小池晃氏と香山リカさんの対談(新春ざっくばらん対談)が面白い


平成30(2018)年1月8日


小池晃氏と香山リカさんの対談は共産党の本音が見えて面白い

(三中総の理解に役立つ文書

 私は「第三回中央委員会総会は、果たして党再生の武器になり得るか?」という文書を12月12日に書いた。その中で疑問や新たな発見を書いたがそのことにこの対談は答えてくれている。
 私が書いた疑問の第一は、67選挙区で一方的に候補者を降ろし、立憲民主党躍進の陰の立役者になったが、党内でこれを批判する意見が全くなかったのか、もしなかったとしたら異常である。と指摘した。
 この対談で
小池氏が「比例代表選挙では共産党自体の議席は減らしてしまうことになり、そこは本当に悔しい結果でした。これは僕たちの力不足だと言うことで、いま真剣に力をつけていこうと努力を開始しています。」と公式見解を述べていますが、
香山氏が「正直言って、国民不信にならないですか」「立憲民主の支持者の中にも立憲民主のために選挙区で候補者をおろしたから『比例は共産へ』という声もありましたが。」と突っ込みを入れると、
小池氏は「そういう動きが出てきましたね」と答えましたが、
香山氏がさらに「結局ふたを開けてみれば、比例も、立憲民主に入れた方も多かったとと思うんですね。」「約束が違うじゃないか(笑い)そういう気持ちにはならないもんですか。」
小池氏「少しはなりますよ。」
香山氏「あーっははは(拍手)正直ですね。」

 何気ない会話ですが、共産党の本音がうかがえ面白い。共産党の公式見解からは人間味が全く感じられないが、この対談では人間味が感じられる。このような本音を堂々と語らないから、官僚組織の体質が国民から見れば感じとられてしまう。子育てでも「思ったこと感じたことを率直にしゃべれる子どもは、素直な子ども」と評価される。共産党ももっと本音を語るべきだ。

反共攻撃とリスペクトこの相関関係は?

 私は先に挙げた「三中総批判で」注目点が二つあると述べたが、これに対する回答もこの対談の中で語られている。
【反共攻撃】
 まず「反共攻撃」という言葉がこの三中総には現れない。選挙に負けた際は必ずその原因は反共攻撃だと言って総括する共産党の悪い癖を私は一貫して批判してきた。なぜ今回「反共攻撃で負けた」と総括しなかったのかが私の最大の関心事であった。この点を小池氏は以下のように答えている。
小池氏「今回、共産党が嫌がられたり、反共産党の風が吹いて追い詰められたという選挙ではないので」「市民と野党の共闘を真剣に求める共産党に対して、有権者は暖かった」「多くの市民のみなさんから『共産党に感謝する』という声が寄せられました」と答えています。


 共産党は、今までは悲劇の主人公になって、「私だけが正しい、周りが理解してくれない」「みんなでいじめる」「反共攻撃だ」と騒いでいましたが、新たな路線、「市民と野党の共闘」路線を統一戦線論の軸に据えた以上、市民や野党を敵視することはできず、同時に自分たちだけが「はみ子」だと言う主張はまずい、むしろ共産党は「みんなに可愛がられている」という打ち出しの方が戦術的には好ましいと察知したものと伺われる。私もこの路線転換は賛成である。
 小池氏の「市民のみなさんから『共産党に感謝する』という声が寄せられました」という言葉にそれが現れている。
 しかし、選挙結果は440万票と過去最悪の結果になっている。にも拘わらず「可愛がられている」路線変更は少し苦しい論理展開ではあるが・・・

【リスペクト=尊重する】 
 もう一つの注目点は、「共闘相手をリスペクトする」という政治的背景について小池氏は以下のように語っている。
小池氏「いままでの自民党政治は建前であっても戦後民主主義の土台の上に政治をやってきたけれども、安倍政治というのは戦後民主主義を否定する政治なわけです。保守というより、反動というか、民意無視の戦後民主主義の破壊者ですよね。」

 日本の政治革新上、現状では安倍政権の戦後民主主義の破壊と戦う事が最大の課題であり、現在まで模索していた「一点共闘」というような次元では戦えず、市民と野党の共闘が不可欠だと言う認識である。
 そのためには過去に主張してきた、「自共対決の時代」とか「自民党と共産党との間の『受け皿政党』が消滅した」(第26回大会決議)など、他の野党批判を撤回した。(ただコッソリと)

 私が注目した「反共攻撃」という文言の消滅と、「共闘相手をリスペクトする」はセットで使われており、「一点共闘」路線から「市民と野党共闘」路線に戦術転換するにあたって必要な事柄であったと見受けられる。

以下中見出しに従っていくつかの論評を行います

共産党らしさとは何だろうか

 この対談の面白さは、香山氏が共産党らしさとは何かを突っ込んでいる点である。「市民と野党の共同」路線では、今回の選挙結果から見ても共産党は埋没するのではないかという問題意識を提起している。
香山氏「立憲民主主義とか社会民主主義に埋没されない差別化をどう考えるか」
小池氏「共産党の個性や共産党らしさをもっと鮮明に出した方がいいと。」
香山氏「自分は無責任な外野ですけれど、共産党っていいんじゃない、正しいいんじゃないって思うけど、逆にそれが、じゃあ共産党でじゃなくてもいいんじゃないの?ていうふうになってしまいかねない。」

 これに対して小池氏が共産党らしさの説明に入るが、この内容が面白い。この間の共産党の「言葉の言いかえ」を使わず元々共産党が使っていた言葉を使っている。それに対する香山氏の突っ込みに反論していないところが面白い。

小池氏「例えば政策で言えば、立憲主義・憲法をきちんと守っていく政治を取り戻そうというところまでは、共闘する野党間で一致しています。」「従属的な軍事同盟をやめて、本当の意味での独立国家になる必要があると共産党は主張しています。」
香山氏「広い意味にいうと、日本共産党の立ち位置ということですよね」
小池氏「自民党政治の根本にあるアメリカに対する従属や大企業とか財界の政治支配に対してしっかりタブーなく切り込んでいくことは共産党らしさの真骨頂です。」
小池氏「沖縄の米軍進基地建設でも相次ぐ米軍機の事故でも、政府はアメリカに何も言えない。まるで「属国」です。この根源にある日米安保条約をやめて、対等平等の有効条約を結ぶと言う道を示しているのも、共産党ならですね。」
香山氏「オバマ政権のときは対米従属から離脱するというのはちょっと言いにくい。オバマさんは核をなくそうとしているのに。と逆に反感を買う。でもトランプさんが大統領になってから”あのアメリカに従うのか”と言いやすいと思います。
小池氏「各兵器禁止条約だって、国連の会議に参加しようとすらしないですから。」
香山氏「そうですね。悲しかった。」
 この二人の会話に極めて興味があります。前綱領で共産党は「アメリカ帝国主義と日本独占主義」を二つの敵としていましたが、綱領改正後は、「二つの異常」や「二つのゆがみ」という曖昧な表現を行っていました。つまりアメリカ帝国主義を敵であるという見方を放棄してきました。その結果アメリカに「従属」しているという表現をできるだけ使わず、大企業も敵視していないと言う言い訳を行っていました。
 小池氏は共産党らしさは「アメリカに対する従属や大企業とか財界の政治支配に対してしっかりタブーなく切り込んでいく」と述べています。これに対して香山氏がオバマ政権に対して「対米従属からの離脱とはちょっと言いにくいですね、しかしトランプ政権ならそれも主張できる」と突っ込んでいますが、小池氏はそれを否定していません。
 この間の共産党の「二つの異常」や「二つのゆがみ」はオバマ政権をにらんでの軌道修正であったことを初めて知りました。アメリカ帝国主義の本質が時の政権によって変わると言うご都合主義が取られているとすれば驚きです。

資本主義を乗り越える未来社会

 次に未来社会について議論が交わされていますが、
小池氏「資本主義の枠内で可能な民主主義改革です。たとえば、僕たちはルールある経済社会づくりを目指しています。」

 と主張されていますが、この「ルールある経済社会主義とか、ルールある資本主義」というものが何を表すのか具体的提起が無く、訳が分かりません。
 中国を見ても、資本主義社会が推し進めるグローバル社会に組み込まれ、資本主義よりもさらにひどい格差社会を生み出しています。
 あるテレビ討論で、「ロンドン(CNNMoney)世界で最も裕福な8人が、人口全体の下位50%を合わせた額と同じだけの資産を握っている。」という話が話題になった際、そのどこが悪いのか、資本主義はそういうものだと主張した人がいました。
 この不平等は世界的レベルで発生しており、「ルールある資本主義」なる抽象的議論で克服できるものではないと思われます。

改憲発議させぬ運動と世論を

 最終章はこれでまとめられていますが、私が気になったのは、この見出しの中の発言ではないが、

香山氏「日本を壊さないで、と言いたい。」
小池氏「それに対峙するには、保守的な立場の人も含めた、幅広い市民と野党の共闘です。」と答えています。

共産党は第26回大会で「一点共闘」路線を決定し、要求に応じて保守層とも連携していく方針を掲げTPP反対闘争などで、農協等が主催する集会にも参加しその実績を誇示していましたが、その成果は部分的なものであり、例えば北海道の戦いなどは赤旗1面に何回も取り上げられましたが、選挙戦の結果を見たら何ら成果を上げていませんでした。
 今回「一点共闘」から「市民と野党共闘」に発展させ、私としてはこの路線の方が正しいと思っていましたが、小池さんは「保守的な立場の人を含めた幅広い市民と野党の共闘」と語っています。
 すでに国民の中では憲法改悪反対は50%を超えており、この層を固めることが最大の課題であり、保守層にウイングを伸ばせばより多くの人を組織できると共産党は勘違いしていますが、それをやればやるほどコアな共産党支持者を逃がしてしまいます。
 共産党は保守と革新の区別をどこで行われようとしているのか分かりませんが私は憲法問題が一つの分岐点だと思っています。現行憲法を守り平和を求める人たちを結集させることが重要です。逆に憲法改悪賛成の人を保守層と認定しています。確かにこの人たちを最初から敵に回さず説得を重ね、憲法改悪反対派を増やしていくことは重要ですが、そうした視点でなく、保守層との共同がどのような展望を築くのは、私にはわかりません。
 共産党はどこを分岐点にして革新と保守層を区分けしているのか、また保守層との連携が憲法擁護にどうつながるのかその道筋を明確に示すべきです。