共産党大阪府委員会のおかしな参議院選挙総括


平成28(2016)年7月16日



 2016年7月11日日本共産党大阪府常任委員会は「参議院選挙の結果について」を発表した。
 その中で「比例代表では、日本共産党は42万1790票(得票率11.37%)を獲得し、全国的前進に貢献しました。新たな反共シフトのもとで、13年参議院選挙(43万6千)、14年衆議院選挙(44万9千)の得票をほぼ維持しており、第3の躍進“を本格的な流れに発展させる足場を確保しています。
 政権与党の自民党が前回比91.5%、公明党が同91.1%に後退するなか、野党の民進党、社民党、生活の党は得票率を伸ばしました。同時におおさか維新が前回比122.8%伸ばして第一党を維持しました。維新政治の影響力を乗り越え、新しい政治を切りひらいていくたたかいに、新たな決意で挑んでいきます。

この共産党の大阪府委員会の参議院選挙総括には様々な問題があります。


 今回の選挙戦の最大のポイントは、改憲勢力と戦い、改憲勢力に2/3を取らせないために野党共闘を推し進め、戦ったことです。総括の視点はまずこの点から語る必要があります。確かにこの総括でも出だしは「7月10日投・開票された参議院選挙で日本共産党は、野党共闘の勝利と日本共産党の躍進を掲げてたたかいました。野党と市民の共闘は全国32の1人区のうち11選挙区で勝利し、・・・改選3議席を倍増する6議席を獲得しました。」と書いています。しかし大阪での選挙戦の特徴については全く触れていません。
 大阪選挙区の最大の特徴は、当選者4名がすべて改憲派で、その獲得「得票数」(得票率)が「2,838,016票」(76.06%)を占め、改憲反対派は共産党・民進党で「802,255票」(21.05%)に留まったことです。(その他が2.24%獲得)
 これは出口調査でも、全国的には改憲反対が50%、改憲派が40%であったにも関わらず、大阪は、改憲反対が45.9%、改憲賛成が49.9%となり、全国とは真逆の結果になっています。この大阪の異常性は、おおさか維新の躍進に次ぐ躍進があります。
 共産党府委員会は、参議院選挙総括で政権与党の自民党と公明党が得票率を減らしたと書いていますが、おおさか維新も含めた「改憲派」と「改憲反対派」の比較を、敵・味方の力関係として捉えるべきです。(おおさか維新隠しは姑息な対応です。)そうした視点から見れば、大阪は「改憲派」が異常に伸長し、危険な状態になっています。
 橋下氏のおおさか維新からの一時的な撤退は、おおさか維新にとっても痛手であろうと一般的には思われていましたが、おおさか維新は、今回の選挙でさらに大きく躍進しました。前回選挙比では比例代表では、得票数1,293,626票(前回は1,053,036票)、得票率34.86%(前回は28.73%)、票数で240590票、率で6.13%伸ばしました。異常な躍進です。
 選挙区では、得票数1,397,214票(1,056,815票)、得票率37.45%(28.83%)票数で340399票、率で8.62%も伸ばしました。
 このおおさか維新の躍進を覆い隠して選挙総括を行う姑息さは、府民に受け入れられないと思っています。
 共産党大阪府委員会はおおさか維新の偉大さを見誤っている。このモンスターとどう戦うかは、まさに「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」の兵法を採用しないと、敵はますます増殖し、共産党はますます衰退していくであろう。
 次に具体的な、細かい批判を行います

比例代表の論評の際に、「前回比(96.5%)を獲得し、全国的躍進に貢献しました。」??

と大阪府委員会は書いていますが、通常前回より獲得目標が低かったのですから、「貢献できませんでした。」と結ぶのが常識でしょう。なぜこのような結びになるのか、次の言葉に鍵があります。この続きには伝家の宝刀が記載されています。
 「新たな反共シフトのもとで」、という常套句を使い、この言葉を使えばすべてが許されるという甘い判断で書いています。新たな反共シフトとは何か具体的な記述もなく、自分たちだけが酔える言葉に浸り、科学的な分析をすべて葬り去る共産党の総括の異常さを感じ取ります。

おおさか維新は与党勢力(改憲派)でなく、第3の勢力か?

 この総括ではさらに「野党の民進党、社民党、生活の党は得票率を伸ばしました。同時におおさか維新が前回比122.8%に伸ばして第一党を維持しました。維新政治の影響力を乗り越え、新しい政治を切り開いていくたたかいに、あらたな決意で挑んでいきます。」と書いていますが、先ほどから述べているように、与党の選挙結果を書き、野党の選挙結果を書き、その後におおさか維新の選挙結果を書いて、意識的におおさか維新の会を与党勢力に位置付けない記述を行っています。
 「維新政治の影響力を乗り越え」という抽象的な表現で維新を語り、維新が改憲勢力であり、公明党よりも安倍政権にとっては信頼できる友軍になりつつある姿を隠ぺいしています。維新とどう戦うかが大阪では最大の課題であるのに、さきに戦われた大阪ダブル選挙の共産党のスローガンは「さよなら維新」でした。このような間抜けなスローガンが維新をさらに増殖させている原因だという自覚は共産党の総括からこれっぽっちも見えてきません。

「維新『教育無償化』・・安倍政権の「別動隊」ぶりがあらわに」←わけの分からない批判

 最後に17日付大阪民主新報の「記者メモ」という記事がありますが、この記事も共産党の迷走ぶりを表しています。以下紹介します。
 2面の記者メモか「やはり『安倍別動隊』」という記事があります。
 この記事では、「おおさか維新は「憲法をかえなくてもできる『教育無償化』など改正項目にした独自の改憲案を掲げ、憲法審議会で議論すると説明しました。」あるいは「馬場氏はすでに6月、外国特派員協会での記者会見で、自民党が憲法9条改正と併せて「教育の無償化」などを提案した場合は、「全否定するものではない」と明言。などのおおさか維新の発言を紹介しています。
 記事の最後の締めくくりは「参院選挙でおおさか維新が繰り返し叫んだ『教育無償化』。改憲勢力が『3分の2』を占める下で、憲法改正をめぐる『駆け引き』次第で、9条改正のてこになっていく。安倍政権の『別動隊』ぶりがあらわになっています。」(す)
 この最後のまとめが何を言おうとしているのか、全く分からない。おおさか維新が「教育の無償化」を叫ぶのは、憲法9条の改正を狙ったものだと言いたいのだと思うが、あまりにも論理が飛躍している。「風が吹けば桶屋が儲かる」のような主張だ。
 おおさか維新は、改憲派であることを全く否定していない。彼らは公明党がもし日和った場合、公明党に代わって安倍政権を支え、憲法9条の改正に賛成することは、すでに常識の世界である。
 公明党が憲法改正(9条)まで踏み込むかは、党是の否定であり、池田大作氏の過去の発言とも矛盾する。簡単には衣替えができない可能性はあるが、おおさか維新は改憲の意思を自ら否定はしていない。現在の馬場幹事長等の発言は、教育の無償化をおおさか維新が実現すれば、政界第一党を狙えると見ているからだと思う。
 これはアメリカの大統領選挙(予備選)が教えてくれた、民主党のサンダース候補があれだけ健闘したのは教育の無償化政策が大きい。おおさか維新は大阪だけでなく、日本の政界での第一党を狙っている。そのてこに教育の無償化があると思われる。
 共産党もアメリカの大統領選挙(予備選)から学ぶ気があるなら、今回の選挙で「格差社会の是正」を前面に出すべきであった。「経済の民主化」などと言われても何のことかさっぱり分からない。ここに維新の政治感覚の鋭さと共産党の間抜けさの差がある。

参考資料:選挙結果(前回と比較)

比例代表 
得票数 
得票率(%)
前回との差 
今回
前回
今回
前回
得票数 
得票率 
日本共産党
421,790
436,873
11.37%
11.92%
-15083
-0.55%
自民党
820,641
896,679
22.12%
24.47%
-76038
-2.35%
公明党
608,104
667,150
16.39%
18.20%
-59046
-1.82%
おおさか維新の会
1,293,626
1,053,036
34.86%
28.73%
240590
6.13%
民進党
344,941
270,518
9.30%
7.38%
74423
1.91%
その他・諸派
221,482
340,652
5.97%
9.29%
-119170
-3.33%
 計
3,710,584
3,664,908
100.00%
100.00%
45676
0.00%
※共産党の資料にはいつも間違いがあるが、本日付け大阪民主新報の記事では、 
 「その他・諸 派」の前回の得票率が、実際は9.29%なのに、7,64%なってい
 る。(これでは足しても100%にならない。)














選挙区 
得票数 
得票率(%)
前回との差 
今回
前回
今回
前回
 得票数
 得票率
日本共産党
454,502
468,904
12.18%
12.79%
-14402
-0.61%
自民党
761,424
817,943
20.41%
22.31%
-56519
-1.91%
公明党
679,378
697,219
18.21%
19.02%
-17841
-0.81%
おおさか維新の会
1,397,214
1,056,815
37.45%
28.83%
340399
8.62%
民進党
347,753
337,378
9.32%
9.20%
10375
0.12%
その他・諸派
91,091
287,474
2.44%
7.84%
-196383
-5.40%
 計
3,731,362
3,665,733
100.00%
100.00%
65629
0.00%
※大阪府委員会の総括は、自民党や公明党の票が減ったことを、天下を取ったように喜んでいるが、実際にはその票は大阪維新に流れただけであり、改憲反対派に流れたのではない。あたかも情勢が好転したように描いているが、実際は改憲派が増え改憲反対派が減ったのが選挙戦の特徴であり、深刻な事態である。
 この事態を冷静に把握できない大阪府の幹部の政治水準に非常に疑問を抱く。