毎日新聞夕刊(1月7日)に神戸市長選挙を通してみた共産党の問題点が書かれている。



令和4(2022)年1月8日


 この毎日新聞の記事は面白く、私が総選挙後分析してきた結果に極めて近い。毎日新聞は上手くまとめていて分かりやすいが、私の視点と瓜二つである。
 この記事を見て共産党が反共攻撃だと騒ぐようであれば、共産党の復活は遠のいてしまうだろう。

毎日新聞一面トップに「共産」「四番手」の衝撃」という大見出しを掲げている。


 その書き出しは「批判票集まらず」であり、「四番手とは思っていなかった・・・。」「神戸市市長選挙の結果を受け、共産党兵庫県委員会の松田隆彦委員長(63)は首をひねった。」と言うものである。そしてこの選挙の特徴を書いている。「現職の久本喜造氏(67)は自民、公明、立憲民主などの推薦を得て3選を目指した。維新は独自候補を立てられず、共産としては現職への批判票を集めやすい構図だった。しかし結果は、久本氏が過去最多得票の圧勝。共産党推薦の岡崎史典氏(58)は知名度が低かったといえ、インターネットを中心に運動した鴇田香織氏(53)に水をあけられ、各種選挙に出馬を繰り返す中川暢三氏(68)にも競り負けした。」

それにしても負け過ぎではないか


 「前回より投票率が約6ポイント上がったのに、推薦候補の得票は約1万3000票減らす惨敗。」これを毎日新聞は「それにしても負け過ぎではないか」と書いている。
 その原因は、「衆院選で小選挙区は共産党、比例代表は維新に入れた有権者がいる」共同通信出口調査によると、維新が候補者を立てなかった兵庫2区など共産党候補に入れた有権者のうち2割が比例で維新に投票。同じく8区(尼崎市)では3割に達していた。
 次に「期待しない若者」という小見出しで、神戸大学大学院国際協力研究科研究員の塩田潤(30)さん(元シールズ関西)の意見を書いている。

共産党は社会との接点をさらに増やす必要があるのでは


 「1990年代以降に生まれた世代は、低成長と格差拡大の中で将来に希望を持てないまま『自助』にならされた」とし、生活の改善を政治に求めていないと見ている。その上で「若者には政党の決まり文句は耳に入っても政策は届いていない。共産党は社会との接点をさらに増やす必要があるのでは」と指摘。
 「今回の衆院選で野党は候補者を絞る共闘を進めたものの政策を伝えきれず、逆に関西では、維新が野党的立場から『大阪の改革を全国に』と分かりやすいストリーで支持を広げたと分析」
 「若者も生きづらさを感じているが、ジェンダー平等や気候変動対策というフレーズだけでは響かない。有権者の感覚に近い言葉に翻訳し、争点化していく点では維新に学ぶ面もあるのではないか」
 

神戸の共産党には95年の阪神大震災後、支持を広げた経験がある。


 品田裕・神戸大教授(政治過程論)は「共産党はこれまで反支流派の支持を集めてきたが、近年、維新が新しい流れの代表として認識され、衆院選でも支持を集めた。」
 「神戸市長選についても、『現状に不満があり変革を望むが、既成政党には期待しないという認識から他の新人候補をえらんだのではないか』と推測する。
 共同通信の出口調査によると、今回の衆院選でも比例で共産党に投票した人のうち10代〜30代は1割にとどまる一方、維新は2割、れいわは3割に達する。
 神戸の共産党には95年の阪神大震災後、支持を広げた経験がある。97年の市長選挙で被災者を診療する意思を推薦し、現職に約4万6000票に迫る約22万5000票獲得。翌98年の参院選兵庫選挙区(当時回線数2)では12年ぶりに議席を回復した、
 コロナ禍の20年度、共産党系の民主商工会には例年の3倍近い約2400人が加入した。という事実もあるらしい。

我々が目指しているビジョンを有権者につかんでもらえる訴え方が必要だ。


 最後に松田委員長の話「我々が目指しているビジョンを有権者につかんでもらえる訴え方が必要だ。新自由主義の見直しが始まって今こそ、粘り強く努力していきたい」と力を込めた

 以上が毎日新聞の記事の要約であるが、私は共産党がこのような総括を行う必要性があると思う。にもかかわらず共産党の総括は「負けを認めず、この事態は弁証法的視点から見るべきだと主張して、結局は夏に迎える参院選挙の勝利の保証は赤旗拡大の成功が成否を決めると総括し、末端の党員に『働け、働け』と圧力をかけているだけである。(注1)

注1:私が常に共産党は選挙で負ければ、赤旗の部数が減っていた、党中央は赤旗の拡大が選挙勝利の最大の
  武器だと指摘してきたが、末端がそれに応えきれず敗北したという総括をしていると批判してきたが、党中央が
  そんな馬鹿な指導をしているはずが無いと思われている方もおられると思います。そこで、本日付しんぶん赤旗
  の【党活動】欄の参院選闘争本部の記事を引用します。
    「参院選挙勝利へ1月こそ党の総力をあげて党員と読者の前進を」という見出しでこのようなことを書いてい
  ます。「一つは、共闘の勝利ともに、党躍進へ『650万票10%以上』で比例で5議席実現のカナメとなる『担
  い手』  の中心は「しんぶん赤旗」読者であり、特に日曜版読者です。この課題での大幅後退をずるずる
  と続けていては、得票目標実現への確かな補償をうしなうことになりかねません」二つには、世代的継承を中軸
  とする党員と日刊紙読者の後退は、党の活力をつけることに逆行する事態です。」と主張しています。
   私が若かりし頃は、共産党は2本足の活動と言っていました。それは大衆運動と赤旗拡大でした。ところが最
  近は一本足の活動になり、大衆運動から手を引き、赤旗拡大に全党の力をささげています。これが共産 
  党衰退の最大の原因です。

この毎日新聞の分析が素晴らしいのは、共産党の抱える問題を全てあきらかにしていることです。


 まず、第一に客観的に共産党は「躍進しているのか衰退しているのか」の評価をしていることです。「それにしても負け過ぎではないか」と負けをはっきりさせ、そのことから議論を見出そうとしていることです。共産党が一番輝いたのは95年の阪神大震災後支持を広げ、97年の市長選挙で約22万5000票獲得し、現職に約4万000票の差まで迫った。これとの比較で今回の選挙結果を見て何が課題か浮かび上がらせようとしている。
 この手法は私も大阪の共産党の票数は最大時約76万獲得していたのに、先の衆議院選挙では約30万票に減らしている。この現実から出発すべきだという視点で、このHPに書いてきました。
 第二は共産党の衰退の根本は赤旗の部数の増減とは全くかかわりがなく、国民大衆に如何に寄り添ったかにあると指摘している点である。毎日新聞は元シールズの関係者にその点を聞き、「共産党は社会との接点をさらに増やす必要があるのでは」という言葉を引き出している。国民に寄り添えず、赤旗拡大の対象者としてしか見えなくなっているのではないか?阪神大震災の後共産党の支持がなぜ増えたのか、それは震災復興際して国民に最も寄り添えたのが共産党であったからではないか。
 第三は、生きづらさを感じている国民に共産党の手が届いていないのではないかという指摘である。「ジェンダー平等や気候変動というフレーズだけでは響かない有権者の感覚に近い言葉に翻訳し、争点化していく点では維新に学ぶ面もあるのではないか」この指摘も私が選挙後このHPで言い続けてきたとことである。
 赤旗では、気候変動やジェンダー平等で共産党の支持が増えたと連日書いているが、これは全くの独りよがりである。この間の事例で言えば、「文書、通信費」問題で維新は1日で100万円はおかしいと狼煙をあげたが、この上手さに大きな差がある。維新は自らの主張「身を切る改革」とはこれを指すのだと国民に見せた。おそらくこれだけで維新は共産党の支持率(5%)以上の支持率を上げたと思う。これが政治だ。共産党は何十万という党員が一生懸命赤旗拡大に努力しているが上手くいかない。支持率も一向に上がらない。
維新は「一言」で大きく支持率を上げた。これは国民目線で活躍しているように見える活動をしているからである。(嘘や詭弁が多いが)

 最後の止めを刺すようだが、今回の神戸市長選の共産党の票数は、全くの惨敗である。インターネット中心の活動で6万9648票、どの選挙にも出馬している泡沫候補が59857票獲得したのに、共産党(立候補は無所属だが)は、59722票しか獲得できなかった。
 この惨敗を弁証法的視点からどう説明するのか、そんな次元の話では全くない。神戸市では共産党はすでに市民から「NO」を突き付けられた票数である、深刻な総括が必要である、残された時間はもう少ないと思っている。今の共産党のやり方では一瞬に転げ落ちる。この神戸の市長選挙はそれを語っている。