赤旗の記事と共産党政策のくいちがい


平成28(2016)年7月31日


 私はこのHPページ立ち上げて以来、赤旗の記事と共産党の政策の違いに着目しその矛盾を指摘してきた。最初に注目したのは、2011.3.11の東日本大震災の際に、海外の原発反対運動は大きく取り上げながら、共産党は一斉地方選挙前半戦投票日前日(2011年4月9日(土)「しんぶん赤旗」)の主張で「震災の救援と復興のために」という段落の結びで、「安全最優先の原子力政策への転換を求める日本共産党の立場こそが、国民の不安に応え、願いに沿うことが浮き彫りになっています。」と選挙戦にあたっての党の原子力政策を主張しました。
 この段階で共産党は、原発反対を掲げるべきであったが、「安全最優先の原子力政策への転換」という分けの解らない政策を打ち出してしまいました。
 その後、労働者の戦いの記事でも、海外の労働者の戦いは報じるが、日本の労働者の戦いは報じず、労働者の生活改善は、「大企業の内部留保金の数%を労働者の生活改善に回してくれれば、このように労働者の生活は改善する」という記事が主要な主張になっています。この傾向を本日付けの赤旗から見ていきます。

赤旗見出し「賃上げと雇用創出が第一」(これは誰の演説か分かりますか?)

 この赤旗(7月30日)の見出しは、何を報道した見出しか分かりますか。これが分かれば相当政治を理解されている方です。実はこれは米民主党大会でのクリントン氏指名受託演説の見出しです。その内容は「私の大統領としての第1の任務は賃金を引き上げ、いっそうの機会と良質な雇用を創出することだ」と表明。「経済が富裕層上位だけでなく、すべての人々にとって機能する国をつくる」として「最低賃金の引き上げや中間層の大学授業料の無償化、企業献金の規制強化などに、ともに取り組むよう呼びかけました、」と書かれている。
 さらに「変革の風とウォール街」という見出しで、「サンダース氏がもたらしたもの」という記事を載せている。
 大会代議員の4割はサンダース支持者です。「少数者優遇の政治に反対」「ノーTPP(環太平洋連携協定)」「政治的大変革を」。両手に持ったプラカードを高く突き上げて、バニーズ旋風を吹かせました。と書いています。
 このように赤旗は海外での労働者や若者等の戦いを報道し、民主党大会でのクリントン氏の指名受託演説にもこれが反映していると報じています。

共産党は日本での国民の生活改善に対して如何なる政策を掲げているのか、その実現性は。 =クリントンの演説と志位氏の主張のどこに違いがあるのか?=

 クリントン氏は、「経済が富裕層上位だけでなく、すべての人々にとって機能する国をつくる」と言っていますが、志位委員長は「私たちは『大企業にたまっている内部保留(利益剰余金)を皆に配れ』と言っているのではありません。たまっているのであれば、『そのうちの数パーセントでも社会のために還元すればよいのではないか』ということです。」
 週刊ダイアモンド(2016年7月14日)志位和夫氏インタビュー

 志位氏の発言は、労働者の生活改善を権利としてとらえず、お願い(物乞い)的思想に堕落させたことに最大の犯罪性があります。志位氏が言うようにお願いすれば、大企業がその数パーセントを労働者に還元してくれるのですか?全くの幻想であり、労働者の戦いに水を差すものです。
 クリントンの演説は、「経済が富裕層上位だけでなく、すべての人々にとって機能する国をつくる」であって、まず経済が富裕層に握られていることの矛盾を指摘し(怒りを組織し)、経済の利益がすべての人々に行き渡る国づくり」とはっきりと国の仕組みの改革を訴えています。

志位氏の主張は、芸能人のネタ「安心してください、穿いてますよ」のパクリ

 志位氏は、国民側の要求を限定し、決してあなた方の権力を脅かすようなことはしない。我々が求めているのは内部留保(利益剰余金)の数パーセントの還元だけですと主張している。この主張は今活躍中の芸能人のネタ「安心してください、穿いてますよ」と同じ水準の主張である。
 相手と戦うのではなく、最初に「安心してください」という投げかけを行う共産党に本当に権力を奪取する心意気があるのか極めて疑問である。
 この間の選挙戦を見ても、敵を明確に打ち出し、それと戦う者が躍進している。小泉さん、橋下徹氏、安倍首相もそうである。東京都知事選挙の小池氏もこの戦術である(この原稿は土曜日に書いているので小池氏が勝ったか負けたかは不明であるが)
 敵に向かって最初から「あなたの寝首は取りませんから安心してください」と言ってしまえばそれは戦いにならない。なめられるだけである。適当に応えながら、彼らは自己の権力の確立に奔走する。決して内部保留(利益剰余金)の分配などしてくれない。
 新聞紙上では、安倍政権は、「低所得者に1万5千円」「経済対策2200万人、一括給付へ」という記事が載っている(毎日新聞7/29朝刊)が、共産党の数スーパーセント分けてくれという思想に通じるものであり、1年間で言えば6000円のお金で、国民を懐柔しようという政策である。(公明党の支持拡大にもつながっているが)お上から貰うのではなく、自らの権利を勝ち取るという考え方で立ち向かわない限り、国の在り方は変わらない。

赤旗は労働者の戦いをどう伝えたか?

 本日付赤旗は5面【国民運動】で全労連大会討論(全労連第28回定期大会)からという記事を大きく載せている。見出しは、大きく「政治・職場かえる運動多彩」がメインであり、その他中見出しが「格差是正する最賃に」「戦争法廃止へ共同各地で」「仲間迎え要求実現を」となっている。
 ここでの違和感は、生活改善が前面に出ておらず、「格差是正する最賃に」というスローガンしかない。最賃の値上げは重要な課題であるが、多くの中間層の賃上げも必要である
がそれに言及されていない。
 この記事の中に、共産党が主張する生活改善の最大のカギは大企業の内部留保(利益剰余金)の数パーセントを分けてもらう戦いの報告が全くない。このような戦いの方針を持っている労働組合が無いことを示している。(ここでも現場の戦いと共産党の政策にズレがある)
 この記事の最後の中見出し「仲間迎え要求実現を」の最後に、東京の代表の話が載っている。「電気大リストラは31万人を超え、15%正社員が職場から放り出される事態だ」と告発。「業務命令で再就職先を探させることは不適切とした厚労省の通達を使い、職場でたたかいたいと語りました。」という記事がなんの感情もなしにすべりこましています。(これが一番重要な記事ではないのか?・・・大バカ者)
 私がもしこの記事を書くとすれば、「政治・職場かえる運動多彩」などというノー天気な見出しを使わず、「電気大リストラ31万人」「15%正社員が職場から放り出される」という記事を書きます。こうした戦いに寄り添ってこそ、共産党の支持は増えるのであって、白々しく報告する赤旗を見て、私なら共産党は頼りにならない政党だと理解してしまう。
 少なくともこの報告を受け、全労連の大会はどう受け止めたのか、全労連全体の課題としてこの戦いを取り組む等の決意を固めたのか、それらの報告が何もない、間の抜けた全労連大会記事になっている。おそらくこれが現在の共産党の姿だと思う。
 全ての根源は「安心してください。私たちは大企業を敵視しませんから」という方針を基調にしてしまったことにある。クリントン候補以下の思考回路である。