なぜ3.5メートルの違法建築のブロック塀が作られたのか?(大阪北部地震)


平成30(2018)年6月20日


小学校4年生の犠牲は、行政側の責任問題として捉えるべき。

 
 大阪北部地震で最大に注目されているのは、通学途中であった市立寿栄小学校の4年生の三宅璃奈さん(9)が学校のプールの外壁のブロックの塀の下敷きになり犠牲になったという痛ましい事故である。

 この事故はなぜ防げなかったのか、一言で言えば行政の怠慢である。高槻市の濱田市長は記者会見に臨み、これが違法建築であった(建築基準法施行令では、ブロック塀の高さは「2・2メートル以下」と定めている。)ことを認め陳謝したが、このブロック塀の安全点検は業者に任しており「3年に1回、業者に校舎などの点検を委託しているが、塀に関する報告はなかった」と言い、さらに「担当業者はブロック塀の安全についての点検経過をしっかりと覚えていない」という報告をした。

 私は高槻に住む者として弁護士出身の若いこの市長を信頼してきたが、「安全点検は業者に負けせていて、その業者が点検した事態を覚えていない」という会見にはあきれ返った。この答弁では安倍さんと同じ程度ではないか。

 こうした事故に直面した際の危機管理が全くできていない。責任は市にある。下請け業者に責任があるかのような言い訳は一切慎むべきである。(元々なぜ市の職員が責任をもって点検しないのか)


この問題のブロック塀(3.5メートル)はなぜ作られたのか?

 
 この問題を考えるためにはいろいろの視点があるが、私はまずこのブロック塀は何のために作られたのかの検討が必要であると思っている。(この壁は本当に必要であったのか疑問がある)
 この倒れたブロック塀は、既存のブロック塀を増築(ブロック塀は高さ約3・5メートル。約1・9メートルの基礎部分に、約1・6メートル分を積み上げた構造であり)、その積み上げた部分が崩落した
 なぜ、寿栄小学校は通常のブロック塀の高さを2倍にする必要があったのか、この解明が必要である。、(高槻市によると「基礎部分は1974年に設置。積み上げ部分は目隠し代わりだったが、設置時期は不明という。」)?

 この壁はプール側に立てられており、外部から水着姿の生徒を好奇心で見る男性の視点を遮るために、つくられたものと私は理解していたが(高槻市もそう説明したが)、よく考えると最初のブロック塀が1.9メートルあり、この高さで基本的にそのような対策は行っていたはずである。
 その壁を約2倍の高さ3.5メートルに建築法に違反してまで増築する必要があったのか、その理由はいくつか考えられるが、現状では分からない。
 以下考えられる理由を考えて見たい。
 
@1.9メートルの目隠しが有ったが、日本人の身長が伸び、1.9メートルでは目隠しとして十分な高さで
 なくなった。しかしこれなら、あと40センチも足せばよかったのである。
A1.9メートルでは、簡単に乗り越えられるため、防犯として3.5メートルまでかさ上げした。これも理
 屈に合わない、学校は全て3.5メートルの外壁に覆われているのではない。これでは刑務所になってし
 まう。
B付近の住民が、プールの子どもの声がうるさいという苦情を学校に寄せた。
 これも考えられる理由だし、これが最も重要だ。
Cあるいは、周りから見られることを嫌がったのは、生徒ではなく、指導する先生達が水着姿が見られる
 ことを嫌がったのかも知れない。高さも3.5メ―トルは異常に高いが、学校の前の道路の向かい側に
 は水路もあり、相当の距離はあるが住宅が建っており、2階からの盗聴の危険を排除したのかも知れな
 い。(過剰防衛と思われるが)

子育てを支援する市民社会の寛容のなさが根本にあるのでは?


 これらの理由の内、私は全くの推測であるが、周辺住民のプールで騒ぐ子どもの声がうるさいという要求にこたえたのではないかと思っている。なぜなら3.5メートルの目隠しというだけなら生垣でも良かったし簾を立てかけることもできた。あえて違法なブロック塀に頼る必要はなかったと思われる。唯一考えられるのは騒音対策であったのではと思われる。

 最近地元の中学校の運動会を見に行ったが、何か私の子どもの頃の運動会とは違うという違和感を持ったが、その一つは万国旗が張られていなかった。もう一つは音楽が無かったことである。私の子どもの頃は運動会では常に、運動会らしい音楽がながれていたが、無音の運動会にびっくりした。
 最近は保育所や幼稚園の子どもの声にも付近住民が騒音だと騒ぎ立て保育所が要塞の中に追い込まれている事例がある。(注1)
 私が現役で働いていた際、市民から学校が帰宅時間ですよと鳴らす「お帰り音楽」が人権侵害だと訴えてきた人がいた。こうした寛容のない社会から、この悲劇がおこったのではないかと思っている。地域で子どもを育てるという運動が行われているが、まだまだ多くの市民を巻き込んだ運動にはなっていないのではないか。

注1:保育園の騒音問題による近隣トラブルとして話題になったのは、2016年4月に発生した千葉県市川
   市のケースです。その内容は、保育園の開園による騒音を危惧した住人たちの苦情により、開園が
   中止されたというもの。この問題により、世間には大きな波紋が広がりました。

高槻市の責任は覆い隠せない。


 私の推測で、市民要求に屈したのではないかは当たっているか否かは分からないが、いづれにせよ高槻市役所の責任は免れない。行政は法を守らせる立場に立ちながら、自らは法を守らないことがままある。(今回の財務省の公文書改ざん事件がその最たるものであるが)
 もし一般家庭で3.5メートルのブロック塀を立てたら行政はどう反応するか、必ず違法だし危険だと言って取り壊しを要求すると思われる。
 市民も隣に3.5メートルのブロック塀を立てられたら、おそらく危険を察知するだろうが、学校建設でそのことが行われれば、それは十分な安全対策が立てられているものと思い込み、誰もそれに異を唱えなかったが、市民の無知を利用し行政が平気で違法行為に加担することは、市民に対する裏切りである。これを下請け業者に安全確認は任せていたと言うような詭弁で済まされる問題ではない。
 確かにこのブロック塀は濱田市長の就任前から立っており、濱田市長からすれば初めて知った案件ではあると思われるが、(「部下の『3年に1回、業者に校舎などの点検を委託しているが、塀に関する報告はなかった』」)という言い訳を市長がそのまま報告するのは情けない限りだ。

マスコミ等の課題(3.5メートルの壁はなぜ作られたのかの解明が必要)


 市は目隠しのためにこの塀を1974年に作ったと報告した。(1.9メートル)その後何時かは分からないが1.6メートルつぎ足したと報告した。この話はよく読むと、最初の1.9メートルは目隠しであるが、積み上げた1,6メートルは時期も理由も明確になっていない。(目隠しと答えた?)。最初の理由が目隠しだから積み上げた部分も目隠しと採っているようだが、私は後の1.6メートルは緊急に必要になり、違法性を認識しながらつぎ足したと見ている。
 行政はその理由を知りながら、積み上げした部分まで当初の目的と同じようなニュアンスを説明していると思う。3.5メートルの必要性を具体的には語っていない。
 真実は他にあり、恐らく騒音対策だろう。(子どもの声が騒音かは疑問だが)


以下6月23日に追加

 毎日新聞は本日(6月23日)朝刊一面で、このブロッ塀は1977年度には存在していたことが判明した。と書いているがこれは明らかに誤報である。寿栄小学校の開設は1970年頃であった。私の子どもは1981年から1989に在学(二人で)したが、その間にはこの壁(増築部分はなかった。)
 6月24日(日)付(日曜版が土曜日には入る)、大阪民主新報は「今から20年ほど前、道路側からの目隠しとして、基礎部の上部にブロックを8段約1.6メートル積み上げてと言います。」と書いていますが、これが正しい情報だと思う。
 本日付赤旗は一面で、3.5メートル壁の目的を「目隠しや防音目的で追加されたと見られます。」と書いている。はじめて防音対策という言葉が出てきたと思われる。私は前から防音対策だと思っている。その理由は

 @1.9bの壁があれば通行人には、中のプールの状況は見えない。ただ壁際に立った人を見上げたら見
  えると言うのであれば、もう少しかさ上げすればよく、3.5メートルの必要性が感じられない。
 A3.5bの壁は、道路を隔てた民家から覗かれることを避けたためだとの意見もあるが、プールから民
  家までは目測で10メートルぐらいの距離があり、その視線はそんなに気にならない。もしこの視線が
  問題なら、民家の2階の大人の目の高さは地上からおよそ5bあり、10b離れた位置での3.5bの障壁
  が本当に目隠しになるか疑問がある。(上から見おろせる)
   私の想定では3.5メートルの障壁で遮断されるのは、25メートルプールの半分ぐらいだと思われ
  る。(不思議な目隠しである。)