大阪茨木市会議員選挙の教訓は何か(赤旗の総括を批判する)


平成29(2017)年1月29日 


  茨木市の市議会選挙があった。この選挙は大阪にとっては結構注目される選挙である。なぜなら一斉地方選挙ではなく他紙の選挙とズレた選挙であり、それぞれの政党の浮き沈みが見れるからである。

 他の一斉地方選挙は2015年の4月に戦われており、それから21か月後に戦われる選挙はその後の政党の力関係の変化が読み取れるからである。さらにはこの選挙は組織政党に有利な選挙でもある。他の市町村ではこの時期選挙をやっていないため、大阪府全域から応援に駆け付けることが可能であり、また正月明けすぐに選挙というのも、動きが鈍くなりがちであるが、よく組織された運動員を抱えている政党ほど選挙結果は有利に働く傾向にある。

 私が20代のころは、茨木市の共産党の市会議員は、他の市町村より議会占有率が高かったと記憶している。ところが最近は茨木市における共産党の議席は振るわない。前回選挙では四名の当選を狙ったが、三名に留まり、今回も四名の復活を狙ったがまたしても三名の当選者しか出せなかった。

  この最大の原因は、共産党の市会議員でだったY氏が不倫を理由に2009年に共産党を除名され、その後2013年選挙で無所属で立候補し1167票で落選したが、2016年の補欠選挙選挙では無所属で立候補し、30,000票以上獲得し一位で当選するという離れ業を成し遂げ、今回の選挙ではなんと共産党の最大の敵である、大阪維新から立候補し17位(2533票)で当選を果たしている。

まず各党の当選者の数および得票数を前年と比較してみる

 ※この表の会派名は、今回の選挙戦実施前の名前である。
 ※当選者数は、前回の数字は解散時の各会派の議員数である。
 ※新社会(1名)は会派に所属しない議員に含まれている。 

今回の選挙戦の最大の特徴は維新の会が9名中4名落選したことである

 この表から読み取れることは、大阪維新の会が9名の当選を狙ったが、当選者は5名に留まり、前回比2名減と減らしている。落選者4名のうち三人はベテラン議員であり、その痛手は大きいと思われる(注1)

 民主ネットは4名いたが、民主党院は2名、他の2名は連合が支援していた2名らしい。この2名が逃げ出し無所属で当選している。民進党としては2名が当選したが新人が21位、現職の議員は最下位当選である。

 逃げ出した議員の議員心理がわかる選挙である。(大阪では民主党(民進党)の看板はすでに効果が全くなくなったことを表している)かつては野党と言えば社会党であったが、現在の民進党は、共産党の45.66%しか得票できない。(共産党:9460票、民進党4319票)

 この選挙の特徴のもう一つは、政党離れが離れが進み、無所属が2人から8人に増やしたところにある。ただこれも茨木市の独特の様相を示しており、選挙毎に会派を入れ替わっているものが多数いる。その最たる見本が共産党から大阪維新に移った議員である。

 その他にも会派間の移動が激しく無所属議員が急に増えた。改選前の無所属2名は、新社会1名と共産党を除名されたY氏の2名であったが、今回の無所属議員8名は、前回の民主ネット4名のうち2名が無所属へ移動した。さらには茨木市民フォーラムの3名が無所属へ移動した。新社会は無所属にされるため、そのまま無所属、あとの2人は、自民から無所属へ移動した者がいる。(それぞれなぜ無所属へ移動したのかは把握していない。)

注1:大阪維新の落選者はそれぞれ脛に傷をもつ議員である。

氏名

順位

当選回数

 落選理由(?)

山本 隆俊

29次点

5回

ポスター代金の不正請求 50万5386円

滝ノ上 万記

30

2回

ポスター代金の不正請求 50万5386円

木本 鉄治

32

新人

元市長の甥(市長の金銭問題)

山崎 明彦

35

1回

ポスター代金の不正請求 50万5386円

 ※候補者ポスターで維新の全議員が員が同じ額を請求。(最初の請求額は15万

  7500円を書き換えた。)

 

 今回の選挙は28人の議席に42人が立候補し、激戦の選挙戦と言われたが、蓋を開けてみると当選者はほとんど現職であり、新人は2名に留まり、大阪維新が1名、民進党が1名である。これらの新人は、党内での候補者変更での当選者であり、純粋な新人の候補者は誰も議席を確保していない。

 共産党は4名にチャレンジしたが3名にとどまった。ということは基本的には敗北であるが、赤旗の評価は全く違う。(後述する)

得票数の比較(政党間の力関係と前回比較)

 この表から読み取れることは、無所属が25,971票と最大獲得票を挙げていることと、政党としては、大阪維新の会が22.35%の票数を獲得し、比較第一党を獲得している点である。(維新は大阪の主要都市ではほぼすべて20%を超えている) 

 第2党は公明党の18.84%、自民党が第三党で11.59%、共産党は10.59%第4党である。

 共産党としては、4名の目標を達成できず、得票率も若干の改善はみられるものの、維新や公明党との力関係は2:1という点では、いまだに改善されていない。

 今回の選挙の最大の特徴は、大阪維新の会が無敵に思われたが、やっと陰りが見えたことである。(政党別の獲得得票数は1位であるが)

 大阪維新の会は、議席占有率を高めるために9名の立候補者を立てたが当選者は5名に留まった(前回選挙では7名当選)しかも現職を3名も落としている。大阪維新の会は前回得票率16.44%から22.35%に伸ばしたが、現職を3名も落としたことの意味は大きい。

 これまで大阪維新の支持者は、橋下市長の支持者であり、大阪維新と言われれば誰にでも投票する集団とみていたが、茨木市民はそれぞれの候補者の議会活動を見て、判断されたのだと思う。なぜそのことが可能であったかは、前市長木本氏(大阪維新)の不可解なお金の流れや、維新議員の選挙ポスターに係る費用請求の如何わしさ等が批判されており、それらの世論に押されて敗北したものと思われる。

 大阪府下全体で維新議員の問題は発生しており、最近では役所のコピー機を使って名刺を作成し商売していのではと嫌疑をかけられた議員(柏原市)も現れている。これら維新議員のいい加減さとしっかりと戦うことの重要性を茨木市の選挙は教えている。

 その象徴がもと市長の甥が大阪維新の会から出馬したが、1531票で落選している。大阪維新の会は勢力の拡大ばかり狙い、共産党を除名されたY議員までも候補者として担ぎ出し、その辺の節操のなさも批判されたと思われる。(この議員は17位で当選しているが)

赤旗は「茨木市議選3議席確保」「得票数・率・占有率とも増」と書いている

 この評価を検証したい。

 まず書き出しは、「15人がはみ出す多数激戦となった大阪府茨木市議選(定数28、2減、立候補43人)」と書きこの選挙が激戦であり、共産党は4名の獲得を目指したが3名しか当選できなかったのは、仕方がなかったという設定を作っている。

 しかし、この選挙は激戦のように見えているが、落選したのは無所属の新人9名と維新が4名、共産党が1名、幸福実現党が1名という顔ぶれであり泡沫候補がたくさんいただけで、決して激戦選挙ではない。共産党の新人朝藤雅志氏は激戦だから落ちたのではなく、34位という泡沫候補並みの得票数しかなかったから落ちたのである。

 次に、今回選挙で「得票数・率・議席占有率ともに伸ばしたのは日本共産党だけです」とあたかも勝利したかのような文書を書いていますが、ひとつづつ見ていくと得票数の伸びは、794票、得票率は0.91%、議席占有率は、議席数「3」で同じだが、定数減(30→28)で増えた分をカウントするみじめなものである。

ちなみに、大阪民主新報(1月19日付)は、「共産党は3議席確保」「維新は改選比2減」と書いている。さすがに赤旗のように、いかにもにも前進した表現はできなかったものと思われる。

 他の政党と比較すると得票数では大阪維新の会が5195票伸ばしており、得票率でも大阪維新の会が5,91%伸ばしており、大阪維新は自らの力を過信したため議席は2議席減らしたが、躍進という意味では共産党と比較にならない。

 この後に維新が苦戦した選挙の例をたくさん出して、共産党が如何に頑張っているかを強調しているが、維新のすごさと比較にはならないみじめさである。

選挙戦の総括のあり方について(共産党の総括は大本営発表方式である)

 今回の選挙で大阪維新の会は、得票数で5195票、得票率で5.91%伸ばしたが、議席数を7名から5名に減らしたため選挙の総括は、敗北宣言を行っている。(9人獲得の目的を達成できなかったため)

 これに対して共産党は4名の獲得を目指し3名しか獲得できなかったが、「得票数・率・占有率とも増」とあたかも選挙で勝利したかのように書いている。こんなことをしていて本当に良いのか、共産党は真剣に考えるべきである。

参考に大阪維新の会の総括を見てみよう

 ★大阪維新の会と致しましては、この度の茨木市議会議員選挙におきまして

  ☆塚 理(つかさとる)      3063票
   ☆大野 ちかこ(おおのちかこ)  2874票
   ☆はぎ原 けい(はぎはらけい)  2668票
   ☆岩本 まもる(いわもとまもる) 2533票
   ☆長谷川ひろし(はせがわひろし) 2203票

以上5名の公認候補が見事当選を果たさせていただきました。

ご支援くださった支持者の皆様に改めて御礼を申し上げます。

 一方、合計2万票近くの最多得票を大阪維新の会に頂戴したにもかかわらず4名が落選する結果となった責任は、ひとえに茨木市支部長として選挙を取り仕切った私にあります。

今回の選挙結果を真摯に受け止め、市民の皆様の負託にお応えできるよう支部の再建に力を尽くしてまいりますので、引き続き大阪維新の会へのご支援を賜りますようお願い申し上げます。

平成29年1月22日
茨木市支部長
足立康史

 この支部長の足立議員は、国会でとんでもない発言を繰り返している議員である。しかしこの総括の方が共産党の総括よりよっぽどまともである。

共産党の選挙総括は何がおかしいのか

 それは選挙結果を冷静に科学的に分析せず、常に「勝った・勝った・また勝った」という枠組みで選挙の総括を行っていることである。この手法は大本営発表と同じ思考であり、国民・市民を愚弄するものである。同時に自らの課題も見失い、次回選挙の課題が見つからない総括である。

 今回の選挙はどう見ても敗北である。最低限あった4名の陣地が、Y議員の除名で3名になってしまい、その状況から未だ脱出できていないのである。前回3名だから、今回も3名、それで何が悪いのかという居直りの総括でしかない。共産党は不利な情報をすべて隠し総括する。

 例えば前々回の共産党の得票数は13387票、得票率13.98%である。前回選挙はこの選挙の7割しか取れていないのである。この失地回復こそが最大の課題であったはずなのに選挙が終われば、目標が何だったのかとの関連で総括せず、常に過去の悪かった時と比較してそれよりましだった。だから勝利だとお茶を濁してしまう。これでは責任問題も何も発生しない。こんな無責任社会を作ってしまえば、党は必ず停滞する。

 選挙の総括は目標との関連で総括する。このことが最低限必要な課題である。おそらく今回の選挙の目標は、4議席の確保と、得票率(15%)位を狙っていたのでは思われる。野党共闘で政権奪取という目標から言えば、得票率15%は茨木市として獲得しなければならない数字である。

 これができなかったということは明確な敗北である。この言葉を吐けない限り、共産党のいうことをすべて信じることができなくなる。安倍さんと同じですぐに嘘をつく政党とみなされる。

 さらに今回の選挙で見逃せないのは、きちっと票割を行えば、4名の当選が可能であった。どの地域の公明党の選挙結果を見れば、公明党の議員が何位から何位まで連続して当選している姿がよく見える。今期の選挙でも公明党は10位、12位、14位を固めている。一人だけ極端に悪い票数は考えられない。共産党は最高得票者は6位、最下位投票者は34位である。この票差は1467票あり、最下位者の1490票に匹敵する票数である。

 昔の話をしてもしょうがないが、昔は票割はもっと正確だった。公明党はコンピューターのような正確さで票を出すが、共産党は蓋を開けないと全く分からない選挙戦を戦っている。地力が完全に落ちている。

 選挙戦の総括をより科学的に行わないと、共産党の前進はありえない。茨木市の共産党は現職市会議員の除名問題という負の歴史を未だ克服できていない。しかも相手は大阪維新から出馬し当選している現状にもっと腹を立てて戦わない限り、この低迷から脱出できない。

最後に資料として大阪府下主要衛星都市の政党間の力関係を見てみたい。

 以下、吹田市・東大阪市・寝屋川市・茨木市・高槻市の選挙結果の比較を行いたい。

 この表の配置準は、共産党の得票率の良い順番に並べている。この比較から言えることは、吹田市は模範都市である。共産党の得票率は17.07%を獲得し、議席数も7議席獲得している。茨木市の選挙結果と天と地ほど違う。この違いはどこから来るのか、私は市民の側に違いがあるのではなく、共産党組織の建設が上手くいっているか、いないかの差だと思っている。なぜそう思うのかは他の政党を見れば分かる。大阪維新の会は全選挙区で20%内外の数字を挙げている。一番良いのが寝屋川市の23.78%であり、一番悪いのは高槻市の19.55%である。一番悪い所でも一番良い所の82%を確保している。公明党も吹田市以外は安定して、20%内外を抑えている。(吹田市の維新や公明党の票が他都市に比べ低いのは、共産党が奮闘しているからである。)

 これに対して共産党は、吹田市の17.07%に比べ、茨木市10.59%、高槻市9.27%である。高槻に至っては吹田市の54%しか獲得できていない。茨木市で62%である。

 吹田市の62%しか取れない結果をもて「勝った」と喜んでいる幹部は相当政治的音痴である。吹田水準まで伸びる可能性がある、なぜこれだけ差が出るのか真剣に取り組む必要がある。

 吹田市の結果から学び、まともに戦えば、ここまで発展できる可能性があることを示している。