保守との共同は共産党をどこに導くのか


平成27(2015)年5月17日

 この内容は、討論の広場の松本 陽一さんの投稿に対するコメントとして書いたものです。討論の広場では長文過ぎて読みにくいため、ここに掲載しました。

投稿ありがとうございます。

 まず革新の統一戦線の問題について

国会議員が1議席(1958年:安保闘争前)からの共産党の成長の歴史を振り返る。

 私が学生時代、共産党は革新の統一戦線を求めていました。その当時の共産党の国会議員の数は確か5名ぐらいだったと思います。まだまだ反共意識が強い中共産党の国会議員当選は非常に難しい時代でした。共産党は社会党と共産党が手を組めば1+1は2でなく3にも4にもなると訴えていました。現に知事選挙や市長選挙などで社共共闘は大きな成果を上げていました。
 就職後は大阪に住所を変え、黒田革新知事の実現にも、私は末端の活動家として参加していました。この実現は社会党の亀田徳治氏が党内の反対勢力を押さえ、共産党の村上弘委員長と共闘実現に努力され実現しました。
 この時社会党内の統一戦線反対派は、共産党と協力すれば、「庇を貸して母屋を取られる」という警戒心でした。共産党は反共意識の強い中、自らの看板では闘えず社会党と言う看板を前面に立てて闘うことが最も有効な手段でした。こうした闘いを経て共産党は大きくなりました。
 しかし共産党は、社会党が自・社・サ政権に参加し、自衛隊の容認など今までの政策を180度変更したため、国民の信頼を失い衰退していく中で、同じ釜の飯を食った兄貴分として今度は社会党の再生の為に手を貸すぐらいの度量があって当然だと思います。現下の情勢でも社共の統一戦線を組み、今度は社民党側へ恩返しをするのが、一般的社会の常識的対応だと思われます。またこの大人の対応をしてこそ共産党の社会的認知度もひろがります。

革新統一はなぜできないのか、共産党のセクト主義、大国主義がある

 現在共産党は公然と革新統一と言っても「手を結ぶべき相手側の政党が無い」と言い張ります。しかし共産党が国会で5議席くらいしかないとき、社会党は共産党をパートナーとして認めてくれました。(そんなに単純で綺麗ごとではなかったですが、いろいろ紆余曲折はありましたが)
 前回の文書で私は道義的責任論を展開しましたが、現在の共産党は、社民党と共同できない理由を色々並び立て、拒否していますが、その内容は無理やり難癖をつけている感じが否めません。
 なぜ保守との共同を求める際は、保守の良いところばかりを見て、社民党等との共闘の場合は悪いところばかりあげつらうのか私には理解できません。
 こうした視点から見ると、貴方の投稿もこの論旨に基づいて書かれています。「辻元はトロでしょう?或いは山本太郎ですか?これもトロが選挙を仕切っていました。トロなんかと連帯するくらいであれば、自民党良識派の方がよっぽどマシだと思います。」というようなレッテル貼りで相手を否定する態度は、共産党のセクト主義そのものです。

政治家に「トロ」と悪罵を投げつけるは、自民党の反共攻撃を批判できない。

 まず「トロ」という言葉そのものに問題があります。我々は学生時代、共産党系の学生運動以外は我々に対して「反帝・反スタ」という言葉で対抗してきました。それに対して我々は「トロツキスト暴力集団」という言葉で対置してきました。私が共産党に入党したときには学習指定文献というリストがあり、スターリンの本も毛沢東の本も指定文献に入っていました。我々はスターリン・レーニン、あるいは毛沢東も偉大な革命家だと教えられてきました。
 それに対して、彼らはスターリンを批判し、スターリンの政敵であったトロツキーの方を支持していました。あれから50年近くが推移し、今は不破哲三元議長がスターリンを全面的に批判していますが、最近の研究ではトロツキーの主張の方が真面だったのではとの評価もあります。
 この時代に、相手方を批判するにあたって「『トロ』でしょう」という悪罵は時代錯誤も甚だしい言葉だと思います。

辻本氏や山本氏を政治家として具体的な批判が必要

 より具体的には、辻元議員が議員として如何なる悪行を重ねているのか具体的指摘もなく「『トロ』でしょう」という一言で片づけるやり方は、全くの思考停止です。大阪全体で民主党が崩壊現象にある中、大阪10区では彼女は維新をも打ち破り当選し続けています。これは彼女が常に大衆の側に立った活動を行っているからです。
 ついでに山本太郎ですが、彼も原発反対を最大限の課題として闘い勝利しています。共産党は、原発反対では選挙に勝てないと腰を引いています。彼らは現在の自民党政権に真正面から戦えば勝てるという事を示しています。
 私は、辻本や山本太郎から、共産党は学ぶところがあると思っています。

保守議員の議員にも優秀な人材は沢山いる

 次に保守議員の評価について、貴方が評価されていることに私は別に反対しません。私も今回の選挙で維新を破って吹田市長選挙に当選した後藤市長をテレビで見て、何とも言えない誠実さを感じました。保守にも良い人材が沢山いることは否定しません。保守の議員の中にも本当の国民や市民の為に闘っている方はおられるとみています。
 しかし、党として見た場合、自民党はやはり大企業優先の政党であり、国民の利益とは相反した存在でしかありません。この自民党と共産党が連立政権を作って世の中が変えられると見るのは正に幻想です。社会党の凋落と同じ目に合う事は明白です。

大阪都構想を巡る政治情勢は正に異常、詐欺師集団との闘い


 今回の大阪府都構想では、平成の天一坊的な大詐欺師と闘う上では、当面の敵を打ち破る点で保守との共同は大切ですが、これが持続的な政党間の協力に発展することはありえません。それは共産党が呑み込まれるだけであり、弱体化するだけです。

『自共対決』の時代が来た」と保守との共同、民主連合政府の関連は

 一昨日の赤旗を見てびっくりしました。5面【国民運動】面の下欄に三段抜きの大きな宣伝が入っています。その大見出しは「民主連合政府をめざして」「―党づくりの志と構え」浜野忠夫(副委員長)著という本の宣伝があります。そして宣伝文句は「第3の躍進で生まれた「自供対決」の時代が本格的始まり。と書いています。
 保守との共同と「自共対決」の時代が本格的始まりの整合性が良くわかりません。「民主連合政権」の連合の相手はだれを想定しているのか、社民党や民主党をボロかすに批判し、保守だけを褒める今の共産党の「連合」する相手が見えません。保守との共同が民主連合政権にどのようにつながるのか、その道筋を示すべきです。
 個人的には最近の共産党の動きは、民主連合政府を見限り保守との共同、自・社・サ政権のようなものを狙っているように見えます。しかし、この政権を作るためには保守勢力は共産党に必ず条件を付けてきます。それは党が民主集中制という組織原則を取っている限り、保守勢力が共産党と組むことはあり得無いと私は思っています。
丸裸になって連立政権を作っても、社会党と同じ道をたどるだけです。相手にすり寄っても政権は獲得できません。共産党としての政策で国民を組織して初めて政権に近づきます。この間の共産党の政策は、明らかに政権参加を目指した政策変更です。その最大の物が二つの敵を否定し、「アメリカ帝国主義」や「日本独占資本主義」という言葉を避け、「アメリカ」や「大企業」という言葉のすり替えです。このような姑息なやり方で政権に近づくことはできません。
 以下、共産党が如何にして成長してきたか、統計で見ていきます。

共産党
社会党
備考
実施年 得票数 前回との
票の増
増減
当選

得票数 トピックス等
1958年
1012035


1名

13093993

1960年
1156723
144688
1.14
3名
2名
10887134
60年安保
1963年
1646477
489754
1.42
5名
3名
11906766

1967年
2190563
544086
1.33
5名
0名
12826103

1969年
3199031
1008468
1.46
14名
9名
10074100

1972年
5496827
2297796
1.71
38人
24名
11487742
70年安保
1976年
5878192
381365
1.06
17人
▲21
11713008
1972年〜1990年までは500万票を維持し安定期なる。  
1979年
5625527
▲252665
0.96
39人
22名
1063450
1980年
5803613
178086
1.03
29人
▲10
1400748
1987年
5302485
▲501128
0.91
26人
▲3
11065082
1986年
死んだふり
5313246
10761
1.0
26人
0名
10412584
1990年
5226986
▲86260
0.98
16人
▲10
16025472
消費税選挙
1993年
94年自サ社
4834587
▲392399
0.92
15人
▲1
9887588
社会▲66議席
1996年
小選挙区
小 7096766



比 7268743
2262179
1.47
26人
11人
社1240649



民6001666
社民党15議席

 1006年1月結成
民主党52議席

2000年
小7352844



比6719016
256078



▲549727
1.04



0.92
20人
▲6
社2315235



民16811732
社民党19議席



民主党127議席
2003年
二大政党
小4837952



比4586172
▲2514892



▲2132844
0.66



0.68
9人
▲11
社1708672



民21814154
社民党6人



民主党177人
2005年
郵政選挙
小4937375



比4919187
99423



333015
1.02



1.07
9人
0名
社996007



民24804786
社民党7議席



民主党113議席
2009年
民主党政権
小2987354



比4943886
▲1950021



6511
0.61



1.0
9人
0名
社1376739



民33475334
社民党7議席



民主党308議席
2012年
自民圧勝
小4700289


比3689988

▲243597


▲1253898

0.95



0.75
8人
▲1
社451762


民13598773

社民党2議席



民主党57議席
2014年
小7040169



比6062962
2339880


2372974

1.50



1.64
21人
13名
社419347


民11916849

社民党2議席



民主党73議席

共産党の得票は国家権力との闘いの中で勝ち取られたもの

 この表からも明らかなように共産党が伸びたのは1963年から1972年です。これは60年安保闘争、さらには70年安保闘争がその根幹にあり、さらには60年代から70年代前半に社共共闘で、全国の知事選・市長選で大きく躍進したことが、共産党自身の力を大きくし、衆議院選挙でも、倍々ゲームのような躍進を続けていました。(1967年〜1972年) 
 共産党の躍進には法則性があり、国家権力との闘いを鮮明にして闘ったとき、さらには革新の統一戦線を求めて闘った時です。
 1996年の小選挙区導入後の初めての選挙で躍進して700万台の大台に乗せ、続く2000年では小選挙区では、さらに票数を伸ばし(258078票)、7352844票を獲得する。(比例区では2000年には、▲549727で6719016となり700万票代を割込みましたが。)
 その後2003年には、小選挙区で4837952票と大きく後退し、その流れが2012年まで続き、2014年に再び700万代に回復しました。これで大躍進と浮かれています。
 しかし共産党の躍進は、基本的には60年代70年代の闘いの下に勝ち取られた500万票代が基礎的数字であり、1996年に勝ち取られた700万票代は、自・社・サ政権に参加した社会党の自滅(1990年16025472票から96年1240649票・・1割以下に凋落)による、行場のなくなった票が流れ込んできた飛躍である。この上げ底の200万票は、民主党に人気が出た段階では民主党に流れ、民主党がダメだと思えば、また共産党に戻ってきただけである。それが2014年選挙の7040169票である。
 共産党がさらに躍進するためには、この200万票を確実に共産党の支持者として固めることこそが最も重要であり、保守との共同路線が成功して共産党の票が700万票に再度到達したのではない。高槻市の府会議員選挙と市会議員選挙の票数の差を見れば、そのことが見えてくる。
 また先の選挙前、保守との共同が進んだと宣伝されていた地域で共産党の票の伸びは無かった。現在共産党が獲得すべき票は、過去において社会党支持者であったの票、約1000万票を如何に獲得するかが最も近道である。(注1)
 しかし現在の共産党のセクト主義、大国主義的対応(注2)をしておれば社会党支持者の票は共産党に向かわず他の党に吸収されるであろう。


注1:共産党は安倍首相の暴走政治は、世論は反対している。世論の多数派安倍政権が
  推し進める「海外で戦争できる国づくり」に反対しているという。その通りであ
  る。反対派が多数なのに、共産党がそれらの声を吸収できないところに、現在の政
  治の不幸がある。共産党は、まともな世論に対して適切なメッセージを発せず、保
  守との共同を唱え、誰が敵か味方かの区別がつかなくなっている。
 
   保守側にウィングを伸ばせば、共産党の支持が広がるのではなく、もともと社会
  党を支持していた1000万人の国民を囲い込むことに成功すれば、安倍政権の暴走を
  止めることが出来る。この簡単な原理がなぜ分からないのか理解に苦しむ。

注2:共産党のセクト主義(近親憎悪)は目に余るところがある。共産党が1議席からこ
  こまできた経過の中では社会党に相当助けてもらった経過がある。しかし国政選挙
  で社会党と共産党の票が逆転すると、共産党は社会党を歯牙にもかけない態度を取
  っている。
   例えば、赤旗日曜版に元自民党幹部は次々出てくるが、社民党は出てこない。今
  回の大阪都構想反対の闘いでも、自民・民主・共産はタッグを組んでいるが、社民
  党の姿は全く現れない。今日の大阪民主新報でも、自民党の動向は伝えても、社民
  党は全く取り上げない、共産党に最も立ち位置の近い政党に、共に叩こうとエール
  を送らない共産党に「大人気ない」セクト主義を感じる。