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イスラム国による日本人2人殺害警告と赤旗の主張



平成27(2015)年1月22日


自らの党の政治課題を前面にだし、イスラム国に拘束された日本人の記事を軽視

 内戦が続くシリアとイラクの一部勢力下に置く、イスラム教スンニ派の「イスラム国」と見られるグループが20日、日本人男性2人の拘束している映像と共に、「日本政府に72時間以内に身代金2億ドル(約2530億円)を支払わなければ殺害する」と警告するビデ声明をインターネット上に公開した。
 このニュースは、20日のテレビのニュースで最大の重大ニュースとして報道され、21日の新聞各紙もこれをトップ記事として扱っている。ところが「しんぶん赤旗」は、これを一面トップ記事で扱わず、一面トップは「日本共産党第三回中央委員会総会」の記事を載せている。「しんぶん赤旗」は、政党機関紙を乗り越え、「一紙で間に合う新聞」がキャッチフレーズであったはずだが、これでは全く政党機関紙でしかない。国民が最も読みたい記事は「何か」の選択を誤り、自らの政党の宣伝を最大限優先するなら、政党機関紙に戻るべきだ。

赤旗は、「イスラム国」による日本人二人の殺害警告をどのように伝えたのか

 次に、この重大な事件に対する赤旗(21日)の扱いが全くなっていない。なぜこの事態が起こったのか、安倍首相が進める「海外で戦争できる国」づくりとどう関係しているのかなどの観点から全く説明されず、むしろ政府(安倍首相)の主張をそのまま紹介するという、お粗末な記事構成になっている。
 唯一山下書記局長の会見記事が載っているが、この見出しは「卑劣な行為は許されない」であり、中身も「『テロ集団』による卑劣な行為は絶対に許されない、政府として、情報の収集、事件解決のためにあらゆる努力を行うことを求める」という全く内容のない談話である。(政府方針の「行う」を「行うことを求める」に変えただけである。)
 この談話には共産党らしさが全くない、これでは赤旗に載っていなければ、どこの政党の発言か全く区別がつかない、当たり障りの優等生の談話ではあるが、中東でのアメリカによる軍事的介入がこの地域の紛争を泥沼化させており、多くの国民の命が奪われていることに対して、憂慮や怒りをもっている人たちは全く納得ができない無責任な声明である。

今回の事態(殺害警告)は安倍首相の無責任な発言が引き出した

 そもそも今回の事態を直接引き出したのは、安倍首相の中東外交の失敗からいている。エジプトを訪問中の安倍晋三首相は17日、カイロで中東政策の演説を行い、地域全体で新たに25億ドル(約2940億円)相当の支援を表明した。過激派組織「イスラム国」の台頭や、パレスチナ和平交渉の見通しが立たない中で、首相は「日本は中東の伴走者」と位置づけて積極的に関与する姿勢を示した。
 安倍首相は、アメリカやイギリスやフランスと同じように、中東での紛争の中で、連帯して戦う(当面は資金援助で)ことによって大国としての日本を世界にアピールしようとした。(彼の得意な「日本を取り戻す」という発想の延長線上の行為でしかない。)(注1)

注1:首相、中東へ25億ドル支援表明 (2015年1月17日21時32分朝日デジタル)
   エジプトを訪問中の安倍晋三首相は17日、カイロで中東政策の演説を行い、地
  域全体で新たに25億ドル(約2940億円)相当の支援を表明した。過激派組織
  「イスラム国」の台頭や、パレスチナ和平交渉の見通しが立たない中で、首相は
  「日本は中東の伴走者」と位置づけて積極的に関与する姿勢を示した。
   首相は第2次安倍政権発足後の2013年4月〜5月にも中東諸国を訪問。今回
  の演説で「2年前、中東全体に向けた22億ドルの支援を約束し、これまでにすべ
  て実行に移した」と語り、新たな支援を打ち出した。
   25億ドルのうち、「イスラム国」への対応としてイラクやシリアなど最前線に
  ある国や周辺国の難民・避難民支援などに総額2億ドルの無償資金協力を行う。首
  相は「ISIL(『イスラム国』の別称)がもたらす脅威を少しでも食い止める」
  と訴えた。

 この安倍首相発言を捉えてイスラム国は、「殺害警告の声明」で、日本国民に呼びかけている。「日本は現在までの中立的立場から、これら有志連合と肩を並べ『十字軍』に参加することを決めたのか」と迫っている。「日本国民は、中立と平和を守る立場からこの戦いに参加すべきではない」と主張している。これはまさに安倍首相のいう「海外で戦争できる国」作りを推し進めるのか、憲法の精神を守り、日本は平和を求めるのか、そのことを日本国民に問いかけている。(注2)
 イスラム国は、表面的には2億ドルの要求をしているが、その主張の本質は、「日本はこの紛争と当事者となるな、手を引け」というのが彼らの主張であり、そのことを日本国民の力で勝ち取って欲しいというメッセージを発信している。

注2:『日本国の首相よ。あなたは「イスラム国」から8500キロ以上離れた場所に
  いるかもしれないが、あなたは自ら進んで(対「イスラム国」)の十字軍への参加
  を志願したのだ。あなたは我々の女性と子供たちを殺し、イスラム教徒の家々を破
  壊するために、1億ドルを得意げに提供したのだ。したがって、この日本人市民の
  命の値段は1億ドルとなる。
   さらに、あなたは「イスラム国」の伸長を抑えようと、イスラム戦士に対抗する
  裏切り者を訓練するために、もう1億ドルを差し出した。したがって、このもう1
  人の日本人市民の命の値段も1億ドルとなる。
   そして、日本国民よ。「イスラム国」と戦うために2億ドルを払うというあなた
  たちの政府のバカげた決定のために、あなたたちは72時間以内に日本政府に対し
  て、2億ドルを「イスラム国」に支払うという賢明な判断を迫らなければならな
  い。あなたたちの市民の命を救うために。さもなければ、このナイフはあなた方に
  とっての悪夢となるだろう。』

共産党 第三回中央員会報告と「イスラム国」

 共産党は、第三回中央委員会報告で、安倍政権の政治姿勢を「安倍首相の最大の野望が、9条を焦点とした憲法改定におかれていることは、第三次安倍政権発足直後に、首相自身の口から語られたことでした。首相は、憲法改定について『自民党の結党以来の目標』『歴史的なチャンス(挑戦)だ』とのべ・・・・この危険性を直視し、反動的野望を阻止する国民的大闘争をもってこたえようではありませんか」と呼びかけていますが、その具体的現れ(今回の事態)を全く見逃している。これでは戦いにならない。
 今回の事態は、戦争大好きな安倍首相が中東にまで出かけ、この戦いに私も参加する用意があると声明を発したのです。(上記「注1」参照)これは集団的自衛権の適用範囲をめぐって、公明党との協議の中でも安倍首相がどうしても譲らなかった事項です。彼は地球の裏側にまで自衛隊を派遣するこのことに執念を燃やしています。
 勘ぐれば、彼のエジプトでの発言(17日)は、こうした事態が発生することを想定し、自ら挑発したことが考えられます。集団的自衛権の必要性をいくら訴えても、国民の5割以上は反対している。このままでは国会でいくら多数を握っても勝ち目はない、そこで紛争を起こし、これが世界の実態だ、自衛隊を海外に派兵できないため今回のような不幸な事態になったと宣伝し、一気に改憲へと企んでいるようにも見えます。
 しかしこの情勢は逆から見れば、安倍政権の推し進める「海外で戦争できる国」作りが如何に危険か訴えていける絶好のチャンスです。すでに戦いは始まっています。その時に安倍首相の狙いを暴露出来ず、首相の発言「(日本の支援は、避難民の為の支援だ)というような無責任な言い逃れ」を赤旗紙上で垂れながしているようでは、戦いにならない。
 相手(安倍首相)は、本気で「海外で戦争できる国」作りを考えています。そのためには日本人の「平和ボケ」を打ち砕き、危機を煽り、戦争へ導いて行くのが彼らの戦略です。各紙の調査で集団的自衛権反対派がいまだ50%超えていると安心していたら、何らかの突発的事件で一気に煽られていく恐ろしさを常に警戒しておく必要性があります。
 今後の推移は予測できませんが、今回の事件だけでなく、彼ら(イスラム国)が日本人を拘束することは容易にできると思われるので、いつか殺害が本当に行われる危険性は常にあります。それを避けるためにも、紛争の当事者の一方を支援することは極めて危険です。イスラム国のテロばかりが目に付きますが、実際はアメリカも空爆で大量のイスラム国人民を殺害しています。  
 それらの善悪を正しく見ていかず。アメリカの世界戦略を認めた上で議論することの危険性を感じます。(山下書記局長談話は、「イスラム国」を認めず一刀両断に「テロ集団」と断じています。)これが現在の共産党の立場であるなら、共産党の規約に書かれていた「万国の労働者、被抑圧民族団結せよ」の立場および反核・平和、主権擁護の国際連帯の精神をつらぬき、それと真の愛国主義とを統一した自主独立の立場を堅持し、独立、平等、内部問題不干渉、国際連帯の原則にもとづいて、世界の革命運動、世界の労働者階級、被抑圧民族の連帯を発展させるために努力する。(日本共産党旧規約)・・・2000年11月24日大幅改正で削除)の精神はどこへ行ったのか。
 昔の「赤旗」には必ずこの国際連帯を表す「万国の労働者、被抑圧民族団結せよ」という言葉が入っていた。

「イスラム国」の動きを単純に「テロ集団」と捉えることの誤り

     全ての根源はアメリカの起こした理不尽なイラク戦争にある。


 第二次世界大戦後、超大国となったアメリカの中東政策は、中東の石油市場をコントロールする事と、イスラエルとパレスチナの間にくすぶり続ける対立の火種を抑え続けることでした。アメリカは、この地域でアラブ対イスラエルの戦争に発展することのないように、アラブの支配層を味方につけておくことを最大の課題として、中東に影響力を発揮してきた。
 しかしこのアメリカの思惑は成功せず、イランがイスラム革命(1979年)を成功させたように、他の国々でも様々な動きがあり、相対的にアメリカの支配力は弱体化していった。
 1990年8月2日にはイラク軍による一方的なクエート侵攻が行われ、湾岸戦争に発展し、有志連合軍の圧倒的な武力によりフセインは敗北を認め、翌年3月3日には停戦が行われた。
 こうした状況の背景の中で、1990年代以降イスラム過激派指導者オサマ・ビン・ラディンが築いた国際的テロリズム支援組織「アルカイダ」は、世界各地のイスラムテロ組織と密接な連絡を取り合い,訓練施設を提供するなど活動を支援し、主としてアメリカ合衆国を標的とした数々のテロ行為を実行し、2001年に実行したとされるアメリカ同時多発テロ事件は、世界に大きな衝撃を与えた。 
 2001年9.11事件に遭遇した、ブッシュ大統領は、このテロを「新しい戦争」と呼び、ますます中東への介入を強めた。
 2003年3月20日,アメリカ軍によるイラクの首都バグダッドへの空爆で始まったイラク戦争は「大量破壊兵器廃絶」に名を借りた米英のイラクへの侵略行為であった。42日間の戦闘で,戦争中の有志連合軍の死者は 172人,イラク人死者数についての正確な統計はないが,10万人をこえると推計されている。
 このアメリカのイラクに対する不当な攻撃が、イスラム国を出現させた要因であり、このイスラム国は「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」から、2014年6月末に国家樹立を宣言し「イスラム国(IS)」に改名した組織である。
 イスラム原理主義組織、すなわちイスラム法を規範として統治される政府と社会の構築を目指す政治的組織で、ISISと同じくスンニ派を主体とした国際的なネットワーク組織である。

赤旗のイスラム国解説記事(世界で最も危険な組織)

 本日(22日付け)赤旗で「イスラム国」の解説記事があるが、「戦闘要員は昨年9月末時点で約3万1000人。その内1万2000人以上がイラクとシリア以外の外国人で少なくとも世界81カ国から参加」と書いています。そしてなぜこれだけ多くの外国人が参加しているのかを「とりわけ強い怒りや悩みを持つ者ほどジハード(イスラム世界防衛のための聖戦)に魅了されやすく、どこかで同胞が攻撃を受けていたら命を犠牲にしてでも助けたいという正義感に火がつく」と日本エネルギー経済研究所の保坂修司氏の解説を載せています。(赤旗のずるいところは全て大事なところは他人に語らせる手法をとることです)
 つまりイスラム国はアメリカをはじめとする有志連合が武力でもって自らの利権を守るために中東に介入し、他国の主権を侵し、多くの国民を殺戮し、今尚支配し続けようという企みに対する戦い(聖戦)であって、外国からの侵略に対して自らの国を守る戦いであって、決してテロ組織と単純に決められるものではありません。(注3)

注3:イスラム過激派は、伝統的にはイスラムの理想とする国家・社会のあり方を政治
  的・社会的に実現しようとする運動であるイスラム主義の中から生まれ、現代社
  会の中でイスラム的な理想の実現にとって障害となっているものを暴力によって排
  除しようとする人々のことであるが、イスラムの理想とする国家や社会のあり方が
  欧米の政治形態に合わないからといって彼らを排斥するのは間違いである。
   この間フランスの「シャルリーエブド」紙の「ムハンマドを愚弄した行為は「表
  現の自由」の名で語れるものではなく、他の宗教や政治体制をことさら揶揄し弄ぶ
  ことは慎まなければならない。そのことにより相手がどのように傷つくかという判
  断が前提になければ、何をやっても良いというものではない。今回の問題も欧米の
  大国が相手国側(宗教)を見下した対応に見える。だからといってテロを容認する
  のではない。しかし今回の経験から学びこれらの行為を自重するのが常識的な行為
  であって、さらに煽るような「シャルリーエイド」紙の立場を私は支持しない。
  

赤旗の主張は明らかに「被抑圧民族の団結」に反しています。 

 さらに赤旗は、解決策として、国際社会は、「イスラム国」根絶につながらないばかりか、一般人を巻き込んで新たな憎しみを増幅させる軍事的対応を控えるとともに、関係国が強固な協力体制を築いて過激組織を孤立させ、テロの芽を摘むことが何よりも求められています。と括っています。
 この後半部分は問題があります。「関係各国が強固な協力体制を築いて過激派組織を孤立させ」これは明らかに安倍政権支持のメッセージです。イスラム国が日本国民に発したメッセージは、「日本国は平和主義を貫いてきた国であろう、今回なぜ十字軍(彼らの言う侵略者)の仲間入りをするのか、この十字軍に参加することから手を引け」というのが彼らのメッセージであり、共産党が国際連帯の「被抑圧民族団結せよ」の立場を守るのであれば、安倍首相のとった行動は、十字軍参加の行動であり、「海外で戦争できる国」作りを推し進めるものであるという批判を行い、日本政府はあくまでも、中東における利権を求めず、中立的立場で紛争解決に望むことを訴えるべきである。

 安倍首相はエジプトで行った勇ましい演説を覆い隠し、あくまで難民支援だと強弁していますが、これは明らかに詭弁です。もし本当に難民支援を行うのであれば、難民キャンプで頑張っておられ「国境なき医師団」や、実績と信頼性があるNPO/NGOを日本政府は財政面から積極的に支援すべきである。安倍首相の中東訪問は、企業の幹部を大量に連れた大名旅行であり、中東への援助と引き換えに、利権の確保をめざすものです。
この安倍氏の狙いが、「イスラム国」によって批判されているとき、その批判に耳を傾けず、安倍外交支持の立場に立つ共産党とは、一体何なのか疑問に感じます。よく国民から共産党の名前を変えてはいう善意からの批判がありますが、「被抑圧民族の団結」という国際連帯の立場を忘れた共産党に共産党を名乗る資格がないと思われます。