一斉地方選挙で共産党は果たして大勝利を勝ち取ったのか?


平成27(2015)年4月27日


  共産党の赤旗を見ている限りでは一斉地方選挙で共産党は大躍進を勝ち取ったと浮かれた記事が目立つが果たして共産党は大躍進を勝ち取ったのか検証してみたい。

 まず大躍進の共産党の主張の根拠は

1.史上初、全都道府県に党議席を勝ち取った。
2.各地で初議席、2人区で次々当選し劇的な変化が各地で生まれた
3.政令市議選で前回選挙時を29議席上回る136議席を得た
4.6つの市で共産党の立候補者が全員当選した

 ことなどをあげています。これらのことは事実であり、確かに他党派と比較しても共産党が一番躍進視したように見えるし、マスコミ等の論調もそうなっています。

 しかし本当に選挙戦の総括をこのような視点だけでみてよいのでしょうか、私には疑問があります。この件については前半戦の結果が分かった段階で、すでに指摘していますが、後半戦が終わってさらに一層選挙戦の総括はどうあるべきか、問題点を感じています。そのことを私の生活している大阪府と高槻市の現場から発信していきたいと思っています。

今回の一斉地方選挙では、大阪は橋下維新の会との戦いが最大の争点であった。


 現在の政局の流れは、安倍首相と橋下大阪市長が密約を交わし、安倍首相は「大阪都構想」を支援するから、その代わり、戦争関連法案の実現に維新は全面的に賛成するという流れがある。橋下市長が推し進める「大阪都構想」が行き詰まり、実現不可能が見えてきた段階で、菅官房長官が中に入り、公明党中央を説得し、「大阪都構想」の是非を問う、住民投票に公明党が賛成するように働きかけ、公明党は従来の主張を180度変え、住民投票賛成派に回った。
 これは公明党は安倍政権の与党であることの甘みを維新に取って代わられることを恐れ、安倍首相側に屈服したものである。安倍首相と橋下・大阪維新の会との密約は着々と進行している。
 今回の一斉地方選挙は、この橋下・大阪維新の会の野望を打ち砕くことが、大阪の共産党の最大の課題であった。
 一斉地方選挙の結果は、確かに橋下・大阪維新の会が狙った大阪府議会議員・市議会議員の過半数を勝ち取るという野望は打ち破られたが、大阪維新の会が大阪の政界の中で圧倒的に一位であることは、まったく変わらないばかりではなく、むしろ維新の会は前回選挙よりも躍進を果たしている。
大阪市議会選挙の結果は、維新は29→36(+7)議席、公明は19→19議席、自民は18→19(+1)、共産8→9(+1)、民主6→0(−6)、無所属5→3(−2)というものであった。橋下維新の得票数は、374413票(36.98%)で前回の337293票(33.17%)の約1.11倍の力を発揮している。
 これに対して共産党は、前回選挙の1.12倍、自民党も1.12倍、公明党が0.89倍、民主党に至っては0.35倍とまさしく大阪民主党の崩壊を示している。
 国民は政治をしっかり見ており、主張のはっきりしているもの、強いものが勝つのが原則である。民主党は安倍政権の「海外で戦争できる国づくり」に反対すらできず、自らの主張を明確にできないものは敗北するの典型的事例である。
 次に公明党であるが、今回の「大阪都構想」で見せた裏切りが反映した結果だと思われる。公明党の票は鉄板であり何があろうが崩れないと思っていたが、公明党に支持者にも正義を求める潮流はあり、今回の公明党の取った態度が批判されたと思われる。
 共産党・維新・自民党がそれぞれ、1.1倍〜1.2倍の躍進を勝ち取り、今回の選挙での勝ち組と負け組みがはっきりした。
 次に大阪府議会選挙であるが、大阪維新の会が過半数を取れなかったことは、反維新派の大勝利であるが、ここで役割を果たしたのは、共産党ではなく、自民党の奮闘である。維新の狙いは一人区での完勝を狙い、過半数の獲得だったと思われるが、自民党が善戦し7選挙区で維新候補を破り維新の過半数を防いだ。
共産党は、維新政治に鉄槌を下すと主張していたが、今回の選挙で共産党が維新の躍進に歯止めをかける戦いが成功したのかは極めて疑わしい。大阪府議会の議席数においても維新は42議席を確保し、次に自民が21議席、公明が15議席、共産は3議席(前回4議席)、民主党は1議席へと凋落してしまった。


一斉地方選挙後半戦の戦いで、共産党は躍進したのか?


 本日付けの赤旗は、共産党がいたるところで勝ったと報道しているが、共産党の勝利を喜ぶだけで、政局が今後どう展開していくかという視点でまったく書かれていない。ここに共産党の独りよがり(セクト性)が見られる。
 毎日新聞は後半戦の選挙戦の特徴をどう報道したか、毎日新聞は、一面で見出しは「大阪維新対決3市長全敗」という見出しを掲げている。さらに23面【社会】で「住民投票前に暗雲」「松井氏地元でも勝てず」「維新都構想争点避けても」という見出しを掲げている。さらに中見出しで「『グレーター大阪』困難に」という見出しを掲げ、「吹田、八尾両市が構想に加わる現実味は乏しくなった」という記事を書いている。
 選挙結果が与える今後の方向性を見た上での選挙戦の意義を語っている。この視点が赤旗にはまったくない。自分らだけが勝てば良いとの視点しかない。
 最大の課題であった、大阪都構想をぶっ潰し、橋下維新を大阪から追放するという点でどういう役割を果たしたのか、今後の見通しはどうかを語らない総括にはなんら魅力を感じない。

最後に高槻の現実を見ておきたい。ここに共産党の最大の弱点が現れている。


 大阪府会議員選挙は定数削減が行われ、高槻市の定数は5名から4名に減らされてしまった。共産党の指定席は5位であり、今回は落選すると思っていたが、高槻で共産党は4位に入り貴重な議席を確保した。この議席がなければ、今回の府会議員選挙は4名から2名になり、共産党は敗北を認めざるを得なかったが、共産党は3議席で踏みとどまり、定数削減のもと仕方がないという総括でお茶を濁すことができた。
 しかし後半戦の市議選で共産党の弱点は浮きぼりとなった。府議会議員選挙の高槻市での各党の得票数は、大阪維新の会52245票(37.42%)、自民党26125(18.71%)、公明党22941(16.43%)、共産党21580(15.46%)、民主党16726票(11.99%)であった。共産党は前回15973票であり、5607票も増やし、1.35倍化を図っている。まさに大躍進である。それに対して公明党は前回から2005票減らし、前回比0.92倍である。
 これだけ見ると共産党が公明党に追いついた。とうとう肩を並べたように見えるが、この票は、共産党が維新と戦って、あるいは安倍政権と戦って勝ち取った数字ではない。このからくりは、前回選挙で社民党が候補者を立てており、その獲得票数が9709票あったため、この多くが共産党に流れたと思われる。
 私は後半戦の市会議員選挙で共産党が何票獲得するかに注目していた。高槻での共産党の票数はよくて18000票、悪くて14000票というのが私の見方である。そういう意味では今回の府会議員選挙での21580票は画期的な数字であり、共産党躍進の現われか、単なる同情票かが見極められると後半戦の結果を楽しみにしていたが市議選の結果は共産党4名で12455票、これに対して公明党は8名で23839票である。

ここに共産党の実力はまったく変わっていないことが証明されている。

 共産党は府会議員選挙21580票、それに対して市会議員選挙12456票である。府会議員選挙の58%しか獲得(歩留まり)していない。(府会議員の票は島本町も入っているので正確ではないが)これに対して公明党は府会議員選挙22941票、市会議員選挙23839票1.04倍(票数で898票)増やしているのである。ここに公明党の強さが伺われる。
 共産党はなぜ府会議員選挙と市会議員選挙でこれだけ票数が違うのか、それは市民を大阪維新の推し進める「都構想反対」や安倍首相の推し進める「海外で戦争できる国づくり反対」で組織していないからである。府会議員の宣伝ビラやポスターには、大阪都構想と戦う姿はまったくなく、母一人、子一人で生活し、苦難を乗り越え京大に入り、母の思いの実現のために議員として活動するような話が書かれていた。これはポスターにも同じ趣旨のことが書かれて張り出され、お涙頂戴の人生劇場のような戦いを行っているからである。
 これに対して公明党は見事といわざるを得ない。おそらく公明党はこの23839票の内、20000票くらいは顔まで浮かぶほど組織されていると思われる。市会議員選挙は34名の定数に対して45名も出ており、何らかの形で候補者とつながりを持っている方も多い。義理と人情で切り崩されるのが市会議員選挙だが、公明党は候補者それぞれがよく奮闘し、8名の者が効果的に動き、切り崩されるよりも、さらに切り崩していったことにそのすごさを感じる。
 私は高槻市での公明党と共産党の力関係は2:1だと思っている。今回の府会議員選挙で共産党が肩を並べたことにびっくりしたが、市会議員選挙ではメッキがはげてしまい、やはり公明党と共産党の力関係は2:1だということを暴露してしまった。議員数で8人:4人、得票数で23839票:12456票、ほぼ2:1である。
 この差はどこから来るのか、それは共産党は共産党の政策でもって市民を組織していない。公明党は確かに宗教という武器があるが、自らの理念で組織している強みである。
 貧乏物語を語って選挙戦を戦うのは邪道である。政治は未来を語るものであって、どのような社会を作るのかビジョンを明確にし、市民の共感を得ていくことが重要である。府会議員選挙で義理と人情話で票を獲得してもその票は市会議員選挙になればなんら効果はない。
 自分の選挙だけ勝つための選挙戦術(母一人、子一人や京大出)で戦う選挙は共産党とはまったく関係ない。この同じ話を持っている自民党議員もいると思われる。もしこの話に感動して票を入れたのなら、市会議員選挙もこの視点で投票しようとすれば共産党の候補者には該当者はなく(一流大学を出た者はいない)、その票は他党派に流れる。
 やらなければならなかったことは、橋下大阪維新の会のデタラメサノ暴露であったが、府会議員候補からは、その主張はまったく聞かれなかった、

追記:高槻市会議員選挙の結果を見て、私は役所で働いていたのでどの議員が優秀
   か知っているが、それぞれの議員の活動は市会議員の場合、ほとんど報道さ
   れない。市民は実態をほとんど知らないのだなという結果になった。
     維新という名前をつければ高位で当選するおかしな世の中になっている。前回選挙で高槻
    市には大阪維新の会の支部はなかった。しかし目ざとい人が   高槻維新の会というのをでっ
    ち上げ、1位と2位で通るという結果がでた。今回高槻市にも正規の大阪維新の会の支部がで
    きた。その際に前回の二人の内一人は正式な大阪維新の会に入ったが、もう一人は入会しな
    かった。(入れてもらえなかったのかは知らない)
     この人は落選した。(前々回の選挙でも最下位当選者であった。)もう一人の大阪維新の会
    を掲げて候補者は2位(7476票)で当選した。ちなみに維新の候補者は3人、この人たちで、
   1位、2位、3位を独占した。しかも1位の方は13077票と桁違いの得票う数であった。(一人で共
   産党の4人の候補者が獲得した票数より多い)維新恐るべしである。