赤旗を読む

 ここ1週間(11/4〜 11/10)の記事は「秘密保護法案」と「NSC法案」が満載


平成25(2013)年11月11日


赤旗の記事は「秘密保護法案」と「NSC法案」が満載


  私はこの一週間私用で外出しており、赤旗が読めない環境にあった。1週間分の赤旗を見て、赤旗が秘密保護法案とNSC法案の廃案に最大の力を入れていることがわかった。1週間の赤旗記事の一面トップ記事を見出しからひろうと、4日は「原発全作業員」「米国、身辺調査を要求」「秘密保護法で情報隠し拡大」5日、一面左トップ「秘密保護法案に反対」各階から、6日「原発従業員の身辺調査」「政府が早期導入検討」「秘密保護法案と歩調」一面左トップで「国会緊迫」「秘密保護法案審議入り提案」「NSC法案採決狙う」「共産党断固反対」7日、「NSC法案採決強行」「秘密保護法案」「きょう審議入り」「抗議の緊急集会」「各会から反対談話」8日、「秘密保護法案が審議入り」「国民の目・耳・口」ふさぐ」「必ず廃案に追い込もう」9日、一面左「大手紙など「廃案に」」「秘密保護法」「地方紙も連日警鐘」10日、「「特定秘密」国会・裁判所には厳しく制限」「米国にはどんどん提供」「許すな!秘密保護法案」「日本版NSC法案と一体「売国」的法案」、左面に「秘密保護法案 何でこんなに拙速なの」「ピーコさん」「国の形が変えられる声を上げるしかない」と掲げている。

  私は赤旗が「秘密保護法案」や「NSC法案」反対を全面に掲げて戦うことは大賛成ですが、他の政治的課題とのバランスを欠くこの報道姿勢には疑問も感じます。この1週間で秘密保護法案やNSC法案以外に一面トップを飾ったのは、5日、「子供の権利が優先」「公的保育充実して」「パパママ・保育士ら」「制度改革ノー」と9日、「生活保護「親族扶養が要件」は誤り」「厚生省が「是正」文書」「小池議員の追求受け」だけである。
 

毎日新聞は、様々な課題を取り上げている。とりわけ中国の共産庁舎前爆破事件を重視


  毎日新聞はこの1週間何をトップ記事に掲載したか、赤旗との比較の為に拾ってみたい。
11月4日、「楽天初の日本一」5日朝刊、「三笠偽装を認める」「近鉄系社長」「ミス」撤回」夕刊、京の社寺「命の砦に」「市と初の災害協定」「13万人観光客「避難広場」」6日朝刊、「食材偽装 百貨店も」「婚外子格差を削除」6日夕刊、「中国で連続爆発」「山西省共産庁舎前「7回」」7日朝刊、「食材偽装 主要全百貨店に」「三越伊勢丹も提供」「近鉄系社長が辞任表明」7日夕刊「防衛技術開発に資金」「政府日本版ダーパ創設」「NSC法案衆院通過」「午後秘密保護審議入り」「時限爆弾の可能性」「山西省 発生40分前に設置」8日朝刊「首相「一律開示は困難」」「秘密法案審議」「原則公開否定」、9日、「東電支援枠を拡大」「交付国債」3〜5兆円増発」「政府方針」「連続爆破 41歳男拘束」「中国・山西省「社会への報復目的」」、「島倉千代子さん死去」「歌手・75歳「人生いろいろ」」「減反一律補助5000円」「14〜17年度3分の1に減額」「政府調整」、夕刊「首都直下地震M8.5を想定」「原稿M7.5被害広範囲に」「中央防災会議」、「大阪市水道で新会社」「民営化案100%出資 運営権売却」10日、「規制委員長」「避難舎聴取を撤回」「帰還策評価」「有識者意見に介入」「コーナン社長辞任へ」「不明朗取引で引責」

赤旗と毎日新聞を比較すると


 赤旗は、特定の政治課題に記事を集中し、バランス感覚を失った記事になっている。この間、私の地元高槻市の駅頭で撒かれたビラは9月一ヶ月間常に消費税(5枚)であった。それがこの1週間の赤旗一面記事に消費税は全くない。ないのは消費税だけでなく、原発反対も、TPP反対も全くないし、災害避難などの記事が一切ない。主要な政治課題をバランスよく配置していく編集能力が全くない。これでは新聞というより、アジビラみたいな紙面構成になっている。

赤旗報道の大きな弱点・・中国の問題点追求に消極的


 毎日新聞と比較しながら赤旗の弱点を見ていくと、私が一番気になるのは、中国共産党の庁舎前の爆破事件である。これはそれ以前に行われた天安門の車両突入事件と併せて、中国に取っては重大事件であり、日本国民もこの事件の真相、今後の中国の進むべき道に関心を持っている。週刊誌等もこの記事を大きく報道し、一昨日の夕刊フジなどは三年以内に中国共産党が崩壊という香港の観測記事を載せている。これ自体は何の根拠もない無責任な記事であるが、国民がこの問題に関心が深いことを示している。
 赤旗報道は、中国問題の報道を意識的に避けている。例えば、7日付け赤旗は、7面でこの問題を掲載しているが、その見出しは「中国 党建物前で爆発」「山西省一人死亡。8人負傷」と書いているが、意識的に「共産庁舎前」と書かず「党建物」と書いている。これなどは非常に姑息な言い回しである。一般紙やNHKは中国共産党庁舎前、あるいは中国共産党の建物近くでと「共産党」を攻撃目標とした爆破事件として報道している。さらには一般紙がこの爆破事件の背景を追っているが、赤旗は7日の報道だけである。例えば毎日新聞は、6日夕刊で第一報を載せ、7日夕刊で一面に事件の詳細を、9面には「市民落ち着き戻る」という記事を、9日朝刊一面で、連続爆破41歳男拘束、中国・山西省「社会への報復目的」、7面で容疑者宅劣悪な住環境、「住民ら「社会問題把握を」」と中国社会に問題があることを報道している。
 赤旗が一紙で間に合う新聞(正義の味方真実の友)と主張するなら、中国報道を見る限りではが看板倒れになっている。もうそろそろ「中国が社会主義を目指している国」という共産党の見方を見直さないと、共産党の躍進の大きな妨げになる。

他の政治課題について


 次に、原発問題では、毎日が東電支援枠を拡大という形で客観的に報道しているが、赤旗はこの政府方針に対する批判的立場を明確にして報道しなければならない。
 また農業政策では、政府は減反政策の見直しを行い、従来10アール当たり1万5千円であったのを来年から5000円に減額する方向で自民党と調整に入った。と報道されているがこれもTPPとの関連で取り上げ批判していく必要がある。
 さらに、共産党はルールある資本主義を唱えているが、食材偽装やコーナンの不正取引での社長退任等の報道にもあまり関心を持っていない。
 災害避難関連では、京都の寺社の受け入れや、中央防災会議の災害の被害予想の見直し「首都直下地震M8.5を想定」など全く報道していない。
 さらに芸能・スポーツネタではあるが、楽天の初優勝、それに島倉千代子の死亡に際してもあまり関心を寄せていない。
 この2点は意見の分かれるところではあるが、楽天の優勝や島倉千代子死亡記事等の国民の関心の強いニュースは、一面で扱ってもよいニュースだと思っている。そのことが一紙で間に合う新聞の意味だと思われる。
 赤旗は政党の機関誌なのか、一般の国民を対象にしているのか、その編集方針が定まっていないように見える。

秘密保護本案と赤旗の報道姿勢


 赤旗は秘密保護法案反対の理由に、「国民の目・耳・口をふさぐ」と書いているが、果たしてこの言葉は、赤旗の編集方針に跳ね返ってこないだろうか、なぜ赤旗は中国における不祥事を報道することをできるだけ避けている。これは、国民の目や耳をふさいでいることにはならないのであろうか、あるいは共産党は党員が意見書をあげた場合、その内容を公開しているであろうか、また返事(回答)を行っているであろうか、この辺の克服抜きに正論を
吐いても力にはならない。その影響は限定的にならざるを得ない。
 日本の政治勢力の中で共産党が国会で今よりおきな議席を獲得するためには、国民政党に脱皮する以外に道はない。中国の現状を見て、日本の共産党がそうならない保証がどこにあるのか、確信を持てる国民は、現在の共産党支持者の中でも限られていると思われる。(注1)阿倍政権の悪政に反対勢力の代表としての認識で共産党を支持する者、生活を守ってくれる党として共産党を支持する者、が現在の党支持者の実態であり、国家権力を共産党に任すという支持者は少ないと思われる。それは、この間の赤旗拡大が進まない現状を見てもわかる。

注1:9日付け赤旗【党活動】で「連続教室」を再度視聴 新入党員「もっと学びたい」という記事の中で、2年前に入
    党して「友人から『中国共産党と同じだろう』と言われても答えられなかった」と話していた支部員も、学習に参
    加して「中国とはまったく違うことがよくわかった。自分自身の引っかかりも解決した」と喜んでいます。という記
    事があるが、赤旗を読んでいる限りでは、中国と全く違うということが全くわからない。

 その点を志位さんも感じており8中総で共産党を「共産党を丸ごと好きになってもらう」と提起しているが、その通りであり、そのためには、民主集中制という組織原則と、自由な党内論議を認めない限り国民政党にはなり得ないし、丸ごと好きにはなってもらえない。(中国とはまったく違う説明にならない。)
 さらに共産党は社会主義を目指すといいながら、社会主義像を具体的に示せず、中国を「社会主義を目指す国」と評価しているが、毎日々マスコミ党を通じて反中国キャンペーンが行われている中、これは反共攻撃であり、中国社会は健全に発展していると主張しても誰も信じない。  

赤旗は過去において社会主義報道で大きな誤りを犯してきた


我々は、学生時代ソ連や中国・北朝鮮などは、赤旗の報道などを通じて理想的な国家建設行っていると信じていた。一般のマスコミはソ連や中国・北朝鮮をボロカスに批判していたが、それは反共攻撃だと説明され、資本主義は悪だが社会主義は希望の楽園だと教えられてきた。学生運動でも「トロキスト」といわれた過激主義的集団が唱えた「反帝・反スタ」は間違いと教えられ、共産党の学習指定文献にはスターリンのレーニン主義の基礎や毛沢東の実践論・矛盾論が含まれていた。
 私が共産党に入党した当時は、レーニンの後継者スターリンという位置づけで、スターリンは評価されていったし、中国も大躍進が成功し、北朝鮮に至っては地上の楽園とまで褒め称えられていた。この地上の楽園という位置づけが、1950年代から1984年にかけて行なわれた在日朝鮮人とその家族による日本から朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)への集団的な永住帰国あるいは移住が行われた背景である。(この事業を共産党も支持していた。)このときこうした宣伝に惑わされ帰国した日本人妻などが現在相当苦難な生活を強いられている。
この地上の楽園報道は、私はまだ中学生ぐらいであったと記憶するが鮮明に覚えている。私は赤旗でなく、朝日新聞で帰国した在日の人たちの生活状況を連載で現地レポートが掲載され、帰国された方が非常に手厚い保護を受け幸せに暮らしているという報道を見て、北朝鮮がすばらしい国だと思ったことを覚えている。(なぜなら私の家は貧乏でその日の米にも困る生活を行っていたが、北朝鮮では生活必需品はほぼ無償で供与されるという記事を読んで、食べることに心配がない社会というものにあこがれた。)大学に入っても、人民中国や朝鮮画報という雑誌があり、それを目にするたびに中国や朝鮮がすばらしい国だと思っていた。
 しかし、1989年にソビエト連邦(ソ連)の衛星国であった東ヨーロッパ諸国で、社会主義と言われた国家が連続的に倒された東欧の崩壊(1989年革命)で社会主義に対する真実を初めて知った。
それは、我々が教えられていた社会主義の優位性がすべて嘘であった。東ドイツの車のボンネットがボール紙であったとか、日本共産党が社会主義のモデルとして一番評価していたルーマニアで、多くの子供がストリートチルドレン化し、エイズの子供たちがたくさん放置されている映像を見て、これが社会主義の実態であったのかと大いに落胆した。
 日本共産党は、ソビエト連邦の崩壊に当たって、これを歓迎すると談話を発表したが、長い間これら社会主義国を評価してきた負の歴史をそう簡単に消すことはできない。

中国の共産党崩壊時の赤旗のコメントは想像できる


 現在中国が少数民族の弾圧や共産党幹部の汚職が蔓延するというどう見ても社会主義と相容れない政治を行っているのに、未だに「社会主義を目指す国」にカウントすることは、共産党の見識に疑いを持たざるを得ない。共産党はおそらく中国が行き詰まり、中国共産党がどうにもならなくなった段階で、共産党は、「我々は中国を社会主義国と認めたことは一度もない。」「中国が社会主義を目指す国」とも言ったことがない。中国自身が「社会主義を目指している」と言っているということを紹介したまでであり、我々はどこの国もモデルとしない自主独立の立場を取ってきた。」と言明すると思われる。
 しかし、このような説明で逃げ切れると思うところに共産党の甘さがある。この共産党の感覚は阪急阪神ホテルズ社長の「偽装ではなく誤表示だ」と同じ次元のセンスでしかない。
 例えば先のルーマニアの件でも現地特派員はすでにルーマニアの問題点に気づき記事を配信していたが、党中央はその記事の掲載を認めなかった歴史がある。本当に気がつかなかったのでまだ許せるが、すでに事実がわかっているのに言論統制する姿は、いくら個々の政党の判断の自由かもしれないが、その政党が国家権力を握ることを想定した場合、まさに言論統制がなされるであろうと国民が思うのは当然の感覚である。
 たかじんの「そこまで言って委員会」で秘密保護法の問題点のパネラーを務めた小池晃副委員長に対して、レギュラーパネリストの金美齢氏が説明はよくわかったが、こうした秘密保護法案は社会主義の方がよほど厳しいのではないかと突っ込みを入れられた際、小池晃氏は、明らかに「中国が問題である国であることはあなた方もご存じでしょう、あんな国をモデルにはしていない。」と反論されたが、金美齢氏はさらに突っ込み「共産主義を名乗る以上同じだ、違うというなら羊頭を掲げて狗肉を売るものだ」と追求した。
 そこに司会者が割って入り、その件は先週十分議論した本日の課題でないと打ち切ったが、この金美齢の発言を単なる反共攻撃と片付けず、多くの国民の持っている疑問だと捉える必要がある。
 

現在の緊急課題は、秘密保護法案や日本版NSC法案を廃案に葬ることである。


 このような情勢の元、私の上記主張はそれに水を差すものであり、後ろから矢を放つ行為であると批判するであろう。しかし、それは上記私の視点が共産党に取ってアキレス腱になっていることの証明でもある。これを反共攻撃だと主張されると思うが、批判者を常に反共攻撃だと一刀両断に切り捨てることは簡単だが、同時にそれは思考停止に陥ることであり、党の発展に取ってはマイナスにしか作用しない。
 批判に対しては丁寧な反論を行うべきであり、それができないのであれば修正すべきである。「知る権利」が大事であるのであれば、政党においても、個々の党員が党中央の方針に対して疑問を持ち、その説明を求める権利があることを認めるべきである。さらに一国民が政党に対して疑問を正した場合も答える義務があることを認めるべきである。国にたいした知る権利を対置しながら、国民に対して知る権利を認めない党の態度は矛盾しており、国民にはわかりにくい姿であり、権力を握ると今以上に国民の権利が制限されると思うのは国民側からの常識となっていることに注意を払うべきである。