「新型コロナ対策にかんする緊急申し入れ」志位和夫に漂う共産党の弱点を暴く


令和2(2020)年8月7日


 日本共産党の志位和夫委員長が7月28日安倍晋三首相にあてに届けた「新型コロナ対策にかんする緊急申し入れを」(以下「緊急申し入れ」という)を行った。その全文がしんぶん赤旗7月29日に載っている。
 私はこの件については、既に8月1日付けで「コロナ問題での共産党の間抜けさを暴露した赤旗日曜版(8月2日号)」という記事を書いた。
 先のHP掲載に当たって志位委員長の発言と東京都医師会会長尾崎治夫氏の発言とどちらに重みがあるか比較した。結果は尾崎治夫氏を100点とすれば志位委員長は40点であった。
 本日(8月6日付)赤旗はその尾崎氏を今度は新聞赤旗の一面に登場させている。私は先の文書で尾崎氏の主張が圧倒的に優勢だと評価したが、尾崎氏を赤旗一面に持ってきたという事は、赤旗は尾崎氏を志位発言の軍門に下らせたのかと思って読んでみたが、彼は志位委員長の発言をなぞったものではなく彼の主張を堂々と伝えている。この事態に対して私はびっくりしている。

 昔話になって申し訳ないがそもそも志位委員長の発言は「幹部会委員長 志位和夫」であり、この論文はすべての共産党員の活動の道標である。全ての党員はこの内容を理解し、この内容に沿った発言を行わなければならないという縛りがあった。志位委員長がこの問題の本質を語っているのに、他の人の見解が載ることは考えられない。一般の党員は何を信じれば良いのか分からなくなる。
 尾崎氏の主張は赤旗日曜版と同じ主張である。この主張の方がよっぽど生命力のある主張である。これが堂々赤旗一面に載るところは赤旗も変わったのだなと読み取れる。
 しかしこの「緊急申し入れ」の発信者が「幹部会委員長」の志位和夫であるという体裁は旧態依然としている。従来の社会主義国における党内の権力構造を現わす文言である。共産党の序列第一位は志位和夫であると宣言している。党内向きの序列論であり、世間に出す場合は日本共産党委員長志位和夫で良いのではないかと思う。

「緊急申し入れ」日本共産党幹部会委員長 志位和夫には、没落した社会主義国の匂いがする。


 志位和夫氏の主張と尾崎治夫氏の主張はどちらが正しいかは、先のHPの記事で既に書いたが、今日改めて読んでみて、志位委員長の出した「緊急申し入れ」には、社会主義国特有の弱点が明確に含まれていることが分かった。
 志位氏の出した「緊急申し入れは」まさに官僚が書いた合理主義そのもので、中国の武漢で行ったコロナ対策に似た主張になっている。
 以下具体的に見ていきたい。この「緊急申し入れ」は赤旗に載せる際に蛍光ペンでマークしたような色がついている。これが重要だというのだと思われる。この色付きの部分を簡単に拾っていくと、この文書の論理構成が分かる。
@感染の震源地(エピセンター)を明確にし。その地域の住民、事務所の在勤者の全体に対してPCR等
 検査を実施すること
A地域ごとの感染状況がどうなっているのかの情報を住民に開示する。
B医療機関、介護施設、福祉施設、保育園・幼稚園、学校など、集団感染によるリスクが高い施設に勤務
 する職員、出入り業者への定期的なPCR等検査を行うこと。必要におうじて、施設利用者全体を対象
 にした検査を行うこと
C検査によって明らかになった陽性者を、隔離・保護・治療する体制を、緊急につくりあげること。と書
 いています。
D参考資料として、感染者の急増が見られる主な地域の陽性率を書き、例えば東京都では新宿区は陽性率
 32.2%、中野区は14.9%などすべての区の陽性率を書き上げ、最後に地域ごとの検査数、陽性率を公表
 している市はない。と批判しています。

なぜ中国武漢型の方針に似ていると指摘するのか


 この「緊急申し入れ」に違和感を禁じえません。まさに中国武漢型のコロナ対策を行えと言っているものです。(そのことに気づきませんか?)
 まず@及びAですが、
赤旗はーまず感染震源地を押さえると書いています。
尾崎氏―感染拡大抑止のために感染震源地での補償と一体の休業要請と徹底したPCR検査の実施と書いています。
 共産党の主張は手っ取り早く感染震源地を明確にしてPCR検査を行うというものです。網をかけてその地域全体を押さえよという主張です。
 ★一番の違いは、尾崎氏は何処で発生しているかを、地域でとらえず職業で捉え、さらに自粛と補償の一体化の議論をされています。共産党の方針は地域の個人単位で把握し補償については一切触れていないことです。
 政府案は「ものたりなさ」を感じるところもありますが、それは補償を前提にしているからです。さらには個人のプライバシーや人権等総合的に考え、「夜の街」とかという表現を使っています。
 例えば、地震が起こる可能性や水害が起こる可能性の地図等の公開を渋るのも、そこに住んでおられる方の財産的価値が低くなることを配慮して発表を控えているのです。
 私は東京の実態を良く知りませんが新宿区32.2%は東京の6.6%比べれば非常に高い数字です。しかしこれを公表すれば新宿区に住んでおられる方は、社会で様々な不利益を被る可能性があります。(現に、医療事務に携わる子どもは、「登校するな」見たいな発言が学校からなされているというような事件が発生しています)
 「一網打尽に捕まえろ」というのは中国的発想です。マージャン店に乗り込みマージャン台を破壊する映像が流れましたが、この思想が見え隠れします。
 Bはその通りですが、ここでも共産党は政府寄りの発言をしています。それは、PCR検査の拡大を要求しながら感染震源地に限定している点です。(注1)

注1:8月2日付赤旗日曜版に「緊急申し入れ」の際の記者会見の内容が載っています。そこには「緊急事
  態宣言回避のために」という見出しを掲げ、志位発言を紹介しています。
   その内容は「ただやみくもに検査を広げても解決できません。その点でも感染震源地を明確にし、
  面的、網羅的な検査の必要があるのです。」と紹介しています。

 尾崎氏は「定期的に何度」もという見出しを掲げ(赤旗8月6日付)PCR検査はある意味では、気軽に、一定の限界をわきまえながら拡大した方が良いと思います。(中略)世界中で、広く検査をした方が感染は抑えられるというエビデンス(証拠)はあります。私は第一波の当初はPCR検査を無症状感染者までに広げるべきだとは思いませんでしたが、いろいろ知見や検査体制も変わるなかで、無症状感染者も検査で早く発見し、感染拡大を抑え込むべきだという考えになってきました。現在では、感染防止のための唾液等の検査は時期を選べば精度が高いという見解が有力になっています。と書かれています。

 C検査は何のためにするのか
赤旗検査によって明らかになった陽性者を、隔離・保護・治療と「緊急申し入れ」に書いています  が、
尾崎氏―尾崎氏は感染状況を把握して、陽性者を保護・隔離することが大切です。と書いています。
 ここにも共産党と尾崎氏の思考の違いがあります。「隔離・保護」と書くか「保護・隔離」と書くかはそれぞれの思想性が現れている。共産党は隔離」を先に出し「保護」を後にしています。(注2)

注2:8月2日付赤旗日曜版に「緊急申し入れ」の記者会見の内容。「感染抑止のカギは。"感染力のある
  無症状者"をいかに早く見つけ出して、隔離・保護するかです。
   この発想は感染力のある無症状者を早く見つけて隔離するという発想は、「ハンセン病は感染力が
  極めて弱い病気であったにもかかわらず、我が国では、今世紀を通じて一貫して絶対的終身強制隔
  離・患者絶滅政策がとられました。 これは、医学的にも公衆衛生学的にも必要性を著しく逸脱した
  ものでした。」に通じる思想のように見えます。

 さらに志位発言のおかしさは、大見出しで「『感染力のある人』把握がカギ」である。(8月2日号赤旗日曜版)これは把握=隔離という思考です。これに対する批判は前の記事で行ったが、他に2つの小見出しがあります。『防疫』目的のPCR検査を」「緊急事態宣言回避のために」この2つの小見出しの記事も問題があります。
 まず先の小見出しで共産党は『防疫』が目的で治療が目的でない」とはっきり言い切っています。防疫が目的であるから、「隔離」が先に出てくるのです。全体主義的発想です。 
 テレビを見ていると「おなかの大きな夫人が感染したか、否か調べてほしいと保健所に電話しても断られた」というような話が流れています。まだまだ治療を受けたい人が保健所に電話しても受け止めてくれない事態が続いています。なぜ共産党はこうした困った人を助けるという視点よりも、全体的合理主義で「感染の震源地」の把握が第一義的課題になるのか人間性を失った画一的な判断が優先する」のかよく分かりません。
 さらに次の小見出し「緊急事態宣言回避のために」では、「ただやみくもに検査を広げても解決できません」と政府答弁と同じ口調の発言を行っている。「緊急申し入れ」はPCR検査の拡大要請であるはずなのに、政府の理屈を共産党も述べています。PCR拡大要請は本心から語っていますか、(?)が付きます。

8月9日・16日赤旗日曜版に尾崎氏がまたまた一面に登場した。


 ここまでは昨日(6日)に書いていたが、今日新たに8月9日・16日合併号の赤旗日曜版が配達されてきたが、又も尾崎会長が1面に登場してきた。その内容を再度点検してみたい。
 見出しは「コロナ重大局面」「必要なのは感染震源地での集中的PCR検査」である。ここでまず言葉の整理であるが尾崎委員長が感染震源地の定義を語っている。「感染震源地とは、感染力の強い無症状の感染者が集まり、そこが震源地となってほかの地域にもクラスター(感染集団)を拡大させるような特定の地域のことです。」と説明しています。
 尾崎氏は、「感染を収束させるためには感染震源地の対策が不可欠です。と主張し、「私し達の提案は、「感染震源地で保証を伴う休業要請を行い、2週間程度休んでもらう。同時にその地域で大学や民間研究機関の検査能力も結集して集中的にPCR検査を実施し、無症状者を含む感染症者発見して隔離・保護するという対策を行うことです。」主張されています。
 さらに1面から引き続き三面にも尾崎氏が登場し持論を語られています。三面での見出しは「無症状でも強い感染力」多くの若者が気づかず外食で拡大」「都内1400か所でPCR検査を目指す」です。

尾崎氏は感染拡大を抑えるためには三つのポイントがあります。


@無症状者を含めて感染者をできるだけ拾い上げて隔離していくこと
A感染震源地(エピセンター)に対する徹底した対策
B感染震源地から周囲への感染拡散を防ぐこと
と述べています。

ここまでで、尾崎氏の主張と志位委員長の主張の違いは、


尾崎氏はー私たちの提案はでまず「感染震源地で保証を伴う休業要請を行い、2週間程度休んでもらう」という対案を第一に持ってこられています。
志位氏はー、赤旗日曜版8月2日号で、「『感染力のある人』把握がカギ」という大見出しを付けて、「感染抑止のカギは、"感染能力のある無症状者"をいかに見つけ出して隔離・保護するかです。」
この二人の解決方法の見方は決定的に違います。
尾崎氏の主張はー感染の拡大は「夜の街」という特定の環境で広がっているのだから、ここを何とかしよう。これを権力的に締め付けるのではなく、休業補償をしてお願いしようというものですが
志位氏の主張はまさに権力者の発想です。コロナ感染者を犯罪人のように見立てています。それは志位氏の発言、コロナ感染者を「いかに見つけ出して」という言葉のニュアンスに含まれています。さらに見つけ出して「隔離・保護する」という言葉も権力の横暴の雰囲気がします。
 尾崎氏はできるだけ拾い上げという言葉を使っておられるが、志位氏「見つけ出し」という言葉は、犯罪者を見つけるニュアンスです。細かいところで違いは出ています。「拾い上げ」は味方に対する言葉だが「見つけ出しは」敵対する相手にたいする言葉である

 昨日羽鳥さんのモーニングショーを見ていたら、玉川さんが真剣に自分の言葉にハンセン病患者を傷付ける言葉があったと誤っておられました。途中から見たので正確には抑えていませんが、志位委員長の「いかに見つけ出し」「隔離する」という発言は、ハンセン病患者の心を傷付けるものだと思います。国家という権力は感染症患者をみつけたら隔離して収束を狙うのか、この思想が我々の人生を踏みにじったという思いがあると思います。

「保護・隔離」か「隔離・保護」かには、その人の考え方に重大な違いがあるとみています。


 この尾崎発言で気になるのは8月6日新聞赤旗では、「陽性者は保護・隔離していくべきです」と書かれているのに最新版の8月9日・16日合併号の日曜版では「隔離・保護」に代わっている。これは赤旗の編集で共産党の主張に塗り替えたのか、彼の発言が変わったのか、分からない。私はこの順番は重要だと思っている。尾崎さんが適当にしゃべられているとは思えない。
 最後に赤旗日曜版(8月2日号)の志位委員長の記者会見の見出し「『感染力のある人』把握がカギ」という見出しが、何を意図したものかわかりません。要するに志位委員長は「見つけ出し」「隔離」に力を入れており、見つける対象は「感染力のある無症状者」だと息巻いていますが、それをどのように見つけるのかが定かではありません。しかも個人を追求しようとしています尾崎氏は、そうした個人責任論は取らず、その感染震源地を改善して行こうとされています。そのためには「補償付きの休業要請をして2週間ぐらい休業していただければ、そこでの感染は収まるはずです」と特定の個人に責任を転嫁する方法を取られず、政府の援助が必要だと、責任は政府にあると結論づけておられます。
 尾崎さんの話こそが正論であり、志位委員長の解決策は、特定の個人の責任論であり隔離して鎮圧という個人の人権等を全く顧みない解決方法です。

「緊急申し入れ」と尾崎氏の主張は違うのに、なぜ赤旗は尾崎氏を3回も登場させるのか?


 最後に赤旗、及び赤旗日曜版は尾崎氏と志位委員長の発言に違いがあることに気が付いているのか、それとも同じだと思って尾崎氏を何回も担ぎ出しているのか判断に苦しみます。赤旗の編集局が志位委員長の幹部会声明や記者会見の発言では問題があると思いそれを補強するために尾崎氏を何回も登場させているのか、それとも違いに気が付かず、志位委員長の発言が正しいことは東京医師会の会長もお墨付きを与えているという考えなのかわかりません。
 ただ、私の若いころの幹部会声明はそれが絶対的に正しく、それ以外の発言が赤旗に載るなど考えられません。幹部会声明に感動した、これで勇気を持って戦えるという提灯記事が並びました。今回のコロナ対策では幹部会声明と尾崎氏の発言内容が違うのに、幹部会声明は一度だけ紹介され、尾崎氏は8月2日号の日曜版、8月6日の赤旗、8月9日・16日合併号と何回も顔を出して持論を語らせています。
 志位委員長が指摘した、「『感染力がある人』把握がカギ」の取り組みがいかに理解され進んだという話は一切載りません。民間のテレビ等でも無症状者の中にも感染力が強い人と弱い人がいてこの選別が必要との議論を聞いたこともありません。やはり話は「夜の街」での感染をどう抑えるか、休業補償が大切との議論が行われています。
 どこの区の陽性率がいくらかの発表が感染防止につながるとの議論はなされていません。例えば吉村大阪府知事が、うがい薬が感染防止に役立つとテレビでしゃべり、うがい薬は15分で町から消えたといいます。責任のあるものが、新宿区の陽性率は32.2%であり、東京都全体の6.5%の約5倍だと発表したら、新宿の住人は会社への出勤も拒否されるかもしれません。これは「夜の街」対策で休業補償を行い、沈静化を図るのが行政及び国の仕事だと思います。
 赤旗が言うような合理主義が必ずしも常に正しいとは言えません。コロナ問題の解決には個人情報や人権や、そこで働いている人の経済や様々な要素が複雑に絡んでいます。陽性率を全国の市町村で発表し、感染率が高いところから感染者を見受け出し、順次隔離する。いかにも合理的ですが、これをすればすべて解決するという単純なものではありません。
 この複雑な要素をすべて踏みにじりこの感染を抑えたのが中国です。感染は抑えられましたが個人の自由や人権は踏みにじられました。日本では中国方式を取らず、できるだけ個人の人権や経済を守りながら抑えようとしています。その微妙なさじ加減を見ておかないと単純な突込み(提案)では信用を得ることはできません。