橋下徹大阪市長、「全原発廃止」を関電株主総会へ提案(3/20毎日朝刊)

     共産党は未だに「安全優先の原子力政策」から抜け切れず。


<共産党の原発政策は何か>

 =「安全優先の原子力政策」から「原発ゼロ」へ(5/1)・・再び「安全優先の原子力政策」に=

 「だめだこりゃ」というのは、ドリフターズのギャグでしたが(古い話で申し訳ありませんが)、この間の橋下徹と共産党の戦いを見ていたら、「だめだこりゃ」と言わざるを得ない状況です。

 橋下徹大阪市長は、今年6月ごろ開かれる関西電力の株主総会で「可及的速やかに全ての原発を廃止する」ことを決めたと報道されています。

 一方共産党は3月16日の赤旗1面で志位委員長が会見という記事を載せていますが、その見出しは、「新たな安全神話に立った再稼動押し付けをやめよ」というものです。これは原発反対でも、原発廃止でも、自ら掲げた原発ゼロでもなく、一斉地方選挙で掲げた「安全優先の原発政策」に基づく発言です。

  志位委員長がここでしゃべっているのは、政府の原発再稼動の策動は、安全点検面で弱さがあるというものです。彼は「「再稼動先にありき」の立場で、事故原因の究明もなし、規制機関もなしに、新たな安全神話を作りあげ、原発再稼動を進めることには断固として反対する。」と述べていますが、これは安全の基準のどこに求めるかの争いであり、共産党が提案する安全基準に則れば、原発再稼動を認める立場を表明したものです。(敵の土俵の中での議論です。)事実、この会見の中には、「原発依存からの撤退や」、「原発ゼロ」などの言葉は一切出ずに、安全基準を満たしていないことに終始しています。

  共産党は今回の原発事故がもたらした事態の深刻さに直面した国民の意識の変化を捉えきれず、相変わらず、原発の再稼動を模索する立場(安全優先の原子力政策)から発言しています。せっかく5月1日メーデ会場で「原発ゼロ宣言」を行い、共産党が一歩踏み込んだと一般紙に評価されたにも関わらず、またもや先祖がえりしてしまいました。

<橋下徹氏はやはり政治家です>

 一方橋下徹氏は、3.11震災と原発の事故が国民に絶望的な被害をもたらした状況を捉え、もはや原発と我々は共存できないと直感的に感じ取り、いま原発からの撤退が国民の願いであることを肌感覚で把握しています。それを自らが大阪市長としてもっている権限を最大限利用して、原発廃止を国民に伝えようとしています。(これが改革者たる政治家のなすべきことです。)

 これは、「さよなら原発集会」の基調でもありました。(つまり多くの国民の願いです。)この「「さよなら」は「もう絶対会いたくないという意味での「さよなら」であり、原発に対する私たちのメッセージです。」(see you againではないのです。)と主催者を代表して鎌田慧さんは発言されています。共産党はこの立場に立ち切れず、赤旗のさよなら原発の報道もこの部分(絶対会いたくない)は削除しています。(注1)

注1:このサイト内の「正義の味方真実の友」に詳しく書いている。

<高槻市委員会の発言はボケていなかった>

 私は一斉地方選挙で共産党が、「安全優先の原子力政策」とい立場を取ったことに対して間違っていると共産党中央委員会に「意見書」を挙げ続けてきました。そして5月1日にメーデー会場で志位委員長が原発ゼロ発言をしたことを評価してきました。(発表の仕方や経過には問題がありますが)

  ところが、5月15日の高槻市の共産党の地域新聞に、「原子力の安全点検」を求める記事が出たため、市委員会に電話で抗議し、「共産党の原子力政策は「安全点検」から「原発ゼロ」に変っている。」「市委員会はそんなことも理解していないのか」とボロカスに抗議しました。その際市委員は、「共産党の原子力政策は「安全点検です」」と言い切ったので、「赤旗拡大を訴えながら、赤旗も読んでいないのか」とさらにボロカスに言いましたが、この間の一連の流れを見ていると、この市委員の発言が正しく、共産党の基本的方針はいまだに原子力の安全点検から抜け出していないのが、真実だと思われます。

 共産党にはすでに大衆の気分感情を読み取る力も無くなったのかと思うと本当に悲しくなります。

<共産党は何を目指しているのか>

 共産党の政治オンチさは、3.11を体験した我が日本では、原子力発電に対しては受け入れるか、全面廃止か二者択一しかないことが分かっていないのです。(注2)共産党は「第三の道、安全優先の原子力政策」を模索し、将来の平和利用につなげる道を探っています。しかし原発が崩落し、多くの市民が未だに自分の自宅に帰れないこの現状下において、運動論的には、「容認か廃止」しかないのです。(廃止を求めて戦うのが、国民の立場に立った政治です。)この単純な構造を橋下大阪市長は分かっても共産党には分かりません。もはや政治家としての感性を失っています。

注2:【5月31日AFP】ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相は30日、国内にある17基すべての原子力発
      電所を2022年までに停止すると発表した。
          メルケル首相は会見で、「福島(第1原発)の事故は、これまでとは異なる方法でリスクに対処する必
      要性があることを教えてくれた」と述べ、「われわれが再生可能エネルギーの新たな時代を切り開く先駆    
    者になれると信じている」と続けた。
          この決定はドイツの電力需要のうち原子力が賄ってきた22%をほかのエネルギー源に切り替える必要が
      あることを意味している。

  この間の共産党の最大の関心事は、原発反対ではなく、「保守との共同が進んでいる」これが日本の政治を変える力になると信じているようです。私は、これは共産党自身の自殺行為だと思っています。原発反対などを国民とともに積極的に戦い、革新陣営の陣地を如何に広げるかを第一義的課題に掲げ、その上で保守層をも巻き込むという方針なら理解しますが、今の共産党の方針はそうではなく、一直線に保守との共同です。

 京都の市長選挙で共産党は敗れはしましたが全ての党派を敵に回し、ほぼ互角の戦いをしました。しかし市田書記局長は、この戦いの総括を、保守との共同が進んだ成果だと評価しました。(注3)ここに現在の共産党の危機があります。保守との共同を求めるがために、共産党の本来の主張を弱め、保守にすりよりはじめています。

  原子力発電の問題も、反対を言えば、財界を怒らせるという配慮が働いていると思います。橋下徹氏のように政治的には保守(超右派)の立場を取りながらも、財界に媚を振らず、原子力発電に真っ向から反対する、この姿勢が大衆の喝采を受けるのです。大衆運動から遠ざかった共産党は、大衆の気分・感情がわからず、保守層を掴むことに最大限苦労する(自らの主張を後退させる)馬鹿げた話です。

  ここで全く卑近な例ですが、M議員が立候補にあたって、「なぜ出馬のビラで、ことさら京大卒を強調したのか、共産党らしくない」という私の主張(注4)に、ある人が「いやM議員は保守層にも浸透し、かわいがられている、保守層は学歴を重視するから、そのために載せたのだろう」ということを言った人がいます。なにかマンガチックな感じがしますが、この辺が最近の共産党の水準かとも思っています。

注3:このサイト内の「京都市長選挙の大健闘と総括の頓珍漢さ」

注4:このサイトを立ち上げたのは、このビラの内容に疑問を持ったことから始まりました。

<赤旗は本当に一紙で間に合うのか>

  最後に共産党の最大の弱点はセクト主義にあります。保守との共同路線の説明では課題別の「一点共闘」の重要性を強調しています。しかし本日(3/20)付け赤旗は、橋本大阪市長の出した、株主提案の内容「可及的速やかに全ての原発を廃止する」を取り上げていません。この橋下大阪市長の提案は、原発反対運動に大きな役割を果たします。本日の赤旗の原発関連記事は、「これでも原発再稼動か」と志位委員長の記者会見の補完記事を大きく載せています。

  この記事は、橋下大阪市長の「原発全面撤退」という報道のもとでは間抜けな記事になってしまいます。(だから、橋下氏の報道は載せられない。)

 これでは、赤旗だけ読んでいたのでは物事の真実はわかりません。