大阪府会議員団長宮原たけし氏の馬鹿げた主張


平成26(2014)年6月9日



1.最低賃金を時給1000円に引き上げれば250万人の給料が改善される。(これってホント?)


 毎度お馴染みの「宮原レポート」ですが、相変わらず「大ボケ」記事を連発しています。6月5日最新号でもいくつかの問題点が見られます。
 まず、トヨタ、法人税(国税)5年間ゼロ円という見出しを掲げ、最終段に囲い込み記事で、

経済再生に必要なのは、大企業労働者の賃上げ
 (大阪では約164万人)、中小企業労働者の最低
 賃金時給1000円以上(大阪では約250万人)

と書いています。
  この賃上げ論、経済再生のために賃上げという理論の間違いについては、すでに何回も指摘してきました。(今回は敢えてこの点には触れません)
  今回言いたいのは、この数字(164万人、250万人)は正確かという点です。突き詰めて言えば、大阪には最低賃金以下の労働者が250万人もいるのかという疑問(問題点)です。
大阪の労働者の数は439万人です。彼の数字では、大企業に働く労働者が164万人、最低賃金(時給1000円以下)の労働者が250万なら、合計で414万人になり、大阪の労働者は、大企業の労働者と、最低賃金水準の労働者に二分されることになります。大阪府内には年収が250万から500万円ぐらいの労働者は皆無になってしまいます。

参考: 時給1000円の場合の手取り額、税額・社会保険料等一切考慮していない数字
時間給
勤務時間
出勤日数
支給月学
総支給額
1000円
7.5
20
150000
1800000
1000円
7.5
25
187500
2225000

 大阪の労働者(250万人もの賃金)が200万前後ということはありえないです

 最低賃金を時給1000円に引き上げた場合の効果(2007年2月26日 労働運動総合研究所 代表理事 牧野富夫 研究員  木地孝之)
 厚労省『賃金構造基本統計調査』データをもとに、最低賃金を時給1,000円に引き上げた効果をみると、パート374万人、一般労働者309万人の賃金が改善される。賃金上昇月額は全国平均でパート2.5万円弱、一般労働者2.9万円弱。日本全体の賃金総額増分は2兆1857億円となるが、この額は平成17年の賃金・俸給総計(225.3兆円)の1%弱にすぎず、国内生産額(939.7兆円、GDPベースでは506.8兆円)のわずか0.26%(GDPベースでも0.43%)である。企業の直接的なコスト増はこの程度であり、国内物価への影響も波及効果を含めても0.5%程度と推測される。なお、国際競争力の低下を心配する向きがあるが、物価上昇は為替レートの変化で調整されるはずだから問題にする必要はない。

上記資料では、「パート374万人、一般労働者309万人(合計で683万人)の賃金が改善される。」とされています。日本の労働人口は6577万人(2013年)であり、最賃の時給1000円で恩恵をうける労働者683万人は、労働者の総人口6577万人の10.38%です。
 これを大阪府労働者で見れば、439万人であり、その10.38%(455887人)に恩恵があると見るのが常識的見方です。

2009年7月21日 全国労働組合総連合 議長 大黒作治 が、中央最低賃金審議会 目安小委員会委員各位提出した「ワーキングプアの根絶にむけ最低賃金の大幅引き上げを平成21年度地域別最低賃金額改定の目安審議にむけた意見書によれば、

  一昨年の2月、労働運動総合研究所は、厚生労働省の『賃金構造基本統計調査(2003年)』(対象労働者回収2,800万人)を与件として最低賃金を全国一律1,000円へと引き上げることによる経済波及効果について、産業連関表を利用して試算した結果を発表しました。それによれば、約700万人の労働者の賃金総額が年間2兆1,857億円増加し、それに伴い消費支出が1兆3,230億円増加し、各産業の生産を誘発して国内生産額を2兆6,424億円拡大し、GDPを0.27%押し上げる効果をもつと推計されています。
 
  この資料では約700万人の賃金が改善されるとしています。この資料の基づきさきと同じ計算を行えば、大阪府では467236人に恩恵があることになります。

 大企業の雇用人数は、大企業常用従業者12,283千人(33.8%)とされています。大阪府下が同じ率だと仮定した場合439万人の33.8%で148万人が大企業で働く労働者になります。この数値は全国平均からの算出であり、府会議員のいう164万人を一応正しい数字とします。


最低賃金時給1000円で恩恵を受けるのは、250万人でなく約45万6千人(大阪府下で)

 彼の主張は、この164万人は、大企業の内部留保金の1%を使えば労働者の賃金は向上する、それ以外の人は(彼の計算では250万人)最低賃金を時給1000円にすれば賃金が上がるという主張になっています。
 しかしこの主張には大きな嘘があり、最低賃金が時給1000円になって、今より賃金が改善されるのは、パート374万人、一般労働者309万人の賃金が改善されるだけであり(全国で)、大阪に当てはめれば、パートで249637人、一般労働者で206250人、合計約45万6千人に恩恵があるというのが正しい数字です。

 彼はなぜこんないい加減な数字を書いたのか、それは共産党の賃上げ論が労働者の立場から語られず、大企業の内部保留金額のおこぼれをもらう賃上げ論に堕落してしまったからです。
一般的に労働者の賃金を論ずる場合、労働者の働き口が大企業かそれとも中小零細企業かに分けられます。その論理で言えば

★ 給与所得者数5474万人。(平成20年)
 上記に含まれない国家公務員が66万人、地方公務員が295万人。

 給与所得者数5474万人のうち株式会社に勤めるのは3714万人(67.8%)
つまり給与所得者のうち普通の会社勤めは3人に2人となります。

 ・資本金10億円以上が858万人(15.7%)←大企業
 ・資本金1億〜10億円未満が685万人(12.5%)←中企業
 ・資本金1億円未満が2171万人(39.6%)←中小企業

※注:()内の数値は5474万人中に占める割合です。
      国税庁の平成20年度のデータより抜粋

共産党の賃金政策には、中小零細企業で働く労働者は対象外、大企業の余剰金と最賃制のみ

 上記資料でも明らかなように中小企業に働く労働者が一番多いのです。(39.6%)この人たちに対する賃金政策が共産党にはないのです。(@大企業の内部保留金の1%を分けてもらうA最低賃金を時給1000円にあげる)だから宮原府会議員は、最低賃金を時給1000円にすることで給料が改善される約45万人を意識的に拡大し250万人にして、これですべての賃金が改善されるように描いているのです。
 しかしこのような詐欺的な政策では国民の支持は得られず、むしろ信頼を失うだけです。
 賃金闘争は、労働者が生きる権利として闘い、勝ち取るものです。この原則を放棄した賃金論は、無限に堕落していくことを証明した主張(ビラ)になっています。

2.拉致問題の解決に向けて(北朝鮮の「ずるい計算」)は軽率な発言

  もう一点、このビラで私は納得できない記事があります。北朝鮮の拉致被害者を扱ったものですが、見出しは、「今度こそ全ての拉致被害者・特定失踪者の帰国実現を」「北朝鮮は誠実に合意を実行せよ」と掲げています。
そして「北朝鮮は、拉致の包括的調査を日本に約束しました」(中略)「北朝鮮が、どういうずるい計算で合意したのか不明です」と書かれていますが、私はこの行が気に入りません。
  大阪のおばちゃんの会話なら、それで良いかもしれませんが(おばちゃんには失礼ですが)、共産党大阪府会議員団長が正式に発言する内容ではありません。
  日本政府が北朝鮮の代表団と会い正式に合意した内容に対して、相手国を愚弄するような発言は慎むべきです。この合意された内容を両当事者が誠実に履行するよう見守る、あるいは支援するというのが共産党の立場であるべきです。
  相手国がずるい計算で、今回の提案を行い、日本国を騙しているような表現は、この外交成果を否定するものであり、傍観者の立場であり、政治家として取るべき態度ではありません。
  結果的には、途中で頓挫する可能性もありますが、今回の北朝鮮の態度は明らかに今までとはちがい、今回は何らかの成果をあげる可能性が高いとおもわれます。
  この時に、北朝鮮の対応が「ずるい計算に基づいて」などと軽率に発言することは、この成果を台無しにしてしまう可能性があります。横田夫妻を始め、多くの拉致被害者家族の「今度こそ成功させてほしい」という願いに水を差すものであり、政治家として完全に失格の発言です。
  最近宮原議員の大きな顔ポスターを見ますが、次回府会議員選挙には、立候補すべきではないと思います。彼の政治的立場表明は、すでに支離滅裂であり、府会議員候補者としては不適切です。

資料:宮原レポート6月5日版