しんぶん赤旗と日曜版の紙面の違いに驚く、日曜版の方が政治的に鋭い



令和元(2019)年5月26日

5月26日付新聞赤旗の日曜版を見てびっくりした!!


 5月19日にこのHPで新聞赤旗を強烈に批判した。その批判の視点は、二つの敵(アメリカ帝国主義と日本独占資本主義)という綱領の看板指針を降ろし、二つの異常やゆがみと言い出し、アメリカの事実上の従属国に成っていることの批判やや、大企業敵視政策をやめたため、新聞記事が全くつまらないものになっていると批判した。
 ところが5月26日の赤旗日曜版の記事を見て驚いた。日曜版は日刊紙が書いた無内容な記事を見事に「二つの敵」の視点から書いている。日刊紙は「F35A1機で4000人分保育所」「『爆買い』やめて待機児童解消」「安心の子育て・福祉の道を」という記事があったが、このF35A機の購入がアメリカからの押し付けであることや、日本の防衛に必要な物かなどの批判的視点が全くない記事であった。そこで批判したのは「二つの敵」論を引き下げた成れの果ての記事だと批判した。

「対米従属が『戦後の国対』」赤旗に日曜版(5月26日)


 赤旗「日曜版」は一面全面を使い、この同じ記事を全く違う視点から書いている。まず見出しを拾うと「F35爆買い147機」「専守防衛に必要ない」(元空自高級幹部)「米いいなりの安倍政権」と書き、さらに「また落ちるかと恐ろしい」という三沢基地近くの町内会長の証言も載せている。さらに日曜版はこれだけに留まらず、特集6面7面と書き、6面、7面でさらに追加記事を書いている。その内容(5面すべてを使い)は、見出しを拾うと「米のいいなりに爆買い」「欠陥800超 コスト青天井」「4月に三沢沖で墜落事故」「カナダは導入見直し」さらに元外務省国際情報局長孫崎 亨氏の「トランプ氏にいい顔『高額なおもちゃ』」という記事を載せ、トランプ氏の写真まで載せている。
 さらに6面では、「住民脅かすF35」「おちおち暮らせない」「青森・三沢」「隣接の町内会 集団移転を要求」「撤去求め集会」「住民のために税金使って」という記事を載せている。この日曜版の記事こそが赤旗が伝えなければならない情報である。
 赤旗日刊は、F35Aは非常に高価な買い物です。例えばこれ一機で4000人分の保育所費に相当するという事を伝えたに過ぎない。一面トップで非常に無内容な記事を書いている。それに比べ日曜版は、この問題の本質を伝えている。このギャップは何処から来るのかよくわからない。
 さらにこの5月26日付け日曜版のスゴイ所は、4面で「対米従属が『戦後の国対』」という大見出しで、政治学者京都精華大専任講師白井聰さんの主張を載せている。中見出しは「安保体制しか頭にない世界に類ない自民政治」さらに左側の見出しに「異常な日米同盟 根本的批判者は共産党」という記事を載せています。まさに共産党がすでに投げ捨てた立場を皮肉るように、共産党のとるべき基本的立場を主張されています。赤旗日刊紙では死語になっている「対米従属」という言葉が大きく書かれています。5月26日付け赤旗日曜版は正に前の綱領の立場から、日本の置かれている立場を明確に描き出しています。

日刊紙と日曜版の政治姿勢の違いは何処から来ているのか?


 なぜ日刊紙の政治的立場と全く違う政治的立場で日曜版が構成されたのか極めて不思議に思われます。編集委員が違うのか、赤旗日刊紙は党中央の監視下に置かれているが、日刊紙は比較的自由があるのか、興味があります。
 私はこれまで日刊紙は政治的記事を、日曜版は一定娯楽紙を目指していると捉えていました。余り日曜版を読んでいませんでした。今回の日曜版を見てびっくりしました。日曜版の方が政治的には鋭い記事を書いていることに気が付きました。
 赤旗日刊紙は、党中央の厳しい監視下に置かれ、共産党の政策の変化を忠実に受け入れ、「二つの敵論」等を投げ捨て、元々批判政党であった共産党を建設的な野党に衣替えしようとしています。

日刊紙赤旗は「フランス10」記者にも好感(志位氏の池袋の演説)


 例えば赤旗5月23日版1面トップに「消費税の中止、くらしに希望をー三つの提案」という記事があり、志位委員長の国会内での記者会見の記事が載っています。その記事の最後に「希望を前面に語る努力を強めた」という見出しで、ここで「安倍政権に対する不信。怒りはたくさんあると思いますが、同時に"政治は変わらないんじゃないか"という閉塞感、展望が見えないという気持ちもあると思う。・・・・希望を前面に語るように組み立てをかえるように心がけています。」と語っています。
 同日の赤旗2面でこの記者会見を補完する提灯記事を書いています。見出しを見ればフランス人の記者が志位演説を評価したように見えますが、記事を読むと、インターネットメディアの日仏共同テレビ局「フランス10」の及川健二記者から、「演説内容が批判よりも希望を示していた」「どういう意図があったのか」との質問があった。それに志位委員長が「よく聞いていただきました」と答え。その後及川記者が「べた褒めする」と言うストーリーです。 
 赤旗側の仕込みのように見えますが、そうでないとしたら、褒め殺しです。共産党の批判がそれなりに効いているので、批判を封じ込める意図があると思っています。

批判を疎かにし、提案型の政治は本当に国民が望んでいる政治か?


 前回の記事でも書きましたが、「共産党も大人の政党に成れ、批判ばっかりっしているから支持が伸びない、提案型の政党になればもっと伸びるし政権も握れる」と自民党や小沢さんからささやかれているのだと見ています。これは悪魔のささやきです。政治家になればだれでも次は大臣になりたいと思い、提案型に変えれば与党の一角にも滑り込めると言う意識が働きます。
 共産党までがこの誘いに乗ったら日本の政党政治は破綻し、大政翼賛会になってしまいます。この危険性を野中広務宏巨氏は晩年訴えておられました。
 まさに「語るに落ちる」姿です。共産党は時の政権に対する厳しい批判を続ける所に価値(存在感)があるのです。それを提案型政治に変えれば共産党の役割は無くなってしまいます。
 前にも書きましたが、旧社会党の流れをくむ民主党、現在の立憲民主党と国民民主党は、支持率に大きな差があります。国会議員の数はほぼ同数ながら、立憲民主の支持は9%ぐらいありますが国民民主は1%にもありません。その国民民主の最大のキャッチフレーズが批判政党ではなく提案型政党を目指しています。
 アメリカや大企業に支持された自民党という偉大な政党が日本を支配している現状で、提案型の政治を行っても、相手側は痛くも痒くもありません。正に敵の戦略に乗った姿であり、共産党の基本的政治的立場の変質です。気の早いインターネット情報では小沢氏と手を結び日本大衆党等に変更し政権を取りに行くと言うような記事を見ましたが、正にそのような姿に見えます。

悪魔の囁きは敵の陰謀です。傀儡政党を作り体制翼賛会を狙っているのです。

 選挙戦でいかに票を沢山とるかという視点でばかり物を見、批判ばかりしているから票が入らないと、自民党や小沢氏に指南され、提案型になればもっと票が入るのではという思想は、幻想を追い求める者であり、堕落そのものです。
 共産党は大衆とともにあり、困っている人たちの不満や要求を元に戦ってこそ前進するのです。この間の共産党の停滞は、機関紙拡大に党のエネルギーの大半を使い、大衆運動とのつながりを軽視してきたところに最大の問題があります。提案型の政策は同時に時の権力に迎合し、相手にこうすればもっと景気がよくなりますよという立場でしかなく、今までの「軍事費を削って、働く者の生活を支援しよう」と言うような打ち出し方はできません。つまり我々の生活改善は、政治改革が有って初めて実現すると言う押し出しが出来ず、この政策を取り上げてもらったら、国民の生活は改善されるでは、政治的戦いにはなりません。敵の土俵に上ってしまった姿です。

全労連の機関紙の「月刊全労連」の見出しを見ても労働者の戦いはない。

 話は変わりますが、今日赤旗に「月刊全労連の6月号」の宣伝が載っていますが、労働組合の戦いの記事は全くありません。あるのは「いかにして内部保留を社会に還元させるか」〜富を再配分する税制の提言〜という記事が載っています。大企業に支援された自民党が、大企業の税の権限を行っても、大企業から大幅な増税で内部留保金を取り上げる事は考えられません。できるのは労働者の戦いです。これを忘れてしまっては、もう終わりです。

長谷川豊氏(維新の参議委選挙候補)の差別発言を赤旗は取り上げていない。

 5月21日の赤旗は「丸山暴言問題 これはもう維新の体質」という記事を書いています。その見出しを拾うと「加害正当化」「差別を肯定」「不正居直り」などと書いています。この差別肯定は長谷川豊氏の問題かと思いましたが、よく読むと松井府知事時代の大阪府警の機動隊の「土人」「シナ人」の擁護の件や、LBGT(性的少数者)を差別する論文を書いた杉田水脈氏も元々は維新から議員になった人物だとか、足立議員の暴言・暴挙を取り上げています。
 さらに読んで見ると長谷川豊氏も「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にせよ!」という発言は批判していますが、部落差別発言は取り上げていません。確かに毎日新聞の記事が5月22日だったので、赤旗は5月21日の記事だから載っていないのは理解できますが、今日現在(5月25日)でも赤旗は長谷川豊氏の部落差別発言について報道していません。
 この長谷川氏の発言が差別発言だと取り上げたのが部落解放同盟だったからこの差別発言を無視するのであれば、赤旗の党派性が著しく、一紙で間に合う新聞の資格は与えられないと思います。
 この長谷川氏の発言は、この間の人権意識の成長などで久しく見られなかった極めて悪質な差別発言です。部落解放同盟が差別でもない者を差別だと言いがかりを付け、市民社会を混乱に陥れてきた歴史はありますが、今回の発言はまれに見る非常に悪質な差別発言であり、これを共産党が見逃すことになれば、人権を尊重する政党としての資格を失うと思います。
 私は過去に大島渚氏の死亡に際して共産党が弔意を示さなかったことを批判しましたが、これとは比較にならないほどのセクト主義です。このような姿勢を改めない限り、提案型の政党にイメージ変更を諮っても、しょせんはセクト主義でしかないことが見破られます。
 共産党が支持を広げるためには、敵を明確にして、国民の怒りを組織していくことが大切です。提案型の政党への変質は必ず大きな支持を失います。また同時に国民が共産党に抱いている疑問、中央集権型の組織原則やセクト主義な側面などの克服抜きに提案型の政党に衣替えしても支持は減るばかりだと思います。