東大地震研、「立川断層」調査で致命的な誤り!

 これは単純な、「ボンミス」か、意図的に「仕組まれたミス」か疑問が残る。


                                                                                                          平成25(2013)年4月1日

<コンクリートを断層と見誤り>

 東京大学地震研究所の佐藤比呂氏教授(構造地質学)は28日、東京都立川市などで行った活断層「立川断層」の掘削調査で、地下に埋め込まれたコンクリート製とみられる柱上の人工構造物を、断層活動で動いた石と思い込み「活断層を確認した」と誤って発表していたことを明らかにした。

 この場所にあった工場の基礎工事で打ち込まれたコンクリート製の杭だった可能もある。

 都内で記者会見した佐藤氏は「断層があると予想した位置にあり、断層と思い込んでしまった。大変申し訳ない。」と稚拙な判断であったことを認め、謝罪した。

 地震研は2月に現場を公開、見学者から「人工物ではないか」との指摘を受け、再調査で誤りが判明。ただ、立川断層の存在は否定されず、さらに深い地下に潜んでいる可能性があるという。 2013.3.28 09:57産経ニュース

 という新聞報道があったが、この東大地震研の誤りはにわかには信じがたい、「大チョンボ」である。

<活断層か否かが原発再稼働の成否分かれ目>

 国内で唯一稼働中の関西電力大飯原発(福井県)の敷地内に活断層が走っているか否かが大飯原発の稼働の是非の大きな争点になっている。

 2012年11月8日の赤旗は、この状況を以下のように伝えている。

 7日に再開された原子力規制委員会の関西電力大飯原発内の破砕帯調査団の評価会合で、活断層かどうかの結論が先送りされました。しかし、活断層の可能性を指摘した調査メンバーの渡辺満久東洋大学教授は「4日の議論では、活断層の可能性を否定した人はいない」として、ただちに大飯原発3,4号機の運転廃止を求めました。(中略)

 渡辺教授は「大飯原発が稼働している状況は、活断層の面から危険性があるのかないのかをスピードを持って判断するのが、この委員会の任務と思っている」と指摘。「グレー(灰色)は認めないのか。シロかクロか、決着つけるのか」と規制委の島崎邦彦委員長代理にただしますと、島崎氏は「シロ、クロはやや情緒的、5人の委員が一致して結論を出すのが望ましい」といいました。と赤旗は伝えています。

  テレビ党のニュースでも東洋大学の渡辺氏が活断層を強調して、大飯原発の稼働停止を求めているのに対して、他の委員は煮え切らず、否定はしないが、活断層だと肯定せず、曖昧さを残して大飯頑発の稼働を後押ししているように見えた。

<地震予知や活断層か否かなどの地震学は科学なのか?>

 1995年(平成7年)1月17日(火)に発生した阪神・淡路大震災や、2011年3月11日の東日本大震災にみられるように日本は地震大国であり、地震の被害を少しでも小さくするため、地震の予知や、地震のメカニズムなど地震学の役割が期待されるところであるが、今日までそれが有効に機能しているとは思われない。

 今日まで週刊誌等で地震予想の記事が多く出てきたがその地域は、東海・東南海・南海を指定し、被害想定が大きく報道されてきた。しかし現実に起こった地震は阪神淡路大地震であり、東日本大地震であった。地震予知の研究には相当莫大な予算が交付されている。文部科学省の資料を見ると1965〜68年の「第1次計画」を皮切りに、1994〜98年の「第7次」では5年間で786億5000万円に達した。この間、1995年には阪神・淡路大震災が発生している。2011年度の地震調査研究予算は192億円で、ある。

 今回の東大地震研がどの程度予算をもらっているかは把握できていないが、この研究のお粗末さは、税金の無駄遣いであろう。しかしこの問題はそのような議論で終えたいいのであろうか、私は非常にうがった見方であるが、仕組まれた「大チョンボ」のような気がしてならない。

 大飯頑発の活断層調査では、全く失礼な言い方であるが、一時代昔の村長さんのような雰囲気の東洋大学の渡辺教授が一人で奮闘されている。しかしテレビを通してだけの雰囲気では、この教授の意見が本当に正しいのか、他の紳士的な雰囲気のよりアカデミックな大学の教授の意見にも一理あるのではとみてしまう。(これは私だけの弱点化もしれないが)もし、地震学が科学であるのなら、なぜ活断層か否かの判断が、その専門家が集まって同じ判断にならないのかは、我々素人から見れば不思議でたまらない。

<東大地震研究所はなぜ判断を誤ったのか>

 地震の予知が難しいことはよくわかるが、あるいは活断層がいつ活性化するかの予測が難しいのもわかるが、活断層か否かまで日本のその筋の専門家が集まっても分からないというのは信じがたい学問研究の水準の低さである。その疑問を抱きつつ大飯原発の委員の議論を見てきたが、今回の東大地震研のコンクリートの人工構造物と断層の見誤りが事実とすれば、我々一般国民は、活断層の上の原子力発電は認めないというような国の方向性にどれだけの値打ちがあるのか疑いたくなる。

 5名の委員の中の1名でも原子力推進派を入れておけば、委員の全員の一致はとれず、常に疑わしいで逃げ切れるからである。

  東大のとんでもないチョンボは、断層かコンクリートかの区別がつかないのが、この学会の水準だという事を示したことになる。これは、本当にそのような水準なのか、意識的に規制委員会で活断層か否かの議論を行うことが無意味だという演出を行ったのか、疑問の残る東大の地震研の歴史的大チョンボである。

  東大地震研の佐藤比呂氏教授の釈明の記者会見は、決して容認できる内容ではない。彼は、「断層がこの辺にあるとあたりをつけてみているから、それらしきものに遭遇すれば、活断層に見えてしまう。そういうエアポケットに陥った」というような説明をしていたが、これを断層でないと指摘したのは一般の見学者だと聞く。素人が見ても気付く誤りを、東大の地震研が気が付かないというようなことを、にわかには信じがたい。 

  我々は東大いう大学の権威に騙され、東大地震研が言うなら正しいだろうと受け入れてしまう。そうした自らの位置に甘え、何ら検証せず、発見した学生の言葉だけを受け入れ彼が発言したとすれば、とんでもない問題だし、イタリアであったら逮捕されるよう代物である(注1)

  そうではなく、彼が地質学の水準はこんなものだと世間に知らしめ、規制委員会の活断層か否かの議論が無意味であることを、世間に広く認識させ、東電等原発推進派の援護射撃を行っているのではと疑いたくなる。私には、どうしてもあんな大きなチョンボが、東京大学の研究者の中から発生するとは思えない。不可思議な事件である。 もし、本当に東大地震研の水準がこんなものであるなら、地震予知に大量の予算を使うのはドブに捨てるようなものである。

注1:イタリアの裁判所は、2009年に300人以上の犠牲者を出した大地震を前に、必要な避難警告を出さなかった
   として、地震学者6人と政府関係者1人に、検事側が求めていた4年の刑を上回る、禁固6年と法定費用など総
   額8億円を超える罰金を課す有罪判決を下した。