6中総・赤旗を読む限り、参議院選挙に対する共産党の政策は基本的に間違っている。


令和元(2019)年5月19日


共産党はなぜ選挙に勝てないのか、

     それは二つの敵を取下げ、二つのゆがみ・異常にすり替えた所に最大の問題がある。


 5月18日付の赤旗は、非常に面白い記事を載せている。それは、「賃金減日本だけ」という大見出しで「過去21年間で8%マイナス」「他の主要国は大幅増、景気回復へ賃上げ・安定雇用こそ」
 そして棒グラフで各国の賃金上昇率を載せている。驚いたことに、韓国は167%伸ばしている。次はイギリス93%、アメリカ62%、ドイツ59%であり、日本だけがマイナス8%である。この出典は、OECDの調査によるもので権威ある統計だと思われる。(資料1:赤旗の記事OECDの調査結果
 この統計をどう伝えるかが、赤旗の技量が問われるところであるが、赤旗の報告は客観的に冷静にこれを伝えている。ここに現在の共産党の限界がある。
 私ならどう伝えるか、なぜ世界各国は労働者の賃金が上がっているのに、日本だけが上がらないのか、それは大企業が内部留保金を異常に膨らませ、日本では搾取と収奪が一層過酷におこなわれていることの現れだという記事を書く。
 ここでは各国の賃金上昇のグラフを載せているが、これだけでは怒りは起こらない、なぜ日本だけが唯一下がっているのか、それはこの隣に、大企業の内部留保金のグラフを載せ反比例的に日本の大企業は儲けを拡大している事を対比して説明する必要がある。なぜか、安倍政治の嘘を暴露し、国民の怒りを組織することが大切である。

大企業は敵ではない。貯めすぎた内部留保金の一部を労働者に分配してほしいだけである。


 共産党は正確には忘れたが、大企業で働く労働者党員から、「大企業を敵視する政策は大企業の労働者の反発を食らうからやめてほしいと言う要求があったと紹介し、それに対する回答は、『私たちは大企業を敵だとは思っていない。大企業の内部留保金の数パーセントを労働者の賃上げに回してほしい。それは景気回復につながるからだ。』こうした宣伝をすれば、大企業の労働者も組織できる」と志位委員長が発言したが(共産党の「〇中総の中央委員会のテレビ視聴」での志位発言)、本当にこの政策転換で大企業の労働者の組織化は広まったのか、その結果が知りたい。
 私は、大企業の労働者の組織化はこのような方針転換で進むはずはないと思っている。これは大企業に対する屈服発言である。それよりも低賃金で苦しんでいる労働者に対して、大企業の横暴を許さず、賃上げ獲得を目指して戦おうと呼びかける方が、共産党の支持は広がると思っている。

大企業を敵に回さないという共産党の政策は最大の愚策である


 経済大国の賃金は上がっているのに日本だけが下がっていると言う事実は、国民に訴えれば相当大きな「怒り」を組織することができる。ところが、共産党は大企業を敵に回す事はしない方針を確立したため、これだけの材料が出ても大企業攻撃ができない。賃上げを「労働者の生きる権利」として捉えず、「景気回復は労働者の賃金を上げることが効果がある」という、大企業の手先になったような論理展開をしたところに共産党の最大の堕落がある。
 この記事の見出しも「景気回復へ賃上げ・安定雇用へ」である。労働者の「怒り」を組織することを避けている。
 共産党の賃金政策が何時から変わったのかは、しっかり押さえていないが、二つの敵を外し、二つの異常とかゆがみに変え、保守との共同などと、方針転換した中で、労働者の賃金闘争も大企業と対峙するのではなく、「恐れながら一言ご忠告差し上げます。企業にとって景気回復が最大の課題であり、その実現は内需を増やす事であり、消費税を上げる事は景気を冷やしてしまうが労働者の賃上げこそが、景気回復の力になります。とご忠心差し上げます。」というような政策転換を図ってしまった。
 さらに言えば、今や春闘の主役は安倍首相が握り、安倍首相が志位委員長と同じ視点で経団連などを回り、賃上げに協力をと訴えている。この安倍首相のお願いも、企業側は聞かないようになってきている。お願いで賃金は上がらない、労働者の戦いがあってこそ賃金は上がるのである。この原理原則から逸脱した共産党に魅力はない。

F35の大量購入も、アメリカに従属している日本政府の政治姿勢として攻撃しない。


 もう一点、5月16日赤旗1面トップの「F35A 1機で4000人分保育所」という記事があった。(資料2:赤旗の記事:F35A爆買報道)これも良い記事であったが、縦見出しは「『爆買い』やめて待機児童解消」「安心の子育て・福祉の道を」と書いている。ここでも戦争への道や、アメリカのゴリ押しで必要もない、爆撃機を買されている現状批判が欠けている。共産党はアメリカ帝国主義や、日本の大企業の搾取や収奪を完全にスルーした所で政策を立てている。このような甘っちょろい政策では国民の心をとらえることは出来ない。
 つまり、二つの敵を外した共産党の政策の行きつく姿はこれである。

5月18日の毎日新聞記事「新興ブレジット党急伸」という記事が面白い。


 この記事は、欧州連合(EU)離脱を巡り混乱が続く英国で、新興のポピュリズム(大衆迎合主義)政党「ブレジット(英国のEU離脱)党」政党の人気が急浮上している。23?26日に実施される欧州議会選の世論調査では、2大政党の支持の合計を上回るほど。と書いている。その原因は、「怒りの民意の代弁」と書いている。
 私は政党の栄枯盛衰は正にここにあると思っている。野党政党が与党政党を打ちのめすことができるのは、正に国民の「怒り」を組織できた時である。日本の国民に怒りは本当にないのか、怒りはいっぱいあるがむしろ怒りを通りこして「あきらめ」になってしまっているのではないか。
 本来共産党は国民の「怒り」を組織しなければならない。それこそが共産党の値打ちだと思っている。ところが、共産党が掲げていた二つの敵論を降ろし、二つの異常やゆがみという言葉にすり替え、国民の「怒り」を組織することを疎かにしたため、共産党は伸び悩んでいると思われる。
 野党政党には常に政権側から攻撃がかけられる、それは反対ばかりしていても国民は支持しない。大人の政党に脱皮しなければと誘いをかけてくる。昔は社会党が強かったが、社会党内にも右派はこれに同調し民社党を作ったが、社会党を超える事は出来なかった。
 民主党も同じ攻撃に会い立憲民主と国民民主に分かれたが、立憲民主は9%ぐらいの支持はあるが国民民主は1%にも満たない。これらから分かることは、「国民は物分かりの良い大人の政党を求めている」のではなく、自民党と戦える政党を求めているのである。国民は、政治に対して「怒り」をぶつけたいと思っている。

大阪維新派、今回の地方選挙で大躍進した。その原点は何処にあるのか?


 政治にはカリスマ性が必要であり、橋下徹氏にはその要素があった。彼は国民の怒りを政府自民党に向けるのではなく、どちらかというと公務員攻撃や地方行政の仕組み向け、これを組織した。
彼のやったことはほとんどが馬鹿げた政策であったが、その話術で他の政党を圧倒した。政治とは正にこのような戦いだと思う。その橋下氏が第一線から撤退した現在、今回は苦しい選挙になるだろうと思っていたが、維新はさらに躍進した。ここに政治の妙がある。レーニンは宣伝し扇動し組織すると言ったが、橋本氏のやり方は正にこれである。
大阪維新の会が、実際政治で何を成し遂げたのか、国民生活の向上に何ら成果を上げていない。彼らは国民の生活苦を公務員攻撃に照準を当て攻撃し、あたかもそのことでみんなの生活が楽になるような幻想を与え、組織している。
 維新の会の議員は、いたるところで問題を起こしている。一番最近は丸山議員の「戦争で北方領土を取り返す」である。維新ほど大量に問題議員を出した政党はない。しかしこの問題議員を「切り捨てる」ことで「清さを」を演出し、目立つことで彼らの支持へ転換していく、テレビ時代の写り方を上手く利用した国民の組織化である。
 今回の事例でも橋下元代表は「馬鹿、ボケ」と批判し同時に「このような国会議員を誕生させたのは僕の責任」ともいう。ここには国民の感情と同じ次元で語ると同時に自分の責任という潔さに国民は魅力を感じる。
 共産党は、国会議員に問題があった際に志位委員長が私の責任という事は考えられない。選挙で負けても、私の責任とは絶対に言わない。ここに共産党の限界がある。
 大阪維新は、そうした国民の「怒り」を違った側面から上手く組織している。まず公務員攻撃を行い、公務員が無駄飯を食っているから、我々の生活水準は上がらない、公務員の待遇を引き下げようという事で大衆を組織して成功した。さらに彼らは未来を語っている。それが幻想かも知れないが、カジノを呼び、大阪万博を呼び、大阪は全国で2番に繁栄した都市になっていると宣伝する。これに対して反維新側は有効な反撃が出来ていない。共産党も維新の政策を攻撃せず消費税反対を最大限に掲げて戦っている。ここに共産党の敗北路線がある。

共産党のビラを見ると、憲法9条守り、消費税10%ストップと書いている。もう一点は「市民と野党の共闘でアベ政治退場」「希望のある新しい政治を」   (資料3:共産党街頭演説ビラ

 と書いているが、このビラに国民を引き付ける言葉があるであろうか?
 私は「大幅な賃金を上げる」と「消費税反対」とどちらが国民の心を捉えるのかと思っている。自分の家計収入が増える方に魅力があるのではと思っている。こちらの課題の方が、資本主義社会の本質を暴き、戦いの中で世の中が見通せるようになると思っている。主体的に自分の労働に対する対価がしっかりと払われているのか、この「怒り」の方が大きいと思う。
 共産党は「消費税の値上げ反対」で国民生活を守るというが、10%にならなくても現状8%の中でも国民生活は窮乏しているのだ。子どもの貧困化など社会問題にもなっている。それは消費税10%を阻止しても何も解決しない。つまり、共産党の政策は、「希望のある新しい政治」という抽象的言辞のままの政策になっている。これでは、未来を語れていないし魅力もない。
 端的に言えば、「怒り」を組織できず、未来を語れていない共産党の政策には魅力がないのである。
 お行儀のよさが優先し、戦いのスローガンを放棄してしまっているからである。例えば「憲法9条を守り」では品が良すぎて心を打たない。「安倍首相の狙う戦争への道に反対し」というような言葉で護憲を語り、消費税ストップで家計を語らず、「大企業の横暴を許さず、働く者の権利を守る」「大幅な賃上げを!」みたいな戦いのスローガンにしないと、何ら心に訴えるビラに仕上がっていない。
 政党の栄枯衰退は、そうしたセンスの良い人物が現れたら、力関係は大きく変わる可能性がある。赤旗拡大で党勢を伸ばし、権力を握る手法は、党員のサラリーマン化を促し、ブラック企業みたいなノルマ組織になり、前進が勝ち取れず、疲労ばかりが残る。維新はあっという間に大阪を支配したそのような手法があることをも学ぶべきだ。
 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるという言葉があるが、私はそうではなく効果的な戦いを仕組まない限り勝てないと思っている。
 消費税値上げ反対を最大の課題にした選挙方針は、安倍首相がダブル選挙に持ち込みその際「消費税10%」を断念した。この是非を問う選挙にしたいと打って出た時、争点がなくなってしまう。この点も考慮に入れておくべきである。

資料1:赤旗の記事OECDの調査結果
資料2:赤旗の記事:F35A爆買報道
資料3:共産党街頭演説ビラ