総選挙総括の視点

     共産党はなぜ敗北したのか?


                                                                                                      平成24(2012)年12月27日

はじめに(前提条件)

<赤旗拡大が選挙戦勝利の最大の保証・・・これが嘘八百である。>

 私は共産党が敗北した最大の原因は共産党が選挙というものを全く知らないからだと思っている。赤旗を拡大したら選挙に勝てるという公式だけに頼って選挙をやって負け続けている。この「勝利に方程式」が誤っていることが、共産党の長期低落傾向を引き起こしている。

 赤旗を拡大することはもはや夢のまた夢の世界だ。総選挙前1年数ヶ月かけて赤旗拡大を行ったが成功しなかった。もう赤旗の拡大は現在の党の現状では無理である。この現実を受け入れることである。

 なぜ赤旗拡大は成功しなくなったのか。最大の原因は共産党内で常にあった大衆運動が先か赤旗拡大が先かの議論を、当中央が赤旗拡大は独自に取り組まない限り前進は図れないとして、赤旗拡大を事実上優先し、大衆運動を軽視したところにある。

 私は学生時代、サークル活動を取り組んでいたが(ほぼこのサークルは共産党員であったが・・・これはサークル内で拡大していった成果であったが)党の指導部は選挙や拡大になると乗り込んできて、「サークル活動を休止して、選挙活動や赤旗拡大に徹しよ」と圧力をかけて来た。就職後も職場の情勢などの議論は大切にされず、党の会議は赤旗拡大か選挙の票読みであった。

 党は2本足(大衆運動と赤旗拡大)の活動を提起したが、地区党の役員は大衆運動を指導する力量が全くなく、結局は指導は赤旗拡大一本であった。この長い期間、党中央からの指導が支部の持つ力を潰し、大衆とのつながりを弱め、支部活動そのものに魅力がなくなった。

 これは私の個人的思いであるが、私はこの党にいても人間として成長できないと思い党からさったが、その際、仲間を失った私だけが社会から取り残され、他の党員達が切磋琢磨する中で自己を磨き成長するのではないかという恐れを抱いた。しかしその後何十年か経過したが、党員たちは疲れ果てた姿を見せるだけで、成長を図れなかったように見える。私は、高槻共産党のバカ10連発などを書いているのは、赤旗拡大だけの党は結局壊滅状況になっているのではないか、やはりあなたがたが間違っていたという思いでもある。(今回の高槻市委員会が出した選挙総括も全ての数字が間違っており、悲惨な姿をさらけ出している)

<敗北の原因は赤旗拡大が進まなかったから?>

 これが共産党の判断を誤らせているひとつの数字である。たしかに結果的には負けた選挙区は赤旗を減らしている。それは赤旗が増えないあるいは減紙が続くということは党と大衆のつながりが弱くなった結果だからである。

 今回の赤旗拡大の大運動が成功しなかったのも、末端の党員が怠慢なのでなく、既に党の周りに大衆がいなくなったことを示している。だから赤旗は増えなかったし、選挙でも負けた。それなら参議院選挙に向けてまた赤旗拡大を行えば勝てるのか、これは全く違い、赤旗でなく大衆運動の先頭に立って大衆とのつながりを広めることこそが、勝利への近道である。

 今回の選挙で負けた最大の問題は、3.11の震災で原発がメルトダウンし、国民の命が危険にさらされたにもかかわらず、共産党が原発反対を唱えず、「安全優先の原子力政策」を掲げたことにある。この結果原発反対運動を、さよなら原発派や首都圏反原発連合に握られ、共産党は単なる参加者でしかなかった。11.11全国いっせい行動は。共産党が独自に呼びかけた取り組みであったが、これが完全な空振りに終わった。(少なくとも大阪では)大衆運動を組織できない共産党に魅力は全くない。共産党は大衆運動を忘れ、赤旗拡大だけで日本を変えることを考えているが、こんなことは全く実現できない馬鹿げた幻想である。(出来もしないことを追い求めている。)

 おそらく共産党の幹部は大衆運動を組織したことのない人の集まりであろう、私が見てきた地区幹部はそうであった。私が就職した頃は農民組合の活動家で市会議員の者が複数いたが、党内では異分子であった。党内では赤旗拡大こそが、日本を変えるこの主張をしない者は立場が全くない世界になっている。この思想こそが共産党の崩壊を進めている。

ここからが本題

<選挙線が選挙に勝てない理由>

 今までにもいろいろ書いてきたが、改めて書いてみる。

  1. 具体的な選挙結果から全く学ばない唯我独尊の戦い方をしている。
     共産党が選挙に負け続けているのは、負けた教訓から学ぶ手法を持ち得ていないからである。常に勝ったという総括が今回のような結果になった。政治は結果責任であり、負けた選挙を勝ったように描くのは百害あって一人なしである。
  2. 他党派がなぜ躍進したか、その結果から学ばない。
     この間の選挙で勝った者は、小泉氏であり、橋下氏である。この最大の特徴は「敵を作り」ぶ壊すと叫んだところにある。橋下がいう選挙は「イクサ」という捉え方が実践的である。誰が敵で誰が味方かを鮮明にしたものが勝つ。これこそが「イクサ」で勝つための真理である。
  3. 国民政党としての要件をそなえていない
     共産党は国民の意見に耳を貸さない。私は15通の意見書を上げて初めて気がついたが、民主集中性という組織原則は党内では通用しても、党外では通用しないことを分かっていない。党内批判を抹殺しているから、党外もそれでいいと思っているところに最大の誤りがある

  4. 選挙線の争点が設定できない。国のあり方で戦いを挑んでいない。
     共産党のこの間の政策を見ていると、「愛される共産党」を狙っている。全ての人が支持してくれる政策を出そうとしている。例えば、ビラに富士山の図柄を入れる。大阪ダブル選挙では「安全・安心・やさしい大阪」であった。橋下維新が闊歩しているのにそれと戦わず、警察の安全委員会のポスターと同じ標語で戦っている。

  5. 候補者がしょぼすぎる
     共産党は政治家を育てることを全く行っていない。大阪10区の候補者の肩書きは党専従であった。こんな物は何の値打ちもない肩書きである。国民の生活を守る戦いの最前線で戦っているというイメージを出さない限り、票にはならない。

  6. 統一戦線を模索していない
     共産党は、社共共闘を最大の課題として追い求めていた。共闘成功したところでは大きな成果(革新知事の誕生)も上げた。ところが最近は全く統一戦線を思考していない。なにをトチ狂ったのか、保守との共闘に活路を見出している。(これは最大の誤りである)

  7. 運動員が政治的に訓練されていない。
     赤旗拡大でしか会議は開かれず、党員が他党派の政策と切り結んで論議する力がない。駅前でビラ配りしているのもすべてお年寄りで、ビラを配るという気迫が全くない。

     以上の論点をもう少し丁寧に書いてみたい。



    <1.具体的な選挙結果から全く学ばない唯我独尊の戦い方をしている。>

     選挙が終わって赤旗がどう書くか注目したが、赤旗は民主党が惨敗と書いても、共産党が負けたとは書いていない。幹部会声明は、650万票の獲得という最大の獲得目標に触れず総括を行っている。そして、最高に負けた10年の参議委員選挙の数字を出し、それよりも前進したという論調を貼っている。比較は前回衆議院選挙と行うべき。これを行えば負けがはっきりする。議席は9から8に減ったと前回衆議院選挙と比較しながら、得票数は参議院選挙と比較するというねじれ分析を行っている。


    650万票という目標との関連で選挙線の総括をしない限り、来るべき参議院選挙に向けて、また650万票の設定をした場合、「また言うてはる、結局350万票やろ」としらけてしまう。

     なぜ650万票の設定が成功しなかったのか、どこに問題点があったのかをより突っ込んで議論し、その解決方法を見出さず、またあと6ヶ月間赤旗拡大に乗り出せば、さらに選挙では後退するであろう。既に赤旗拡大は、選挙戦の勝利の保障ではなく、泥沼の戦いになっており厭世気分のみが充満して、結局選挙戦までに隊列が崩壊してしまう。

 あえて何回もいうが、あと6ヶ月を拡大月間に設定し、党員に対してムチを叩き続ければ、選挙戦では惨敗が待っている。選挙勝利の鍵は他にある。

<2.他党派がなぜ躍進したか、その結果から学ばない。>

 何回もいうが、この間、選挙に勝った者は常に敵を明確にして、「こいつらをやつければ、日本国は良くなる」と宣伝している。ここにこそ選挙勝利の方程式がある。本来この手法は共産党が最も得意とするところだが、最近の共産党は「なんでも反対の共産党」などという批判に負けて、「反対・批判」を行わなくなっている。大阪ダブル選挙の「安全・安心・優しい大阪」やその後の羽曳野市長選の「幸せが実感できる都市」などがその典型である。

今回の衆議院選挙戦でも富士山の図柄をビラに入れたりして、「戦わない共産党」のイメージを必死になって振りまいている。このイメージ作りが、共産党が信頼されなくなっている理由だと共産党はなぜ気づかないのか不思議でたまらない。政党にはそれぞれのイメージがあり、共産党は戦う政党だと国民は思っている。それなのにそのイメージを失えば良さがなくなってしまう。(この辺を電通などから学べばいいと思っている。)完全に党のイメージ戦略で敗北している。(敗北主義である)

 おそらく共産党は選挙の度に反共攻撃で負けたと総括するが、そのことが気になりすぎて自ら批判を受けないように自粛して自滅している。(見えない影に怯えている。)

 例えば維新の会の橋下氏は出自のことまで批判され、得票が減るかと思われたが、結果は逆に増えたと思われる。それは彼がその攻撃と真っ向から戦ったからである。「イクサ」は「戦ったものが勝つ」、「勢いの強いものが勝つ」、戦いの場に「安定調和」みたいなスローガンを出す者は戦いを知らないものである。

<3.国民政党としての要件をそなえていない>

 おそらく共産党は国民政党に脱皮しない限り、選挙戦の勝利は得られないと思う。党内問題ではあるが、民主集中制をやめない限り、国民からの支持は得られないと思う。この同じ組織原則の各国の共産党が天下をとった時に、とんでもないことが起こっていることを国民すべてが知っている。共産党が選挙で負けても勝ったと総括し、誰も責任を取らない態度は国民から見て不可思議だろう。今回の選挙でも日本維新の会は54議席とったが橋下氏は敗北だ、私の責任だと言っている。(これは目標との関わりで総括している。・・これが一般的常識だろう)

 何しろHPを初めてわかったが、私だけでなく党は全ての批判に対して、無視するか、論点を変えた回答をしている。こんな不誠実な党が伸びるはずがない。

  党の目的を国会での議席獲得を最大の課題に据えるなら、党の組織を国会議員中心に切り替えて行かないと勝利は得られないと思う。中央集権で当中央の方針を全ての当候補者同じことを言う、金太郎飴作戦では、国会議員としての魅力がない。それぞれの候補者が自分の言葉で語らない限り、選挙戦での勝利はむつかしい。国会議員候補が先頭になり国民大衆の中に入っていくシステムを作らない限り前進はない。

 卑近な例で申し訳ないが、大阪10区では、役所が行ういろいろの行事に、辻元や松波ケンタは必ず参加するが、共産党は全く現れない。このような戦い方で勝てるはずがない。


<4.選挙線の争点が設定できない。他党派は、国のあり方で戦いを挑んでいる。>(12月31日18時15分修正)

 共産党は、選挙戦での争点の描き出しができない。その典型が何回もいうが大阪ダブル選挙の「安全・安心・やさしい大阪」である。どこにも争点がない。これでどのように選挙を戦うのか全く馬鹿げている。今回の衆議院選挙でも、他の政党は国のあり方の問題を触れていたが、共産党は「消費税値上げ反対」である。これなら「福祉党」でいいのではないか。 

共産党は「党名を変えてはどうか」という投げかけには断固反対している。しかし政策はすでに党名から逸脱している。共産党という政党名は革命政党であるいうことである。にもかかわらず、国の進路を争う総選挙で「消費税反対」が最大の課題という共産党には、国民の側から見れば、政党のイメージと結びつかない。日本維新の会が、「官僚支配の打破」や「既得権益の打破」を訴えているのは、国のあり方の問題である。安倍さんの言う「日本を取り戻す」も国のあり方である。そんなときに「消費税反対でなく」、「消費税値上げ反対」では戦いにならない。最初から負けている。

 敵を据えない者はイクサには勝てない。共産党は「二つの敵」があったが、それは「二つの害悪」あるいは「二つの異常」と言っていたのを、今回の選挙戦を前にして「二つのゆがみ」に変えてしまった。(よほど戦うことが嫌いらしい)これでは敵がなくなってしまった。「歪み」は「是正」すれば治る。選挙(イクサ)は勇ましい者が勝つ。安倍氏の「取り戻す」というフレーズには尖閣列島も含まれていた。自民党ならやってくれるそうした期待も含まれている。(中国にきちっと説明すれば理解される。・・こんなお人好しの話を誰も信用しない。)

 今日の赤旗日曜版をみて驚いた36面に「米国も中国も友人」「領土問題は対話で解決」という大きな見出しが踊っている。とうとう「ゆがみ」もなくなったと思ったが、「米国も中国も友人」の横に小さな字でシンガポール首相と書いてある。最近の赤旗の特徴は自分の言いたいことを他人に語らせている。この主張が本心であろう。(注1)

注1:オール北海道の記事で赤旗は保守との共同が進んでいると報道し、その中で保守派の県議の言葉を紹介し
     ている。その内容は、「道議会の無所属派「フロンティア」に所属する八田信之道議は懇親会を知り自ら参
     加。(「提言」は)将来ビジョンが明確だし、われわれの責任でやるのだという思いも伝わりました。大企業を
    敵視しないということもわかった。これなら国民に受け入れられると思うし安心して(政権を)任せることができ
     る」と話しました。

<5.候補者がしょぼすぎる。>

   大阪10区は前全国注目区であった。維新の松浪ケンタ、民主の辻元きよみがいる。それに対して共産党は
  全く市民に認知されていない候補者である。市会議員でも府会議員経験者でもなく、国民となんら接点をもって   いない候補者である。党は候補者と言うのは国民との関係で試され済みのひとという感覚がなく、かれの肩書き  に党専従と書いた。国民はこんな肩書きを評価しない。全く無神経な戦い方である。 

<6.統一戦線を模索していない>

 共産党の最大の課題は統一戦線であった。革新の統一戦線を結成し、日本を変えていくことが最も重要な戦いであった。現に1070年代革新自治体は全国に広がり、国民の過半数が革新自治体に居住するという実態にまで迫った。ここで解放同盟の問題が起こり、革新統一は破壊されて行くが、解放同盟問題が一段落しているにもかかわらず、共産党から革新の統一戦線という言葉は聞こえてこない。聞こえてこるのは、保守との共同ばかりである。赤旗1面を使って保守との共闘の成果を語っていたが、今回の選挙結果を見る限り、保守との共同が幻想であることがわかる。共産党が保守との共同を深めれば深めるほど、従来の共産党の支持が逃げて行くことに共産党は全く気づいていない。重傷である。

 ただ、今回の衆議院選挙で沖縄(2区)だけは、独自候補を立てなかった、その前に行われた沖縄の県会議員の選挙でも他党派と調整が行われていたように見える。沖縄でのみ他党派との協調姿勢が守られている。(ここに沖縄での躍進がある)

<7.運動員が政治的に訓練されていない。>

 大阪ダブル選挙の際、共産党は「安全・安心・やさしい大阪」で戦ったが、告示日前後からこの方針の誤りに気づき、橋下氏の「独裁的政治を許すな」という方針に転換した。しかしこの方針は運動員には徹底できず、何ら成果を上げることができなかった。

 よく公明党は選挙の始まる半年前から取り組まないと勝利できないと言われるが(陣営を固めるのに半年はかかる)共産党も同じ政治水準に落ちてしまった。告示後の方針転換は、全く効果が出なかった。

 さらに原発問題でも、5月1日の志位委員長の原発ゼロ宣言以降でも、安全優先の原発政策というビラが撒かれていた。(5月15日)さらにお笑いなのが、5月2日の赤旗には党の隊列は「安全優先の原発政策」を訴えて更新したと書かれている。(5月2日)の毎日や朝日は、志位委員長の発言に注目し、共産党が原発制作を見直したと書かれていた。そのため連合系のメーで集会より記事のスペースを割いていた。

 党の方針を身につけていない党員が増えて来た。数が増えても質を落とせば結局は戦力にならない。

 この党員の自力を付ける問題は、12月27日付け赤旗にも書かれている。(日本共産党国会議員団総会での志位委員長挨拶)しかしそこには党員拡大、赤旗拡大を最優先した中での話である。

 以下少し引用する。

 負けた原因、ここからが引用「その最大の理由が、党の自力の問題にあることを、選挙戦の全体を通じて痛感してきました。党の力の根源は、何よりも、さまざまな困難に直面しその解決を求める角層の広範な国民に溶け込み結びつく力にこそあります」(中略)党と国民の結びつきと言った場合、もちろん党員を増やすことはその根幹ですし、「しんぶん赤旗」を中心とした活動が、重要となることは言うまでもありません。ただその際も、一人ひとりの読者を増やすことを、新しい結びつきを広げていくという角度からも、きわめて重要な仕事だということを新鮮に位置づけて、それを生きた力にしていくという姿勢が、いよいよ大事になってくるのではないでしょうか。(後略)

 そのあとに大衆との結びつきの大切さを説いている。しかし、共産党に求められているのは大衆との結びつきを最大限重要な課題とすることであり。赤旗拡大の枠の中あるいは第二義的な課題にしている以上、地方党組織は大衆運動を指導する力量を持ち得ないから、赤旗拡大一本の指導になる。

 なぜならこの指導は、言葉は悪いが誰でもできる。詰めるだけだから、これを繰り返す中で党が疲弊している。総選挙後の今は、休息と栄養補給が必要である。それは党の方針を洗練し、皆のものにしていく活動である。それを怠り、赤旗拡大で尻を叩き回す指導は組織を疲弊させ、潰して行くだけである。

 共産党はこの悪循環から抜け出さない限り、躍進はないと私は思っている。。