共産党はなぜ選挙に勝てないのか? 第5弾(参議院選挙)


平成28(2016)年7月11日

 この課題ですでに私は何回か書いてきた。(注1)今回の参議院選挙の結果を見て、さらになぜ勝てないのかを深めてみたい。
 まず本日(7月11日付)赤旗で志位委員長は、今回の選挙戦での獲得目標が野党共闘の勝利と共産党の躍進であったと語っている。さらに野党共闘については、11選挙区で勝利し、最初のチャレンジとしては大きな成果だと語っている。ここまでは私も同じ思いである。共産党の躍進という点では3議席から二つ上澄み(最終は3つ)なので勝利と語っている。これについては納得できない。前回(3年前)には8名当選させており、今回はこれ以上の躍進を狙っていたし、とれると思っていたと思われることから敗北である。
 例えば7月10の夕刊フジでは参院選の予測数値が出ているが、共産党は10人である。

参院選 予測数  現有 計(予測値
+非改選)
改選 非改選
自民党
62
50
65
127
公明党
13
9
11
24
 与党小計
75
59
76
151
民進党
27
43
17
44
共産党
10
3
8
18
おおさか維新の
5
2
5
10
社民党
1
2
1
2
生活の党
0
2
1
1
日本の心
0
0
3
3
新党改革
0
1
0
0
諸派
0
1
3
3
無所属
3
8
7
10
121
121
121
242

注1:参考資料
共産党は選挙でなぜ勝てないのか  No.1平成24年9月8日 第一弾(前半)
 共産党は選挙でなぜ勝てないのか? N0.2平成24年9月10日   第一弾(後半)
 共産党は選挙でなぜ勝てないのか?   平成24年12月1日  第二弾

 共産党は選挙でなぜ勝てないのか?   平成24年12月17日 第三弾
 共産党は選挙でなぜ勝てないのか?    平成24年12月22日  第四弾(番外編)


 今回の大阪地方区の結果を見れば共産党がなぜ選挙に勝てないのかが良く分かる。
参議院選挙 大阪選挙区の結果 平成28年7月10日実施
当落
候補者名
年齢
所属党派
新旧別
得票数
得票率
松川るい
45
自民
761,424票
20.40%
浅田均
65
おおさか維新
727,495票
19.50%
石川博崇
42
公明党
679,378票
18.20%
高木佳保里
43
おおさか維新
669,719票
18.00%
  渡部結
35
共産党
454,502票
12.20%

前回は辰巳幸太郎氏が当選しているが、今回はおおさか維新が2人立てたために共産党渡部結は追い落とされた。

参考:前回平成25年参議院選挙結果 当日有権者数:7,116,682人  
当落
候補者名
年齢
所属党派
新旧別
得票数
得票率
東徹
46
日本維新の会
1,056,815票
28.80%
柳本卓治
68
自由民主党
817,943票
22.30%
杉久武
37
公明党
697,219票
19.00%
辰巳孝太郎
36
日本共産党
468,904票
12.80%


大阪では何が起こっているのか(改憲勢力が圧倒的多数を占める)

 今回の選挙では、大阪では4人区ですが、当選者は自民党、大阪維新2名、公明党です。この改憲勢力三党で、得票数は2,838,016票、総得票数3,731,362票の76.06%を取っています。
 改憲反対勢力である共産党、民主党は802,255票、得票率21.05%しかありません。その他の勢力が2.44%を獲得しています。(ちなみに前回選挙では、当選者だけで見れば改憲勢力に85%、改憲反対勢力は15%です。)

 大阪選挙区では、改憲勢力が圧倒的多数を占めています。なぜこのような奇怪な数字が出るのでしょうか?大阪では今回の選挙を民主党が掲げていた2/3勢力を取らさない戦いというような主張が全く理解されていません。(注2)

注2:民法のテレビで街頭アンケートを実施していましたが、若者に「2/3」に意
 味が分かるか聞いていましたが、若者はこの意味すら答えられないのが現状で
 す。

 今日の毎日新聞は大阪選挙区での出口調査の結果を発表しています。投票を終えた有権者2212人を対象にした共同通信社の出口調査によると、無党派層を意味する「支持政党なし」と答えた人は全体の18.7%。大阪維新の28.8%、自民の24.3%に続いて3番目に多かった。このうち、最大の18.8%が共産新人の渡部さんに投票。大阪維新の新人浅田さんと高木さんにはともに16.4%が入れ、公明現職の石川さんにも10.6%が投票した。
 憲法改正では「賛成」が49.9%、「反対」が45.9%、10〜30代が上回った。と書いています。
 同日の毎日新聞新聞【選挙】2面で全国の出口調査を載せていますが、安倍首相のもとでの憲法改正への賛否も尋ねたが、改憲に「反対」は50%、「賛成」は40%。賛成派の63%比例代表の投票先を「自民」と答え、反対派は「民進」33%、「共産」18%、「自民」17%と分散した。という面白い分析を載せている。

 ここで一番注目すべきは、全国的には改憲「反対派」が多数であるが、大阪では改憲「賛成」派が多数を占めるという反転現象が起こっているが、改憲派は4%多いだけであるのに、投票結果は改憲勢力に78.06%が投票していることです。ここに大阪の最大の問題点があります。選挙民は今回の選挙戦が改憲賛成か反対かで戦われていると理解していないのです。
 全国的にも、もしこの毎日新聞の分析が正しいとすれば、改憲反対派は5割いるが、実際の投票ではさらにその5割(33%+18%)しか、改憲反対政党に投票していないことが分かる。改憲「反対」勢力は、国民の中にある多数意見を吸収できていないところに最大の問題点を抱えていますが、その最大限の問題地が大阪だということです。(改憲反対派が改憲反対勢力に投票していない)

国民の中にある「改憲反対」の意思を組織できない改憲反対勢力(民進党・共産党)

 なぜそうなるのか、それは共産党が、敵を作らない選挙戦術を一貫して行っているからです。今日(7月11日)の赤旗に「参議院選挙結果について 志位委員長が記者会見」という記事が載っていますが、その中で彼は次のように語っています。
 「経済に民主主義を確立するための『三つのチャレンジ』を提案しましたが、税金の集め方、税金の使い方、働き方のチェンジを実現するという暮らしの問題」を掲げて戦ったという行がありますが、まさにこの表現こそ現在の共産党の間抜けな姿を現しています。
 労働者の生活と権利を守る戦いを、「経済に民主主義を」という分けの解らない文言を持ち込み、「敵と味方」という対立軸を立てる事をすべて放棄してきています。大企業の横暴や、搾取と収奪というような言葉は一切出てきません。「税金の集め方が悪い」と言われれば、私などは公務員であったから、差し押さえをするとか、督促を強化するとか、脱税を摘発するとか、「手法」の問題と捉えてしまいます。なぜ国民から収奪し、大企業に恩恵を与えているという、権力側の本質を暴く文言にせず、「経済民主主義」というような言葉でお茶を濁すのか全く分かりません。
 民進党のビラがありますが、民進党は、「人からはじまる経済政策」という見出しを掲げ「人への投資」「働き方革命」「成長戦略」によって一人ひとりの可能性を引き出し、暮らしを豊かにする経済を実現します。と書いていますがこの表現の方が私は好きです。ここには国民の立場に立った姿勢が見られます。(人が見えます。)共産党の政策は、「税金の集め方」「使い方」という表現は、官僚の文書であり、そこには国民が不在です。(冷たい無機質に見えます。)
 

選挙結果は対立軸のあるところで勝利している。

  今回の選挙戦でも、対立軸が明確なところでは、改憲反対や原発反対、TPP反対勢力が勝利しています。沖縄や福島の現職大臣が落選したのがその典型であり、争点を作りだした者が勝利するのです。

  大阪維新はそのことに長けており、常に争点を作り出し、自分たちは改革勢力だと打ち出しているから勝利するのです。国民は改革を求めています。敵(守旧派)を作り、我々は改革派だと主張した者が選挙で勝つ。これは小泉さんの「自民党をぶっ潰す」という主張以来、この手法が選挙では最も多く票を取ることが明らかであるのに、共産党は革命政党であり、最も改革政党であるべきにも関わらず、「我々は現在の権力装置は何も壊しません、だから我々に入れてください」という宣伝はあまりにも馬鹿げていて、多くの国民は、「そんなことはないだろう、本心を隠しているのだろう」と捉えていると思われます。
 その一番いい例が、今回の「人殺し予算」発言である。共産党はこの発言を取り消し、誤った。(藤野政策委員長を更迭した。)その内容は「自衛隊員の皆さまの心を傷つけた」というものであった。ここに共産党の最大の失敗があり、この時点で今回の選挙は「共産党破れたり」は決まったようなものである。
  ここで一歩引いた共産党は、今度は自衛隊は違憲だというのはおかしいと突っ込まれてくる。現在の憲法を一字一句守るという議論では、戦えないであろう。平和を守る戦いに支えられてこそ、自衛隊は違憲だという主張が多くの国民に支持されるのであって、共産党は現行憲法を100%守る、だから自衛隊は違憲だと主張だけでは、改憲勢力から自衛隊の災害救助を否定するのかとの議論に負けてしまう。
 まさに「殺し殺される自衛隊」の在り方の批判をしているのだということを前面に出して戦うべき時に、自衛隊全体を否定していないとか災害救助で頑張ってもらっているという主張は、追い込まれた議論であり、言い訳にすぎない。
 共産党は中国問題も含め、安全保障問題で一貫した政策を掲げない限り、国政選挙での躍進は望めないと思われる。(注3)

注3:共産党は中国を社会主義国と認めている。(正確には中国がそう主張してい
  るからそれを尊重していると主張する)ところが最近の共産党の赤旗は、中国
  の尖閣列島周辺への海洋進出には、一般紙以上に批判的見解を表明している。
   多くの国民は、共産党の目指しているのは中国のような姿なのだろうと思っ
  ている。それは共産党も社会主義を目指していることは否定していない以上、
  中国のような国を理想の国家とみていると考えるのは当然であろう。この誤解
  を解かない限り共産党に支持が集まるには限界がある。
   今、必要なのは、中国批判を明確に行う(社会主義でない)と、同時に、も
  う一方では安倍首相が推し進める軍拡路線に中国を利用する策動には乗らな
  い。このことが大切である。

対立軸を設定した者が勝つ!(今日の赤旗の記事と毎日新聞の記事を引用しておく。)

 参議院選挙と同時に行われた選挙戦でも、対立軸を明らかにした「改革」勢力が勝利している。 
【赤旗】「鹿児島知事に三反園氏」 「川内原発の停止を掲げる」という見出しで
     三反園氏の勝利を伝えている。
【毎日新聞】「島田さん接戦制す」「河内長野市長選」「現職・芝田さん破る」と
     いう見出しを掲げ、島田市の発言を紹介している。
     「このまちを変えるという正義感の下でやってきた。市民が求めているの
      は改革。市長の給料30%削減、退職金ゼロを実行する。河内長野の将来を
      託してくれた皆様、ありがとうございます。」
 

大阪の特殊性を鮮明にするため、東京選挙区の選挙区の結果を抑えておきたい。



政党名
得票数
得票率
民進党
1631276
35.48%
自民党
1529622
33.27%
公明党
770535
16.76%
共産党
665836
14.48%

4597269
100.00%
※東京都は立候補者が多いので、当選者だけの集計に留めた。
 民進党が比較第一党である。自民党が第二位であり、差は101654票ある。(両党とも2名当選)そのあと公明、共産であるが、共産党も14.48%とっている
 この得票数を、改憲派、改憲反対派で集計すると、改憲派は2,300,157(50.03%)票、改憲反対派」は、2,297,112(49.97%)票であり、概ね良識的な数値である。
大阪選挙区では出口調査では、改憲反対派が45.9%いるのに、実際の投票先に選んだ人は半分もいない21.05%という状態は、政党の怠慢であり異常事態である。