茨木市市会議員選挙結果は惨敗に終わった。

    これを認めることが再生への近道


                                                            平成25(2013)年1月31日

  茨木市の市会議員選挙が1月27日に行われた、茨木市の選挙は特殊であり、一斉地方選挙と日程が違うため、大阪全域からの応援が可能なため、近隣の都市より共産党の議員占有率は昔から高かった。資料がないので私の記憶では、確か長い間6名の議員を確保していたと思う。手持ちにある資料では、2005年は5名、2009年は6名立候補して4名、そして今回は4名立候補して3名の当選になっている。明らかにじり貧である。

 しかし赤旗はこの選挙結果をどう伝えたかを以下に引用する。

 赤旗(1月29日)「茨木で党3議席」(大阪)全体として8666票(獲得率9.65%)を獲得し、昨年総選挙の比例票よりわずかですが得票数・率とも上回りました。という記事を載せている。(「勝っている」という立場からの説明?)

 共産党はいつも、最悪の選挙結果を持ち出し、それより良かったという議論で選挙結果をごまかしている。(こんな事をして何を狙っているのか分からない。まともな政党なら客観的な総括をして、前進するための手掛かりを探す。)そもそも大阪府茨木市の共産党の議席は6名が長い間の実績であり、そこからズルズル滑り落ちているのが最近の実情である。 

 今回の選挙に当たって、解散時3名であったから、当選も3名で、現状を維持したと繕っているが、前回の当選者は4名である。しかし、4名確保しながら、任期途中で1名は共産党議員団から離れ、他会派に所属替えしている。(この原因が何であったのか私は知らないが、間抜けな話である。・・この議員は、今回は無所属で立候補し、1167票獲得し落選している。ちなみに共産党の落選者は次点で1618票であった。)

 今回、共産党は背水の陣で戦っている。前回は6名立候補し、4名であったが、1名の裏切りにあい、最低限この議席奪還を目指し、4名の立候補で手堅くいったが、1名落選し3名当選の実績を定着させてしまった。

 立候補が6人から4人になったということは、共産党はすべて地域割だから、自分の対象地域が1.5倍に増えた。だから現職者は、得票数を1.5倍獲得して当然なのに、逆に減らしている者がいる。(現職2名の内1名は票を伸ばし、1名は減らしている。4年間市会議員をやってフアンが増えないのは、理解しがたい。裏切ったY候補は、落選したといえ、組織票なしで1167票獲得している。・・・共産党の候補にはこの個人票が全くない。)

以下どのくらい見事に負けているか具体的数字で見て行きたい。

★茨木市市会議員選挙結果(2013年1月27日)

政党名     今     回   前   回 前回との差 前回比 補正後の
比率
前回比

 得票数 

    %

得票数 

  %

 票 数

  率 

  率

 割合

 みんな

3395

3.78%


 

3395

 

 

 

 共産党

8666

9.65%

13387

13.98%

-4721

64.73%

69.01%

  7割

 公明党

17300

19.26%

20521

21.43%

-3221

84.30%

89.87%

  9割

 自民党

14163

15.76%

15349

16.03%

-1186

92.27%

98.36%

 10割

 新社会

2602

2.90%

2064

2.16%

        538

126.07%

134.38%

 

 維新

14767

16.44%



14767

 

 

 

 民主党

5447

6.06%

15606

16.30%

-10159

34.90%

37.21%

  4割

 無所属

23499

26.16%

28842

30.12%

-5343

81.47%

86.85%

 

 

89839

100.00%

95769

100.00%

   -5930

93.81%

100.00%

 


※補正後の比率:前回より総得票数が5930票減っているので、その分を計数化して補正した。

  この表から明らかなように、共産党の獲得票数は8666票であり前回獲得票数から4721票減らしている。これを「%」で表せば、64.73%であり完敗である。ただし、前回より今回の総得票数が減っているので、その分の係数をかければ、69.01%であり、約3割の票をこの4年間で失ったと見るべきである。この惨敗をもたらした原因は、橋下・「維新の会」の出現である。(これについて後で説明する)

  これに対して他党派どうか、一番立派なのは、自民党である。自民党は補正係数後98.36%取っており、維新旋風に全く吹き飛ばされていない。次に立派なのが公明党である。補正係数後89.87%であり、1割を維新に持って行かれたと見るべきである。一番ダメだったのは民主党で前回比(補正後で)37.21%であり、壊滅的な敗北を期している。

 私は常に共産党と公明党の力関係を見ている。公明党でも取れる数値は、共産党にも取れると思っている。茨木(市会議員選挙)では、公明党は17300票であり、共産党の8666票の約2倍である。大阪では共産党は公明党の2分の1政党になり下がった。

参考;前回結果と今回結果

1.前回

当選 得票数  名  前   年齢   性別 党派・会派 現・新
 当

 2729

 畑中 剛

42

共産

 現
 当

 2482

 阿字地 洋子

63

共産

 現
 当

 2430

 岩本 守

44

共産 ⇒

 現
 当

 2096

 朝田 充

44

共産

 現
 落

 1891

 大嶺 学

43

共産

 新
 落

 1759

 岡崎 栄一郎

56

共産

 現

13387






2.今回

当選 得票数  名  前   年齢   性別 党派・会派 現・新
 当

 2463

 朝田 充

48

共産

 現
 当

 2457

 畑中 たけし

46

共産

 現
 当

 2128

 大嶺 さやか

40

共産

 新
 落

 1618

 山ばた 吉男

58

共産

 新
 

 8666





 

 

 次にもう少し正確に今回の票を分析するために、大阪府知事選、衆議院選挙の票数を他党派との関係で押えておく。

★大阪府知事選挙(2011年11月27日)

  政 党 名

 候補者 

 獲得票数 

  得票率   備    考

 民主党

 倉田

36815

33.79%


 

 中村

613

0.56%


 

 マック

399

0.37%


 

 岸田

584

0.54%


 共産党

 梅田

9480

8.70%


 大阪維新

 松井

60571

55.59%


 

 高橋

499

0.46%


 

 

108961

100.00%



※梅田氏を共産党、倉田氏を民主党として便宜的に見ている。

  大阪知事選挙の梅田氏の得票は「無党派」で獲得したものであるが、おそらくこれはほぼすべて共産党だと思って投票した数字だとみなされる。(無党派との統一という方式が完全に失敗した選挙であった。)この際の得票率は8.70%であり、今回の共産党の得票率よりも低い。

  この選挙で注目すべきは、大阪府知事としての見識や風格があると思われない松井氏が55.59%を獲得した事である。橋下・「維新の会」のすごさに驚かされるとともに、共産党の選挙戦術、赤旗を増やして、選挙に勝つという方針が、如何に無内容であるかを、見事に示してくれた。選挙は、政治的力量があるものが勝つ、これが鉄則である。結局は相撲を見ていても、柔道を見ていても、どちらが強いかはだいたい分かる。政治も格闘技であって強い者に期待する。国民大衆は基本的には反権力である。橋下氏の強烈なメッセージ「既得権益をぶっ飛ばせ」こそが、自らの鬱積した気持ちを代弁してくれていると感じているのだと思われる。(「安全・安心・やさしさの大阪」は国民を鼓舞しない、平和ボケのスローガンである。)

 次に衆議院選挙結果であるが、これは直近の選挙であり、国民の意識は、今回市会議員選挙とそう変化がないと思われる。以下具体的に見て行く。

★衆議院選挙 比例区選挙(2012年12月17日)

 政党名

獲得票数 

 投票比率 

 備      考

 共産党

8590

6.63%

 注1:(8666、8.65%)

 民主党

15117

11.67%

 

 自民党

28546

22.04%

 

 公明党

14112

10.90%

 

 みんな

8890

6.86%

 

 維新

45824

35.38%

 

 未来

5968

4.61%

 

 その他

2480

1.91%

 

    計

129527

100.00%

 


  注1:( )内の数字が市会議員選挙で獲得した数字。赤旗が書いた比較数字がこの数値である。確かに得票数も得票率も市会議員選挙より良い。

これを見れば、公明党や未来の党などすべての党派が凌ぎを削っているので、共産党は6.63%しか獲得していない。つまり全政党が本気で戦えば共産党は6.63%まで落ち込むということだ。

 同じ日に戦われた、選挙区選挙では、公明党や未来の党などが出ていないので、共産党は8.07%獲得(知事選挙の8.70%に近い)しているが、総力戦では6.63%しか取れないのが現実だ。

★衆議院選挙 選挙区選挙(2012年12月17日)

 政党名

候補者 

獲得票数

 得票比率


 民主党

 大谷

23110

18.01%


 共産党

 末武

10357

8.07%

   注2

 自民党

 原田

41418

32.27%


 維新

 足立

53451

41.65%

   高い水準を維持している

   合計

 

128336

100.00%



注2:同じ衆議院選挙でも選挙区選挙では10357票獲得している。市会議員票より1691票多い。この票の半分でも
     獲得出来たら、もう1名当選させる事が出来た。

<橋下・「維新の会」は、革新か保守か>

 4年前の選挙と、橋下・「維新の会」の出現した今回の市会議員選挙を見ても明らかなように、橋下・「維新の会」に最も票をさらわれたのは民主党であり(これは自滅だから仕方がないが)、と共産党である。民主党は前回の4割政党になり共産党は7割政党に陥没した。ところが自民党は、びくともせず、ほぼ前回と同じ得票数を公明党は前回比9割確保している。

 橋下・「維新の会」は太陽の党と合併し、その基本的性格がより右翼的になり、自民党よりも右の政党であるはずである。ところが彼らに投票したのは、民主党や共産党の支持者である(と思われる)ところにねじれ現象が起こっている。

 そもそも民主党や共産党の支持者は、反権力であり、弱い者の立場を大切にする人たちである。(共産党は民主党のこの性質を認めないと思うが)ところが共産党が保守との共同などと言いだし、共産党の立ち位置が分からなくなったために、維新のいう、「官僚支配をぶっ潰せ」、「既得権益打破せよ」というスローガンが、「世直し・改革派」に写っているのだ。現に、「Will」という右寄りの雑誌は、3月号で「橋下徹「革新幻想」の危機」という論文を載せている。(適菜 収 作家・哲学者)その中で、「現状を破壊すれば理想社会がやってくる」という幼稚な、無責任な、戦後民主主義的な幻想が、橋下を増長させているのだ。という指摘がある。

<破壊から創造へ・・この論理が必要>

 私も橋下氏は、小泉氏に学んでいると見ている。「自民党をぶっ壊す」のスローガンであれだけの支持を得た。「破壊からの創造」というスローガンこそが、現在の状況下で最も国民の支持を得ることを彼は見抜いている。(共産党が1970年代伸びて来たのも、反権力の旗手というイメージである。)

 1998年参議院選挙で共産党は8,195,078票獲得した。これが共産党の頂点であり、ほころびの始まりである。共産党はこの票数見て、政権に参加できる日が近いと早合点し、これ以降、政権参加を夢見た方針へと大きく舵を切った。この具体化が、3.11の震災で原発がメルトダウンしているのに、その深刻さも分からず、一斉地方選挙での「安全優先の原子力政策」と権力を握っている者の立場からの政策を掲げてしまった。この選挙で敗北したがその総括を行わず、共産党はさらに大阪ダブル選挙での「安全・安心・やさしい大阪」や羽曳野市長選での「幸せが実感できる都市」総選挙での「二つのゆがみ」など非階級的なスローガンを掲げ国民の支持を得ようとしてしまった。(これらの政策の基本はすべて権力を握った側の発想である。・・・当選した首長が施政方針演説で使う言葉・・選挙用語でなく、行政用語)

共産党の新しい立場性(政策)に国民は全く無反応である。大阪ダブル選挙で梅田氏は、共産党の基礎票すら取れなかった。これは、危機感も何もないノー天気なスローガン、警察の安全協会か、不動産屋の広告みたいなスローガンを掲げて戦っても、国民は全く受け入れていないのである。選挙戦の総括をしない共産党は、誤った方針を見直すという組織的ルールがない。行き着くとこまでいかないと反対のバネは起こらない。おかしさに早く気づいた者は「裏切り者」として排斥されてしまう。

 1998年の参議院選挙を境に、2000年以降の選挙のたびに支持が減っていく異常事態であるのに、負けた事を認めず、相も変わらず増えもしない赤旗拡大の進軍ラッパを吹き続ける共産党幹部の堕落には目を覆いたくなる。一日も早い克服が求められているのが今回の選挙結果である。

 おそらく共産党は今回の結果からも学ばず、相変わらず同じ方針で参議院選挙に突入していくと思われる。これでは勝利の保障は全くない。改革もしないで650万票獲得の方針は、夢のまた夢である。