大阪ダブル選挙と共産党の選挙総括


平成27(2015)年11月26日


大坂ダブル選挙の結果は、反維新勢力は惨敗であった

 選挙結果はすでに「大阪ダブル選挙、反維新候補が惨敗・・・どうしてこういう結果になるのか?」ですでに書いたが、採録する。

●大阪知事選挙の結果
氏名
得票数
得票率
松井一郎
2025387
64、07%
くりはら貴子
1051174
33.25%
美馬幸規
84762
2.66%

3161323
100.00%

 結果は維新松井一郎氏の圧勝である。ほぼダブルスコアーである。


松井一郎氏
くりはら貴子
得票差
票数
2025387
1051174
974213票
倍率
2025387
1051174
1.93倍


●市長選挙 (得票率50.51%)
氏名
投票数
投票率

吉村洋文
596045
56.42%

柳本顕
406595
38.49%

中川暢三
35019
3.31%

高尾英尚
18807
1.78%

1056466
100.00%


 知事選挙よりはましであるが、ほぼ1.5倍の差がある。

吉村洋文
柳本顕
得票さ
票差
596045
406595
189450票
倍率
596045
406595
1.47倍

 これを今年5月に行われた「大阪都構想」の住民投票の結果と比較すれば、惨敗だということがよく分かる。
●「大阪都構想」住民投票の結果と比較
大阪都構想住民投票結果との関連(投票率66.83%)


住民投票
市長選挙
票差
賛成
694844
596045
ー98799
85.78%
反対
705585
406595
ー298990
57.63%
その他
53826


有効投票
1400429
1056466
ー343963
75.44%
得票率
66.83%
50.51%
ー16.32%


 この比較から明らかなように、投票率が16.32%も下がり、盛り上がりに欠けた選挙戦になったことは伺われるが、都構想賛成派(維新)が98799票減らしたのに対して、反対派は298990票も減らしていることが分かる。維新と比較すれば、約3倍の票がこの短期間に逃げているのである。今回の選挙では住民投票で勝ち取った票数の57.63%でしかない。

共産党は大阪ダブル選挙の結果をどう評価したか?

 赤旗を見る限り(11月26日現在)まとまった総括は出ていない。赤旗記事を順を追って拾って見ると
●11月23日(開票日翌日)
  「ダブル選」「オール大阪」候補健闘」「橋下『維新』候補に及ばず」という見出しを掲げ、記事も「健闘したが激戦を制することができませんでした。」という内容になっている。
●11月24日の赤旗 
  ダブル選「オール大阪」の共同さらに」「共産党大阪府委と『会』が声明」と大見出しを掲げ、中見出しで「大阪維新」「『都』構想再挑戦を表明」としています。
  記事内容は、「府民・市民の利益と相いれない『維新政治』の矛盾の深刻化は避けられない(党大阪府委の声明)、『引き続き@維新政治』の危険性を府民的・市民的に暴露するとともに、A大阪の政治を変える真の方向を指し示し、B今回築かれた『オール大阪』の共同を、さらに大きく広げることに力をつくす」(両会の声明)と表明しました。書いています。
  さらに自民党や民主党のコメントも載せています。
  ★自民党選対 自民党の茂木敏充選対委員長
    大阪知事・市長ダブル選で同党推薦候補がともに敗れたことについて「誠に残念だ。選挙   結果を謙虚に受け止め、敗因をよく分析したい」とするコメントを発表しました。
  ★公明党の斎藤鉄夫選対委員長
    「選挙で示された府民、市民の意思を尊重したい。新知事、市長が対立から統合に向けリ   ーダーシップを発揮することを期待する」
  ★民主大阪府連の尾立源幸代表
    大阪ダブル選で、「選挙結果を厳粛に受け止め、民意の表れとして尊重しなければならな
   いと考える。新しい知事、市長へは、大阪の発展と府民・市民の暮らしの安心に向けた行政
   運営を期待する」とコメントを出しています。    

●11月25日の赤旗は、すでに総括はすでに終わっており維新批判を再開
  「ダブル選 大阪維新の会見」「『都』構想議論 継続いうが」「大阪市の廃止変わらず」という見 出しを掲げ維新政治を批判しています。

 これらの赤旗の記事を見て、共産党の選挙総括の特異性を感じます。自民党や公明党、民主党の選挙後の談話は、「基本的には選挙の結果(敗北)をまず民意の表れとして受け入れ、当選した新知事・市長に対しては、自分たちが主張してきた事を考慮して府政の舵取りを行うことを期待する」という趣旨で構成されています。
 共産党は、まず選挙に負けた事を受け止めず、独りよがりな主張を行っています。これでは選挙という民主主義の手段を認めないような主張にみえます。選挙で勝てなかったのは共産党の戦い方に問題があったのであり、まず自らの敗北の原因を総括しなければなりません。その総括抜きで、「あすから維新政治と戦うぞ」だけを前面に出しても何も実を結びません。当選者には一定の敬意を払うべきです。この時点では維新が府民から支持されたのです。それが冷徹な真実です。  これを認めることから出発しなければなりません。
 福田首相は総裁選に敗れた時「民の声は天の声というが、天の声にも変な声もたまにはあるな」「敗軍の将、兵を『語る』でいきますから。」の言を残して総理総裁を退いたが、共産党のように、負ければ民意が悪いというような総括では、民主主義に敵対しているように見える。   
  

高槻・島本民報「2大選挙(大阪府知事・大阪市長)で、敗北しました。

 共産党は選挙で負けた事を一切認めないと批判してきましたが、わが地域の高槻・島本民報は上記大見出しを掲げた内容のビラを11月25日付で、日本共産党高槻島本地区常任委員会名で発行しました。
 長いあいだ共産党と付き合ってきましたが、選挙を「敗北した」と総括した文書を始めてみました。いつも高槻・島本民報を批判してきましたが、これは画期的なビラです。
 しかし、内容はいつもどおり、頓珍漢な内容になっています。
 問題点の第一は、「敗北しました」と言いながら、「なお、高槻市と島本町の得票率は大阪の衛星都市より、少し高い結果でした。」未練がましい余計な事を書いています。しかも得票数・得票率を書いた図表では、高槻市の「くりはら候補」の得票率は31.81%、島本町は33.49%で、大阪府全体では33.25%ですから、決して高槻市が大阪府下全域より良い結果を出している訳ではありません。(島本町は確かに上ですが)・・・資料1参照(文末に記載)
 しかも何より大事なことは、この票数は、自民党も民主党も公明党も含めた票数です。もし他の衛星都市より、高槻市が優っていたとしてもそれは、高槻市の自民党がしっかりしていたからかも分からない数字です。他の衛星都市より「くりはら候補」の票数が若干良かったとしても、それは高槻市の共産党が奮闘した証拠には全くなりません。
 (ちなみに、橋下市長は住民投票で負けた際に、僅差でしたが僅差だという泣き言は言わず、「民主主義って素晴らしい」と話し、負けたのだから引退すると言いました。このようなイメージ作戦で負けているのです。)
 むしろ、今回の選挙は共産党が前面に出すぎて自民党支持者を蹴散らしたという意見もありますから、共産党が頑張らなかった方が「くりはら候補」の票が増えたかもしれません。「くりはら候補」は自民党票の5割しか獲得できなかったこの現実をどう捉えるかが今回の選挙総括の「肝」です。
 共産党がいう「1+1=2でなく、3にも4にもなる」という見方(宣伝)が完全に間違っていたことを最大限に注目すべきなのです。
 しかも保守との共同が成果を上げない事を、共産党はこの間の高槻市長選挙ですでに学んできたはずです。高槻市では共産党から自民党までが連携し、市長選挙を戦ってきましたが、相手候補との得票差は僅差です。
 

保守と共同してきた高槻市の市長選挙の流れ(保守との共同は力にならない実証例)

 以下2003年意向の高槻市長選の結果を見ていきます。
2003年(平成15年)
氏名
政党
得票数
得票率
備考
奥本つとむ 無所属
56299
44、27%
自・公・民
吉田康人 無所属
52791
41.51%
現維新大阪区長
 統一協会との噂あり
岩城宏介 無所属
18092
14.23%
共産党

127182
100.00%


2007年(平成19年)  
氏名
政党
得票数
得票率
備考
奥本つとむ 無所属
70177
50.99%
自・公・民・共
吉田康人 無所属
67444
49.01%
現維新大阪区長

137621
100.00%
 票差2733票


2011年(平成23年)与党側は新しい候補 弁護士を擁立
氏名
政党
得票数
得票率
備考
はまだ剛史 無所属
73701
51.14%
自・公・民・共
吉田康人 無所属
70412
48.86%
現維新大阪区長

144113
100.00%
 票差3289票

2015年(平成27年)市長選挙に三回立候補してきた吉田康人氏は、経済的に行き詰まったのか立候補を見送った。(大阪市の区長に採用された)  
氏名
政党
得票数
得票率
備考
はまだ剛史 無所属
114724
87.60%
自・公・民・共
高谷仁 無所属
16241
12.40%


130965
100.00%


 2015年の選挙は、高谷仁氏はどの政党からの支持もなく、はまだ氏の圧勝である。野党のなくなった議会は低調気味である。

 共産党は2003年(平成15年)の選挙では、独自候補を立てて、18092票、得票率14.23% 獲得している。にもかかわらず2007年(平成19年)以降、与党側に参加して大政翼賛会的な政治になったが、対立候補はどこの政党の支持も受けず、ほぼ互角の戦いを行っている。(2007年(平成19年)の選挙で2733票差、2011年(平成23年)の選挙では3289票でしかない)
 総与党化や保守との共同路線が如何に市民から人気がないかは、高槻市長選挙のこの間の動きを見れば実証されている。これに背を向け、今回は自民党の候補で府政が良くなるというビラまでまいてしまった。共産党の堕落である。

  このビラの問題点の第二は、敗北と表現したようにショックの大きさがわかる記述がある。その内容は「一連の選挙については、みなさんや日本共産党の高槻・島本地区内、後援会員の中での意見に基づいて、全体としての経験や教訓を明らかにしつつ、日本共産党の前進に生かしたいと思います。」と書いているが、何が言いたいのか全く分からない。
  今回の結果を受けて、共産党が党内だけでなく、幅広く市民の意見に耳をかすということを言っているのか、それが分からない。「みなさんや」の「みなさん」は、誰を指すのか、広く市民のみなさんという意味なのか、このビラ(高槻民報)を読んでいるみなさんなのか、それとも後援会員のみなさんと言っているのか明らかでない。
 共産党が本当に胸襟を開き、広く意見を聞くのであれば大きな変化であるが、後援会員のみの意見を聞くのであれば、開かれた党としては未だに隔たりがある。党内での議論をいくらしても組織は発展しない。外からの意見にも耳を傾ける度量がない限り共産党の発展はない。
 橋下維新がなぜ受けるのか、それは市民の意見等が熟してくればそれを受け入れて行く柔軟性があるからである。橋下氏のやり方が、民主的でない、横暴だとの批判に対して、今回新たに市長に当選した吉村氏は、対話を大切にした運営を行いたいと宣言している。こういう身の処し方がうまいのである。


資料1:高槻・島本民報から転載
ダブル選挙結果  
 高槻市島本町高槻・島本合計大阪府  

高槻市
島本町
高槻・島本計
大阪府
氏名
得票数
得票数
得票数
得票数
くりはら貴子
40766
31.81
4108
33.49
44874
31.96
1051174
33.25
松井一郎
84217
65.71
7781
63.43
91998
65.51
2025387
64.07
美馬幸規
3177
2.48
379
3.09
3556
2.53
84762
2.68
合計
128160
100.00
12268
100.00
140428
100.00
3161323
100.00


資料2:高槻・島本民報 2015年11月25日号
   2大選挙(大阪府知事、大阪市長)で、敗北しました。