「脱原発」と「原発ゼロ」とは何が違うのか?
      この違いに問題の本質がある。

 


                                                                                                             平成24(2012)年11月19日

  いよいよ国会が解散され、政界では選挙モード全開となり、第三極といわれる政党がひっついたり離れたり、どたばた劇を演じている。ここで大事なことは原発政策が原発推進か反対か、反対であっても「脱原発」か「原発ゼロ」に分かれていることに注目する必要がある。

 本日テレビ朝日の報道を見ていると、やはり原発問題の政策が重要と捉え、パネルで各政党の立ち位置を説明していた。以下そのパネルの転載である。

各党の原発政策(テレビ朝日作成)

民主党

国民新党

 自民党

  公明党

原発ゼロを目指す

      精査中

  10年以内に結論

  40年運転制限

国民生活

 共産党

みんなの党

  社民党

 10年以内にゼロ

   即時ゼロ

        脱原発

 脱原発(注1)

 2020年までにゼロ

日本維新の会

減税日本

新党大地新民主

新党改革

  ルールを構築

      脱原発

代替えエネルギーで

ゼロへ

       脱原発

新党日本
 田中康夫

みどりの風



      脱原発

         脱原発



注1:朝日放送このパネルを作りながら、「脱原発」と「原発ゼロ」の違いが理解できず社民党を「原発ゼロ派」に加
     え、「脱原発」という表示はなかった。この社民党の「脱原発」は、私が社民党のHPを確認して加えたものであ
     る。(社民党こそが脱原発の旗手である。・・・歴史的には)

この表を書き出してみると

★原発ゼロ派

 民主党、国民生活、共産党、新党大地

★脱原発派

 みんなの党、社民党、減税日本、新党改革、新党日本、みどりの風、

★原発維持派

 自民党、公明党、日本維新の会(注2)

★曖昧派

 国民新党

になる。

注2:日本維新の会は、原発反対だと橋下氏は主張しているが、太陽の党との野合で、原発反対派の資格を失
    ったとみている。(おそらく石原代表は原発の重要性をどこかで「ぽろっと」発言すると思われる)

<脱原発と原発ゼロはどこが違うのか・・なぜ分ける必要があるのか>

 共産党の大阪府委員会が発行している(?)大阪民主新報は、「脱原発」と「原発ゼロ」を同義語で使い報道している。例えば11月11日の大阪民主新報は三面で、「11日各地で原発ゼロ行動」という見出しを掲げながら、中身の記事は、「11の原発即時ゼロ」全国一斉行動に呼応して(中略)府内各地で脱原発行動が取り組まれます。と報道している。

 しかし各政党の政策を見ても、「原発ゼロ」と「脱原発」と明確に色分けされている。ここで注意して見てほしいのは、「原発ゼロ」を掲げている政党は、共産党以外は基本的には保守派か政府与党である。「脱原発派」は、原発反対の国民運動との連帯を求めているグループである。(そこまで意識せずに唱えている政党もあると思うが?・・・今日テレビで社民党の福島瑞穂が脱原発派にも本物と偽物がある見極めてほしいと主張していた。)

 なぜ、保守・政府派+共産党とそれ以外にわかれるのか、それは、共産党は政府与党になった場合を考え、「原発ゼロ」を貫いているからである。国民の願いは脱原発である。しかし共産党は保守派や政府が主張する原発ゼロに固執している。これが現在の共産党の限界である。(政権参加を夢見ている)

<なぜ原発ゼロ派は保守派のスローガンか>

 それは「脱原発」というスローガンは、人類と核とは共存できないという思想がその根底にあり、核の平和利用を拒否する考え方である。それに対して「原発ゼロ」という考え方は、あくまで危険な原発は動かさないという立場からき
ている。共産党が一斉地方選挙で「安全優先の原子力政策」を訴え、その後「原発ゼロ」さらに「即時原発ゼロ」に変更しても、共産党の原発政策は一貫していると主張するのはこうしたカラクリがあるからである。

 今の原発は危ないからゼロにしよう、しかし安全性が確認できれば、その時は、また原発の利用を始めようというのが原発ゼロ派の本音である。

 だから、民主党も「原発ゼロ」までは踏み込んでも、「脱原発」は絶対に言わない。「原発ゼロ」の方針であれば復興予算から原子力ムラにもんじゅ運営独法核融合研究、42億円流用しようが、原発輸出に力を入れようが何ら矛盾がないのである。(無理やりの解釈ではあるが)

 共産党はこうした曖昧さが残る「原発ゼロ」方針と決別し、「脱原発」方針を掲げ、政府方針の欺瞞性を追求しなければならない。

 国民の多くが求めているのは「脱原発」である。この間の赤旗の原発反対集会の写真を見ても脱原発のプラカードは多く見受けられるが、「原発ゼロ」は皆無というほどみあたらない。原発反対運動は明らかに「脱原発」の流れである。(注3)

注3:ひょっとすると若い赤旗記者は、「脱原発」と「原発ゼロ」の違いも分からず、「原発ゼロ」のプラカードを探し
      て写真を撮るというようなことをしていないのかも知れない。あるいは共産党は主導権争いということの馬鹿
      らしさに気付き、一参加者で良いと観念したのかもしれない。

<本日の赤旗に興味深い記事がのっている>

 本日(11月19日)赤旗2面に、「原発ゼロ支持層」党に期待という記事を載せている。東京新聞の記事の転載で、原発ゼロを求める回答は、57.5%と6割近くを占めています。さらに、これら「脱原発層」に比例代表での投票先を問うた質問で、共産党は7.4%と、全体の支持率4.9%から2.5%高い数字が出ました。他の脱原発(注4)を訴える政党がほとんど変わらない数字を示しているのとは対照的です。自民党に至っては全体支持率から7.4%の大幅ダウンです。

という記事を載せている。

 この記事の内容こそ大切である。国民は、「原発反対は共産党だ」と未だに評価してくれているのだ。この国民の期待にこたえてこそ共産党の躍進はあるのである。

 しかし、共産党の現場はこれに気付いていない。尖閣列島問題を原発より優先して宣伝している。あまりにも馬鹿げている。(自分の立ち位置が分からなくなった共産党参照)

注4:この赤旗記事でも「脱原発」と「原発ゼロ」を混同している。いつの間にか共産党を「「他の脱原発」を訴える政
     党」という表現中で語り、共産党も「脱原発派」のように描いている。


<この共産の鈍感さは、一斉地方選挙でもあった。>

 一斉地方選挙後半戦を戦うに当たって、共産党は新たに声明を出した。その中に国民の意識は変化してきており、共産党が躍進できる客観的情勢にあると指摘していた。しかし、その具体的内容は書かれていなかった。

 ところが同じ赤旗の他の紙面で、国民の多くは原発反対だと答えている記事があった。つまり国民の意識の変化の最大の物が原発反対だと同じ赤旗紙面に書きながら、それが理解できず、一斉地方選挙後半戦も、「安全優先の原子力政策」を掲げて戦い、共産党は敗北した。(注5)

 今回も赤旗で「原発反対派に共産党の支持が多い」とで取り上げながら、具体的実戦では、原発問題を選挙戦の争点から外せば、一斉地方選挙と同じように有利な客観的情勢を生かすことができない。共産党の幹部は早くこのことに気づくべきだ。

注5:私は「意見書3」2011年4月27日付けで以下のように主張しました。

      2.「原発総点検」あるいは「安全優先の原子力政策」は選挙の争点としてなぜ誤りなのか

     共産党の「原発総点検」がなぜ間違っているのかは、赤旗4月20日付を見れば明確です。赤旗【党活動】で
       「情勢判断と対策を正確・機敏に」という見出しで、どこに得票増の条件があるか、具体的にいえば、@
    原発問題での世論の大きな変化、A有権者の要求・関心との関わりで党の議席の値打ちが判りやす
    いと書かれています。しかし、「原発問題での世論の大きな変化」とは何を指すのかが具体的に書かれてい
     ません。     
        ところが、赤旗2面に「原発縮小・廃止」が急伸という記事があります。中見出しで「容認派を上回る結果
    も」と書かれています。これこそが世論の変化です。一般的な報道としてそれを捉えながら、共産党の政策
     の中にそれを反映させることができず、共産党は相変わらず「原発総点検(安全点検)」です。もう市民に追い
     越されているのです。なぜ「原発の縮小・廃止」を党の政策として掲げ戦わないのですか。