中国は本当に社会主義を目指すのか 共産党に対する質問と回答(さざ波通信 荒川岳志氏)

  共産党の回答から、共産党の本音が読み取れる。


                                                             平成25(2013)年3月18日

 日本共産党は中国を「社会主義を目指す国」と位置づけ、中国共産党と友党関係を築いている。しかし、中国の現状は、貧富の差は拡大し、公害は垂れ流しであり、自由も民主主義もない、非民主的な国家になっている。

 毎日新聞昨年9月24日、『日本政府による沖縄県・尖閣諸島の国有化を巡る日中両国の摩擦について独紙フランクフルター・アルゲマイネは24日、1面に「100年前のように」との見出しで、「中国は今英国など(西洋)列強諸国が100年前にしたことを繰り返しているようだ。それは帝国主義であり、それは無益だと私たちは学んだ」との論説を掲載した』と配信した。

 私はこの独紙の中国の見方が正しく、今後日本は中国の領土拡大の野心に巻き込まれ、日本国民の中から中国への嫌悪感が広がり、同時に共産党に対する期待感がますます薄れていくとみている。

 共産党の支持率が選挙のたびに低下する一つの大きな問題は、中国問題だとみている。共産党の幹部が早い時期に適切な対応を行わないと、共産党は中国共産党の蛮行の責任を取らされ日本国民の支持を完全に失うであろう。

  私は、政治問題には30年ほどの空白があり、中国共産党と日本共産党が真正面から戦っていた時代に共産党員として生きていた。この戦いはすさまじしく、共産党の幹部が北京空港で暴力を振るわれ、追い返されることから始まった(注1)その共産党がいつの間に中国を「社会主義を目指す国」と位置づけ容認したのか、その経緯を十分知らなかったが、今回「さざなみ通信」の荒川岳志の投稿「日本共産党中央へ質問と回答、(2009年6月から9月にかけて、日本共産党の中央に対して行った質問とそれに対する党中央の質問回答係からの回答)を読んで経過や共産党の主張を理解することができた。

 この文書は荒川氏が4回質問し、3回までは共産党(質問回答係)からきわめて誠実に回答されていて、共産党の立ち位置が非常によくわかる貴重な文書である。(注2)

注1:『赤旗』1967年8月21日「主張」
   毛沢東一派の極左日和見主義集団とかれらに盲従する反党裏切り分子の党破壊活動を粉砕しよう

       中国共産党の極左日和見主義、大国主義分子は、このようなわが党にたいする不当な攻撃、破壊活動
     を、凶暴に拡大したあげく、8月3日と4日には、北京空港で、狂信的な紅衛兵と日本人反党分子を動員して、
     日本共産党中央委員会代表砂間一良幹部会員候補と紺野純一『赤旗』特派員にたいし、国際共産主義運動
     史上はもちろん、資本主義諸国の外交史上でさえ前例のない破廉恥きわまる集団的テロをくわえ、長時間に
     わたる不法監禁をおこなったうえ、肋骨を3本も折り、奥歯までうちくだき、全身打撲の重傷を負わせるという
     反階級的蛮行まで組織しました。平壌からの高杉『赤旗』特派員の連日の報道や、砂間同志の談話がつたえ
     てきたすべての事実は、わが党にたいするもっとも凶暴卑劣な攻撃を意味する今回の集団暴行事件が、中国
     共産党の極左日和見主義、大国主義分子の指揮と「統制」のもとで、計画的、組織的にしくまれた事件であっ
     たことを、疑問の余地なく証明しています。

注2:この回答者はきわめて誠実に答えている。ただ、回答として不満は残るが、それは共産党としての限界を示
      すもので、この回答者の責任ではない。荒川氏は4回目の質問を出したが、4回目は回答がなかった。これ
      はこの質問の中に、回答者の名前を教えてくれというのがあったからと思われる。おそらく彼は誠実に答え続
      けたが、上から、回答をやめろと指示されたと思われる。

荒川氏(さざなみ通信投稿者)は党中央に対して何を問うたのか

  荒川氏は4回の質問を行い、3回の回答を引き出している。その主要な質問はなんであったのか、まず見ていきたい。


             <第1回目の質問>

(1)中国は本当に社会主義をめざすのか。(2009年6月6日)

★第1に、中国はいつから社会主義を目指す国になったのですか。
       普通に考えると1949年からということになると思いますが、日本共産党の考えはどうですか。

★第2に、もし、1949年から社会主義を目指していると考えると、大躍進で多く の餓死者や文化大革命の混
        乱、天安門事件での学生・市民に対する武力弾圧は、社会主義を目指す国で起きたと考えていいのでしょうか。

★第3に、中国が現在、社会主義を目指しているといいますが、今の中国での共産党による一党独裁・言論の自
        由の弾圧などについて日本共産党は、どう考えているのですか。また、経済的にはめざましく発展してます
        が、経済格差が拡大し、共産党幹部による汚職や利権あさりが横行している現状をどのように考えていま
        すか。

       日本よりもさらにルールなき資本主義のように思えますがどのように考えますか。

★第4に、ソ連が崩壊したときに「ソ連は社会主義ではなかった」と日本共産党は述べましたが、いつから社会主
       義でなくなったと日本共産党は判断していますか。

★第5に、世界の共産党で選挙を通じて政権を取った政党はありますか。私はないと思いますが、それはなぜだ
     と考えますか。

                     <追加質問>

(2)中国は本当に社会主義を目指すのか(6月22日)

   ★私の考えでは中国などが、社会主義を目指す国であるのなら、民主主義・自由・社会保障・生活水準な
    どどれをとっても日本のほうがましだと思い、社会主義を目指す国になりたいとは思わないと思うの
    ですが。

3)中国は本当に社会主義をめざすのか。(7月6日)

   ★2009年6月26日(金)付の「しんぶん赤旗」の7面の国際欄に非常に小さなベタ記事として、「08憲章参
     加の作家を逮捕」というものがありました。「08憲章」で一党独裁を批判した劉暁波氏らが逮捕されたとい
        うものです。興梠一郎氏によるとこの「08憲章」は、「一党独占執政特権の廃止」や「全国民に社会保障」
        をといった具体的な提言を行い、「1949年に建国した新中国は、名義上は人民共和国だが実質は
      党天下である。」と「一党独裁」を真っ向から批判しているということです。「社会主義を目指す国・中
      国」でこのようなことが起きているのに、北京=時事発のベタ記事だけですませているのはなぜで  
      すか

 以降回答の度に再質問を繰り返し、質問4回、回答3回の長期ランのやり取りが行われている。中国問題に対する共産党の考え方を全て引き出しているのではと思われる。現在の共産党の考え方を知るうえできわめて重要な文書である。



 以下、質問事項5項目に対する、質問と回答のやり取りを拾っていってみたい。原文は一回目の5つの質問、一回目の5つの回答という形で流れているが、私は、わかりやすいように質問1に対する1回目、2回目、3回目という形で編集している。

 ただし私の力量不足で、かえって分かりにくくなったり、意図が十分伝わらないようになった恐れがある。ぜひ原点も読んで頂きたいと思っています。

 原文を投稿された荒川様には、このような試みを承諾もいただかず、行ったことをお詫びします。

「質問1」について第一回目の「質問」・・・・6月6日


(1)中国は本当に社会主義をめざすのか。

 ★ 第1に、中国はいつから社会主義を目指す国になったのですか。

    普通に考えると1949年からということになると思いますが、日本共産党の考えはどうですか。


第一回目の「回答」・・・・6月23日


第1:中国はいつから社会主義国を目指す国になったのか。

      <総論部分・・・社会主義を目指す国とは何を指すのか>

 私たちは、レーニンが指導した時代のソ連は、大局的には社会主義社会を建設する方向へと向かっていたと判断しています。それをくつがえしたのはスターリンでした。

 ソ連崩壊の前後までは、私たちもソ連や中国を「社会主義国」と呼んでいました。しかし、旧ソ連が「社会主義」とよべる実態ではなかったことをふまえて、「社会主義」の看板を掲げていても実際に社会主義に到達しているわけではないという意味で社会主義をめざす国」という用語を使うようになりました。

 この用語は、その国の人民あるいは指導部が社会主義を目標としてかかげている事実をあらわしているだけで、その社会が現実に社会主義に向かっているかどうかの評価を含むものではありませんでした。

 私たちは、2004年の第23回党大会でおこなった党綱領改定に際して、「社会主義をめざす国」と呼んでいるのは、中国、ベトナム、キューバであること、そして、それはその国の政府と政権党が社会主義社会の建設に努力していることを表現したもので、現実に社会主義社会に到達しているという意味ではないという立場を明らかにしました。

◇さらに第23回党大会では、「社会主義をめざす国」と規定するのは、その国が社会主義への方向性をもっていることを、わが党自身の自主的見解として判断していることを表現したものに改めました。ですから、北朝鮮のように社会主義に全く反する道を歩んでいる国は「社会主義をめざす国」と呼ばない立場を明らかにしています。

             <中国問題>

 日本共産党と中国共産党の間には、長い断絶の時期がありました(断絶の原因は、1966年に毛沢東派が日本共産党を「中日両国人民の敵」と決めつけて打倒を呼びかけ、日本共産党の内部に彼らの言いなりになる分派を育成しようとしたことです。中国側が誤りを認め、反省を表明したために1998年に関係が回復しました)。そのため、関係回復にあたって、私たちは、中国の党への評価について「白紙」で臨むという立場をとりました。
  つまり、今日かれらが科学的社会主義(マルクス主義)の立場に立っているのかどうかについても、中国が「社会主義をめざす国」といえるのかどうかについても、判断を保留するということです。



「質問1」の第一回目の回答のまとめ

 
 レーニンの指導の下では社会主義であったがスターリンがそれを破壊した。
 しかしその事実に気が付かず、ソ連をはじめとする西欧の社会主義の崩壊で初めて社会主義を名乗っていた国が、社会主義と無縁な国だと分かった。そこで残存する社会主義国をまず「社会主義をめざしている国」という位置づけを行った。しかしこの「用語」は、その社会が現実に社会主義に向かっているかどうかの評価を含むものではなかった。

2004年の第23回大会で、「社会主義をめざす国」と呼んでいる国を中国、ベトナム、キューバであることを宣言した。(それはその国の政府と政権党が社会主義社会の建設に努力していることを表現したもので、現実に社会主義社会に到達しているという意味ではないという立場を明らかにした。

 さらにこの第23回党大会では、「社会主義をめざす国」と規定するのは、その国が社会主義への方向性をもっていることを、わが党自身の自主的見解として判断していることを表現したものに改めた。ですから、北朝鮮のように社会主義に全く反する道を歩んでいる国は「社会主義をめざす国」と呼ばない立場を明らかにしています。

  つぎに中国ですが、1998年に関係が回復しましたが、関係回復にあたって、私たちは、中国の党への評価について「白紙」で臨むという立場をとりました。つまり、今日かれらが科学的社会主義(マルクス主義)の立場に立っているのかどうかについても、中国が「社会主義をめざす国」といえるのかどうかについても、判断を保留するということです。

 この項の私の評価

 上記主張はわかりにくいですが、1998年に関係回復したがその段階から2004年の23回大会までは中国については保留していたが、いろいろ検討した結果、中国を「社会主義をめざす国」に入れた。という事だと推測します。

 ですから結論は「中国が社会主義をめざす国」と位置付けたのは2004年と言えると思います。(社会主義の建設に努力している国)


 この回答を得て荒川さんは、新たに、第2回の質問を行っています。

「質問1」について第二回目の質問


 第1回目の「回答」で、中国を「社会主義への方向性に立って努力している国」としたのが、23回党大会であると述べていますが、なぜこの時点でこのような評価になったのかが書かれていません。「両党の交流の中で直接得た情報を含めて判断した結果として」とありますが、これでは何を意味するのかわかりま  せん。「両党の交流の中で直接得た情報」とは、具体的には何なのですか。それでなぜ、中国を「社会主  義への方向性に立って努力している国」と見ることにしたのですか。その情報は、当時党員に流して論議  したのですか。



第二回目の回答

 
  前回のメールで「中国の現状をどう見るかについて、詳しくは、不破哲三著『21世紀の世界と社会主義 日中理論会談で何を語ったか』(新日本出版社)の153〜190ページなどをご覧いただければ幸いです」とお伝えしました。そのなかに私たちが、中国の党と政府が社会主義社会の建設に向かって努力していると判断した理由も、現在の中国の指導部が旧ソ連の支配層とどう違っているのかについても、具体的に述べられています。
  私たちは、旧ソ連のような国家主導の経済統制は社会主義への道ではなく、市場経済を活用しながら資本主義の矛盾を乗り越えた経済社会の建設にとりくむことが社会主義への合理的な道だと考えています(日本共産党綱領第五章の未来社会論を、是非、学んでください)。
 ですから、中国やベトナムでソ連をまねた「計画経済」が行き詰まって、市場経済を通じた社会主義への道が模索されていることは、法則的なものだと見ています。中国が、この道を順調に進むのか、それとも旧ソ連のような間違った道や資本主義への逆戻りの道へと迷い込むのかは、その国の党と政府の姿勢にかかっています。
この点について同書で不破氏は「本当にその国が社会主義をめざす国だと評価できるかどうかの判断にとって、政府や党の指導勢力の社会主義の事業にたいする真剣さ、誠実さというものが、なによりも大事な基準のひとつになる」、「私たちは中国の内部にいるわけではありませんから、指導勢力のまじめさを測るモノサシとしては、その対外関係で見るしかありません」と述べています。そして、日本共産党と中国共産党の関係回復そのものの経緯、中台問題が緊張した際に不破氏が提起した論点への対応、イラク戦争に際して中国がとった態度などをあげて、中国共産党指導部の「まじめさ」を語っています。



「質問1」の第二回目の回答のまとめ


 この回答はきわめて興味深く、私は共産党のこの判断を知りませんでした。質問は、2004年から中国を社会主義に向かっている国と認定したのはわかったが、何を基準にそのことを決めたかというものです。

 回答は、不破氏の書いた本のページを示しそれを読んでほしいと答えながら、具体的に説明しています。その内容は

 1.市場経済を活用しながら資本主義の矛盾を乗り越えた経済社会の建設にとりくんでいる。

  2.政府や党の指導勢力の社会主義の事業にたいする真剣さ、誠実さである。

  ★誠実さの中身は 

     @日本共産党と中国共産党の関係回復そのものの経緯

     A中台問題が緊張した際に不破氏が提起した論点への対応

     Bイラク戦争に際して中国がとった態度

   などをあげています。

 この項の私の評価

  私は政府や党の指導勢力の真剣さ、誠実さがその国が社会主義を目指しているか否かのメルクマールになるという共産党の判断基準を全く知りませんでした。

  しかも、この判断を行うのが実質上不破氏一人であるという共産党の回答は、まさに現在の共産党の弱点をさらけ出しています。この回答者はまじめな方であり、この回答がおかしいことに気付いていません。(不破教の信者です。)

荒川氏は、2回目の回答を得てさらに3回目の質問を行った。

「質問1」について第三回目の質問



 次に、中国を「社会主義をめざす国」とする理由について、1、「市場経済を通じた社会主義への道が模索さ
れている」と述べています。確かに、中国は、市場経済を採用していますが、どのようにそれが社会主義への 道にとつながるのかは全く見えてきません。何度もいいますが、私には日本よりも「ルールなき資本主義」にしか見えないのです。

  次の理由として、「政府や党の指導勢力の社会主義の事業にたいする真剣さ、誠実さというものが、なによりも大事な基準のひとつになる」と述べています。そして具体例として、日本共産党と中国共産党の関係回復などを上げています。しかし、日本共産党と中国共産党の関係が回復したから、中国は「社会主義をめざす国」であるとするのは、科学的社会主義をかかげる政党として、あまりにも説得力のない回答ではありませんか。日本共産党に対して「まじめ」な態度を示したから、その党が政権につく国は「社会主義をめざす国」であるというのは全く納得いきません。一方でその「政府や党の指導勢力の社会主義の事業にたいする真剣さ、誠実さ」を持つ人々が、天安門事件の関係者を未だに弾圧し、一党独裁を続け、「08憲章」で一党独裁を批判した劉暁波氏らが逮捕しているのですから。

  さらに、イラク戦争に際して中国がとった態度を上げています。確かに、中国がイラク戦争に反対したのは立派だったと思います。しかしイラク戦争に反対したから中国共産党は「まじめ」であり、中国は「社会主義をめざす国」とする理由になるというのもおかしな話です。イラク戦争に対しては、ロシア、フランス、ドイツなどの多くのヨーロッパ諸国も反対したし、共産党ではなくても反対した政党も非常にたくさんあります。いうまでもありませんが、イスラム諸国はほとんど反対しました。「社会主義をめざす国」という以上、中国の社会体制が具体的に社会主義的であることをわれわれに示す必要があります。アリストテレス「真理は常に具体的である。」と述べましたが、中国共産党の「まじめさ」を強調するだけでは、説得力はありません。



第三回目の回答


 中国が「労働問題、教育・福祉の問題、環境問題、民主主義と人権」などに関する少なくなからぬ点で日本より遅れた水準にあることは、前回のメールにも明記したように、私たちは重々承知しています。何度も言いますが、そのことと中国が「社会主義をめざして」いるかどうかは別のことです。前回のメールでも述べたとおり、「私たちの運動は、他国の現状をモデルにした国づくりをめざすものではありません」。

 私たちはそもそも、日本を「社会主義をめざす国」にすることを、現在の問題として呼びかけてはいませんまた、将来の日本で社会主義への前進が課題となるというのは、あくまで、日本社会の内発的な発展の方向についての、史的唯物論と剰余価値学説からの理論的帰結にもとづく提起です。そのときの日本は、「労働問題、教育・福祉の問題、環境問題、民主主義と人権」などの面で、現状の中国よりすすんだ地点から出発し、さらに先へとすすむということは当然です。

 前回のメールで、「日本共産党と中国共産党の関係回復そのものの経緯」を 不破氏が語っているということを書きましたが、それを「日本共産党と中国共産党の関係が回復したから、中国は『社会主義をめざす国』である」と理解されたのでしたら、こちらの書き方が舌足らずだったのでしょうか。 私たちは、論争によってソ連共産党の誤りを全面的に明らかにしましたが、後から振り返れば、相手側の科学的社会主義に対する態度は口先だけのものだったという経験を持っています。ですから、前回のメールでもお伝えしたように、「私たちと違う理論的伝統」を持ちながら「最近は科学的社会主義の理論研究をすすめて、それを国家建設の土台に据えよう」としている中国共産党の、科学的社会主義(彼らの言葉ではマルクス主義)に対する態度――まじめに社会主義社会をつくろうという姿勢をもっているのかどうか――が大きな問題になるのです。「ロシア、フランス、ドイツなどの多くのヨーロッパ諸国」が、そういう検討の対象になりようがないことは自明のことです。
 ですから、前回も前々回もご紹介した本の、たとえば168ページで不破氏も語っているように、中国共産党との関係を回復した後も、私たちは相手への評価について「白紙」の立場から出発しました。そして、中国共産党の指導部との接触の積み重ねを通じてその「まじめさ」が確認できたと、接触の当事者である不破氏が語っていることを、前回のメールでお知らせしました。

 そのなかで「日本共産党と中国共産党の関係回復そのものの経緯」と述べたのは、「関係が回復した」事実ではなく、その過程で、我々の問題提起への対応がそれまでとは(もちろん旧ソ連の党とも)全く違うものだったということ、そして、関係回復にあたって中国側が過去の非を認め積極的に中国国民に周知したという「経緯」が今の中国共産党にたいする重要な判断材料となったということです。

 党綱領の改定をおこなった第23回党大会で不破議長(当時)は、「日本共 産党は、社会の変革過程についての審判者でもないし、ましてや他国のことに何でも口を出す干渉主義者でもないことに、留意してもらいたいと思います」、「そこに、自分たちの今の考えに合わないことがあるとか、自分が問題点だと思っていることを解決するのに時間がかかっているとかを理由に、あれこれ外部から批判を加えるというのは、日本共産党のやり方ではありません」と述べています。この立場をきちんと踏まえることが大切だと考えています。

 また、中国政府のイラク戦争反対の態度表明に関わって、不破氏は「そこにいたる過程で、中国の外交的探求の努力を痛いほど感じた」と述べています。科学的社会主義の立場からの提起にたいして、中国の指導部は(旧ソ連とは全く違って)正面から受け止める態度をもっていることが、「そこにいたる過程」で確認できた、ということです。詳しくは、前回も前々回もご紹介したこの文献を参照していただくことを、重ねてお願いします。



「質問1」の第三回目の回答のまとめ

  • 中国が日本より遅れていることは十分承知している。しかしそのことと中国が「社会主義をめざして」いるかどうかは別問題
  • 私たちの運動は、他国をモデルにした国づくりでない(中国の現状を捉えて批判するのは当たらない)
  • そもそも、日本を「社会主義をめざす国」にすることを、現在の課題としていない。

     (だから中国の現状に問題があっても、それがわが党に悪影響を与えるとは思えない)
  ・ 中国共産党と関係改善できたから、中国を「社会主義を目指す国」と認定したかのように理解された
     が、我々は関係回復した時点は「白紙」であり、その後の経緯の中で中国の「まじめさ」(不破氏が
   言っている)が確認できたので、そういう認定を行った。
  ・ 関係回復をふれたのは、その過程で中国側が過去の非を認め、中国国民にもその事実を知らせた
    経緯が、中国の評価の重要な材料になった。
  ・ 我々は、社会変革過程についての審判者でないし、干渉主義者でもない。(だから中国の現状に対  
     してとやかく言わない)
  ・ イラク戦争に反対した中国の立場は立派であった(これも不破氏が言っている)


次に質問2へと進む

「質問2」について第一回目の「質問」


(2)もし、1949年から社会主義を目指していると考えると、大躍進で多くの餓死者や文化大革命の混乱、
   天安門事件での学生・市民に対する武力弾圧は、社会主義を目指す国で起きたと考えていいのでしょ
   うか。



 第一回目の回答


 天安門事件の際にも、日本共産党は、社会主義とは根本的に相容れない暴挙であり「国民の命を尊重しない党に共産党を名乗る資格はない」と厳しく批判しました。両党関係回復後もさまざまな機会に、天安門事件についての私たちの立場が変わっていないことを伝えています。しかし、事件から20年だということで「赤旗」でキャンペーンをおこなう必要があるとは考えていません。
 天安門事件についての中国指導部の態度には、今でも大きな変化はないようです。しかし、彼らが真剣に社会主義社会の建設をめざそうとするかぎり、この問題での自己検討と、言論・集会・結社の自由と複数政党制を含む議会制民主主義の確立が、やがては避けられない課題になってくると、私たちは見ています。



「質問2」について第二回目の質問


 天安門事件についてですが、私が質問しているのは、「民主化を求める市民を弾圧したり、天安門事件に参加した人々をいまだに海外に追放したり国内で弾圧し続けていることをどのように思いますか。」ということです。これに関して一切答えていません。



第二回目の回答


 天安門事件そのものに対する日本共産党の態度は、前回のメールでお伝えしたとおりですが、この問題をめぐるその後の経緯について、一々私たちの見解を表明することはしていません。それは、国際問題化するような重大事態がない限り、他国の内政に属する問題に対する発言には慎重でなければならないという立場に立っているからです。この内部問題不干渉の原則は、私たちが旧ソ連と毛沢東派という2つの外国勢力とたたかった経験に根ざすものであると同時に、問題の全体を知る立場にない私たちがとりうる唯一の責任ある態度だと考えています。



「質問2」の回答のまとめ

  
内部問題不干渉の原則に立っている。国際問題化するような重大事態がない限り、他国の内政に属する問題に対する発言には慎重でならなければならないという立場を取っている。これは、問題の全体を知る立場にない私たちがとりうる唯一の責任のある態度だ。

 この項の私の評価

 ・天安門事件や文化大革命は、中国の国内問題で済まされるのか?

 ・回答は意識的に文化大革命をはずし、天安門事件にとどめている。なぜなら

 文化大革命は徹底的に批判した歴史的経緯がある。

 ・唯一の責任ある立場とは、誰に対して言っているのか、日本共産党は日本国民に対して責任ある態度を示す必要がある。これだけの問題を他国の国内問題として、沈黙を守るのは、日本国民に対する背信行為である。)


次に質問3へと進む

「質問3」について第一回目の「質問」


(3)中国が現在、社会主義を目指しているといいますが、今の中国での共産党による一党独裁・言論の自
 由の弾圧などについて日本共産党は、どう考えているのですか。また、経済的にはめざましく発展して
   いますが、経済格差が拡大し、共産党幹部による汚職や利権あさりが横行している現状をどのように
   考えていますか。日本よりもさらにルールなき資本主義のように思えますがどのように考えますか。



第一回目の回答


 中国社会の現状については、冷静に判断する必要があります。日本のマスコミは、格差が拡大していることは繰り返し伝えますが、貧困問題の解決に中国が大きな成果をあげていることは、ほとんど伝えません。世界銀行(アメリカ主導でつくられたワシントンに本部を置く機関です)によると、1981年には4億9000万人の中国人が極貧状態(生活費が1日1ドル以下)で生活をしていましたが、それが2004年までに8800万人に減っています。このことを報道したイギリスの新聞は、中国の経済政策を「(貧困の問題を解決するための)西洋の発展モデルにたいする力強い対案」と報じています。
  中国の現状をどう見るかについて、詳しくは、不破哲三著『21世紀の世界と社会主義 日中理論会談で何を語ったか』(新日本出版社)の153〜190ページなどをご覧いただければ幸いです。



「質問3」について第二回目の「質問」


 政権を獲得した1949年以来60年にわたって一党独裁を続け、それを批判する人々をいまだに弾圧し続ける国の共産党を何故そのように疑いもなく楽観的に評価することができるのか私は、理解できません
ソ連の時のように共産党の支配が崩壊して「言論・集会・結社の自由と複数政党制を含む議会制民主主義の確立」が実現する可能性もあるのではないでしょうか。
その時はまた、日本共産党は「もろ手を挙げて歓迎すべき歴史的事件」とする声明を発表しなければならなくなるかもしれません。中国共産党が本当に理想的な社会主義・共産主義を実現できると信じているのですか。



第二回目の回答


「中国が本当に理想的な社会主義を実現できると信じているのですか」とも書かれていましたが、私たちはそうした予断をもって中国を見ているわけではありません前回「やがては避けられない課題」という表現で指摘したのは、そのことを解決しない限り本物の社会主義には到達できないという客観的な関係についてです。
 しかし、それにもかかわらず、中国が貧困の克服において世界で最も顕著な成果をあげているという事実は、注目に値するものです(「それに反する指摘も山ほどあります」とのご意見でしたが、中国について様々な情報が流布されているからこそ、信頼できるものとして権威ある西側の国際機関の公式の見解をご紹介しました。



「質問3」について第三回目の「質問」


 日本共産党は、労働問題、教育・福祉の問題、環境問題、民主主義と人権などで、EU諸国と日本を比較して、「ルールある経済社会」としてヨーロッパ諸国が日本よりも進んでおり、日本は遅れていると批判しています。さまざまな資料があり、それは大変説得力があります。しかし、仮にも「社会主義をめざす国」という以上、中国が労働問題、教育・福祉の問題、環境問題、民主主義と人権などで、日本よりも進んでいる点を豊富な資料とともに示さない限り、私も多くの国民も中国を「社会主義をめざす国」として、魅力を感じることはないと思います。むしろ、中国が「社会主義をめざす国」であるなら、社会主義などめざさない方が良い共産党に政権を取らせない方が良いと思います。EU諸国並みの「ルールある経済社会」をめざそうとはするとは思いますが。

 私としては、中国を「社会主義をめざす国」とするのは誤りであると思います。政権を獲得した1949年以来60年にわたって一党独裁を続け、それを批判する人々をいまだに弾圧し続ける中国共産党が政権を取る中国を「社会主義をめざす国」などと呼ぶのは、やめた方が良いと思います。



第三回目の回答


 繰り返しになりますが、私たちは、中国でおこっていることにすべて賛成しているわけではありませんし、むしろ重大な問題があることも重々承知しています。もともと、議会制民主主義の伝統も何もなく経済的にも極めて遅れた条件の国々での社会主義建設が、多くの困難を伴うものになるということは、以前から指摘されたことです。現に中国で社会主義をめざす努力がおこなわれている以上、それが私たちのやり方と違っていたとしても、その成功を期待して見守るのが当然ではないでしょうか。
 
 党綱領の改定をおこなった第23回党大会で、不破議長(当時)は、「日本共産党は、社会の変革過程についての審判者でもないし、ましてや他国のことに何でも口を出す干渉主義者でもないことに、留意してもらいたいと思います」「そこに、自分たちの今の考えに合わないことがあるとか、自分が問題点だと思っていることを解決するのに時間がかかっているとかを理由に、あれこれ外部から批判を加えるというのは、日本共産党のやり方ではありません」と述べています。この立場をきちんと踏まえることが大切だと考えています。



「質問3」の回答のまとめ


1.中国は貧困問題に大きな成果を上げている

2.中国の現状は不破哲三の本を読んでくれ

3.「やがて避けられない課題」と前回答えたのは、解決しない限り本物の社会主義には到達できない。

4.現に中国で社会主義を目指す運動が行われている以上、そのやり方がちがっていてもそれを見守るのがスジ

5.共産党は、審判者でも干渉主義者でもない。あれこれ外部から批判を加えるべきでない。

この項の私の評価

 まず貧困問題に大きな成果を上げていると評価しているが、格差が拡大しているのは明らかである。さらに汚職や不正が蔓延していることも事実である。

 またまた不破氏の本を読んでくれという回答に何も疑問を挟まないこの回答者の純粋培養さにはあきれる。

 共産党間の友好の原則を持ち出し、自らの立場が正しいように主張するが、日本共産党は日本国民に責任を負う政党でなければならない。すでに中国が、日本を標的にし、包丁を研いでいるときに、あまりにもノー天気な無責任な発言である。(中国はアメリカと並び立つ大国を目指しており、世界を自らの支配下に置く野心を持っている。まさに100年遅れの帝国主義である。)


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「質問4」について第一回目の「質問」


(4)ソ連が崩壊したときに「ソ連は社会主義ではなかった」と日本共産党は述べましたが、いつから社会主
   義でなくなったと日本共産党は判断していますか。



第一回目の回答


 私たちは、ソ連の崩壊にあたって「大国主義・覇権主義の歴史的巨悪の党の終焉」を「もろ手を挙げて歓迎すべき歴史的事件」とする声明を発表しました。しかし、その当時は「ソ連が社会主義ではなかった」という見解ではありませんでした。その後、ソ連崩壊によって表に出るようになった諸事実を、私たち自身のソ連覇権主義とのたたかいの経験とあわせて検討したうえで、1994年におこなった第20回党大会で「かつてのソ連社会は社会主義社会でもなければ社会主義へと向かう過渡期の社会でもなかった」という認識に到達しました。



「質問4」について第二回目の「質問」


 先ずソ連についてのことですが、1994年の第20回党大会で、「かつてのソ連社会は社会主義社会でもなければ社会主義へと向かう過渡期の社会でもなかった」という認識に到達しましたと述べていますが、もしそうであるならば、1922年に日本共産党が結成されて以来70年以上にもわたって、ソ連を社会主義としてきたことに対する総括をしっかりしたのでしょうか。



第二回目の回答


 第20回党大会で不破委員長(当時。以下同じ)は、わが党が第14回党大会で提起した社会主義「生成期」論が、「国際的にも反響をよんだ日本共産党の独自の先駆的な見解」ではあったが、「多くの逸脱と否定的現象をともないつつも大局的にはなお歴史的な過渡期に属するという見方の上に立ったもので今日から見れば明確さを欠いていた」と述べています。これは、ソ連にたいする過去の見解が不十分であったことを、明確に認めたものです。

 同じ報告のなかで不破委員長が「私たちは、『生成期』論を提起したさい、ソ連社会がただ過渡期の途中にあるというだけではなく、そこには、スターリンその他の誤った政策によって複雑な制約や否定的傾向が刻み込まれており、それを克服しないかぎり社会主義への前進はない、ということもきびしく指摘しました」と述べているように、けっして「ソ連にはいろいろ問題もあるがその問題をいずれは克服するという立場」ではなかったことを付言しておきます。



「質問4」について第三回目の「質問」


 ソ連に対する見解ですが、社会主義「生成期論」「多くの逸脱と否定的現象をともないつつも大局的にはなお歴史的な過渡期に属するという見方の上に立ったもので、今日から見れば明確さを欠いていた」と述べていますが、この総括は、不十分であると思います。

 単に「明確さ」を欠いていたのではなく、決定的な誤りであったということをいうべきです。日本共産党が、社会主義「生成期論」を唱えていたときにすでに、ソ連体制に対する根本的な批判はさまざまな立場の人々からきわめて激しく行われていました。ドイッチャーやソルジェニーツィンそして日本では松田道雄などによって行われていました。そうした人々の批判をトロツキストであり、反共主義者であり、科学的社会主義の立場に立っていないなどといって、当時の日本共産党は耳を傾けませんでした。学生時代私がソ連を社会主義とは言えないというと反共とか、反スタとかいわれたものでした。
70年近くも間社会主義国でない国を、社会主義国であると言い続けてきた訳ですから、「明確さを欠いていた」のではなく、決定的な誤りであったと素直に認めるべきであると思います。そして、外部からの批判に真摯に耳を傾けなかったことをきちんと自己批判すべきであると思います。



第三回目の回答


当時の「さまざまな立場の人々」の「ソ連体制に対する根本的批判」に「真摯に耳を傾けなかった」とのご意見ですが、科学的社会主義の理念そのものを攻撃する立場から当時のソ連を非難した人々に「真摯に耳を傾けるべき」だったというご意見には賛成できません。今日の認識の到達を基準にして、過去の不十分だった認識を切り捨てることは容易です。しかし、そういう立場から「自己批判」を要求する意見は、日本共産党が論争を通してソ連共産党の理論の偽りを明らかにしながらソ連社会の実態を批判してきたことによって、今日の全面的な認識が可能になったことや、この論争のなかで自由と人権、民主主義を全面的に擁護する科学的社会主義の原則的立場を守り、発展させてきたことの意義を見ないものです。こうした探求がなければソ連崩壊後の日本で科学的社会主義の旗を守って党を存続させることはできなかったでしょう。



「質問4」の回答のまとめ


1.ソ連の崩壊をもろ手を挙げて歓迎すべき歴史的事件と捉えている。

2.1994年第20回大会で「ソ連社会は社会主義社会でもなけれ場社会主義へと向かう過渡期の社会でもなかっ
   た」という認識に到達した。

3.第14大会で提起した社会主義「生成期」論が、「国際的にも反響をよんだ先験的な見解」であったが、「今日か
   ら見れば明確さを欠いていた

  しかし、これは、ソ連に対する過去の見解が不十分であったことを明確に認めたものだ。

4.「ソ連にはいろいろ問題もあるがその問題をいずれ克服するという立場」ではなかった。

5.科学的社会主義の理念そのものを攻撃する立場から当時のソ連を非難した人々に「真摯に耳を傾けるべき」
   だったというご意見には賛成できません。

6.ソ連共産党との論争を通じて、理論の偽りを明らかにしながらソ連社会の実態を批判してきたことが、自由と人
   権、民主主義を全面的に擁護する科学的社会主義の原則を守り、発展させてきた。

この項の私の評価

  • 共産党の批判は、社会主義社会の人民の生活者の立場から批判されたものでなく常に共産党間の友好の原則の立場から批判されている。
  • ソ連との関係では、部分的核実験停止条約をめぐって志賀義雄や参議院議員の鈴木市蔵がソ連の立場を支持し賛成投票を投じ、その後ソ連と気脈を通じて行動したことに対する批判であった。(同じく中国問題も党内に毛沢東一派なるものが出現し、それへの対決が最大のものであった。)
  • 現在の中国問題も、中国が真に人民のための国づくりをしているかの視点が弱く共産党との友好関係を基準に判断しているところに最大の誤りがある。
  • ソ連との理論闘争を通じて、「自由と人権、民主主義を全面的に擁護する科学的社会主義の原則を守り、発展させてきた。」と主張するなら、これに全く敵対する中国共産党に対してもこの視点から批判しなければ、ソ連と同じ結果を招く。


 最後の質問5へ

「質問5」について第一回目の「質問」

(5)世界の共産党で選挙を通じて政権を取った政党はありますか。私はないと思いますが、それはなぜ   だと考えますか。


第一回目の回答


 ソ連の覇権主義とのたたかいのなかでソ連流の「マルクス・レーニン主義」とも正面からたたかってきた日本共産党が、今日の世界で、科学的社会主義の理論を堅持しながら国民のなかに広く根をおろして活動している数少ない党の一つとなっていることは、そのことの重大さを示しています。
 近年、中南米でアメリカ追随を拒否する「左翼政権」が次々と生まれています。そのなかで、ベネズエラのチャベス政権(小さな党ですが「共産党」も政権に参加しています)など、「社会主義」を掲げる例も複数生まれています。かつては武装闘争で親米政権を打倒した経験もあるニカラグアのオルテガ政権を含めて、これらの左翼政権はすべて選挙を通じて国民の多数の支持のもとに確立されているもので、今後の推移が注目されるところです。



「質問5」について第二回目の「質問」


 第5に、確かに中南米は今後期待できるかもしれませんが、「世界の共産党で選挙を通じて政権を取った政党」とは、とても言えないことは確かです。
  私の考えは、中国などの例を上げることによってしか、社会主義をめざす国を上げられないなら、社会主義に魅力を感じる人は日本の国民にはあまりいないであろうということです。日本共産党がめざす共産主義社会について魅力的に語れないところが、共産党がなかなか伸びない原因だし、若い世代で共産党の政策に魅力を感じながらも共産党員になる人があまり増えていないという原因だと思います。



第二回目の回答


 私たちの社会発展の事業は、根本的には、あれこれの外国の実例が魅力的かどうかではなく、社会発展の法則への科学的な認識に立って、日本でもやがては資本主義そのものの矛盾を乗り越えた社会への前進が避けられなくなるという確信にもとづくものです。

 なお、2004年の第23回党大会で党綱領の改定をおこなって以後、党綱領の未来社会論の部分――具体的には、生産手段の社会化によって労働時間の抜本的短縮が可能となり、人間の能力の全面的発達を保障できる可能性がひらかれるという部分など――に共感して入党する青年が増えています。今日、青年分野の党建設の遅れの克服が重大な課題となっているのは事実ですが、そのなかで、5中総以後、ほぼ毎月1000人のペースで新しい党員を迎えていることは重要な前進だと考えています。そして、入党者のなかで青年の占める比率が、以前よりも高くなっているという事実もあります。



「質問5」に対する回答のまとめ


1.近年、中南米でアメリカ追随を拒否する「左翼政権」が次々と生まれています。

2.私たちの社会発展の事業は、外国の事例を参考にするのでなく、社会発展の法則への科学的な認識に立
  って、日本でもやがては資本主義そのものの矛盾を乗り越えた社会への前進が避けられなくなるという確信に
  基づくものです。

3.2004年の第23大会で党綱領の改定をおこなって以降、これに共感して入党する青年が増えています。

この問題にたいする私の感想

 第23回大会以降、青年の党員の入党者が増え、入党者の青年党員比率が高まっているとの回答ですが、詳しくはわかりませんが、事実に反していると思います。大阪10区の選挙戦でビラを配っていたのは、すべて老人でした。他政党が若者を並べはつらつと戦っている姿から、共産党はもう終わりだなと感じたのは私だけでしょうか。


  以下参考に荒川氏が出された第4回目の質問を引用(要約して)しておきます。これには回答はなかったのですが、荒川氏がこれまでの3回の回答に対してどのように考えておらえるかが分かります。

(これまでの「質問・回答」はすべて私が要約していますので原文ではありません。より正しく理解するためには、さざなみ通信の原文を当たってください、)


参考

第4回質問(荒川氏)  (これには回答がありませんでした)


 回答の最初に「科学的社会主義の理念そのものを攻撃する立場から当時のソ連を非難した人々に『真摯に耳を傾けるべき』だったというご意見には賛成できません。」とありますが、こうした考えこそ私は納得できません。

立場の違う人々を「科学的社会主義の理念そのものを攻撃する立場」というレッテルを貼って全面的に排除するのではなく、是々非々で臨まなければ日本共産党の「科学的社会主義」は豊かな理論になる事はないと思います。

 私が言いたいのは、「社会主義生成期論」を「明確さを欠いていた」といった言葉で済ますのではなく、今日の到達点にたって日本共産党はしっかり自己批判する必要があるという事です。日本共産党といえども、誤りはあります。誤った事を「明確さを欠いていた」などと曖昧な言葉で済ませてしまうのではなく、ソ連を長い間社会主義と言い続けた責任をきちんととって、二度と同じ過ちを繰り返さないようにするのが公党として責任だと思うから言っているのです。

 「現に中国で社会主義をめざす努力がおこなわれている以上、それが私たちのやり方と違っていたとしても、その成功を期待して見守るのが当然ではないでしょうか。」と質問回答係の方は述べていますが、「科学の自由を認めず、共産党の一党支配を批判する人々弾圧し続ける中国共産党を、「私たちとやり方が違う」という範囲でとらえ「その成功」を期待すべきなのですか。私は、中国共産党は、科学的社会主義の理論からして明らかに逸脱していると思います。

中国共産党が自分の国を共産主義と呼ぼうが社会主義と呼ぼうが自由ですが、日本共産党が中国を「社会主義をめざす国」と大会で決定するべきでないといっているのです。しかも、2004年の時点であらためて、「社会主義をめざす国」としたのもおかしな話です。日本共産党との関係がこの時点で改善されたからといって、この時点から中国が「社会主義をめざす国」になったというのは、歴史学的には通用しません。
 このような大会決定をすれば、日本共産党がいくら中国共産党とは違うといっても社会主義では一党独裁もアリなのだと、国民に誤解されても仕方がありません。

 残念ながら世界にはまだ、社会主義も「社会主義をめざす国」も存在しないというのが現実なのではないですか。
 質問回答係の方は、「私たちはそもそも、日本を『社会主義をめざす国』にすることを、現在の問題として呼びかけてはいません。」と述べています。

 スターリンや毛沢東が粗暴であったとか、中国やソ連が経済的にも民主主の発展が遅れていたからであるというのは全くその通りだと思います。しかし、それなら資本主義の発展した国で、なぜ選挙を通じて共産党が政権を取った事がないのかが問われます。

 また、日本共産党と政策的に最も近い関係にある社民党との関係を大切にするべきだと思います。今、社民党は民主党と連立政権をくむ事になりましたが、社民党の政策は、民主党よりも日本共産党の方が一致点は大きいです。小選挙区制のもとで共産党が伸びていくためには、社民党との共闘関係を今後構築していく事が大切なのではないかと考えます。

それから、前回の意見として「1、党首・県委員長・地区委員長は、直接党員が選べるようにすべきだと思います。」と書きましたが、これに対して一切触れていません。答えていただければ幸いです。


追伸 「質問回答係」の方には3度も回答をいただいて感謝しています。ただ、私としては、「質問回答係」の責任
    者あるいは文章を最終的に書いた人の氏名を教えていただきたいと思います。