大阪柏原市長選挙結果は、共産党の弱点が最大限暴露された。


 平成29(2017)年2月18日

 少し古くなるが、大阪市の柏原市の市長選挙があった。(2月12日投開票)この結果は、共産党にとって最悪の結果になった。

 まず、結果から見てみよう。

  柏原市長選挙(2017年2月12日投票)

 

 

 立候補者

党派 

票数 

投票率 

党派及び前歴等

冨宅 正浩

無所属

11757

47.03%

維新推薦 市議会議員

 

友田 景

無所属

9227

36.91%

自民推薦  会社役員

 

浜浦 佳子

無所属

2283

9.13%

見張り番 市議会議員

 

江村 淳

無所属

1734

6.94%

共産推薦  政党職員

 

 

 

25001

1

 


 結果は大阪維新の候補者の圧倒的勝利であり、共産党の推薦候補者は6.94%にとどまっている。この結果について、大阪民主新報(2月18日付)は、以下のように書いている。

 「柏原市長選挙」「江村氏及ばず」という見出しで

 当選した富宅正浩氏を「得票は1万1757票ですが、前回の維新候補の1万7753票から大きく減らしました。維新は現職市長の女性問題や、府議・市議の不祥事が続発。富宅氏の市長選挙出馬で市議会の議席を失いました。(注1)

注1:富宅正浩氏は、2013年の市会議員選挙では無所属で立候補し最高得票

   2922票を獲得した人物です。その後大阪維新に鞍替えした模様です。

 江村氏は「維新政治を終わらせ暮らしや教育、子育てを応援する柏原市に」と教育費・保育料負担軽減、教育環境整備、子どもの医療費助成制度充実、公共料金引き下げなどを訴えました。

 という記事を載せていますが、この訴えが市民に支持されたのか否かの判断をしていません。事実(結果)は、この訴えが何ら効果がなかったことを物語っています。それを明らかにするため、前回市長選の結果を見る必要があります。

     柏原市長選挙(2013年2月10日投票)

得票率
中野 隆司 大阪維新の会
17753
70.16%
社会福祉法人理事、元府議

浜浦 佳子 無所属
4591
18.14%
介護サービス事業会社役員

江村 淳 無所属
2961
11.70%
団体職員



25305



 この選挙結果は、大阪維新の会の中野 隆司氏が当選していますが、得票数17753票得票率70.16%と圧勝です。橋下氏や松井氏の選挙でも50%チョイぐらいの得票率ですから、この選挙結果は全く異常な圧勝です。(柏原市には、何か闇があることを連想させます。)

 この時の選挙で共産党は今回と同じ候補者を立て、2961票、得票率11.70%を獲得していますが、今回は、1734票、得票率6.94%です。この結果は大敗北です。

 大阪民主新報が書いたように維新はスキャンダルまみれです。中野前市長は市役所を抜け出しては、見知らぬ女性と出歩く姿を多くの関係者に目撃されていたり、印刷会社を経営する山本市議は、政務活動費でリースしたコピー機を使い、名刺を商売目的で印刷していた。(議員控室からは作成途中の名刺のシートも見つかっていた。)と批判され、議員辞職を行っています。

 このような政治状況の中で市長選が戦われ、共産党は維新政治に終止符を打つと宣言しながら、維新候補が50%近くの票を獲得し勝利し、一方では共産党は前回の得票率11.70%を今回は6.90%落とす大失態を行いながら、大阪民主新報の記事は、維新の票数が減ったと書いていますが、減っても50%近くの票数を勝ち取る維新と、維新の政治的腐敗が明らかな中で、それを攻めきれず、逆に共産党が大敗北するこの政治情勢をのんきに報道する大阪民主新報間抜けさには呆れるばかりです。


2013年

2017年

2013年比


得票数

得票率

得票数

得票率

共産党

2961

11.70

1734

6.94

58.56%

大阪維新

17753

70.16

11757

47.03

66.22%

その他

4591

18.14

11510

46.04

250.71%

25305


25001



 
 上記表から明らかなように、大阪維新の会は2013年(前回)比66.22%獲得しているが、共産党は2013年比で58.56%しか獲得していない。明らかに敗者は共産党である。

 大阪維新の会は不祥事続きで、票数が激減する社会情勢があるが、共産党は不祥事が発生したわけでもないのに、同じ候補者でなぜこれだけ大きく敗北したのか科学的な総括が必要になってくる。

 ついでに2013年度の市会議員選挙の結果から、柏原市における政党の力関係を見ておきたい。

柏原市議会議員選挙(2013年9月8日投票)      

政党名

得票数

得票率

当選者数

  立候補者数

共産党

2851

9.33%

2

 2 

公明党

4322

14.14%

3

 3 

自民党

5758

18.84%

3

 4 

無所属

17629

57.69%

9

 14 

 

30560

1

17

 23 

 
 この選挙では大阪維新を名乗る者がおらず、自民党が18.84%、公明党が14.14%、共産党が9.33%であり、無所属議員が57.69%を占めており、余り政党化が進んでいない選挙区に見える。注目すべきは民進党の候補者や社民党の候補者が全くおらず、社民系政党の解党状態が伺われる。

 共産党は、9.33%を獲得しており、大阪府内の最低限のラインをかろうじて維持している。

 今回の市長選の結果は、江村氏は「住みよい柏原民主市政をつくる会」の候補でありながら、共産党の基礎数値9.33%にも及ばず、6.94%に留まりました。これは市民型共闘組織で戦うことが何ら効果なく、むしろ失敗した事例です。

赤旗は柏原市長選をどう報道したか

 2月11日(土曜日)の選挙戦最終日に「市民の願い届く柏原市に」「江村候補に期待広がる」と赤旗13面【近畿】に大きく取り上げています。その内容は「住みよい会と日本共産党市委員会は「トップダウンで市民いじめの維新市政ノー、くらし・福祉・教育最優先の願いはこぞって江村さんへ、の訴えを広げに広げよう」と最後までの奮闘を呼びかけています。と報道しています。

 ところが、2月14日の赤旗では、4面【政治・総合】の選挙結果欄の最後に、「大阪・柏原市長選」「江村氏及ばず」という記事を載せています。

 負けた選挙はすべて「及ばず」という表現で処理しているのでしょうか?結果は、前回市長選の58.56%しか取れず大敗北です。この「敗北」という言葉がつかえない限り、共産党の報道の「真実」性が疑われます。

柏原市長選挙はなぜ大敗したのか?原因は維新だけではない! 

 柏原市の悪政の根源は「柏原市行政協力委員(区長会)制度である」としてその問題点を克明に明らかにしている「革新・柏原市民オンブズマン」(市政オンブズマン)のブログがある。以下一部転載させてもらう。(転載は自由とされている)

 柏原市には、平成23年4月現在、市内各地区の住民が参加する自治組織(自治区というらしい)において選任された代表者として「区長」の名称で116名の方がその任に当たっているという。この人数は115名から120名位の間で推移するも、どのような形で選任されるのかは不明である(詳しい方がおられれば教えていただきたい)。

 そして、この代表者(区長)を、今度は市長が「行政協力委員」として委嘱するという。

 この行政協力委員で構成する「区長会」には、区長会活動の名目で総額5,207,040円(H23年度を例、以下同じ)の補助金が支給され、併せて町会の防犯灯維持管理名目でも区長個々に総額12,119,500円の補助金が支給されている。また個々の行政協力委員(区長)には、非常勤職員扱いの報酬として総額14,248,985円が支給されている。およそこの総額31,575,525円ともなる金額が、毎年、区長会あるいは区長個々に支払われているのである。

 上記の金額の数値については、当方の開示請求に基づく市の開示資料から判明したものであり、疑問等があれば、市の窓口に問い合わせれば、細かく説明をしてくれるはずである!? 当方は当方なりの調査・検証を今後も継続していく予定である。 

O 報酬・補助金・ほか表彰等の餌で市長に操られている

     区長会兼行政協力委員制度

(すべては自身のための選挙基盤づくりである)

「柏原市行政協力委員(区長会)制度」

  市長の委嘱を受け報酬や補助金を受けながら

   市長の後援会メンバーに

  多くの行政協力委員兼区長たちが名を連ねているという

  114名の団体がどう動くかでこの団体の正体がさらに明確になるはずである!!

 市長のリコールを始め、議会に対するリコール、そして腐敗政治の根源となっている114名の区長が兼務する「行政協力委員制度」の廃止をしなければ、この「まち」に未来はない!!!

 以上引用

 おそらくこのブログが柏原市の行政腐敗の本質をついている。共産党はこの問題を理解できず、大阪府下のどこの選挙戦でも通じる政治宣伝を行っていると思われる。(「安全・安心・やさしい大阪」型の政治宣伝)

 問題の本質は「行政協力委員制度」にあると思われる。これとの戦いを先行しない限り、その主張はピント外れになってしまう。

 ここで、私が一番注目するのは、大阪維新の橋下氏のご都合主義である。彼は大阪市がこれに似た組織を持っており、選挙の集票マシンとして使っていた節があったが、これを最大限攻撃したのが橋下氏である。しかし彼は柏原市ではこの怪しげな組織を最大限利用している。

 組合対策も、大阪市では組合つぶしを最優先したが、柏原市では当局派の組合を逆に利用しているようだ。

 橋下氏の」政治主張の一貫性に疑問符が付く。

大阪維新との戦いでなく「柏原市行政協力委員(区長会)制度」が最大の敵

 これを実証するもう一つの数字がある。それは市長選挙と共に戦われた市議会の補欠選挙である。この結果は以下の通りである。

     

候補者氏名

得票数

得票率

 党派

 経歴

その他の情報 

当選

寺田 悦久

11,784

51.85%

無所属

元市議

自民推薦

 

鈴木 興治

10,942

48.15%

無所属

弁護士

暴力事件を起こしている

     合計

22,726

1

 

 

 

 
 この補欠選挙は究極の選択のような選挙である。寺田税久氏は2013年の選挙の際923票で落選した候補者である。弁護士の鈴木興治氏は暴力事件で逮捕歴もあるような人物である。

 しかし、寺田税久氏に自民党が推薦すれば、同時に戦われた市長選挙の維新候補とほぼ同じ票数が確保されている。(維新市長は11757票、寺田氏は11784票)

 つまり「集票マシーン」である「行政協力委員制度」が動けば、維新であろうが自民党であろうが同じような選挙結果が出ることを証明している。

 大阪維新は、補欠選挙に立候補していないことを見ても、柏原市に政治的基盤は無いと思われる。

 共産党は維新政治を「維新政治を終わらせよう」というスローガンを掲げて戦ったが、維新政治が柏原に政治基盤を持っているのではなく、もっと古い土着政治の網が柏原市には張り巡らされているのである。柏原市における権力構造を見誤っているのである。