「従軍慰安婦問題」赤旗の主張(9/27)を批判する


平成26(2014)年9月29日


はじめに
 「従軍慰安婦問題」は朝日新聞が8月5日・6日過去の吉田証言に基づいた自らの新聞の記事16本を取り消したことから大きな社会問題になっている。この朝日の「敗北宣言」を受けて右翼論壇は活性化し、週刊誌や正論などの雑誌では連日朝日新聞解体論が大々的に論じられている。
 私は朝日新聞の吉田証言は虚偽証言であったとの記事とお侘びに接して、もう一人この問題に対して見解を述べる必要がある団体があると指摘してきた。(従軍慰安婦問題と赤旗 参照)赤旗は朝日の訂正記事が出てから2ヶ月近くも経った9月27日付け赤旗で、初めてこの問題に対して口を開いた。
 この記事の中で赤旗は、「『吉田証言』の記事を取り消します。」という小さい囲い込みの記事を赤旗編集局の名のもとに行っている。しかし朝日の取り消し記事にあった従軍慰安婦と挺身隊を混同したという点については何ら触れていない不十分な取り消しになっている。

共産党の主張(9/27)」は何を語っているのか

 この9月27日赤旗の記事の見出しは、「歴史を偽造するものは誰か」
 ―「『河野談話』『否定論』と 日本軍『慰安婦』問題の核心」としていることから見て、「河野談話」の否定する安倍政権や右翼陣営の軍国主義復活に向けた高揚した議論に水を差すことが最大の目的だと思われる。
 赤旗が「河野談話」の否定勢力を危険分子と認識し、それとの闘いが当面重要だという認識については理解するし、支持もする。しかし赤旗の議論は右翼的論壇の批判に対する反論になっていないし、独りよがりの理論(あえて言えば吉田証言の誤りを引きずった議論)になっている。

何が論点になっているのか、まずこの問題の整理が重要である。

 それは
1.そもそも従軍慰安婦とは何か
 赤旗の報道は、「従軍慰安婦」という言葉を使わず、日本軍「慰安婦」という言葉を意識的に使い、この問題を国家が関与した問題と、前線の軍隊が犯した犯罪とを同次元で扱っている。(ふたたび従軍慰安婦問題について参照)
 今回の論文では、「くわえて、『ひとさらい』のような「強制連行」もあったことは、インドネシア(当時オランダ領東インド)のスマランや中国南部の桂林での事件などでも明確であること「軍や官憲による強制連行を直接示す記述はなかった」とする第一次安倍政権時代の政府答弁は事実と違うことは、すでに「志位見解」で詳しくのべている通りです。」と書いているが、スマラン事件は、前線の軍が犯した犯罪であり、すでに戦後オランダによるBC級戦犯裁判で裁かれた事件である。
 この件については、吉見義明著書の「従軍慰安婦」では以下のように記述している。
 
★慰安所(スマラン)が閉鎖される(「従軍慰安婦」185ページ)
 1944年4月末、この4つの慰安所は閉鎖された。(中略)オランダ人リーダーのひとりが、苦労して俘虜収容所・民間人抑留所に関する業務を担当する陸軍省俘虜情報局事務官小田嶋董大佐との会見をとりつけ、強制連行・強制売春の事実を訴えたからである。(中略)第16軍司令部に報告し、慰安所の閉鎖を勧告した。第16司令部はただちに慰安所の閉鎖を命令し、閉鎖する。しかし、関係者は処分されなかった。この慰安所が存在したのは約2ヶ月間であった。

 この事件は敗戦後オランダの軍事法廷で裁かれ、被告13名のうち11 名が有罪(将校7名と慰安所経営者(軍属)4名)、最高刑は死刑、他は懲役20年から懲役2年までの判決が行なわれた。(なお、計画の中心的役割を果たしたとみられた大佐は日本に帰国していたが、47年1月、オランダの追求を知って自殺している。)
 この件は、戦後、51年のサンフランシスコ平和条約第11条で、極東国際軍事裁判(東京裁判)とBC級戦犯裁判を受諾しているから、スマラン慰安所事件の判決もうけいれたことになろう。(以上吉見義明著 「従軍慰安婦」から)
 この事件は、軍規に違反した犯罪であり、すでに国際的にも決着のついた事件であるのに、ことさら現在問題となっている従軍慰安婦問題に紛れ込ませ、日本軍の強制連行(「ひとさらい」)があったように主張しているが、軍の施策としての従軍慰安婦と解決済みの「犯罪」を混同して議論を行うべきでない。
 赤旗の書いた「ひとさらい」こそが、吉田証言の核心であり、赤旗はこの吉田証言を否定しながら未だ引きずっている。ここに赤旗の往生際の悪さを示している。

 従軍慰安婦問題は、「帝国の慰安婦/植民地支配と記憶の闘い」(2013年)朴裕河・世宗大学日本文学科教授(57)が定義付けられているように、(朴裕河教授の帝国の慰安婦を読む参照)

(1)アジア太平洋戦争で日本軍の性の相手をした全ての女性を「慰安婦」と呼ぶべきでない。「慰安婦」とは、「日本人」になっていた「朝鮮人」「台湾人」「沖縄人」だけだと考えるべきである。(注1)

 
注1:彼女の「慰安婦」は、軍人たちを「慰める」女性たち、軍隊を支える部隊と
  いう意味を込めている。(敵国の人間を捕虜にして犯す場合は慰安婦に当たら
  ず、犯罪と見ている。)
  
 「慰安婦」とは、基本的には<国家の政治的・経済的勢力拡張政策に合わせて戦場や占領地となった地に「移動」していった女性たち>のことである。

(2)「慰安婦」と「朝鮮人慰安婦」

 「国家のために」出兵していった男性のために「慰安婦」が用意されるもで、その対象は「日本人女性」だった。それが、朝鮮が植民地になったがために「朝鮮人女性」もその仕組みに組み込まれた。
 その機能は、近代以降西洋を含む帝国主義とともに始まったと見るべき。

(3)朝鮮人慰安婦は「植民地支配」が生んだ存在であり、その点で日本の「植民地支配」の責任が生じる。

 たとえ契約を経てお金を稼いだとしても、そのような境遇を作ったのが「植民地化」であることは確かで、朝鮮人慰安婦に対する日本の責任は「戦争」責任でなく「植民地支配」責任として問われるべきである。

 
と整理されている。これに共産党はどう答えるかが問われている。
  
 最大の論点は、
@ 敵国の人間を捕虜にして犯す場合は慰安婦に当たらず、犯罪と見ている。
A 日本の責任は「戦争責任」でなく「植民地支配」責任として問われている。
     

2.挺身隊と従軍慰安婦の混同はなかったのか

 従軍慰安婦問題を語る場合、韓国がこの問題をどう捉えているかが重要である。また韓国の従軍慰安婦の定義が、日本発でないかの点検が重要である。

 韓国はアメリカに従軍慰安の「像」あるいはい「碑」を建てる運動を加速している。その慰安婦碑文を読めば韓国がこの問題をどう捉えているかがわかる。
例えば、「1930年代〜1945年、日本帝国政府軍によって誘拐された20万人以上の婦女子の記念。「慰安婦」として知られている。彼女たちは、人権侵害や違法行為を耐え忍んだ。人間性に反した犯罪の恐怖を決して忘れないようにしよう。
2010年10月23日 建立 バーゲン郡郡長郡議会・バリセイズ・バーク自治町  というのがある。
 
 この碑文から明らかなように、韓国は「従軍慰安婦」は、20万にも及び、日本帝国軍によって誘拐され、性的奴隷にされた」と認識している。
 朴大統領が、「侵略した日本と侵略された韓国との関係は1000年の歴史を経ても変わらない。」と発言した裏付けに、この20万人の「慰安婦」という認識があると思われる。
 また20万人の従軍慰安婦という表現も、朝日新聞が認めたが、挺身隊と慰安婦を混同した日本側の論議がその出発点にある。
 東京基督大学教授の西岡力氏は、20万人の従軍慰安婦は、1970年8月14日付けソウル新聞に「1943年から45年まで、挺身隊に動員された韓・日の2つの国の女性は、全部でおよそ20万人になる。そのうち韓国の女性は5―7万とされている」という記述があり、これが原点である。これを千田夏光(注2)という人が、この記事を改造し「挺身隊の名のもとに若い朝鮮人婦人約20万人が動員され、”5万人ないし7万人”が慰安婦にされた」(『従軍慰安婦』(三一書房101〜102ページ))さらに従軍慰安婦と挺身隊の混同が行われ、(朝日新聞のスクープ記事「金額順の証言」を執筆した植村隆記者が挺身隊と慰安婦を混同した)いつの間にか20万人の従軍慰安婦という言葉が定着した。」と解明している。

注2:元毎日新聞記者、1973年には、『従軍慰安婦 正編』を上梓し、その中で「従
  軍慰安婦」という語を戦後の文書ではじめて使用した。

 韓国でなぜ20万人説が定着したかといえば、加害者側が言っているのだから、それは真実に違いないという点から、韓国の主張は成り立っている。そういう意味では吉田証言の果たした役割を真剣に捉え、科学的検討を加え、韓国側を説得していくことが求められている。
 韓国民が、従軍慰安婦が20万人という認識も、強制連行(ひとさらい)と思っているのも、すべての根源は吉田証言にある。
 20万人という数字はとてつもなく大きな数字であり、例えば1日7人の相手をしたとすると、140万人の相手ができる。さらに1週間では、5日働いたとして700万人の日本兵の相手ができる。1ヶ月働けば(20日として)2800万人の相手ができる。こんなに大勢の慰安婦がいたとは考えられない。
 しかも従軍慰安婦は朝鮮人だけではなく、日本人が主力であったと思われる。
 吉見義明氏著の「従軍慰安婦」の中に軍から従軍慰安婦に対する要請文書が載っている。「関東軍は」関特演のときに兵員80余万に対して2万人の慰安婦を集めようとした。これが事実だとすれば、40名ににつき1名である。しかし、第21軍では100人に1人の割合としていた。と書いている。 
 これを元に考えると海外地域の兵員数を平均300万人として仮に兵員50名に1名の慰安婦がいたとみてさらに慰安婦が全く入れ替わらなかったとして6万、1.5交代したとして9万という数字が出てくる。このうち5割が朝鮮人だとしても4万5千人である。(全く架空の計算ではあるが20万人の強制連行された慰安婦の根拠は、怪しげな数字である。・・この点についても韓国の主張(日本発ではあるが)を黙って認めるのが本当に友好か私は疑問に思う。)
 共産党が日韓の友好を大切にするのであれば、事実に基づき、従軍慰安婦問題を解き明かさない限り、朴大統領がこの認識を持っている限り、友好関係の前進は難しいと思われる。

3.「吉田証言」の果たした役割、その影響は?

 共産党は、吉田証言が偽証であることを早くから気づいていた。(27日の新聞では93年の11月の記事を最後に「吉田証言」はとりあげてはいません。)と書いている。
 報道2001(8/10)に出演していた小池議員も、吉田証言が嘘だということは誰でも知っていた。だから、河野談話にも何も影響を与えていない。と主張し、赤旗が「訂正も取り消しもしなかったこと」を合理化する発言を行った。
この27日の赤旗の主張も、吉田証言は偽証だということは、早くから気づき、この証言が世間に与えた影響は皆無だということを盛んに主張している。
93年8月に発表された河野談話に「吉田証言は採用されていない」という石原元官房長官のテレビでの発言で、そのことを証明しようとしているが、確かに石原氏は「信ぴょう性がなく、とても話にならないとまったく相手にしませんでした」と応えているが、これは石原氏の先見性を示すものであり、共産党が吉田証言を扱わなくなった93年11月よりも早い時期である。
 この石原発言は何を意味するのか、こんなまったくの嘘を支持する共産党や社会党がいるから、その話を聞いてみたが、まったく話にならない虚言だと彼は見抜いたのである。
 河野談話の準備段階と重要な局面でなぜ詐欺師である吉田氏が呼ばれたのか、その裏には野党がその発言を正しいと主張しているから、一回きいてみようということである。共産党の先見性を示すのなら、河野談話作成にあたって吉田氏からの聞き取り調査を反対したと言わない限り、どこにも正当性の証明にはならない。
さらに重要なことは、報道2001では、吉田証言の虚偽が認定され、強制連行(ひとさらい)の根拠が崩れたと言われた際に、小池議員は裁判所で強制連行が認定されていると主張し、また同席していた金慶珠・東海大学准教授も「吉田発言だけが『慰安婦』問題の根拠になったのではなく91年8月の元『慰安婦』金学順氏の証言に大きな意味があった」と述べた。
 小池氏も、金氏も吉田証言が崩れても、強制連行(ひとさらい)があったという事実は否定できないと主張した。
 この議論の問題点は、吉田発言の持っている問題点の究明を回避し、相変わらず同じ主張を行うことを主張したことになる。


右翼陣営は突きつけている。

  @20万人の従軍慰安婦(朝鮮人)は本当か?
  A従軍慰安婦と挺身隊の混同が行なわれたのでは。
  B慰安婦は売春婦であって、若い婦女子が強制的に連行されたのでは無い。
 これらの具体的な論点と闘わず、「日本の軍隊は悪いことをしたに違いない」という揺るぎない確信だけでは闘えない。
 右翼側の問題提起は、従軍慰安婦問題は、吉田証言(慰安婦刈り)が行なわれたが前提にあったために、今日までこの議論が正当にできなかった。これが崩れた段階でこの議論に入れる。という主張に対する答えになっていない。


海外への影響

 さらに見逃せないのは、国連で1996年1月から2月にかけて国連人権委員会に報告された「女性への暴力特別報告」クマラスワミ報告(クマラスワミほうこく)で吉田証言を引用した日本政府に対する勧告文が決議されている。
 さらに2007年のアメリカ合衆国下院決議案」(アメリカ合衆国下院121号決議)「慰安婦に対する日本政府の謝罪を求める「従軍慰安婦問題の対日謝罪要求決議」とも言われる。
 これらの決議は国連決議がもとになっており、そこには吉田証言がやはり根底にある。

4.吉田証言だけでなく金学順など個人の証言の持つ価値とは

 先にも述べたが、吉田証言の偽証が明らかになった段階で、小池議員は、裁判所の事実認否で、強制連行が認められている。金慶珠・東海大学准教授は、金額順の証言があると主張した。このふたりは、強制連行の証拠は吉田証言では無く、他にあるのだと主張した。
 小池氏の主張は志位論文の裁判例を指していると思われるが、確かに8件の裁判事例が列挙されている。4件は朝鮮人の事件、4件は中国人の事件である。朝鮮人の事件は、すべて日本人と朝鮮人が二人でひと組であり、甘言を用いて、慰安婦に仕立て上げたというものある。
 それに対して中国の事件は4件とも、日本軍人が拉致し、強姦し、穴蔵に監禁したというものである。
 小池氏は中国の4件を指して従軍慰安婦はこのようなものであったと主張していると思われるが、これは先に述べた従軍慰安婦の定義の問題である。
 敵国(中国)の人間を捕虜にして犯す場合は慰安婦に当たらず、犯罪と見ている。これは犯罪であり、それぞれ個別に裁かれると見るのが正しいのではないか。(「従軍慰安婦の問題」は現在では、植民地化の朝鮮人の慰安婦問題に限定して議論をすべきだと思われる)
 次に、金学順であるが、彼女の証言は、揺れ動くが、彼女は14歳で親に40円で売られキーセンに入れられた。という証言から見て、日本軍における(ひとさらい)のような行動ではなかったと思われる。(意に反して)ということが言えるだけである。(河野談話で言う広義の強制性の範囲であると思われる。)
 吉田証言がダメなら次はこの人の証言というような手法で「強制連行」(ひとさらい)を証明しようというやリ方には無理があり、その一人一人が反対派からさらし者になるだけである。
 中国人の裁判所の事実認定と朝鮮に対する認定の違いは、図らずも従軍慰安婦は何かを明らかにしているのではないか。

5.罪と罰の混同

 戦時下の犯罪については、基本的には国際法で裁かれるべきである。日韓併合や従軍慰安婦等は問題があっても、その当時、国際的に認知されていたり、戦争下における性の問題はどの国の軍隊においても直面する課題であったと思われる。
 その問題の解決方法として、日本軍が採用した従軍慰安婦という制度が、他の戦争当事国に比較して、女性の人権や、他民族に対する抑圧という点で、大きな誤りがあったのかが問われるべきであるが、例えば、売春に関しては、日本が法的に禁止したのは1956年であり(施行1957年4月1日完全施行は1958年4月1日で、この法律の施行に伴い1958年(昭和33年)に赤線が廃止された。)
 良い悪いは別として、戦前は売春が法的に禁止されていなかったことも前提に議論すべきである。さらには敗戦後、GHQ占領が始まった1945年9月には既にアメリカ人相手の売春婦の存在が確認されていたとされ、1946年には日本全国で7万から8万人、朝鮮戦争の激化した1952年には15万人近くがいたとされる。1956年の売春防止法施行後は激減したが、ベトナム戦争が激化した1960年代後半になっても米軍基地周辺には存在した。
 これらの事実に比べ、日本軍の間違いは何かを精査した議論がなされねばならない。
 法的な問題は法的に処理し、人道的な問題は、道義的責任問題として処理されるべきであろう。
 27日の赤旗の主張は、河野談話の際の聞き取り調査(35人)を踏まえ。「こうした強制が国家的犯罪として断罪されるべき反人道的行為であることを『極めて反人道的かつ醜悪な行為』『ナチスの蛮行にも準ずべき重大な人権侵害』などの峻烈(しゅんれつ)な言葉で告発していることを示しています。」と書いているが、政治を語る者として極めて軽率な発言であると思う。
 被害者の個人の感想を引用し、あたかもそれが事実であるかのような発言は政治団体としての見識が疑われる。この書き方はあくまでもこの個人の考え方に赤旗も同意している。同じ意思であることを表明している。
 赤旗が「ナチスの蛮行にも準ずべき重大な人権侵害」と指摘するなら、その根拠を明確にして語るべきだ。個人の単なる感想(それが政治学的に事実として認証されるかを曖昧にして)紹介するやり方はアンフェアーであり、同時に政治勢力として信用されない立場に自らが追い込まれることを自覚すべきである。

6.赤旗は今回のお詫び(取り消し)記事で、「93年の11月の記事を最後に『吉田証言』はとりあげていません。」は事実か?


 赤旗は従軍慰安婦問題で吉田発言を採用したのは93年の11月の記事が最後だと述べ、朝日とほぼ同時期に吉田証言が虚偽だということを認識していたと説明し、責任の追求を逃れようとしているが、赤旗が確かに吉田証言の引用が93年だったとしても、韓国側の同じ趣旨の主張を行う「金額順」の主張はつい最近まで行われて来た。(注3)

注3:2013年5月15日(水)赤旗
   金額順(キム・ハンスク)さんが日本軍の軍人に無理やり連れ去られたのは
  17歳のときでした。姉とともにトラックに乗せられ、空き家で服を引き裂か
  れ、犯されました。殴られ、蹴られ、殺すぞと脅かされながら、それから毎
  日、軍人の相手をさせられました。(市田書記局長)・・・これは吉田証言と
  瓜二つ。

 さらに朝日新聞が吉田調書の虚偽を認め自らの記事の16本を取り消すと主張している最中、8月16日の赤旗13面【社会】に「慰安婦」問題”解決急げ”「大阪でデモ『日本は逆行』」という記事で、「1991年に韓国の金学順さんが『被害者として名乗り出たから明らかになった』ことで、被害者としての勇気ある訴えがあったからだ」と指摘という記事を載せている。
 吉田証言の虚偽が確定し、金学順さんの証言にも疑いがかけられている現状を認識せず、未だに、強制連行(ひとさらい)という主張は撤回していない。 
何万という人間を募集したことから考えて、いくつかの違法な取り扱いがなかったとは言えないが、強制連行(ひとさらい)が軍の中心であったのかが問われている時に、例外を持って全体を語るべきではない。

7.日韓友好と従軍慰安婦問題と河野談話

 最後に共産党の27日の主張が、河野談話を死守するという趣旨であれば、私も賛成する。現在の右翼の騒ぎ方は異常であり、従軍慰安婦などというものはなかったというような主張まで行われている雰囲気である。例えば日韓併合は、韓国の求めに応じてやったのであり、日本は何も悪いことをしていないと、明治天皇の玄孫の竹田 恒泰氏などはさわぎ始めている。
 左翼陣営は自己崩壊した。ここぞとばかり騒ぎ回っている。高市 早苗正調会長(改造前)なども安倍首相に会い、河野談話の見直しを迫っている。自民党も右派議員は河野氏を国会に呼び喚問せよとも騒いでいる。しかし、菅官房長官は、河野談話は見直さないと言っている。安倍首相も韓国に対して河野談話の見直しはしないと伝え、日韓の首脳会談を実現しようとしている。
 さらに、アメリカも河野談話の見直しには賛成していない。そういう意味では右翼は騒いでいるが、現在河野談話を見直すことは確実に国益に反する。右翼の人以外は河野談話の見直しが決して日本の利益にならないことを自覚している。
 また河野談話は赤旗も主張するように、吉田証言を尊重したものではない。あくまで広義の意味での強制連行を認めたものであり、この点は被害者側の国民の感情を尊重したものであり、加害者側としては配慮が必要な部分である。
 しかし事実は追求されなければならない。20万人の従軍慰安婦(朝鮮人)という表現が正しいのか、強制連行(誘拐)という表現が正しいのか、これらは検証が必要である。
 韓国や中国に卑屈になり、謝り続けるのが外交ではない。誤りは誤りとして、正すべきは正す努力も必要である。これは理をもって説得しお互いの共通理解を図ることが重要である。一方的に事実認識を押し付けることは、決して日韓の有効に役立たない。
 共産党の今回の主張は、河野談話を守ることを最優先させながらも、未だに20万人の従軍慰安婦や、強制連行(ひとさらい)あるいは「ナチスの蛮行にも準ずべき重大な人権侵害」と叫び、韓国側に媚を売る姿勢を貫いている。共産党はこれを加害者側の「正義」だと思っていると思われるが、これは誤った「正義」であり、韓国側の間違ったメッセージを送り、朴大統領が、韓国民のためになさなければならない軌道修正を遅らせるだけであり、この共産党の「正義」や「配慮」は、韓国を1000年の恨みから立ち直れない国家にしてしまう。
 大切なことは前向きの思考であり、法的に決着すべきことは法的に決着し、道義的に決着しなければならないことは道義的に決着することである。
 共産党の主張する、「日本軍は朝鮮人を従軍慰安婦として強制連行しました。」などとはどの政府(たとえ共産党が入る政府ができても)絶対に認められないことを主張し、日本に要求すればこの回答が得られるという誤った幻想を与え、韓国の政治を混乱させているだけである。思い込みの「正義」や「善意」が逆効果をもたらすことを知るべきだ。