滋賀県知事選挙における赤旗報道の偏光について


平成26(2014)年7月18日


  全国的に注目された滋賀県知事選挙は今月13日に投開票された。結果は無所属新人で前民主党衆議院の三日月大造氏(43)が元経済産業省の官僚の小鑓隆史氏(47)=自民公明推薦、共産党県常任委員坪田五久男氏=共産党推薦=の無所属新人2人を破り、初当選した。
  7月14日の一般紙朝刊は、この記事を一面ほぼ全部を使って報じた。その見出しは、「滋賀県知事に三日月氏」、「民主系、自公推薦を破る。」「安倍政権に打撃」という見出しを掲げ、解説で「安保転換、批判強く」と見出しを掲げた。【解説】では、国政選挙が当面ない中、与野党が対決した滋賀県知事選は「国政の代理戦争」の様相を呈した。選挙戦では県政を巡る論戦は低調で、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定などに多くの時間が割かれた。重要課題を性急に進める安倍政権に、有権者が慎重な判断を求める結果になった。以下略(毎日新聞)

  これに対して14日赤旗朝刊は滋賀県知事選挙に対する記事は一切なかった。(これは赤旗の〆切時間が早いので載せられなかったのかもしれないが、もし共産党が勝利していたら絶対一面トップに載せていたであろう)
  この共産党のセクト性を克服しない限り、統一戦線の発展は絶対にありえない。日本の政治において、選挙戦で共産党が勝つことだけが政治的に意義があり、他の政党が「集団的自衛権反対」を掲げようが「原発の再稼働反対」を掲げようが、日本の政治に全く影響を及ぼさないというような政治的態度は、いかにも勇ましく見えるが、共産党の度量のなさや政治的偏狭主義が見えてしまい、このような主張を続ける限り、国民は共産党の躍進を支えるために、統一して闘おうという気持ちは湧いてこない。
 14日は、赤旗の〆切時間が早くて記事が間に合わなかったのであろうと思い、15日の赤旗朝刊はどのように報道するか楽しみにしていたが、15日の赤旗一面にも滋賀県知事選挙は一切報道されていない。この日の赤旗一面は、ドイツ4度目V、個性激突 両チームが”勝者”だという記事はあっても滋賀県知事選挙の結果はない。
  2面に山下芳生書記局長の記者会見の記事があり、「集団的自衛権で機雷掃海も」「政府次第で適用拡大明確」という記事を載せ、その次に始めて「安倍政権の運営に打撃」「滋賀県知事選挙結果で山下氏」という記事を載せている。さらにそのあとに、「滋賀県知事選 自公破れる」 「坪田氏及ばず当選は三日月氏」という小さな記事を載せている。

こんな報道姿勢で何が得られるのか、赤旗幹部のおバカぶりを批判する。

 まず赤旗としての見識で滋賀県知事選挙を語らず、山下芳生書記局長の談話で滋賀県知事選挙の結果を伝えようとしている。しかもその見出しは、「安倍政権の運営に打撃」と書いている。毎日新聞は「安倍政権に打撃」と書いている。1日遅れであるから、この毎日新聞の見出しも十分理解しながら、「赤旗は安倍政権に打撃」という言葉を使わず「安倍政権の運営に打撃」と打撃を「運営」だけに矮小化した見出しに変えてしまった。さらに中央委員会声明では無く、書記局長談話で逃げ切ろうとしている。
 さらにその下の赤旗の記事であるが、これも微妙に操作されている。赤旗の記事は「滋賀県知事選 自公破れる」であって、毎日新聞が報じた「滋賀県知事に三日月氏」とは違いを示している。赤旗は共産党以外が勝ったことを素直に認めたくないのである。この選挙では三日月氏が勝ったことがニュースとして価値があるのにそれを認めず、「自公が破れた」を前面に出し、さらには第二見出しで「坪田氏及ばず当選は三日月氏」と書いている。
 三日月氏の当選より坪田氏の検討をたたえ、最後にもっとも重要な三日月氏の当選を伝えるというこのような姑息な記事作りが共産党の支持獲得にどのような効果があるのであろうか。
 私は馬鹿な幹部が必死になってこうした操作を行い、民主党系が勝った意義をできるだけ小さくすることによって共産党中央に対する忠誠心を表明していると思われるが、日本のような、言論の自由が保証された国でのこのような小細工は、一般の党員ですらこの記事構成のおかしさに気づくであろうし、一般の読者は一紙で間に合う新聞と言われて購読したが、これではアカンはとすぐに見抜くであろう。
 赤旗が増えないのは、こうした党の中間管理職が党中央の意向はどこにあるのかを探り、できるだけ喜ばれる記事を書こうとする忠誠心が、結局は国民目線から外れていることに気づかないところにある。