赤旗の不可思議な記事 「大企業の内部留保 初の400兆円台」 これってホント?


平成29(2017)年9月2日


赤旗内部留保403兆円、他紙(朝日、読売、時事通信)は406兆円この違いは?


 本日付け赤旗は、一面トップで「大企業の内部留保」「初の400兆円台」という報道をしている。赤旗を読む前に毎日新聞を読んでいた。毎日新聞は「企業内部留保406兆円」という記事を載せている。
 なぜ406兆円と書かず400兆円台と書くのか馬鹿だなと思いながら、赤旗の記事を読んでいくと具体的数字は403.4兆円となりました。と書いている。あれこの数字はなぜ違うのかと思いインターネットで調べてみたが、朝日新聞、読売新聞、時事通信も406兆円と書いている。なぜ赤旗だけが違うのか、その理由が分からない。

内部留保を語る場合、赤旗が語らなければならいことがあるが、語られていない。

 赤旗は、最近賃金闘争を語る場合、内部留保を数%労働者の賃上げに回せば。1万円あるいは2万円の賃上げが可能だという主張を一貫して行ってきた。

2013年2月8日の衆院予算委員会での笠井議員の発言


笠井ー 財界が、収益が上がっても賃金に回さないという意思を持っていたという問題と、歴代自民党政権が大企業のリストラと賃下げを野放しにしてきたという問題がある。労働基準法や労働者派遣法などを相次いで改悪して、規制緩和どんどんやってきて、収益が上がっても賃金に回さない、内部留保にためていくということやってきたんじゃないですか。そのことによって働く人や国民の所得が減って、消費が減って、需要が減って、そしたら企業だって生産できなくなり、設備投資にまわらない。ますますデフレがひどくなるという悪循環になってきた。だから「労働経済白書」も日銀の方も、やっぱりカギは賃金だ、賃金を上げることによって切り替えていけば好循環になるじゃないかという話をしているのです。なぜそれをやらないのか。これまでの政策に対する分析と原因、深い反省がないからだということを強く感じます。
 大企業の内部留保はこの14年間で120兆円も積み増しされて、260兆円にも上っております。連結内部留保500億円以上持っている企業グループ、約700まで調べました。試算してみると、内部留保の1%を使えば、月額1万円の賃上げができる企業は約8割になります。従業員数でいうと約7割が月額1万円賃上げできるんですね。ほんの一部でできる。こういう性格だということはその通りと思われますか。(2013年2月10日赤旗日曜版から掲載) 
という質問をしている。その回答は麻生財務大臣が

財務相ー その数字が間違いない数字だという前提でしかお答えできませんが、それがそのままであれば、今言われたようなことができる条件に企業側はあるということは確かだと存じます。



 以上赤旗の記事から引用
ついでながらこの記事を紹介した赤旗の宣伝文句は
 「驚いた。経済問題で麻生太郎副総理が共産党に一致するとは...」―8日の衆院予算委員会の質疑を聞いていたマスコミ記者がいいました。景気回復について「働く人の所得増こそ」と、大企業の内部留保の一部を還元するよう求めた日本共産党の笠井亮議員の質問。"内部留保のためこみが問題"と、安倍晋三首相や麻生氏も認めざるを得なかったのです。
 と書いています。共産党は自らの提案を麻生氏や安倍氏が褒めてくれたと有頂天です。彼らがなぜ褒めてくれたのか、この賃金闘争論では、彼らにとって痛くもかゆくもないからです。


 この論理は労働組合にも持ち込まれ、組合のビラにも賃上げの根拠としてこれを書いている。しかしこの理論はトリクルダウンという考え方で大企業がもうかればそのおこぼれが労働者にも回ってくるという考え方である。
 しかしこの理論がまやかしの理論であることは、この間の内部留保金の増大と賃金の推移を見れば明らかである。少しグラフは古いが参考に掲載する。



 共産党はこの間一貫して賃金闘争の基本を大企業が保有する内部留保の内の数%を賃上げに回せと主張してきた。安倍首相もこの共産党の主張を認め、財界に賃上げを要請してきた。しかし大企業は内部留保金を飛躍的に増やしながらも、それを賃上げに回すことは一貫して消極的である。それが資本の論理である。

「『内部留保』」数%を賃上げに回せ」という賃金闘争理論の破たんを認めるべきである。

 赤旗は、「初の400兆円台」のサブ見出しで、「利益は大幅増△▼実質賃金は減」という見出しを掲げていますが、記事では、「減税によって内部留保金は12年度から16年度の間に56兆円もの内部留保を積み増ししています。しかし、建物や機械設備などの有形固定資産は12年度の192、5兆円から16年度は168・9兆円へとわずか6・4兆円しか増えていません。減税分は設備や投資や賃金には、ほとんど回りませんでした。」

 と白々しく、内部留保と賃金問題の関係を語っています。なぜ賃金に回らなかったのかその総括を行うべきです。共産党はこの間、労働者に「大企業の内部留保金の数%を分けてもらえば、2万円の賃金が可能だと」説明してきました。労働組合運動をこの理論で組織し、大企業と戦うのではなく、共存するのだと主張してきました。
 しかし賃金は上がらず、国民の生活は改善していません。これに対して責任ある総括を行わず、「評論家的」に、「内部留保は増えたが、賃金には、ほとんど回りませんでした」という白々しい評価にはあきれ返ります。

再度共産党が大企業と賃上げについて何を言ってきたか確認します。

 手元に2016年6月25日号の週刊ダイヤモンドという雑誌があります。ここで志位委員長のインタビューが掲載されています。見出しは「ビジネス誌に初めて登場」「志位委員長」「決して大企業を敵視していない、資本主義の先には共産主義がある」です。

編集部ーしかし、大企業は、いきなり「利益剰余を吐き出せ」と迫られたら「経営を知らんくせに何を言ううのか」と反発するのでは。

志位氏ーいやいや。私たちは、「大企業にたまっている内部留保(利益剰余金)を皆に配れ」といっているのではありませせん。たまっているのであれば、その数パーセントでも社会のために還元すればよいのではないか、ということです。例えば、今日のような「ルールなき資本主義」の中で、大企業がもうけばかりを重視すれば競争が激しくなり、最終的には皆が疲弊してしまいます。その結果、経済全体が立ち行かなくなっては、元も子もありません。
 そうではなく、もう少し働く人の立場に立になって考える必要があると思うのです。どういうことかと言うと、現在はため込んでいるだけで”死んだお金”と化している内部留保を活用することで”生きたお金”に変えるのです。
 仮に、大企業が内部留保の数パーセントを出すような仕組みがあれば、正規雇用者を増やせますし、長時間労働も減らせます。
 長い目で見れば、これは企業のためにもなりますし、社会の発展にも貢献します。そうしたルール作りは、政治の役割です。

内部留保を数%分けてもらうことが、社会変革につながるのか、物乞い運動に見える。

 これが日本共産党の志位委員長の発言です。これが共産党の方針であるのなら、労働組合など必要はありません。社会変革を行う上で、虐げられている労働者の怒りや、戦う力に依拠するという発想がどこにもありません。
 社会変革は、日本共産党が大企業に説得・お願いに回る、そうすれば世の中は良くなるとしか受け取れません。昨日前原氏が民進党の代表になりましたが、前原氏とどこが違うのか、ひょっとしたら前原氏よりも企業側のスタンスがあるようにすら見えます。
 前原氏は自分の生い立ちを語り、母子家庭で生活が苦しかったことを原点に、社会的富の平等な分配を実現したいと抱負を語っていました。(前原氏が外務大臣を失脚したのは在日韓国人の焼肉屋のおばちゃんの5万円献金(計20万円らしいが)を受けていた事件でした。
 前原氏自身は官僚体質がありますが、この事件を聞いて前原氏に庶民性があることを知りました。・・この件のどこが問題か今でも疑問です。)
 安倍氏や麻生氏にはこの生活体験がありません。前原氏はこの生活体験を語りましたが、志位氏はこの生活体験があるのか、私は詳しく知りませんが、その原点が無いような気がします。まさに空想的社会主義であり、どこかの篤志家か、宗教者のような語り口です。
この志位氏の発言を聞いて、大企業の経営者に一人でも賛同者が出たのでしょうか?この運動方針(?)の正しさはどこで検証されているのですか?
 それができないから本日付赤旗1面記事のような内容になる。単に大企業の内部留保が増えたというだけであって、賃金上昇との関連が語れない。文書の最後に「賃金には、ほとんど回りませんでした」とさらりと逃げている。
 この総括で本当に良いのか、「内部留保」が増えて「賃金が上がらない」これは共産党の賃金政策の破たんを示しているのではないのか? 共産党は明確な総括を行うべきである。