共産党大阪府委員会はダブル選挙の総括を行ったのか


平成28(2016)年3月8日


「都構想で大阪市廃止、知らぬ層の9割が維新に」ダブル選「学者の会」が報告

                            (3/6大阪民主新報)

 上記見出の記事が大阪民主新報に掲載されているが、この報告が事実だとすれば、共産党は一体何をしていたのが問われることを共産党は気が付いていない。先の大阪ダブル選挙(2015/11/22)の結果をごく大雑把に言えば、維新が200万票、反維新(自民・共産・民主+α)が100万票であった。この維新に投票した9割が「都構想で大阪市廃止」を維新が訴えていたことを知らなかったというのである。 
 さらに全体でみても3割しか大阪都構想の狙いは理解されていなかったと報告されている。これを投票者の数字で表すと、300万人のうちの3割が理解していたということで100万人が理解していたことになる。維新の候補者に投票した9割は知らなかったということから、200万人*0.9=180万人が大阪市廃止を知らず、残り20万人のみが、大阪市廃止に賛成して維新に投票したことになる。
 この結果から、反維新に投票した人の8割(80万人)は、大阪市廃止に反対で反維新候補に投票したものと推測される。
 このことは何を意味するのか、大阪維新は圧倒的な得票を獲得したが、本当に維新の政策を知っていたのは、たった2割(20万)でしかなく、後の180万票は、維新の政策は知らないが、橋下・維新には何かをやってくれるという期待票である。
 反維新派に投票した100万票は、8割が大阪市廃止反対派であったと思われる。つまり政策で選ぶのであれば、反維新派が圧倒的に多数を占めているのであるが、投票は政策を十分知らない層(200万人)の9割を維新派が固めたことによる勝利である。

この結果の恐ろしさを共産党は全く分かっていない。

 維新はなぜ、大阪市廃止を前面に出さず、200万票を獲得できたのか?この数字を報告した「学者の会」(注1)は、「橋下徹前市長はじめ都構想推進派が流した大量のうそや詭弁が、真実が有権者に周知されることを妨げたと指摘」としているが、果たしてこの総括は正しいであろうか?私は理解に苦しむ。負けた者の言い訳に過ぎないと思っている。

注1:学者の会:「豊かな大阪を考える会」
        京都大学の藤井聡教授、立命館大学の村上弘充、帝塚山学院大学
        の薬師院仁教授など

 同じ土俵で戦い、政策論争を行い、相手側は200万票を獲得し反維新側は100万票しか獲得できなかったことは、何か大きな原因があり、橋下氏が嘘とペテンで乗り切ったという総括は、負け惜しみ以外の何物でもなく、自らの力量のなさを覆い隠すものでしかない。

敗北の最大の原因は、「自・共」連合に府民は「ソッポ向いた」のである。

 「自・共」は、反維新で共闘した。しかしこの共闘は政治的な政策協定等を結ばない共闘であった。共産党は「勝手連」的に自民党候補を推した共闘であった。これに対して、府民が「NO!」を突き付けたと思われる。報道各局の出口調査では、共産党支持者で自民党候補に投票した者は74%にとどまった。共産党の支持者ですら、この共闘の正当性を疑ったことが伺われる。
 されに大きかったのは、自民党支持者の投票が自党の候補者であるにも関わらず、5割強にとどまったことが大きい。
 「学者の会」は「大阪市の廃止」を府民は支持していなかったと報告しているが、調べるべきは府民が「自・共」共闘を支持したかどうかの統計を取るべきであった。過去における「社・共」共闘は、1+1=2でなく3にも4にもなったが、今回の「自・共」共闘は1+1=0.5ぐらいにしかならなかったのではないか?このことの総括を是非やるべきである。(実際は行われていて、やばいから発表しないのかも知れないが?)

嘘と正義はどちらが勝つのか

 私は、嘘が正義に勝てるはずがないと思っている。確かに現在まで嘘とペテンで政治権力を掌握した者はあるが、現在のような民主主義社会で嘘とペテンが正義に勝つことが信じられない。それならば何故橋下・維新が勝利するのか、それは反維新派が、橋下・維新に上回る政策の議論展開ができない力量の差がそこにはあるとみている。
 今回の大阪ダブル選挙を見ていても、いろんな要素で橋下維新が勝つであろうことは推測できた。選挙選という戦いを如何に組織するかで、橋下維新は圧倒的に勝っていた。それを思いつくままに以下に列挙すると
 橋下氏は「改革」というイメージを前面に出している。今回のアメリカの大統領選挙の予備選挙を見ていても、共和党ではトランプ氏が躍進し、民主党では、全くの泡沫候補であったサンダース氏が善戦している。これは他の候補に比べれば、圧倒的な自己主張(言葉の魅力)が優れているからである。何かしてくれるという期待感を持たせるディベート力である。
 振り返って日本を見た場合、共産党(取り分けて大阪の共産党)は「顔」が見えない。共産党の主張を行う「大将」が見えない限り、府民は共産党を評価しえない。
 それと決定的に間違ったのは、「自・共」共闘のイメージを共産党が「押し掛け女房」的な形で押し出したことである。(旦那であるべき自民党は、これを歓迎しているのか、それとも嫌がっているのか、その実態が府民には分からなかった。)府民はこの共闘を支持しなかったし、さらにまずかったのは、共産党は自民党と組むことで改革のイメージを投げ捨ててしまった。
 さらに政策面で決定的な誤りを犯した。共産党が掲げたメインスローガンは「さよなら維新」であった。これがどのような響きを持つのか府民には全く理解されなかった。(これは5年前の選挙の「安全・安心・やさしい大阪」と同じ失態である。・・・これらの言葉には階級的視点が全くないし、前向きで積極性も感じられない。)
 このことを表しているのが、今回の「学者の会」の報告である。維新の会は「大阪副都心」化などを掲げ、大阪市の現状を前向きに解決するイメージを打ち出しているのに、それに対して反維新派は、その内容がまさに「嘘やペテンで」あることを攻撃せず、「さよなら維新」みたいな「あさって手の方向を向いた」ようなスローガンを掲げて戦い、「すべっている」ことに気づかない鈍感さが、大阪府民には全く受けないのである。
 是非大阪ダブル選挙の結果はなぜあのような「惨敗に終わった」のかの調査もやってほしいと思っている。例えば大阪ダブル選挙でそれぞれの陣営が最も訴えたことは何ですか? この調査を行えば、維新の側の「大阪都構想」は相当数出ると思われるが、反維新派の「さよなら維新」を覚えている方は、10%台に留まるのでないか?それぐらい、政策の持っているパンチ力に差がある。だから負けるのだと私はおもっています。

左翼(革新)政党を隠し、「保守層にも理解を得られる政党になりたい。」

 この発言は、「たかじんのそこまで言って委員会」での民主党の議員の発言ですが、おそらく共産党も同じことを思っていると思われる。
 保守と革新を、どこを切り口に分けるかはむつかしいですが、少なくとも現在の政治情勢では安保法制(戦争法案)に賛成か反対かがその分水嶺だと思われる。その他では消費税の問題があるが、これも事態は複雑でよくわからない状況になっている。(注2)

注2:共産党の消費税に対する政策は、値上げ反対であり、消費税そのものを否定
   していない。5%から8%になるときは、8%値上げ反対であり、現在は10%値
   上げ反対である。これに対して保守の理論家である元財務相の官僚であった
   高橋洋一氏は日本経済が停滞しているのは消費税を8%に上げたことに原因が
   あり、10%上げることはありえず、むしろ5%戻すべきだと言っている。

 共産党は、民主党と同じく、できるだけ保守層に嫌われない政策を掲げ、大幅賃上げや消費税反対(値上げではなく)を言わなくなった。なぜ保守層に可愛がられないと政権が取れないのかよくわからない。先にも述べたが、アメリカ大統領の民主党の予備選挙で、格差社会を糾弾し、社会民主主義者だと名乗り、公立大学の学費無料化等を掲げ若者からの支持を集めサンダース候補が善戦している。
 日本共産党が支持を広げるために保守層にすり寄っていく姿とは全く反対に、むしろ「社会主義」を前面に押し出し、支持を広げている。

 赤旗はいつも海外ニュースとして自らの主張を唱えている(原発廃止の時もそうであった。)

 赤旗日曜版(2/14号)は、アメリカ大統領の予備選挙の様子を伝え、昨年6月のギャラップの調査では、「社会主義者が大統領でも投票するか」との問いに「国民全体では賛成47%、反対50%、29歳以下では賛成69%」という記事を載せています。その背景として指摘されるのが、米国の格差社会の深まりです。」と書いています。
 同じ格差社会が進む日本では、なぜ社会主義が「禁句」になりつつあるのか、その大きな理由は社会主義を標榜するおかしな国が近隣に中国・北朝鮮と存在するからだと思われるが、それに留まらず、日本共産党が中国共産党との違いを明確にせず、曖昧な態度を取り続けているからだと思われる。
 日本で格差社会反対と叫んでみても、そのことを社会主義との関連で述べることができない。なぜなら、中国こそが格差社会でないかと突っ込まれてしまう。そのことで共産党は肩身の狭い思いをして、「ルールある資本主義で国民生活の向上へ」と語らなければならない。
 しかし、国民は「ルールある資本主義」などというものを信頼していない、格差は広がるばかりである。子供の貧困化はますます進み、未来展望を見いだせない生活になっている。この時こそ「社会主義の優位性」をサンダースのように語るべきなのに、ルールある資本主義を語っていても、資本家は評価しても、労働者階級は評価しない。
 こうした根本的な対立軸を失った共産党が、「さよなら維新」のような分けの解らないスローガンを掲げても支持を拡大することはできない。すべての元凶は「社会主義を覆い隠し、資本主義の改良で国民の生活を豊かにする」という路線のパンチ力(階級的視点)のなさである。
 大阪ダブル選挙の敗北とアメリカ予備選挙での民主党のサンダースの善戦を比較すれば、支配勢力との違いを明確にして、戦わない限り、共産党の前進はありえない。海の向こうのアメリカの社会民主主義者の老闘志が日本共産党に戦い方を教えてくれているのである。