共産党の新型コロナ対策は政策発表のたびに、その内容が揺れ動いている。



令和2(2020)年11月17日


 日本共産党は11月13日にしんぶん赤旗一面に「感染拡大の『第三波』到来を直視し、『検査・保護・追跡』の抜本的強化を」「志位委員長が提言」という記事を載せた。
 共産党は節々でこうした政策提言を行っているが、その基本的思想は防疫」に力を入れ、社会基盤を守るが前面に出て、「国民の命と暮らしや人権を守る」という考え方に弱さがみられる。
 これら共産党の政策を何回かにわたって批判してきたが、少し視点を変えて、コロナ対策から見えた共産党の弱点から見ていきたい。

コロナ対策から見えた共産党の弱点(党の政策決定をすべて志位委員長の名前で発表する)


 最近の赤旗は、共産党の見解を述べるという記事は少なく、重要な問題は世間一般で言われる『識者』の見解を載せることにより、その主張を展開していく。自らの判断を前面に出さず、だれだれがこう言っているから、これが正しいいという方法で自らの政治的判断を宣伝していく立場をとっている。
 私がこの新型コロナを最初に取り上げたのは5月6日であるが、そこに共産党は明確な方針を出していないという批判を行っている。この段階では志位委員長のツイッター(PCR検査がこんなにも遅れた理由は)ぐらいしか無く、それに対する批判記事を書いていた。
 共産党の方針が出たのは、
@7月28日安倍首相あてに届けた「新型コロナ対策にかんする緊急申し入れ」日本共産党幹部会委員長 
 志位和夫
A8月27日「新型コロナ」今この時期こそ検査抜本強化を 感染拡大抑え込むか再燃か 分かれ道志位委
 員長が会見
B10月2日「新型コロナから命とくらしを守れ」共産党・志位委員長と田村副委員長緊急申し入れ
C11月13日「感染拡大の『第3波』到来を直視し、『検査・保護・追跡』の抜本的強化を」 志位委員長
 が提言を発表

 ここから分かることは、共産党の政策発表はすべて志位委員長名であり、その志位委員長の発表の仕方も「日本共産党幹部会委員長 志位和夫」であったり、単に日本共産と志位委員長の場合があります。更に「申し入れ」であったり、「声明」であったり「提言」であったりします。この共産党の独特の使い分けが、我々一市民では分かりません。この辺にも共産党のおかしさはあります。
 今日(11月17日)のしんぶん赤旗では、「『面の感染検査』GoToは見直せ」政府策は逆行」「小池書記局長が会見」という記事がありますが、この記事のくくりは志位和夫委員長が12日に発表した『検査・保護・追跡』の抜本的強化を求める提言力に政府に対応を求めていきたいと表明しました。
 このフレーズが一般受けしないことに気が付いていません。」私はユーチューブで世界の情勢等の動画をよく見ますが、昨日見ていたら「アメリカの大統領選挙はトランプが勝者だ」という番組がありました。その根拠は、「大川隆法総裁がそう言っている」というものでした。その解説者は立派な人であり世界情勢にも詳しい方ですが、「大川隆法総裁が言っている」には幻滅しました。
 共産党の小池氏の発言の編集に「志位和夫委員長が言っている」という表現がなぜ必要なのか、「わが党は11月12日の記者会見で発表したとおり」という語り方ができないのか、この辺が幸福実現党や公明党、もっと悪く言えば北朝鮮のやり方と同じに見えてしまう。
 自民党の様に国会議員一人一人が一定の自由の中で発言できないと国会議員の魅力(味)みたいなものが生まれて来ない。

志位委員長の発言は絶対に正しいのか?この検証過程が分からない。(外部に見えない)


 私は、7月28日の日本共産党幹部会委員長志位和夫の「緊急申し入れ」を一貫して批判してきている。共産党は私の批判点を吸収し、その「提言」内容に変化をもたらしている。(私だけではなく、内外からの批判があったのだと思われる。)

共産党の主張は何であったか? しんぶん赤旗電子版(2020年7月29日)

@「全国の感染状況を分析し、感染震源地を明確にし、そこに検査能力を集中的に投入して、大規模で
 網羅的な検査を行い、感染拡大を抑止するべきである。
A「これらの大規模で網羅的な検査を行う目的は、診断目的ではなく防疫目的であること。
Bすなわち無症状者を含めて『感染力』のある人を見つけ出して隔離・保護し、感染拡大を抑止し、安
 全・安心の社会基盤をつくることにあることを明確にして取り組む」
C地域ごとの感染状況がどうなっているのかの情報を、住民に開示すること。と書きわざわざ「感染者
 の急増が見られる主な地域の陽性率」を公表した。この表から見れば、新宿区では32.2%という数字が
 出され、この数字が意味することの説明抜きでこのような発表は市民の不安をあおるものであり、
 適切ではない。

11月12日の記者会見は、7月28日の方針の延長線上にあるのか?

                                        この提言は3つの柱から成り立っている。

1.「大規模・地域集中的検査」「社会的検査」を政府の大方針にすえ、推進を
2.感染追跡を専門に行うトレーサーを確保し、保健所の体制を抜本的に強化する。
3.「医療崩壊」を絶対に起こさないために、医療機関の減収補填、淑発療養施設の確保を

 この2つの「申し入れ」と「提言」には相当の違いがあり、どのような議論の中でここに落ち着いたのか、論議の過程を明らかにすべきである。

 何が違うのか。先の緊急申し入れは、中国の武漢方式の導入のにおいがものすごくする。
この「緊急申し入れ」には、国民が全く不在であり、国家権力として、いかに感染を抑圧するかの思想が前面に出ている。

 その根拠を用語で拾っていくと(2020年7月27日「緊急申し入れ」)
@感染震源地を明確にし、そこに検査能力を集中的に投入して、大規模で網羅的な検査を行い、感染拡
 大を抑止するべきである。
A検査を行う目的は、診断目的ではなく防疫目的である
B安全・安心の社会基盤をつくることにある
C地域ごとの感染状況がどうなっているのかの情報を、住民に開示する

 基本は「個人の命や暮らし」よりも「安全安心の社会基盤をつくる」事が目的となっています。
 数日前に中国のコロナ感染制圧の動画を見ました。3000人ぐらいの村で感染者が1人発見され、中国紙府がとった措置は村を閉鎖し、村人全員のPCR検査行うとしています。この措置を行えば、感染拡大は防げると思います。(7月27日の「緊急申し入れ」はこの思想です)そのことを明らかにする文言が、「『感染力』のある人を見つけ出して隔離・保護し」です。「見つけ出し・隔離」が共産党の方針です。しかし、欧米や日本人がこの感染拡大封じ込め作戦を支持するでしょうか、イタリヤでは自由を要求したデモが起こっています。このことを理解しない方針になっています。

11月12日の志位委員長の提言はどのような建付けになっているのか?


 まず気付くのは、共産党が一番好きだった「隔離」という言葉が消えています。次に消えているのが、「地域ごとの感染状況がどうなっているのかの情報を、住民に開示するが消えています。これらは、「人権侵害」や「コロナ感染差別」を生み出す要素があったからです。7月27日の「緊急申し入れ」の記者発表では、地域ごとの感染状況がどうなっているのかの情報を住民に開示することという項目を立て、感染者の急増が見られる主な地域の「陽性率」は以下の通りです。と書き込み、例えば東京都新宿区32.2%、中野区14.3%などの一覧表を記者会見で配っています。
 この表がどのような働きをするのか深い洞察もなく配っています。この表が本当に必要なら共産党は赤旗に書き続けるべきです。なんの思慮もなしに、適当に上から目線で配っています。その時点での志位委員長の発言は、「これは行政側が出した資料で、我々が作成した者ではない。この点での説明はない。ただあなた方記者もちょっと苦労したらこれらの資料が手に入るのだ」という論調で語っていました。
 それ以降赤旗に載らないことを見ると、ピント外れの情報であった。本日(11月17日)の毎日新聞26面【社会】に■コロナ差別解消法案、自民了承という記事が載っています。
以下少し引用しますと、「新型コロナウイルスに感染した患者や家族らに対する偏見や差別の解消に向けた議員立法案について、自民党は16日の部会で了承した。」
 これは例えば京都産業大学でクラスターが起こった際、京都産業大学というだけでアルバイトを断られたというようなニュースが流れていた。共産党が出した「感染者の急増が見られる主な地域の陽性率」は、新宿区は32.2%であり、町田市は2.5%です。こんな情報を都民全体に配れば、貴方はどこに住んでいるのか聞かれた時「新宿」と答えたら、相手は身を引くと思われる。そうした配慮のない数字の拡散は見逃せない。この数字の持つ意味をしっかり理解した上で出すべきであった。
 7月27日の「緊急声明」と11月13日の比較で、13日版の特徴を書くべきであったが、7月27日の「緊急声明」があまりにもひどかったのでどうしてもすぐにそこへ飛んでしまう。
 11月13日版の特徴は、先にも書いたが「検査・保護・追跡」である。これは、7月27日の「『感染力』のある人を見つけ出して隔離・保護」するの発展形である。この7月27日場版の「見つけだし」「隔離」「保護」を私は一貫して批判してきた。批判の中心であった「隔離」という言葉はなくなったが、今度は「追跡」という言葉が現れた。
 共産党の言葉は何か犯人追跡に見える。「見つけ出し」もそうだが「追跡」もそうだ、なぜもっと言葉を選ばないのかわからない。東京都医師会会長の尾崎治夫氏は、「無症状者を含めて感染者をできるだけ拾い上げて」という言葉を使っています。」
 共産党が今回新たに追加した「追跡」は果たして現状の課題であるのか、大阪府の吉村知事はもうすでにどこが発生原であるかという特徴はなくなってきた。至るところから火を噴き始めていると言っている。
 例えば全く次元の違う話ですが、アメリカでは1日10万人以上発症する。こうなればどこが発生源かというような追跡は不可能になる。日本全国でも感染状況は違うが、東京、大阪、名古屋、福岡、北海道等爆発寸前の地方自治体では、もう追跡は不可能ではないか、その辺にも疑問を感じる。
 最後に、なぜ共産党は経済政策との関連でコロナ禍を語らないのか疑問に思っている。7月27日の「緊急申し入れ」の際も共産党は夜の街の自粛と経済保障については全く語らなかった。今回の志位委員の「提言」にも経済活動とコロナの関連、および東京オリンピックとコロナの感懐が全く語られていません。
 今日(11月17日)の赤旗に小池書記局長が「『面の感染検査』しGoToは見直せ」という記事を載せているが・・・

 追記:今までに共産党のコロナ政策に対する記事をたくさん書いています。HPのはじめに特集欄があ
    ります。これらも見ていただければ嬉しいです。