共産党七中総批判

  2004年綱領全面改正路線と61年綱領路線の整合性について

   原発・平和・憲法9条および労働者階級の位置づけ(賃上げ闘争)

      論議の未成熟さを批判する


はじめに

 七中総の文書に基づき引用しながら、批判していきます。(青字は引用です)

  批判のポイントは、冷戦時代の共産党の方針現在の共産党の方針には大きな違いがあり、それがなし崩しで行われ、整合性が取れず混乱しているところを中心に批判しています。それが顕著に表れたのが、3.11の震災に際して原発がメルトダウンするという重大な事態に対応できなかったことです。

 ここで共産党は「脱原発」を掲げる必要があったのですが、出した方針は「安全優先の原子力政策」でした。なぜこのような方針が出たのか、それは冷戦時代に、資本主義の核は「戦争の手段」であるが、社会主義の核は「平和の手段」という主張から脱し切れていなかったからです。共産党は未来社会において共産党が政権を取った際に、核の平和利用を行いたいという意思を持っていたため対応を誤りました。

 この同じ思想的延長上に、憲法9条問題もあります。共産党は、現在憲法9条を守り、政権奪取後は、国民の同意を得て、自衛隊の解消を目指すと主張していますが、共産党の「平和論」は、冷戦時代は決して空想的な平和論でなく、「力に対しては力」です。社会主義圏の防衛能力の充実こそが平和の保証だと主張してきました。憲法9条の戦力の保持を一切しないという理念を支持してきたのは、アメリカを中心とする帝国主義勢力の軍事力が増すことが、帝国主義勢力と対峙する、社会主義国や、世界人民の戦いにとって重大な障害になることを想定した憲法9条擁護の戦いです。つまり世界の「平和勢力」との連帯の思想の中での主張(たたかい)だったのです。おなじ憲法9条擁護の旧社会党の非武装中立路線とは、共産党の平和論は全く違います。後述しますが、上田耕一郎は、「平和論」の中で非武装中立は「祈り」でしかないと揶揄し、百倍も千倍も危険な議論だと切り捨てています。

 この冷戦時代の「平和論」を何時どのように克服したのかが明確に示されていません。原発ではそれで大失敗しました。自衛隊の問題もその整理ができないと大きな火傷をする可能性があります。すべては一貫した共産党の姿勢という論議に惑わされ、なし崩し的にその根本思想を変えています。この整理を国民が納得する形で行われない限り、国民の支持を得ることは難しいと思っています。

 おそらく共産党的は、党としては2004年の綱領改正でその点の整理を行ったという思いがあるのだと思いますが、この綱領の変更を社会主義社会の崩壊に合わせ基本的な判断基準を変えたというべきものを、61年綱領の立場を全て取り入れ、ルネッサンス的な改革を行ったと説明し、あくまで言葉を分かりやすさの変更(たとえば二つの敵が二つのゆがみ等)を行ったかのような説明でお茶を濁しているところに最大の問題があります。

 このことを具体的に表したのが原発問題でした。3.11後の一斉地方選挙では「安全優先の原子力政策」で戦いながら、5月1に日のメーデで突如「原発ゼロ」に変更し、赤旗では共産党の一貫した政策(原発反対)が、歴史を動かすというような主張を平気で掲げるハレンチさが、国民から見抜かれていることに気付いていないところに共産党の悲劇があります。

 共産党は、冷戦時代と現在の方針は大きく変更しています。この変更の論理性を整理せず、一貫した政策という言葉を使う限り、政党としての誠実さが疑われます。

このような立場から7中総の点検を行っていきたいと考えています。

一、安倍政権の「暴走と破たん」―抜本的対案しめし正面から対決して
   たたかう

 五つの角度からそのことを分析し日本共産党の立場を明らかにします。

第一、暮らしと経済

 「アベノミクス」の暴走を許さず、国民の所得を増やして景気回復を

1. この章での共産党の立場は基本的に賛成しますが、いくつかの疑問があります。

 「アベノミクス」の問題点と、多国籍企業化した大企業・財界の「亡国」の姿勢で 
 多国籍企業化した日本の大企業・財界は、グローバルの市場で自らの目先の利益をあげることに振り回され、日本経済をどうたてなおすかについての責任をまったく放棄しています。いまや大企業・財界には、日本経済を代表する意思も能力も資格もなくなったということを、厳しく指摘しなければなりません。

  との主張を行っていますが、そもそもこれが独占資本主義の本質であり、これを打倒し、社会主義社会を目指すのが共産との主張ではないのか。なぜ今更このことを新たに発見したように書くのかが不思議である。

2.これに対する共産党の主張は、
国民の所得を増やして、消費を活発にし、内需を増やすという、景気回復の大道を歩む方針となっているということです。また、大企業の内部留保の一部を活用して賃上げや安定した雇用の拡大、下請け中小企業への適正な単価にあてるなど、大企業に社会的責任を果たさせるという立場に立っているということです。

 この共産党の主張に違和感感じる。最近の共産党の賃上げの論理は、「大企業の内部留保の一部を活用して」と盛んに主張しているが、もともと賃金闘争は、大企業のおこぼれをもらう運動ではない。賃金闘争は労働者の生きる権利を求めた戦いであり、正当な権利闘争として戦わなければならない。大企業簿儲け(内部留保)のわずか1%(注1)を分けてくれという賃金闘争論は、物乞いの思想であり、社会変革の思想と全く相いれない思想である。

 最近共産党は、内部留保の1%を労働者の賃上げにと、共産党が国会で追及し、安倍首相がそれをもとに動き、賃上げにつながっていると宣伝しているが、賃金闘争の意義を全く理解しない議論である。(注2)

注1:2013年2月15日(金)赤旗補正予算案衆院通過 

      賃上げへ政府動かす共産党大企業の内部留保1%で可能
         日本共産党は、大企業の内部留保が260兆円にも積みあがっていることをあげ、“企業の収益が
     上がれば、賃金もやがて上がる”という「アベノミクス」の論拠を突き崩しました。内部留保のわずか
    1%程度を使うだけでも8割の企業、7割の労働者に月1万円以上の賃上げができることを示し、その
     ために政治が役割を発揮すべきだと迫った笠井亮議員の論戦(8日)は、大きな反響を呼んでいます。

注2:大阪民主新報4月21日版

      一面トップに「賃上げ待ったなし」という大見出しを掲げ、共産党書記局長代行の山下よしき参議院議員
   が「賃上げ・安定雇用についての懇談会」で以下の発言をしたと伝えています。
    「260兆円にも上る大企業の内部保留を、各企業が社員の給与を増やす方向で使うことが、内需を拡大し
      て日本経済の好循環を作り出す突破口になると強調。「大企業が巨大な影響力にふさわしい社会的責任を
      果たすべき」と述べると同時に、政府が賃上げ目標と、それを実現する政策をもって責任を果たすべきだとし
      ました。
        山下氏は、日本共産党の国会質問に安倍晋三首相が「正規、非正規の関係なく(賃上げを)呼び掛
    けたい」などと答弁したことを紹介。「そのことが国民世論にもなり、日本経団連が「賃下げ」さえ口にしてい
      た中で、正規社員の一時金とはいえ一部に賃金引上げの方向性が生まれている。正論とたたかいで賃上
      げに流れをかえよう」と力を込めました。

第二、原発 破たんした再稼働・原発推進の道か、即時原発ゼロの政治決断か

  ここでの共産党の主張の最大の問題点は、

原発事故から2年余の体験は、原発と人類は両立できないことを示したということです。

  「原発と人類は共存できない」という思想は、過去において共産党が批判してきた思想です。3.11の震災後の一斉地方選挙での共産党の方針は、「安全優先の原子力政策」です。府会議員の選挙ビラでは、「全国の原発の総点検を」という見出しを掲げ以下のように書かれていました。

「関西でも福井県などに原発が集中しており、もし事故が起きれば、琵琶湖への放射能物質到来を含めた関西全域が深刻な事態におちいります。「原発は安全」との「神話」と決別し、早急に総点検、安全優先に転換すべきです。」

 この主張こそがまさに「安全神話論」です。そのことも分からず書いているのが現在の共産党の水準です。(このビラを書いたのは共産党の大阪府会議員団長です)

「原発と人類は共存できない」という主張は、伝統的には旧社会党の主張であり、原水禁系の主張であり、サヨナラ原発派の主張です。共産党の主張は、原子力の平和利用です。

 事態の変化によってその主張を変えることは、何ら問題はありません。しかし、過去から一貫した主張だと国民を騙すことは政党としての誠実さを疑います。

 第三は、外交をめぐる対決点です。安倍内閣のもとで極端にまで肥大化した「アメリカいいなり政治」が、あらゆる分野で矛盾を引き起こし、その「破たん」が噴き出しています。

  この「アメリカいいなり」の政治という言葉づかいに疑問を感じます。これはアメリカ帝国主義とその目下の同盟者としての位置づけを曖昧にした言葉です。「あの男はかみさんのいいなり」だからみたいな次元にアメリカと日本の関係を落とし込め物事の本質を見る目を奪っています。

 たとえば「TPP――アメリカいいなりに譲歩重ねる安倍政権、交渉参加の即時撤回を求める」さらに「アメリカのいうままに譲歩を重ね、日本を丸ごと売り渡そうとする安倍内閣の「亡国」の姿勢であります。」と書いていますが、「アメリカいいなり」は、安倍内閣の特徴を表したのではなく、歴代の内閣すべてが同じ特徴(性格)を持っています。 
 それは個々の総理大臣の政治的姿勢ではなく、アメリカの事実上の従属国となっている本質からきているのです。(2004年の綱領改定でこの点を曖昧にしてしまったことが原因です)

 6中総決定は、「『アメリカいいなり政治』と沖縄県民、日本国民との矛盾は、いまや限界点をはるかに超えています」と指摘しましたが、その後、沖縄の米軍基地問題の矛盾は、いよいよ深刻になっています。と書いていますが、これも安倍内閣の特徴ではなく、本質的な問題からきています。この本質が理解できず鳩山首相が、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題で、「最低でも県外」と言ったが、その後迷走を重ね、鳩山氏は政治家としての資質が疑われポッポちゃんと揶揄されるまでになりました。

  この点については、7中総の「4・28――恥ずべき従属の是非を問いかけ、安保廃棄の国民的多数派を」の以下の記述が正しく、この主張をなぜ前面に掲げて戦わないのか疑問が残る。

「サンフランシスコ平和条約の問題点は、沖縄・奄美・小笠原を本土から切り離してアメリカの支配下におき、千島列島を放棄したということだけにとどまりません。同時に締結された日米安保条約によって、占領軍を駐留軍へと名前だけ変えて丸ごと居座らせ、「全土基地方式」という世界に類のない屈辱的なやり方で日本を米軍「基地国家」とし、米国の軍事的支配の鎖に縛りつけたことにこそ、サンフランシスコ体制の最大の問題がありました。」

 ここに問題の本質(アメリカに従属)があり、{アメリカいいなり}というような言葉で語るべきではありません。
  さらにこの章では、「軍事同盟と「核の傘」の鎖を断ち切り、被爆国の政府として、「核兵器のない世界」の実現にむけたイニシアチブこそ発揮すべきであることを、強く求めるものであります。」と述べていますが、これについても共産党は整理する課題があります。

  共産党の平和論は、非武装中立論や絶対的平和主義ではなく、帝国主義諸国とそれに対置する社会主義国、や民族独立運動さらに帝国主義国内での人民の戦いを対置して上での平和論でした。1964年中国の核実験の成功に際して岩間正男議員が

「1964年10月30日の参議院予算委員会で、中国の核実験成功(1964年10月16日)について「世界の核保有国が五カ国になった。ことに世界の四分の一の人口を持つ社会主義中国が核保有国になったことは、世界平和のために大きな力となっている。元来、社会主義国の核保有は帝国主義国のそれとは根本的にその性格を異にし、常に戦争に対する平和の力として大きく作用しているのであります。その結果、帝国主義者の核独占の野望は大きく打ち破られた」と発言している。

 まさに、軍事同盟、「核の傘」の理論を展開している。いかなる国の核実験反対か否かは、共産党は社会主義の核は「平和の手段」という立場で擁護した。また原発問題については、平和利用を追及していた。2003年6月の第22回党大会第7回中央委員会総会での、不破哲三議長(当時)の発言で良くわかる。

以下引用する。
 一例をあげます。原発の問題でもっと具体的な提起を、という発言は、多くの方からありました。すでに吉井さん(国会)からかなり詳しい解明がされましたが、私からも若干の点をのべておきます。現在、私たちは、原発の段階的撤退などの政策を提起していますが、それは、核エネルギーの平和利用の技術が、現在たいへん不完全な段階にあることを前提としての、問題点の指摘であり、政策提起であります。

  しかし、綱領で、エネルギー問題をとりあげる場合には、将来、核エネルギーの平和利用の問題で、いろいろな新しい可能性や発展がありうることも考えに入れて、問題を見る必要があります。ですから、私たちは、党として、現在の原発の危険性については、もっともきびしく追及し、必要な告発をおこなってきましたが、将来展望にかんしては、核エネルギーの平和利用をいっさい拒否するという立場をとったことは、一度もないのです。現在の原子力開発は、軍事利用優先で、その副産物を平和的に利用するというやり方ですすんできた、きわめて狭い枠組みのもので、現在までに踏み出されたのは、きわめて不完全な第一歩にすぎません。人類が平和利用に徹し、その立場から英知を結集すれば、どんなに新しい展開が起こりうるか、これは、いまから予想するわけにはゆかないことです。

 ですから、私たちは、エネルギー政策の記述では、現在の技術の水準を前提にして、あれこれの具体策をここに書き込むのではなく、原案の、安全優先の体制の確立を強調した表現が適切だと考えています

 上記立場で3.11後の一斉地方選挙をたたかった。

第四は、憲法 改憲派の三つの矛盾をつき、憲法9条の生命力に確信をもって

 彼らの一番の狙いが、解釈改憲で集団的自衛権を可能にするとともに、明文上も憲法9条を改定して、日本をアメリカとともに海外で戦争をする国にすることに置かれていることは明らかであり、その危険性を正面から直視し、広く明らかにしていくことが必要であります。

  同時に、改憲派がつぎの三つの矛盾を自らつくりだしていることをとらえ、この弱点を正面から突き、彼らを孤立させていく攻勢的たたかいが重要であります。

 憲法96条改定を突破口として押し出したことが、多くの人々の批判を広げる改憲派は、「北朝鮮や中国との関係を考えても憲法改定が必要」との宣伝をおこなっています。しかし、北朝鮮の問題にしても、中国との紛争問題にしても、何よりも大切なことは、道理に立った外交交渉による解決に徹することであります。この点で、安倍政権が、どの問題についても対話による解決の外交戦略を持たず、もっぱら「力対力」の立場にたって、これらの問題を、軍事力強化、軍事同盟強化、憲法9条改憲に利用しようという態度をとっていることこそ、思慮も分別もない最悪の党略的態度といわなければなりません。

 この共産党の主張は、まさに旧社会党が主張した非武装中立であり、絶対平和主義です。憲法に対する共産党の主張を再度点検しておく必要があります。 
 以下はYahooの教えての掲示板の引用ですが、共産党が発行した「日本共産党八十年」の引用の孫引きになりますが引用します。

「日本共産党中央委員会が編纂した『日本共産党の八十年1922?2002』の81?82ページには次のように書いてありますのでご参考に。

 「党は、憲法草案の採択にあたり、反対の態度を表明しました。大きな理由は、二つありました。一つは、天皇条項が主権在民と矛盾したものであり、戦後の日本では、天皇制の廃止と徹底した民主主義の政治体制への前進がもとめられていたからです。二つ目に、党は、憲法九条のもとでも、急迫不正の侵害から国をまもる権利をもつことを明記するよう提起しました。しかし、吉田首相は九条のもとで自衛権はないとの立場をとり、党は、これを日本の主権と独立を危うくするものと批判して、草案の採択に反対したのでした。(注3)

 その後、戦争を放棄し、戦力の不保持をさだめた憲法九条のもとでも自衛権をもっていることは、ひろくみとめられるようになりました。党は、現在の綱領路線を採択するなかで、憲法の改悪に反対して九条を積極的に擁護し、天皇の問題でも、徹底した国民主権の立場から、将来の天皇制廃止を展望しながら、現在の政治行動の基準として、憲法の関係条項を厳格にまもらせる立場を明確にしてゆきました。」

注3:憲法制定の経過に関する 小委員会報告書の概要 衆議院憲法調査会事務局(参照)

  第6節 衆議院本会議の修正議決(PP.513〜521)
     特別委員会での審議を終えた帝国憲法改正案は、1946年8月24日の衆議院本会議に上程された。

      (前略)

     次いで委員長報告に対する討論に入った。
      まず、野坂参三君(共産)から、憲法改正案に反対である旨の討論があった。反対の理由は、進歩的で
    あることは認めつつも、この案では自由の保障に物質的裏付けがなく、勤労者の保護規定が不備である。ま
    た、世襲天皇を認めて多くの権限を与えていること、参議院は民主化の妨害物であり、戦争放棄は民族の
   独立を危うくするものである、というものであった。

      (中略)

       片山哲君(社会)からは、同党が提出した修正案は否決されたが、かくなる上は賛成を表明するとし、天皇
     制下においても民主化の達成は可能、戦争放棄は決して与えられた条項ではなく国民の心の底に流れ
    ていた大きな思想である、国民を引きつける新たな目標は文化高揚・芸術の尊重・平和に対する情熱
    でなければならない、等を表明した。

     (中略)

     こうして討論を終局し、記名投票の結果、投票総数429票、賛成421票、反対8票で、出席議員の
    2/3以上の多数によって修正議決された。

7中総は、「改憲派は、「北朝鮮や中国との関係を考えても憲法改定が必要」との宣伝をおこなっています。しかし、北朝鮮の問題にしても、中国との紛争問題にしても、何よりも大切なことは、道理に立った外交交渉による解決に徹することであります。この点で、安倍政権が、どの問題についても対話による解決の外交戦略を持たず、もっぱら「力対力」の立場にたって、これらの問題を、軍事力強化、軍事同盟強化、憲法9条改憲に利用しようという態度をとっていることこそ、思慮も分別もない最悪の党略的態度といわなければなりません。」

 と指摘していますが、共産党は先にも述べたように「力と力」を基本とした平和論を堅持していましたし、憲法制定に対しても自衛権を主張した唯一の政党です。ASEAN(東南アジア諸国連合)の事例をだし、非武装中立で国民の安心が守られるは全く説得力を持ちません。

 こんな事例を出すのは不謹慎ですが、「たかじん のそこまで言って委員会」で、憲法9条の改正論議を行っていましたが、そこに参加していた筆坂氏が、日本の平和が守られているのは、米軍の駐留があったから、これを忘れて論議しても無意味だと主張しました。(憲法に従い武力を持たないという主張に対して)
 それに対して他の委員から、それを共産党にいるときに主張してほしかったと突っ込みが入りましたが・・・

 やはり非武装中立路線には、説得力を欠くのではと思われます。すでに中国は沖縄も中国の物だと言い始めています。共産党が外交交渉で平和的に解決すると主張するのであれば、中国に乗り込み、日本共産党が政府の一角を占めた場合、中国は武力でもって領土問題の解決を行わず、話し合いで解決する。との言質を取って発表でもしない限り、国民は「共産党が地域紛争は外交努力で解決する」を支持しないと思われる。もし、日本に軍事的力が全く無かっても、中国が尖閣列島を軍事的に支配する危険性が全くないことを証明しなければならない。(過去には、私は、社会主義は領土不拡大が国是だと思っていたし、一体どこの国が攻めてくるのか、「攻めてくる」という議論は空想的だと思っていた。)

第五に、歴史 「靖国」派内閣の地金がむき出しの形で現れた

靖国参拝・奉納、「村山談話」見直し―6中総決定の警告が現実のものに

 首相や閣僚による参拝や奉納は、侵略戦争を肯定する立場に自らの身を置くことを示すものにほかなりません。首相は、韓国、中国など、国際社会の批判にたいして、「わが閣僚においては、どんな脅かしにも屈しない」とのべ、傲慢(ごうまん)な居直りの態度を示しました。これらは絶対に許されるものではありません。

  歴史を改ざんし、誤りを美化するものに、決して未来はありません。日本共産党は、侵略戦争と植民地支配に命がけで反対を貫いた唯一の党として、これらの歴史の逆流と正面からたたかい、日本の政治からこの逆流を一掃するまでたたかいぬく決意を表明するものであります。

 これについては、異論がない。

日本の政治の三つのゆがみをただす日本共産党の躍進を

 「アメリカいいなり」「財界中心」「歴史逆行」という三つのゆがみをただす立場と力をもった政党は、日本共産党をおいてほかにありません。参議院選挙でこの党を伸ばすことこそ、日本の政治・経済・社会を、深刻な危機から救いだす唯一の道だということに確信をもって、力いっぱい奮闘しようではありませんか。

  この三つの視点・指摘は正しいと思いますが、それを「アメリカのいいなり」や「財界中心」や「歴史逆行」という言葉で括った段階で、その力を全く失ってしまう。

  すでに前述していますが、「アメリカいいなり」でなく、アメリカの事実上の従属国と言わなければ戦いにならない。「財界中心」というのも帝国主義・独占資本主義の持っている本質と捉えなければ、大企業の社内保留の1%を分けてもらえないかという施し論になり、戦いにならない。少なくとも社会主義に向かっての連続性は全く生まれない。(まさに「ルールある資本主義」の枠内の要求である。)

  「歴史逆行」については、その通りであるがそれを如何に国民に理解してもらうかが重要。私はマスコミで流れている戦車に軍服姿で試乗している安倍首相の写真を全国に張り出すことが、これに対する最大の戦いになると思っている。

 要するにすべて戦い方が下手である。

二、日本共産党の国民的役割を大いに語ろう――現在の政党状況との   かかわりで

 報告の第二の主題として、参議院選挙で、現在の政党状況とのかかわりで、日本共産党の国民的役割を大いに語ることを訴えたいと思います。

第一、平和、民主主義、暮らしを壊す逆流に、勇気をもって立ち向かう党、安倍内閣の暴走に正面対決、
         国民とともにたたかう

  その第一は、平和、民主主義、暮らしを壊す逆流に、勇気をもって立ち向かう唯一の党が日本共産党
 だということであります。
  これらについて、本当に国民に認知されているのか、己の姿を冷静に見る必要があります。
  1. 平和については、最近は、非武装中立的な議論を行っているが、共産党の平和論は、基本的にはアメリカ帝国主義との戦いの中での平和論であった。
     その主張は、「帝国主義の核戦争に反対する世界人民の闘争、およびそれに結びついた社会主義の防衛力の強化が必要なのである」(中略)むしろ、社会主義国の防衛力強化を放棄させて、核戦争防止を祈る運動だけにたよることのほうが、百倍も千倍も危険な政策であろう。(「マルクス主義の平和運動」上田耕一郎270ページ」)
     社会主義陣営が崩壊し、すでにこの論理が崩壊したことは明らかではあるが、この理論から、共産党がかつて批判していた絶対的平和主義と同じ理論展開に至った経過を示さなければならない。(過去から一貫した政策だとか、無原則な変更は国民から信頼されない。絶対的平和主義は「祈り」だと揶揄し、「力対力」より百倍も千倍も危険と批判してきた。)

民主主義論は、党内民主主義の実現抜きに民主主義を守ると言っても誰も信用しない。7中総での全員一致の採決の姿を見て不気味に思わないのは共産党員だけだという事に気付くべきだ。(綱領的には冷戦時代の方針を相当変えているが、組織論だけは時代遅れの冷戦時代のままである。)


暮らしを壊す逆流については、別に異論はない。

第二、日本の前途を開く綱領を持つ党――この力を全面的に生かす選挙にどの分野でも改革の展望を示
      すことのできる力の源泉に、党の綱領がある日本共産党が、日本の前途を開く綱領を持つ変革者の
     党であるということであります。

      この主張は、自己満足であり、党外の人の心には届かない。(党内向けの論議である。)

第三は、日本共産党が、国民との共同で政治を動かす政党であるということです。

 この点については、4.14神戸の討論集会に参加を断った経過からして、この主張は信用できない。4中総以降の共産党の主張は保守との共同であった。(決して革新の統一戦線ではない。)

 この間の情勢の展開のもとで、無党派の人々と日本共産党との共同の流れが、各分野で画期的な広がりを見せています。原発ゼロ、TPP、米軍基地、消費税、憲法などで、一致点にもとづく共同――「一点共闘」が広がり、私たちとこれまでまったく接触のなかった無党派の人々、保守の人々をふくめた共同が、さまざまな分野で広がっています。それぞれの「一点共闘」を一致点を大切にして発展させながら、日本を変える新しい統一戦線をつくりあげていくために、大いに力をつくそうではありませんか。

 「日本を変える新しい統一戦線を作り上げる」と主張されているが、この統一戦線が何を指すのか不明である。議会での多数と統一戦線運動の関係が定かではない。大衆運動で国会を包囲するようなイメージを持っているのか、単に選挙を有利にするための戦術なのかその戦略が見えてこない。

 先の衆議院選挙前に、北海道で保守との共同が進んでいると盛んに主張していたが選挙での票数は芳しくなかった。

 すべての戦線で保守との共同を求めることは困難であり、例えばTPPなどはまさしく保守との共同が生まれる情勢にあり、自民党の支持者を引っ剥がすという戦略をもって保守との共闘を語るべきである。

 私はすでに四中総批判で、「新しい政治への国民の探求、日本共産党と新たな共同の広がり」とい中見出しで、まず最初に掲げたのが「保守との共同が劇的に発展しつつある」という小見出しを書いている。「劇的」なのか「劇薬」なのか真剣に考える必要がある。
 と批判した。・・・最近はあまり保守との共同が前面には出なくなっているが・・・・・・

「いま日本に政党と呼べる政党は一つしか存在しない」

ある保守系のジャーナリストは、日本共産党につぎの言葉を寄せてくれました。 「いま日本に政党と呼べる政党は一つしか存在しない。と主張しているが、この間の共産党の主張の最大の弱点がこのフレーズである。

 共産党の主張の正しさを、保守の政治家やジャーナリストがほめてくれた、だから我々は正しいと主張するが、世の中には「褒め殺し」という言葉がある。竹下登氏が右翼に褒め殺し攻撃を受けて困った場面があったが、共産党は簡単に引っかかる。

 なぜ、労働者や市民が共産党を支持してくれたから、共産党は正しいというフレーズが現れないのか不思議でたまらない。

三、参議院選挙・都議選勝利をめざす活動方針

  この項については、すでに批判しているので改めて批判することはないが、根本的な問題は、思想的な力量を高め、大衆の中に入ることが重要であるが、マイ名簿をもって大衆に溶け込む力を身に着ける。これは完全に敗北する思想である。

 思想的に訓練されていないものが、大衆に溶け込めば、大衆に逆オルグされダメになってしまうというのが私の主張だ。共産党が掲げた「ヘラブナ釣り」の仲間の例はまさにこの事例である。ミイラ取りがミイラになる危険性が高い。 「ヘラブナ釣り」の仲間はあくまで「ヘラブナ釣り」で結びついている。この人たちを共産党の考えで結びつけることは難しい。それよりも、例えば子育ての仲間や、原発問題の仲間、年寄りの生きがいを求める仲間などそこでの問題点を深めていけば、いつの間にか共産党につながるというようなグループを作り上げていくことである。確かに昔衛都連傘下の組合で、反対勢力が、「男が料理を作る会」から大量に組織されたという話を聞いたことがあるが、これは相当思想的に力量あるものが組織したと思われる。一般的には「ヘラブナ釣り」仲間を、共産党支持に変えることはなかなかむつかしい。

 共産党がなぜ伸びないのかは、基本的には個々の党員が大衆の中に溶け込む能力が欠けているからではなく、共産党という政党が、日本の政治戦線の中で有効な手立てを打てていないところに最大の問題がある。すべては幹部の責任である。

 その最大の物は、冷戦時代の共産党の方針とそれ以降の変更した方針の整合性を明確にせず、戦いを組織しているところに最大の弱点がある。

 ここの党員は憲法9条の戦争放棄を守るべきだと大衆に訴えた場合、多くの市民はその理念には賛成するであろうが、今日の情勢の下で、中国や北朝鮮が挑発を繰り返す中で、やはり不安に思うのは当然である。その場合、外交交渉で解決する。あるいはASEAN諸国方式で解決するという主張に本当に説得力があるかが問われている。

 あるいは賃上げの最前線で、労働者の権利として賃上げを行うという戦いが組織されている中で、大企業の内部留保のお金の1%を分けてもらったら、1万円の賃上げができるという論議が、戦う労働者の心に本当に受け入れられるであろうか。労働者階級の社会的役割を全く否定したこの思想は、労働組合そのものをダメにしてしまう。

 このような党中央のピンボケさが、今日の共産党の衰退を招いている最大の原因である。この克服なしに、活動の手法を変えることに力を入れても日本の政治勢力の地図を塗り替えることはできない。

 国民が求めているのは、日本の将来を見据えた展望のある政策を持つ政党の出現である。共産党はそのお眼鏡にかなっていないのである。