共産党27回大会決議(案)は、中国問題、自衛隊の扱い、原発問題に注目点がある


平成28(2016)年11月23日

なぜこの3点(中国問題、自衛隊の扱い、原発問題)を取り上げたのか


 27回大会決議(案)が11月17日赤旗に掲載された。この決議案全体に対する私の意見をまとめるつもりであるが、当面気が付いた3点(中国問題、自衛隊の扱い、原発問題)についてのコメントを掲載します。

 この三点を選んだ理由は、私がこのHPを立ち上げた原点でもあるからです。

 私は2011.3.11東日本大震災後に戦われた一斉地方選挙で、福島原発がメルトダウンを起こし多くの国民が多大な被害を受けているのに、共産党は原発反対の方針をとらず、「安全優先の原子力政策」という極めて頓珍漢な方針を投票日前日(4/9)の赤旗【主張】に掲載した。

 また、同年10月に戦われた大阪ダブル選挙(知事選挙・市長選挙)で共産党は「安全・安心・やさしい大阪」というスローガンを掲げて戦った。

 私は、この2つの選挙戦の共産党の戦いには重大な弱点があると、13通の意見書を共産党の各級機関に提出したが、共産党は完全に無視した。(中央は選挙戦後に答えると一度返事をくれたが、その後無視された。大阪府委員会は、私の意見書を受け取ったという返事をくれないかと言ったがそれも無視された。)

 私は共産党に回答期限を設定し、無視するようであれば、公に共産党批判を始めることを通告したが、それでも共産党は無視した。私なりに筋は通したつもりである。共産党はそれを全く無視した。

 私がこだわった批判は、原発政策で「安全優先の原子力政策」という案は関西電力の「安全優先の原子力」(関西電力が安全優先のために何百億のお金をかけて安全対策するという新聞発表があった。)これとどう違うのか問いただした。

 つぎに大阪ダブル選挙では、橋下維新が現在のトランプのような動きを行っているのに、橋下維新と戦わず(切り結ばず)なんでノー天気な「安全・安心やさしい大阪」が選挙戦の方針になるのか、あまりにも馬鹿げているといのが私の批判であった。

 この二つの選挙戦とも惨敗したが、共産党は私の指摘したような内容では全く総括されず、原発政策はその後徐々に変更されていったが、27回大会決議案は明らかに後退している。

 「安全・安心」路線も総括されず、今回の都知事選挙の鳥越氏の政策「癌検診100%」にも表れている。

 選挙戦は戦いであり、いかに戦えば勝てるのかという意識が全くなく、常に間の抜けた政策で戦い、敗北している。

共産党政権構想発表

 共産党は4月27日、志位委員長が、夏の参議院選挙や次の衆議院選挙に関連して、「野党連立政権について、前向きな合意を作る努力をしたい」と述べ、民進党などに対し、連立政権の樹立を目指して、政権構想の協議を呼びかける考えを示しました。(2016.4.28 NHK)

 共産党は、政権構想を発表し、政権の一角を占めることを目指している。政権の一角を目指すのであれば克服すべき課題として、「中国を社会主義を目指している国」という評価を変えない限り、政権には近づけない。さらには憲法との関連で自衛隊の問題に対する対応を整理しない限り政権の一角を占めることができないと考えている。
     (藤野前政策委員長がテレビ討論で大失敗した。)(その1)
                             (その2)

 中国問題、自衛隊への対応問題、原発問題が共産党のアキレスけんになっているとの問題意識から、まずこれら問題に対するコメントを書いてみることにした。

 

1.中国問題

 やっと共産党が中国問題を取り上げた。26回大会の決議案には見出しを見る限り中国という文字は見当たらない。27回大会決議(案)では第2章 世界の新しい動きと日本共産党の立場の(8)で「中国――新しい大国主義・覇権主義のあらわれ」という章を起こしている。 

 その内容は、4点に渡り批判している。

 第一は、核兵器問題で中国に深刻な変質が起こっていることである

   第二は、東シナ海と南シナ海での力による現状変更をめざす動き

 第三は。国際会議での民主的運営をふみにじる横暴なふるまい

   第四は、日中両党で確認してきた原則相いれない態度

と四点の批判を行い、⑤で真剣に是正し、国際社会の信頼を得る行動を求めるとの主張を行っている。(対決姿勢を明確にした)


参考に26回大会では、第6章 日本における未来社会の展望について引用する

『(28)社会主義をめざす国ぐに”をどうみるか』の中で中国問題に言及している。その内容は以下のようなものである。

 

  日本共産党がめざす未来社会にかかわって、「中国と同じ社会をめざすのか」という疑問が、よく寄せられる。中国やベトナム、キューバの現状をどうみたらいいのか、日本における未来社会の展望をどうとらえるか。これは大きな問題である。

 中国やベトナム、キューバの現在と今後をどう見るかという点では、つぎの二つの角度が大切である。

@社会主義に到達した国ぐに”ではない

 第一の角度は、これらの国ぐには、社会主義に到達した国ぐに”ではなく、社会主義をめざす国ぐに”−−社会主義をめざす新しい探究が開始」(綱領)された国ぐにだということである。

  たとえば、中国は、経済規模では日本を抜いて、世界第2位の経済大国になり、世界経済のなかでの比重を年を追うごとに高めている。同時に、国民1人あたりの国内総生産で測ると、なお発達した資本主義国の8分の1という水準にとどまっていることも事実である。そのことは中国政府自身が、中国の現状を「大量の貧困人口を抱える発展途上国」と規定していることにも示されている。

  こうして中国の場合、社会主義という以前に、社会主義の経済的土台である発達した経済そのものを建設することに迫られているのが現状である。そして、そうした経済的土台をつくる過程で、中国では市場経済を導入している。この道が合理性をもっていることは、「改革・開放」以来の中国の経済的発展が証明しているが、同時に、この道を選択すれば、国内外の資本主義が流入してくるし、そこから汚職・腐敗、社会的格差、環境破壊など、さまざまな社会問題も広がってくる。

  中国の将来を展望する場合に、この国が、今後もかなり長期にわたって、貧困とのたたかい、所得格差を縮小するたたかい、発展のなかで環境を保全していくたたかい、政治体制と民主主義の問題など、さまざまな問題と格闘を続けていかなくてはならないーーそういう国として見ていく必要がある。

  そこには模索もあれば、失敗や試行錯誤もありうるだろう。覇権主義や大国主義が再現される危険もありうるだろう。そうした大きな誤りを犯すなら、社会主義への道から決定的に踏み外す危険すらあるだろう。私たちは、社会主義をめざす国ぐに”が、旧ソ連のような致命的な誤りを、絶対に再現させないことを願っている。

  わが党は、これらの国ぐにが抱えている「政治上・経済上の未解決の問題」について、内政不干渉という原則を守りながら、いうべきことは率直に伝えてきた。中国共産党指導部に対しても、中国の政治体制の将来という問題、「反日デモ問題」や「チベット問題」、尖閣諸島問題、「防空識別圏」問題などについて、節々で率直にわが党の見解を直接に伝えてきた。 

 

 と記載していたが、今回は新たに章立てし、中国を新しい大国主義・覇権主義の表れと明らかに牽制を行った。すでに多くの国民はこのことを見抜いており、一周遅れの批判ではあるが、前進である。

 ただ、共産党が中国を批判するに至った経緯は、上記4点の理由のうちの

 第三は。国際会議での民主的運営をふみにじる横暴なふるまい

 第四は、日中両党で確認してきた原則相いれない態度

とりわけ、国際的な会議で日本共産党の提案を足蹴にした怒りからきているところに共産党の限界がある。(参考:中国共産党との決別を意識し始めた日本共産党

●国民が怒っているのは、

 第一は、核兵器問題で中国に深刻な変質が起こっていることである

 第二は、東シナ海と南シナ海での力による現状変更をめざす動き

の方が大きい。中国が日本にとって軍事的脅威になるか否かが最も重要な問題であって、共産党のメンツがつぶされたことに関心があるのではない。

 中国が本当に社会主義国でレーニンが示した領土不拡大の方針を守っているのか、それとも社会主義などは、遠の昔に捨て去り、アメリカを追い越し、アメリカに代わる世界の警察官になろうとしているのか、その見極めが日本国民にとっては最大の課題である。

 中国共産党とは友党であり、お互い内政干渉はしない約束があるから、中国批判はできないというようなお人よしの姿勢を貫いていたら、日本共産党は誰の利益を守ってくれるのか、国民から批判される。友党であるからこそ、「日本共産党が政権の一角を占めたら、中国は日本を敵視しない、この自信がある。」ぐらい言い切らないと何のための友党かと思う。(本当に友党ならば、これくらいの確約を中国からとるべきだ。)

 共産党は常に反共攻撃が行われる、あるいは選挙で負ければ反共攻撃が行われたと騒ぐが、実際は国民はそんなことで判断しているのでなく、現在の共産党のありのままの姿を見て批判していることに、そろそろ気づくべきだ。

 今回の新潟知事選挙で、相手陣営は反共の謀略ビラを撒いている.(一枚目)(2枚目)(注1)

 しかし時代遅れの反共ビラは選挙戦に影響を与えず、県民は何が正しいのか見事に判断した。真正面から戦えば勝てるのである。

注1: 私が候補者のHPから手に入れたのは2枚の謀略ビラであるが、1枚 

   は、共産党が支持する候補者が勝てば、県庁に赤旗が立つという古典的

   なビラであった。もう一枚は手の込んだビラであり、あたかも共産党の

   ビラの装いをこなしながら、共産党は怖い政党というイメージを拡散し

   ていた。

 

 中国の現状批判は、中国の内政問題ではなく、現状では安全保障の問題になっている。中国の今後の出方が日本にとって最大の脅威になっている。共産党は北朝鮮の核やミサイルについては、国連決議に違反すると非難を繰り返しているが、北朝鮮に領土的野心があるとは思えず、中国は明らかに大国主義であり領土的野心を持っている。(尖閣列島はもとより、沖縄ですら中国はスキあらばと狙っているように思われる。)軍事的な侵略だけでなく、日本の土地を相当買い占めているし、水源等も中国に抑えられる危険性すらある。この厄介な国とどう付き合うのか、共産党の明確な方針がない以上、国民は共産党を支持しない。

 自衛隊の議論とかかわりがあるが、中国を脅威と見るか否かの判断を共産党自身が行わない限り、政権を担う政党にはなれない。


2.自衛隊の問題(決議案では以下のように書かれている)

「(20)日米安保条約、自衛隊ーー日本共産党の立場」を引用する

  2016年の参議院選挙で、政府・与党は、野党と市民の共闘に対して強い危機感を抱き、安倍首相を先頭に、さまざまな攻撃を行った。とくに彼らが力を入れたのは、「共産党の綱領には、安保条約をなくすと書いてある。自衛隊は憲法違反だ、解散すると書いてある。こんな無責任な話はない。こんな党と共闘するのか」といった攻撃である。わが党は、選挙戦のなかで断固たる反論をくわえたが、こうした攻撃に立ち向かう基本姿勢として、次の二つの点を強調しておきたい。

@いま問われている真の争点を太く押し出す

 第一は、いま問われている真の争点を、太く押し出すことである。いま問われているのは、日米安保条約や自衛隊の是非ではない。安保法制=戦争法によって、憲法9条を踏み破った自衛隊の海外での武力行使――「海外で戦争する国」づくりを許していいのか。これがいま問われている真の争点である。

A日本共産党の独自の立場を広く明らかにする、わが党独自の努力を

   第二に、日米安保条約や自衛隊に対する日本共産党の独自の立場を広く明らかにする、わが党独自の努力が大切である。

  党綱領は、「日米安保条約を、条約第十条の手続き(アメリカ政府への通告)によって廃棄し、アメリカ軍とその軍事基地を撤退させる。対等平等の立場にもとづく日米友好条約を結ぶ」と明記している。

 ーー憲法と自衛隊の矛盾の解決は、一挙にはできない。国民の合意で一歩一歩、段階的にすすめる。

 ーーかなりの長期間にわたって、自衛隊と共存する期間が続くが、こういう期間に、急迫不正の主権侵害や大規模災害など、必要に迫られた場合には、自衛隊を活用することも含めて、あらゆる手段を使って国民の命を守る。日本共産党の立場こそ、憲法を守ることと、国民の命を守ることの、両方を真剣に追求する最も責任ある立場である。

 政府・与党の攻撃に対して、いま問われている真の争点は「海外で戦争する国」づくりを許さないことにあることを太く押し出すとともに、日米安保条約や自衛隊に対する党独自の立場を広く明らかにしていくーー二重の取り組みを行うという基本姿勢を堅持して打ち破っていく


共産党の好きな言葉:「安全・安心」を「国防問題」ではなぜ使わないのか?

 27回大会の決議案で自衛隊問題の整理が行われるだろうと期待していた私ににとっては不十分な説明に見える。

 共産党のこの間の選挙戦の政策で一番目立つ文字は、「安全・安心」である。なぜこの言葉を多用するのか私は奇妙に感じているが、国防という重要な課題ではこの「安全・安心」という言葉を使わない。

  国家として(時の国家権力として)国民に約束しなければならない最大の課題は、「命と暮らしを守る」である。言葉を変えれば「安全・安心」を保証することである。

 現在の日本は、安全が保たれているのか、(保証されているのか)この議論が政治家として最も重要な問題である。日本国憲法の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」という(9条2項)は、二度と侵略戦争は行わないという決意の表れであり、日本国はそれを世界に宣言したものである。

 それに対して安倍総理など自民党は、再度海外に軍隊を派遣し、戦争行為を行うことを夢見ている。どうしてもアメリカの目下の同盟者として海外で日本人の血を流すことを実現したいと思っている。これは狂気の世界である。この安倍首相が企む海外で戦争できる国造りを阻止することは喫緊の課題ではあるが、だからと言って日本国は自衛権を放棄したのではなく、急迫不正の主権侵害があった際、国家として国民の生命・財産を守ることは当然である。この国民の命を守るために平和外交等を前面に押し出し平和的に解決させることが重要であることは明らかであるが、他国がどのような行為に出るかは分からない側面がある。現に日本も海外に侵略してきた歴史がある。(注2)

 近隣諸国が過去の日本の行為に対して恨み続け、いつかは仕返しをと虎視眈々と考えているかもわからない。どうすれば日本国民の生命と財産が守れるかは、国を統治するものとして最重要課題である。

注2:国家というものが得体の知れないものであるという事例は、ロシア軍が国
   後・択捉にミサイルを配置したという本日の記事を見ても考えさせられる。
    12月にはプーチン大統領が訪日し、北方領土問題で一定の前進があるよ
   うなニュースがこの間流れ、それを受け、安倍首相は総選挙に打って出ると
   の噂もあったが、これは日本側のロシアに対するの評価の誤りであり、外交
   上の大きな失敗である。(安倍首相とプーチン大統領の個人的信頼関係で領
   土問題が動くほどロシアは甘くないのである。)
    ロシア軍の国後・択捉へのミサイル配置は、日本側の根拠のない楽観論に
   楔を打ち込むため、その映像を流してロシアは領土問題で一歩も譲らないこ
   とを見せつけ、日本側を牽制したものである。
    このミサイルが北海道全土をカバーしており、逆に軍事的脅威を日本に与
   え、脅しをかけてきた。ロシアも中国も信頼できない強かな国家だ。

 日本共産党が野党として「戦争反対だけを叫んでいる段階」では自衛隊の解体を政策として掲げることは認められるが(昔の社会党は非武装中立を唱えていたが、村山内閣ができると引っ込めた)政権参加を狙うのであれば、自国の防衛をいかに行うかのビジョン抜きには参加できない。

 いま国民が思っているのは、中国の脅威である。(ロシアの脅威も加わった)中国が本当に尖閣列島を奪いに来るのか、その事の危機感から、安倍首相の推し進める、戦争できる国づくりへの一定の支持がある。

 この問題に応えず、自衛隊を解体していくか否かは国民の判断に任せる。という方針は、民主的に見えるが、国の指導者は他国からの侵略の危険があるか否かの判断を行い、その根拠を明らかにして、国民を説得する義務がある。

 共産党が参加する政権が生まれても、多くの国民は今日の中国の動きから見て自衛隊の解散に賛成しないだろうという見通しでもって、この論議を行うのは全く無責任である。

 共産党は自衛隊解散を目指すのであれば、どのような世界を作るのか、その展望をシッカリ語る中で、自衛隊の解散論を論議せず、ただ単に国民の多数がどちらを選ぶかの選択の問題だというのは、政権政党として無責任この上ない。

 さらに「急迫不正の主権侵害や大規模災害など、必要に迫られた場合には、自衛隊を活用することも含めて、あらゆる手段を使って国民の命を守る。」というこの発言も極めて無責任だし、自衛隊員に対しても失礼である。

 急迫不正の主権侵害が在った際に、「たまたま自衛隊がいるから、それを活用する」というような主張は人を馬鹿にしている。解散してしまっていればどうするのか?(この疑問に答えねばならない。)

 現に危険があるか否かを正確に判断し、それにふさわしい自衛力はどの程度かの判断を正確に行い対応していくことは政権を握っている者として最低限求められる要素である。

 共産党が平和外交を推し進め、近隣諸国との友好を深め、戦争の危険性が去ったと判断されるまでは、自衛隊は必用だということは認めるべきだ。たまたま残っていた自衛隊がいるからそれで防御するという主張は、おそらく国民に支持されないであろう。

 共産党のこの間の得意なキャッチフレーズ「安全・安心」を如何に確保するかは、政権側の努力にかかっている。国民の投票で自衛隊の維持か解散が決まるというような問題ではない。こんな議論は絶対国民の支持は得られない。
 植木等の「ニッポン無責任時代」を思い出す。

3.原発問題

 「日本共産党の原子力政策は先祖返りしている。」という文書を11月12日に書いたが、決議案をみてもその兆候は明らかである。なぜそう言えるのか、順を追って説明したい。

 26回大会の原発政策と27回大会の原発政策は明らかに違いがある。

 26回大会決議は、「即時原発ゼロ」の視点から書かれているが、27回大会決議(案)は、「原発ゼロ」の方針は出てくるが、「即時原発ゼロ」という文言は出てこない。

 何回も言っているので再確認になるが共産党の原発政策は「安全優先の原子力政策である」(これは3.11の東日本大震災後の一斉地方選挙投票日前日の赤旗【主張】で書かれていた。)

 その後共産党は、メーデー会場で志位委員長が「原発ゼロ」宣言を行ったが、原子力と人類は共存できないという思想までには至らなかった。さらに、「さよなら原発6万人集会」等が成功し、多くの国民が原発の再稼働反対であることに気付き、翌年の9月15日に「即時原発ゼロ」という方針を共産党は打ち出した。この考え方の基本になるのは、原子力発電の平和的利用の方針を投げ捨て、人類と原子力は共存できないという思想を共産党も受け入れたかに受け止められた。

 しかし、共産党は執念深く、「原子力の平和的利用」をあきらめてはいない。それが赤旗11月12日(今年)付の【主張】「安全無視の再稼働はもうやめよ」という形で現れ、決議案でも26回大会での「即時原発ゼロ」の政治的決断を求める。という主張がなくなっている。

 さらに「即時原発ゼロ」の思想的背景である核と人類は共存できないという思想も、放棄した。

 ちなみに26回大会では、

「原発のもつ『異質の危険』は、世界のどの原発にもあてはまる問題である。人類は、スリーマイル、チェルノブイリ、フクシマと3回の原子力大災害を体験しており、私たちは、やがて「原発ゼロ」は世界の大勢になると確信している。すべての原発を廃炉にし、「核のゴミ」を処分することは、人類の英知を結集してとりくむべき巨大プロジェクトとなるだろう。福島原発事故を体験した日本こそ、「原発のない世界」にむけて、国際的プロジェクトをすすめるイニシアチブを発揮すべきである。」


と主張しているが、27回大会決議(案)ではこの思想が欠落している。
 共産党は数日前(11月12日)の主張では明らかに「安全優先の原子力政策」に先祖返りし、決議案では2011年の5月1日の「原発ゼロ」宣言まで後退している。どうしても「原子力の平和利用の夢を捨てきれない姿」を露呈している。(注2)

注2:26回大会決議

 福島原発事故の経験を踏まえ、日本共産党は、原発・エネルギー政策を発展させる一連の政策提起を行ってきた。

   2011年6月に「原発撤退提言」を発表し、原発は、ひとたび重大事故を起こし、放射能が外部に流出する事態になると、人類にはそれを制御する手段はなく、空間的にも、時間的にも、社会的にも、被害は広がり続けるという「異質の危険」があること、世界有数の地震・津波国日本ではその危険がとりわけ深刻なものになることなどを示し、「安全な原発などありえない」こと、「原発と日本社会は共存できない」ことを明確にし、「原発からのすみやかな撤退」という方針を打ち出した。2011年8月には「放射能汚染から、子どもと国民の健康を守る対策」を提言し、国の責任による放射能汚染の実態の徹底した調査、迅速な除染、避難者支援の抜本的強化、内部被ばくを含む被ばく線量調査をはじめ万全の健康管理を要求した。

 さらに、福島原発事故がいよいよ深刻となるもとで、原発再稼働に反対する世論と運動が大きく広がり、「原発ゼロの日本」の実現が国民多数の意思となり、日本中の原発がすべて停止する事態も生まれた。

 わが党は、こうした事態を踏まえ、2012年9月、「即時原発ゼロ提言」を発表し、原発を再稼働する必要性も条件もないこと、原発を稼働すれば処理方法のない「核のゴミ」が増え続けることなどを指摘し、「すべての原発からただちに撤退する政治決断をおこない、『即時原発ゼロ』の実現をはかること」、「原発再稼働方針を撤回し、すべての原発を停止させたままで、廃炉のプロセスに入ること」などを提起した。


 ※:共産党の原子力政策は、2012年9月、「即時原発ゼロ提言」です。
  もかかわらず、27回大会決議案には「即時原発ゼロ」という言葉は一切出て
  きません。(「即時」が抜け落ちています。「即時」が抜ければ、2011年
  6月の政策「原発ゼロ宣言」に戻ってしまいます。)