぜPCR検査が進まないのかに対する突っ込みは一切なかった。私かはいくつかの原因を並べて、それらを解明すべきだと訴えたが、共産党は「速やかに」という言葉を乱発し、大事な問題を手続き論に変えている。
 その姿は「政治的音痴」に見え、政治家としての能力や意気込みが国民に全く伝わらない。この姿こそが共産党の躍進を妨げている。政党の伸縮はその政党の党首の力量によることが大きい。志位氏がこうした形式論を繰り返していたら共産党の躍進はない。
 立憲と国民に分かれた際に、立憲と国民の支持率は相当の違いがあった。それは立党に当たっての枝野氏の演説のうまさが相当影響している。
 政党の党首が国民の命と暮らしを守ることに対して一生懸命頑張っている姿を見て国民は支持する。自分の政党がかわいくて政党を大きくすることをその政党のトップが頑張っても国民には違和感をもってしか迎え入れられない。