「新自由主義の暴走か、転換かー日本の政治対決軸」を見てこりゃダメだとおもった。



令和2(2020)年9月13日


 この標語は(9月11日付)赤旗一面に載ったものである。

 この間、一般紙や・テレビを見ていて、私と同じ主張だなという記事(一つ)・ニュース(2つ)に遭遇した。この三つの主張と私の考えの酷似性について書いてみたい。


 一つ目は、「新自由主義との決別」という言葉は、選挙の争点になりうるのか?


 政治決戦では国民に分かりやすい論点でその主張を語らなければならない。共産党は安倍氏が首相の退陣を表明し、自民党内で総裁選挙が戦われている現状で、いかに自民党の政治が国民不在化を暴露していくことが重要な課題であるのに、その対決軸を「新自由主義の暴走か、転換か」という言葉で、自民党を追い詰めたと思っている。
 この赤旗1面では、中見出しでも「新自由主義の転換で一致点 自公政権に代わる政権構想を」「志位委員長が表明」とも書いている。
 確かに立憲民主と国民民主党などで合流新党が「新自由主義との決別」を全面に打ち出しているが、それに引きずられたのかもしれないが、私はこのスローガンでは選挙戦は戦えないと思っている。これでは空中戦になってしまう。
 「政治的対立軸はもっと具体的でないと国民の心には響かない。」とこの赤旗記事を見た時から思っていた。今日(9月13日)仕事をしながらTMBS系のサンデーモーニングを見ていたら元新党さきがけ代表代行、田中秀征氏が出ていたが、「合流新党について期待するか」と聞かれた際に、「『新自由主義との決別』みたいな中傷的スローガンではダメだ、政治はもっと具体的でなければならない」と批判されていた。私もそう思っていたので、政治のプロもそう思われるのだなと分かってうれしかった。
 この新聞(赤旗9月11日付)は3面で「労組の全国組織 初の女性議長 小畑雅子さん」という紹介記事を載せている。この小畑さんの発言の方が読者にはわかりやすい。この小畑氏の記事の見出しを拾うと「コロナ禍 雇用を守り賃金確保へ」「今こそ全労連の出番」「8時間働き人間らしく暮らせる社会」「労組に高まる期待を受けて」「ジェンダー平等の実現」「政治を動かす力に」という分かりやすい主張になっている。
 この間の志位委員長の発言は、すべてが抽象的で、「速やかに臨時国会を開催し後継首相を指名し、新首相のもとで、衆参の代表質問、予算委委員会をしっかり行う」とかコロナについては「PCRを大幅に増やす」と主張しながら、わざわざ「やみくもに増やすべきではない」とか論理矛盾の声明など共産党が何を考えているのか全く分からない、手続き論の主張を行っている。

 二つ目は、私は政党の伸縮は、赤旗の部数で決まるのではなく、政治家の力量で決まる。と主張してきた。
 とりわけ党首の政治的力量が大きく作用すると訴えて来ましたが、数日前のTBS系の報道番組「NEWS23」で、朝日新聞特別編集委員でメインキャスターに星浩氏が「政治家は言葉の力で状況を変えることができる」と語られました。
 この発言は、三人の首相候補の演説の評価の一環として語られました。国民はこの3人の主張を聞いています。また評価もそれぞれ行っています。このことを通じて自民党は国民との距離感を縮め支持率をUPしていきます。
 共産党は、幹部の発言は全く同じで、人間的魅力を大衆に訴える努力を行っていません。この手法では政党は大きく発展しないと思っています。
星キャスターの話、私も全くの同感です。政治家は個人的魅力が大切です。れいわ新選組の山本太郎もその一人です。最近では大阪維新の吉村知事が、その発言力で総理にふさわしい人のランキングで常に上位を占めています。残念ながら志位委員長はそのランキングには登場しません。発信力が弱いのです。自分の弱点を見つめることなく、「赤旗拡大の重要性は訴えた、にもかかわらず末端の党員が動かなかった、だから選挙に負けた」と常に末端の党員に選挙の敗北の責任を押し付けています。この論理構成は、共産党の中で通用しても、一般の人からは絶対に受け止めることができません。これが支持を広げない大きな理由だと思います。

 三つめは自民党の総裁候補の選挙戦ですが、3人とも日本の未来や外国との関係をどう進めていくか話していません。この指摘を赤旗はしていません。
 私が良く「閲覧」するインターネット上の「阿修羅」という掲示板があります。この掲示板に「『管義偉"史上最悪"の総裁選挙』の出馬会見!」膳場貴子の森友問題追及には『すでに結論』、望月衣塑子の質問には司会者に妨害を支持する動き(リテラ)」という記事が載っています。
 私も菅氏の出馬宣言は、一国の宰相の出馬に当たっての声明には程遠い、内容だと思っていました。「自分は秋田の農家から高校卒業後出稼ぎの汽車に乗って上京し、町工場で働いて夜学の大学に通い、政治家の秘書を11年間勤め、市会議員から上り詰めた」と自分の立身出世物語を語りました。さらには、国会議員として自分が何を行ったのか、「携帯電話の値下げやふるさとの納税、農産物輸出、インバウンド拡大等の実現に努力してきた」と話しました。
聞いていてこれが総理・総裁に立候補を出馬宣言に値する演説かとあきれ返って聞いていました。これは1議員に立候補する次元の演説です。日本国の未来や国際情勢の中での日本の位置などに全く触れないお粗末な演説でした。
 さらに質疑に入ると、膳場キャスターからの安倍政治の負の遺産「森友・加計問題」、「桜を見る会」などについては全く答えず、これらはすでに「結論が出ている」あるいは「現代のまま」という全くの「ゼロ回答」を続けました。
 さらには質問の最終段階(あと2問)というときに、東京新聞の望月衣塑子記者に当たり、望月記者が官房長官時代からの記者会見の在り方に批判的な発言を始めた際、菅氏は目配せで司会者に、「やめさせよ」という合図を送りました。
 司会者は、「すみません、時間の関係で簡潔にお願いしますと」介入してきました。このような記者会見を赤旗はどう評価するかと注目していましたが、赤旗は菅氏の本質的な欠陥の批判を厳しく指摘すべきであるのに見逃してきませんでした。
 本日付毎日新聞は、【社説】で「日本記者クラブ討論会」「菅氏のビジョンが見えぬ」という記事があります。以下少し引用します。
「最も発言の機会が多かったのは最有力候補とみられる菅氏だった。」「にもかかわらず、菅氏の発言は目先の個別政策にとどまり、大きなビジョンは見えなかった」
「なかでも、外交・安全保障政策で、それが顕著だった。米中対立が激化して「新冷戦」とも評される中、日本外交のかじ取りをどうするかは最重要課題の一つだ。
 ところが、菅氏は中国との向き合い方について『主張すべき点はしっかり主張しながら、一つ一つ課題を解決する』とだけ語った。」「これでは何も語っていないのに等しい。コロナが終息した後、習近平国家主席の来日をどうするかについても回答を避けた」引用ここまで。
 私はこの記事の中で一番拍手喝采した部分はこれでは何も語っていないのに等しい」という行である。この間の志位委員長の発言も、「速やかに国会を開き、審議を深める」というような発言は、まったくの手続き論であり、「何も語っていないのに等しい」。
 毎日新聞は、菅氏の弱点を具体的に批判している。赤旗は抽象的に批判している。毎日新聞の【社説】のまとめは、「事実上の次期首相選びである。中長期的な視点での国のあり方や外交・安全保障の明確なビジョンを欠くようでは、不安が募る。」である。私はこのまとめが正しいと思っている。平たく言うと「菅氏には一国の宰相としての器ではない」と批判している。赤旗は何故菅氏の言動をとらえてこの批判を行わないのか、赤旗日曜版(9月13日版)は「決着は総選挙で、安倍政治に終止符」というかっこの良いスローガンを掲げているが、その戦いを組織できずに看板倒れになることは見えています。
勝つためには真正面から戦わなければ、絶対に勝てない。赤旗の紙面を見ていると常に過激な発言は、知識人等に任せ、赤旗本体は安倍政権への批判をできるだけ抑えている。上記赤旗日曜版でいえば、「『功』なく『罪』ばかり」という発言は同志社大学教授 浜矩子さんの発言です。この言葉を赤旗の主張として大々的に載せないのか、その政治姿勢がものすごく気になる。「相手への批判を避けた方が票が入る」と思っているのなら大きな間違いである。「野党は批判してなんぼ」である。批判ばかりしているから野党はダメなのだというのは、与党側の策略である。これに乗っかっていれば、選挙に勝つことはできない。