森友学園第3弾:馬脚を現した松井知事の「忖度」発言


平成29(2017)年3月26日



「忖度」の意味を取り違えている松井知事

 3月26日付毎日新聞は2面【社会】で松井・維新代表の忖度発言を取り上げている。その見出しは「首相はそんたくを認めよ」というものである。サブ見出しに「悪質性のないと指摘」と書かれている。(毎日新聞は「忖度」をひらがな表示に変えている)

 日本維新の会は3月25日東京都内で大会を開き、退会終了後の記者会見で「森友学園」が国有地を格安で取得した問題について、「『本質を分からなくしているのは、皮肉にも安倍総理。そんたくがないと強弁しすぎている。丁寧に説明すべきだ』と述べ、安倍晋三首相の国会での答弁が、疑惑を過熱させているとの認識をしめした」という記事を載せている。

 この松井発言は極めてまともで本質をついているように見えるが、彼は「忖度」という意味を取り違えて発言している。

松井知事は「国民の意思」と「忖度」を取り違えて発言している。

 新聞やインターネットでも松井知事の「忖度」の理解のおかしさを取り上げていないが、彼の発言をさらに正確に述べると、松井知事は

 「忖度には、悪い忖度といい忖度がある」と持論を展開。忖度とは「慮る、気を使う」ことだとして「政治家は国民の思いを忖度して政策をすすめていく」ものだとした。

 昭恵夫人付の職員が籠池氏サイドにファクスで返事(27年11月15日)をした問題について、「希望に添えませんという中身。これは悪意に満ちた忖度ではない」との見方を示し、首相は森友問題について「悪い忖度ではないとはっきり言うべき」と述べた。

 何が問題か、松井氏は「政治家は国民の思いを忖度して政策をすすめていく」と発言しているが、「政治家が国民の思いを捉えて政策を進めていくこと」は基本の基本であってそのことを「忖度」とは言わない。

 彼の決定的間違いは、この谷首相夫人付職員の問い合わせ(口利き)が、現場の役人に影響を与えたか否かの判断をせずに、「希望には添えません」という文書の一部だけを取り出し、影響がなかったと答えている。

 しかし実際は、この時点では10年の借地を50年にできないかというお願いや、工事費の建て替えを早くもらえないか等の要望に対して、「27年度は予算措置はできないが28年度での予算措置を行う方向で検討中。」と答え、現にこの支払は4月6日に行われたという。(通常の役所の事務では考えられないスピード感である・・この谷氏の問い合わせが効果があったことを示している。)

 さらには、籠池氏が用地の地下からゴミが発見された後に、東京に上京し財務省に赴いた際(28年3月15日)に「財務省が前向きと感じた」とも語った。(この時、彼に対応したのは、財務省国有財産審理室長の田村嘉啓氏であり、この人物は谷首相夫人付職員に回答した人物でもあった)

「忖度」は役人独特の習性と関連する言葉  

 今問題になっているのは、役人の習性の問題として「忖度」という言葉が語られている。役人の習性は「基本的にはヒラメ職員が多い= 『上司の顔色ばかり窺っている』」ということを前提に、今回の森友問題の様々な疑惑は、安倍首相夫妻の行動から見て、トップの意向は、「森友学園を平成29年には開校させる」ことだと「忖度」し、国の役人も大阪府もみんながそのために、違法すれすれの例外処理を連続的に実行したことが批判されている。

 本来小学校の認可手続きは様々なハードルがあり、一般的には10年ぐらいかけて取り組んで、初めて認可されるのに、資金力も経験もなく、まともな教学理念も持たない森友学園が、今年4月開校に向かって財務省や大阪府が一丸となって取り組まれていたことの異常性が問われているのである。(テレビに出てきた小学校の認可手続きを行っている人の話によれば、役人は無理難題ばかり押し付けてくる。森友学園の場合、森友学園の要望に応え、事前に私立小学校設置認可基準を緩和している。ありえないことだと発言されていた。)

 役人は何を考えたか、教育勅語を教育理念に据える学校の異質さを感じながらも通常では考えられない学校だが、安倍首相の考えならわかる。安倍首相は戦前回帰がしたいのであろう、馬鹿げているがこれに協力することが出世につながると思い、安倍晋三に対する貢献度争いをしたところに森友学園問題の醜さがあるのである。

 役人は、自らの行為が醜いことを自覚しており、その関係資料を全て破棄したと強弁している。これが表に出れば自分の立場がまずいことを知っているからである。

 面白いことにこの森友学園関連の書類は全て破棄されたはずなのに、証人喚問で籠池氏が、谷総理夫人付職員が籠池氏の依頼に伴い、財務省に問いあわせた結果をFAXで回答していた事実が暴露されると、官邸は慌ててそのFAXをコピーして議員や新聞記者等に配った。

 この谷氏の行為(安倍夫人の管理下で)が口利きで、それを受けて回答し、その時点では困難だが、それ以降に籠池氏の意向(安倍氏が応援している)を受け入れたことが「忖度」である。官僚から見れば、安倍首相に一つ恩を売ったというのが正直な思いである。(現にこの時財務省理財局長だった迫田英典氏は半年後には国税庁長官に出世している。・・・役人はこれらの現実を見ており、トップの意向に沿った動きを行うと出世するという意識が身に沁みついている)注1

注1:ここでは「忖度」について解明しているが、森友学園小学校建設は、28年年9月3日迫田氏
   が安倍首相に「この方向で解決する」と報告しこの段階で基本的合意がなされたとみてい
   る。
     その内容は、安倍首相は、「私の妻が名誉校長を務める予定のこの学校の実現に向け
   て、財務省としても便宜をはらってほしいと指示したと思っている。・・・この指示がその後の
   土地取引の8億円の減額につながったとと推測している。、
    ※首相動静9月3日(木)として以下の行動が伝えられている。
     【午後】2時17分から27分、財務省の岡本薫明官房長、迫田英典理財局長。

松井知事は、大阪府において「忖度」あったことを早くから認めている。

 松井知事は、この森友学園を認可を強引に行おうとしていた。この事件が勃発(29年2月9日)した当初、松井知事は「この認可は教育長の権限において行われる」と逃げを打ちながらも、認可には積極的姿勢であった。しかしだんだん社会問題する中で、時間的に間に合わないかもと逃げを打ち始めた。さらに現地立ち入り検査(3月9日)を行った際に、森友学園側とのトラブルを引き起こし、立ち入り検査を20分ぐらいで席をたち、森友学園から手を引く口実を得た。

 その後3月16日の松井知事の発言を産経WESTは以下のように伝えている。

 「大阪市の学校法人「森友学園」が小学校用地として国有地を格安で取得した問題で、松井一郎大阪府知事は16日、『財務省は学園に親切な対応をした。安倍晋三首相の昭恵夫人が(開校予定だった)小学校の名誉校長に就いており、職員が首相をおもんぱかったとの認識を示した。」

                       2017.3.16 12:43 産経WEST

 ここでは松井知事は「忖度」という言葉の意味を正確に使っている。

  上記の「職員が首相をおもんばかった」という職員は、財務省の職員と読めるが、その後の松井知事の記者会見でも、大阪府の小学校の認可担当の職員の動きもこの言葉で語っている。彼は明確に安倍首相の意向を忖度した結果が現在の状況を引き起こしたと主張している。

   一方3月23日の証人喚問、翌日の参議院の集中予算委員会で自民党西田議員は、今回の森友学園の問題は、財務省側には全く問題がなく、安倍首相側からの働き掛けもなく、問題があるのは大阪側の学校認可手続きに問題があると責任を維新側に押し付ける議論を展開していました。

 また、籠池氏も最大の裏切者は、松井知事だと証人喚問で言い切りました。

松井知事の良い「忖度」論議は、大阪側に責任転嫁する国への反撃

 松井知事は、「忖度」の存在を認め、それが日本の行政の慣習だとの論理で逃げを図ろうとしていましたが、国(東京)は、「忖度」などありもしないたわごとと大阪側(維新)をせめて来たことに対する反撃が、良い「忖度」であるという論議で、安倍首相を引っかけようとしているのではないか?

 無知なような姿を見せ、逆に安倍首相がその通り、私の事例は「良い忖度」だという主張を引き出そうとしているのかもしれない。狐とタヌキの化かしあいである。

 松井知事の「忖度論」の最大の誤りは、「安倍首相の意向を自分の部下が『忖度』し、異常な審議会になってしまった。」というのが彼の主張である。

  そんな馬鹿なことはありえない、安倍首相の意思も「忖度」されたが、大阪の審議会や担当職員は松井知事の意向を「忖度」し、異常な私学審議会の結論を出してしまった。

 このことは大阪府私立学校審議会の会長である梶田叡一氏が、「私学審議会にかけられた案件を私学審議会が不認可にすることはありえない。我々は行政の意向を尊重して結論を出すに過ぎない」と言い切った。(まさに忖度である。)

   この発言こそが真実である。行政は「〇〇審議会」を隠れ蓑にして、重要な決定を行っていく。また委員会に参加した大学の先生達は、どこどこの審議会の長だという肩書を利用している側面がある。持ちつもたれる関係である。

  そのことをこの私学審議会会長の梶田叡一は見事に吐露した。正直な人である。(政治家ではない。) 

最後に赤旗はこの記事をどう伝えたか?

   3月26日付赤旗は、大阪維新の大会の報道を行っているが、その見出しは「松井代表『森友は横において』」という見出しで、「真相解明に背を向ける」という記事を載せている。

  森友問題の戦犯は、安倍夫妻、財務省、大阪維新(とりわけ松井代表)である。その大阪維新が真相解明に前向きになるはずがなく、当たり前のことを書いても何ら効果はない。

  問題は維新を追い詰めるには、どこをつけばよいのか解明し、追い詰めていくことが大切である。一般紙は松井氏に発言「忖度にはいい忖度と悪い忖度がある」「安倍首相は、『忖度』を頑強に否定し、自ら火に油を注いでいる」という発言に注目している。

   これは、明らかに仲間割れである。証人喚問で自民党から質問した西田氏は政府側を守り、大阪維新を切り捨てようとしている。森友疑惑の当事者間の仲間割れの兆候がある。ここをしっかり報道し、彼らの敵失をさらに誘うことが大切である。