参議院選挙結果、共産党は勝利したのか?



令和元(2019)年7月27日


 共産党の選挙結果の総括は、常に勝利したでまとめられている。本来は選挙に受けた方針(目標)があり、それとの関連で目標を達成できたか否かで総括は行われるべきである。
 「勝った、勝った、また勝った」式の総括を常に行っていると、問題点の克服課題が明確にならず、組織はじわじわと疲弊してしまうというのが私の見方である。
 それでは今回の選挙を共産党はどう評価したかを見ていきたい。

「参議院選挙の結果について」を7月22日付けで中央委員会常任幹部会。

 まず参議院選挙の全体の結果で極めて重要なのは、自民・公明・維新などの改憲勢力が、改憲に発議に必要な3分の2を割ったことだと指摘しています。
 次にこの結果は、市民と野党の共闘が決定的役割を果たしたと評価しています。
 さらに日本共産党の結果は、選挙区選挙で3議席を確保することができたことは、重要な成果だと確認し、比例区で「850万票、15%以上」の目標を立てて戦ったが、結果は「448万票、8.95%」であったが、次の総選挙での躍進をかちとるうえで、重要な足がかりとなるものと確信するものですと肯定的に評価しています。・・・・この評価が共産党をダメにしていく評価です。
 この後に、選挙では、年金、消費税、家計支援、憲法など、日本共産党が定期した問題が選挙の中心となり、安倍・自公政権を追い詰め、論戦をリードしました。新しい国会で、一連の政策提起にもとづく論戦をさらに発展させ公約の実現のためにあらゆる力をつくしますと宣言しています。
 最後に、総選挙での勝利・躍進をめざして、党員を増やし、「しんぶん赤旗」読者をふやし、強く大きな党をつくる仕事にただちにとりかかることを心から呼びかけるものです。でくくっています。・・・・これが問題。

共産党の選挙総括はいつも同じであり、事態の変化に全く対応できていない。


 何がおかしいのか、見ていきたい。
 第一に目標に照らして総括する姿勢が一貫してない。この選挙の目標は比例を前面に押し出し、850万票を獲得し、議席数を増やす事が最大の目標であった。しかし、それが実現しなかった。それは何故かを押さえておくことが次への躍進に繋がる。
 第二の総括の視点は、850万票獲得の為、比例を前面に打ち出し戦うという方針が正しかったのかの総括が必要である。
 第三に、選挙戦では批判を前面に出すのではなく、希望を前面に押し出し、政権運営ができる党というイメージを前面に立てて戦う。
 第四に、あいも変わらず、赤旗読者中心の選挙戦の戦い方の善し悪しの検討が行われていない。
 第五に、令和新選組が大きく躍進したことの意味と、なぜ彼らは躍進したのか分析が行われていない。同時にNHKをぶっ壊すというような全く泡沫候補だと思われていた政党が、政党要件を獲得する99万票をとったことをどう評価するかも重要である。
 以下共産党が見逃している選挙の総括の視点を見てみたい。

共産党は選挙戦の総括で大きな視点を見失っている。


 まず、そもそも論であるが、一般的に政党とは政治家を目指す者の集団である。自民党が最も鮮明にその姿を現しているが、国会議員、府会議員、市町村議員が政党の中心におり、党員の多くはこれら政治家を応援している人の集まりである。これが通常の形態であり、公明党と共産党は完全な組織政党である。
 今回共産党が取った選挙戦術比例を前面に押し出し、選挙戦を戦うという方針は公明党と共産党にしか取れない戦術である。
 私は前から主張しているが、投票する側は、半分は党で選んでいるが、半分は人で選んでいる、だから魅力ある政治家を育てない限り共産党の躍進は有りえないと思っている。
 今回の選挙戦の結果を新聞で見て驚いた。共産党の比例区の候補者の得票数は下から4人は1千票にもならない。923票・641票・575票・419票である。
 人を馬鹿にしたような選挙戦術である。国会議員になろうという決意も能力もない者を政党の都合で国政選挙に立候補させ、利用する、こんなやり方が国民に支持されると思っているのか、共産党の指導部のセンスが疑われる。
 一般的になんでこんな泡沫候補が立候補するのかという事例がよくあるが、他の立候補者と気脈が通じており、お金目的で立候補している場合があると聞くが、それと共産党の1000票以下の得票数の者は変わっていない。選挙を愚弄するものである。
 共産党は選挙の候補者を単なる駒と考えている。この姿は国民から受けない事をまず知るべきだ。この件は後で詳しく述べるが、大阪の辰巳コータローの選挙戦術も比例を前面に出すために、彼の顔写真を載せたビラは一枚もまかれなかった、辰巳コウタローは政治家として実績のある者である。その人を如何に売り込むかという選挙戦術は一切なく、共産党の宣伝のビラだけが2枚我が家に入った。完全な選挙戦術の誤りである。

共産党の選挙方針の誤りを先に挙げた五つの視点から述べて見たい。


 第一は目標と結果の関係で総括することの重要性についてである。

 共産党は「850万票、15%」の目標設定をした。結果は「448万票、8.95%」である。目標達成率
52.70%である。
 これに対して共産党は次の選挙へのあしがかりをつかんだと評価しているが、余りにも無理がある。これは全くの敗北である。前回当選者比例区は5名であり、今回は4名と明らかに後退である。なぜこのような結果になったのかの総括が重要である。ここ24年間の共産党の得票推移を以下に示しますが、共産党は24年かかって何も前進していない。この重要性を見逃している。あるいは意識的に見ないふりしている。
 何のためにそんな事をするのか分からない。こんな総括をしていたら、次の衆議院選挙では、令和新選組がさらに躍進し、共産党は相当被害を被ると思われる。

共産党の選毎の得票数の推移(1996〜2019年)



※この表は共産党の20数年間の得票数の推移を表わしている。1998年の最高得
 票数8,195,078票を基礎にして各年度の得票数比率を表わしている。(票のC列)
 さらに2001年の最低得票数4,329,211票を基礎に各年度の得票比率を表わしている。(票D列)

 2019年参議院選挙の得票数は、最高時から見れば54.71%の得票であり、最低時から見れば、103.56%である。この20数年間共産党の票は全く伸びていないこが分かる。極めて深刻な状態にある。

※@は選挙実施年度、A衆議院か参議院か、B得票数(比例分)、C1998年(最
  高)との比較、Dは2001年(最悪)との比較


 第二の視点は、850万票獲得の為、比例を前面に打ち出し戦うという方針が正しかったかの総括

        が必要である。

 この点はすでに、そもそも論で先に述べたが、選挙は、政党同士の戦いであると同時に政治家同士の戦いでもあります。例えば広島では自民党同士で戦われ、岸田氏の側近が安倍氏側が送った刺客に敗れたという事例があります。有権者は政治家同士の戦いでもあると見ています。どの政治家を支持するかあるいは育てるかという観点で候補者を見ています。
 共産党が政治家を育て国民から支持される国会議員を沢山作らない限り、共産党という政党は伸びません。今回の選挙では東京の吉良さん、京都の倉林さんは当選しましたが、大阪の辰巳コウタロー氏は当選しませんでした。これは大阪が中央の方針に忠実であり、候補者より、政党名中心の選挙方針を取ったからです。
 ●具体的に見ていきます



※辰巳コータローが一番個人の打ち出しに成功していない。彼は森友・加計問題で活躍し、テレビでも大
 きく取り上げられていた。
※私は選挙期間中、辰巳孝太郎の選挙ビラを1枚も受け取っていない。

 第三の視点、選挙戦では批判を前面に出すのではなく、希望を前面に押し出し、政権運営ができ

       る党というイメージを前面に立てて戦う。


 この選挙戦術の変更が最大の敗北の原因だと私は見ています。与党側は常に「野党は批判ばかりで建設的な意見はないのです。野党が建設的な意見を出せばもっと支持は増えるのです」と言ってきます。これは、「こっちの水は甘いぞ」戦略だと思っています。何回も書きましたが社会党の崩壊もこれにあります。社会党の中でも常に左派と右派の戦いがありましたが、重要な問題では左派バネが働き、左派が常に主流を占めてきましたが、最後は右派が勝利し、民主党へと変遷していきますが、ここでも立憲と国民に分かれています。立憲が現政権に批判的であるのに対して国民は、提案型の政党を目指しています。しかし選挙結果を見ても明らかなように立憲の支持派が圧倒的に多いです。なぜ共産党が提案型政党に変質しようとしているのか、私には全く分かりません。今回の選挙で共産党は「HOPE」という大きなポスターを作りました。正に最悪です。安倍内閣に対する批判を一切書かず「HOPE」という文字だけのポスターを選挙戦の最大のポスターとして採用しました。




 共産党は、与党から行儀が悪いとかいうような批判に屈して、批判を回避して「HOPE」を掲げました。これは戦争で言えば武装解除であり、負け戦です。
 選挙は言論の戦いです。これを回避して「HOPE」という訳の分からないポスターを掲げる共産党幹部の頭は相当イカレテいます。

 第四は、あいも変わらず、赤旗読者中心の選挙戦の戦い方の善し悪しの検討が行われていない。


 結局、共産党の選挙総括はいつも同じで、党員や赤旗拡大に成功しておれば勝てた。それが出来ていなかったから負けたと総括し、ただちに強大な党建設に取り組めと党員にはっぱをかけています。
これは敗因の研究を怠り、いつも赤旗の部数が増えていなかったので負けた、だから早速赤旗拡大に奔走せよという指令になる。この総括は聞き飽きたおそらく党内では「オオカミがきたオオカミがきた」と同じで、右から左に聞き流している者が多数いると思われる。

 第五は、令和新選組が大きく躍進したことの意味と、なぜ彼らは躍進したのか分析が行われてい
     ない。

 

 同時にNHKをぶっ壊すというような全く泡沫候補だと思われていた政党が、政党要件を獲得する99万票を取ったことをどう評価するかも重要である。

 令和新選組の登場は、共産党に一番ダメージを与えると思っています。彼らは共産党が批判をやめた、安倍内閣に猛烈な批判を加えています。その際に国民感情を上手くとらえた批判を行っています。
 山本太郎は天才です。どうすれば票をとれるか彼は読んでおり、その行動に出ています。衆議院選挙では相当あばれ、相当数の議席をとる可能性があります。彼の奇抜さは抜きんでています。
 今回か彼は「生産性があるナシで人間の価値が変わるのか」という問題提起を行ってきました。これはLGBT問題で、自民党の杉田水脈議員が「生産性のない者には価値がない」とか、麻生さんが「長生きしている老人に、本当に医療費を使う必要があるのか」などの言葉を投げかけ、社会的弱者を顧みない姿勢を取っていることに対して、難病者と重度障碍を持った人たちを立候補させ、しかもその人たちを特別枠にはめ込み当選させるという離れ業をやってのけた。この衝撃は相当大きく、生産性、非生産性という政府側の驕りに完全な楔を打った点で、彼は天才的な指導者だと思われる。この政党が何をやろうとしているのか、候補者の顔ぶれを見ればわかるというような事を今まで誰も考えなかった。
この点から言うと、共産党は基本的には労働者の党であったはずだが、候補者に労働者は誰もいない、弱者の見方だと言いながら弱者もいない、全てはエリート集団の匂いがする。
 話は全然違うが、今回の吉本工業のドタバタでも思ったが、我々はそこで演じられているドタバタをハダ感覚で見抜く力がある。選挙も同じでその候補者が本当に国民のために働いてくれるのかハダ感覚で見抜いている面がある。
 山本太郎は、国民目線でハダ感覚で我々を捉えようとしている。彼は、消費税は全てなくせと叫んでいる。その際に。「金持ちが買う宝石と、介護対象者が買う介護用パンツの税金が同じというのはおかしいでしょう」と叫んでいた。国民の心をつかむのが得意である。
 共産党はうかうかしていると追い抜かされる可能性すらある。国民は怒っているという感情を把握できず、希望を語ろうというのは全くの政治音痴である。
 国民は疲弊し、怒っているが、立ち上がるきっかけがなく、打ちひしがれているのが実態です。山本太郎のように弱者の側に立ち、本当に怒ってくれる者が出ればそれを信用し、国民も立ち上がってくる。
今回さらにビックリしたのは、「NHKをぶっ壊す」という旗印1本で、約100万票取った立花氏にもビックリした。
 これも国民は怒っているのだ!今までこれを正面に掲げた者がおらず、こんなことが票になるとは全く思っていなかった。
 この令和新選組や、NHKから国民を守る党がこれだけの票を取るのであれば、共産党も中央の政策だけで戦うのではなく、私はこの専門化ですというバラエティーに富んだ候補者を出すことも集票に繋がると思われる。