大阪の茨木市と大東市の選挙は、共産党の不祥事の克服ができたか否かの試金石である。


令和2(2020)年4月15日


 大阪の茨木市は私の住んでいる高槻市の隣の市であるが、市長選挙・市会議員選挙が、2019年の4月の一斉地方選挙より1年遅れ、2020年(令和2年)の4月に市長選挙があり、市会議員選挙はもう1年後2021年(令和3年)の1月にある。
 そうした面から他の大阪府下の衛星都市との比較は難しい面があるが、同時に選挙戦としては他の衛星都市からの応援もあり共産党にとっては有利な点がある。
 私の記憶では一番茨木市の市会議員選挙で勝利した際、8議席くらいあったと思う。(1950年頃・・定数がもっと多かったかもしれません。)今回(4月12日)は、市長選挙と市会議員の補欠選挙が行われた。この結果を分析し共産党は前進したのか後退したのか探ってみたい。
 市長選挙は現職と維新の新人との戦いで、現職が勝利した。共産党は維新の市長を阻止するため、現職の市長の当選に協力したと思われる。選挙結果は以下の通りである。なお赤旗は茨木の市長選挙の結果には一切触れていない。市長選挙があった事すら報道せず、市会議員の補欠選挙に出たおおみね氏の得票数5248票(7.12%)で健闘したと書かれている。

★市長選挙の結果


 市長選挙では、維新の候補に相当差をつけ、現職の市長が勝利している。前回の市長選挙の際は維新の現職候補が納税の問題で不正が指摘され敗北した歴史があり、茨木市民が維新市長の復活には賛成しかねたのだと思われる。(なお大阪維新の会は2016の市長選挙では木本市長(現職)を推薦しなかった)

 次に補欠選挙の結果ですが、こちらの方が各政党の力関係(栄枯盛衰)が見えてくる。結果は以下のとおりである。


★市議会議員選挙(補欠選挙)





 この結果は、大阪維新あなどれずということです。大阪維新は2人で37,766票獲得しており、得票率では51.24%と50%を超えている。ちなみに3人目の当選者、滝の上かずのり氏は2017年の市会議員選挙の際は、大阪維新の会から立候補して1683票で落選しているが今回は自民党から出て11,532票、得票率15.65%を獲得している。この人物も維新系と評価すれば、維新の強さがうかがわれる。またこの選挙には公明党が立候補していない、もし立候補していたら、共産党の票はもっと減っていたと思われる。
 おおみね学氏は立憲民主にも旧社会党の流れをつぐ山下けいき氏にも負けている。赤旗は先に書いたように「健闘した」と書いているが実際は大敗北である。

茨木市の共産党市会議員の歴史的経過(2017年と今回の補欠選挙の比較)を見てみたい

 2017年の茨木市の市会議員選挙の結果の勢力図は、大阪維新は、19,963票、22.35%、当選者5名、自民党は18,969票、21.23%、当選者6名、公明党は16,828票、18.84%で当選者6名、民主系は9,503票、10.64%で当選者4名、共産党は9,460票、10.59%で当選者3名、市民フォーラム8,366票、9.36%で当選者3名、無所属は4,715票、5.28%で当選者1名(山下けいき:新社会)である。
 この結果から言えることは、大阪維新、自民党、公明党は支持率20%前後を獲得し、政治的基盤を固めているが、共産党、民主党系、市民フォーラムは10%前後で何とか存在感を占めしている。
 しかし今回の補欠選挙では、大阪維新がモンスターの様に返り咲き、獲得得票率が50%を超え、勝者は圧倒的に大阪維新である。2017年の選挙での獲得得票率は22.35%で自民党や公明党といい勝負であったが、補欠選挙を見る限りでは維新の一人勝ちが際立っている。共産党は10.59%と「崖っぷち」であったが、とうとう7.12%という数字まで落ち込み、一人前の政党の資格が失われてきている。
 この共産党の衰退をもたらしているのは、全国的な流れでもあるが、茨木市の特殊要件が絡んでいる。実は大阪維新の茨木支部の幹事長は岩本まもる氏であるが、この彼はもともと共産党議員であった。何があったのかは知らないが共産党を除名され、2013年には市民フォーラムから立候補して落選しています。しかし2016年の補欠選挙では無所属で当選(この時の獲得票数は30218票、得票率43.69%)であった。その後大阪維新の会派に移り、2017の選挙では大阪維新から出て2533票を獲得し当選している。この男の反乱が茨木市での共産党の基盤を弱くしたと思われる。
 これと同じことが大東市の選挙でも見られます。平成24年の選挙では3名が当選しましたが、解散時には共産党の会派から2名が脱落し、1名になっていました。次の28年の選挙では当選者は2名に減っています。今回大東市の市会議員の選挙(4月19日投票)がありますが、赤旗では2市議候補の勝利必ずと書いていますが、既に陣地が3議席から2議席に減ったことを認めています。(この選挙は今週末ですが)
 これに対して茨木市の大阪維新は2017年選挙では相当後退しました。(9名立候補し当選は5名、前回は7名当選)これは2012年に当選した木本市長(大阪維新系)に、2016年3月に金融機関から借りた5千万円を市条例に基づく資産報告に記載せず、また借り入れのための担保の固定資産税約1千万円を滞納している親族の不動産であり、市長が滞納を把握しながら資産の差し押さえなどの対応をせず、放置していたことが判明しました。
 このため、前回木本氏を推薦した大阪維新の会は、同年の市長選挙で木本氏を推薦せず、自主投票とした。そのため木本氏は落選し、今回の選挙で当選(2期目)した福岡洋一氏が当選した。この時福岡洋一市長を支えていたのは大阪維新と自民党だと思われるが、今回の市長選挙では大阪維新は寺本博昭氏を現市長の対抗馬として立てて戦った。(この際大阪維新は、福岡洋一現市長を推薦した経過は一切ないと主張している。)
 前木本市長の件については、2026年11月9日の百条委で証言を拒否したため、市議会は翌月地方自治法違反罪で告発する議案を提出、維新以外の会派が賛成したため大阪地検に告発状を提出した。しかし、2018年に不起訴処分になった。
 なおこの告発する議案に元共産党議員であった岩本守氏(2016年補欠選挙で無所属から出て当選は)は賛成しなかった。この功績で大阪維新の会派に入ったものと推測される。
 話が前後して分かりにくくなりましたが、この大阪維新系の木本市長のスキャンダルが影響し2017年の市会議員選挙では大阪維新は、立候補者9名に対して当選者は5名にとどまり、獲得得票数19,963票、22.35であった。(この選挙で岩本守氏は2533票28人中17位で当選した。)
 この選挙の三年後の今回の市会議員補欠選挙で、大阪維新は、得票率で51.24%を獲得し完全に復活している。共産党は岩本守氏の除名以後、その議席の回復はできず、さらに得票率を2017年選挙の10.59%から今回は7.12%まで後退したのに、大阪維新は、22.35%だったものを51.24%までかさ上げしている。
 この差はどこからきているのか、その科学的な分析が必要だと思っている。共産党は選挙にいくら負けようが敗北を認めず健闘したと総括し、お茶を濁してしまうため、巻き返しの課題が見つからない。大阪維新は敗北した時はハッキリと敗北を認め、そこからどう克服すべきかを練っている。この対応の違いが大きい。
 共産党の総括は、選挙をやる前から分かっている。どんな選挙でも健闘したと称え、決して敗北を認めない。(幹部に責任が及ばない・・・これが中国と変わらない点である。)しかも今後の課題は、赤旗を増やすことに集約されてしまう。
 本来総括はなぜ勝てなかったのか、相手候補との切り結びはできていたのか、市民の要求はくみ上げることはできていたのか、ビラやポスター等で市民に訴えることができていたのか、運動員はこの戦いに燃えていたのかとかいろいろの面から総括する必要があります。
 今回の市長選挙で維新は敗北していますが、そのチラシは昔の共産党のビラにそっくりです。現政権の問題点を鋭く突いています。ものすごく分かりやすいビラに仕上がっています。最近の共産党のビラは、切り結ぶことを避け、提案型を重視していますが、何か御用聞き的なビラになっています。私が共産党のビラで最悪だと思っているのが、「安全・安心・優しい大阪」です。何を主張しているのか全く分かりません。ビラ等の完成度も維新が上回っています。こうした政策面での後退も選挙に影響していると思います。

★最後にもう一点平成2019年(31年度)の大阪府議会選挙の結果を見ておきます。


 既に2019年の段階で、大阪維新の会は43.50%獲得しており、自民党は19.45%と安定した票数を出しており、公明党は16.65%と少し陣地を後退しています。山下けいき氏は社会党の流れを持つ者であり、12.93%獲得しているのは見事ですが、共産党が7.47%と既に7%台へと後退している。新社会の山下氏と共産党のチカラ関係は、一番最近の4月12日の市会議員補欠選挙と類似している。(山下氏11.77%、共産党7.12%)これが現在の共産党のチカラだと思われる。2017年の市議会選挙では10.59%の得票率が2020年の市会議員補欠選挙では7.12%まで落ち込んでいます。これは2017年の67.23%しかありません。 
 時が経つにつれ党勢が落ち込んでいることの自覚が恐らくないのだと思います。いま「綱領で党を作ろう」――これを合言葉にして党員を増やし「しんぶん赤旗」読者を増やし・・・と党綱領の示す党づくりで躍進を図ると言っていますがピント外れです。安倍さんがマスク2枚支給や、星野源さんが公開した弾き語り動画に合わせて、ソファでくつろぐ姿に批判が殺到していますが、共産党も現在のコロナウイルスで感染の恐怖や生活の破たんに苦しむ国民の側にしっかり立たないと、今日の次元で、マルクス・エンゲルスの立場に立ち返ると、日本共産党の立場が一番正しいとの主張は、国民から全く浮き上がってしまうことに気が付くべきです。
 マルクス・エンゲルスは膨大な資料を残しています。その中の一部を引っ張り出し、だから我々の言うことが正しいというような主張はいくらでもできます。そんなことは学者に任せ、いま一番誰の生活が破壊されようとしているのか、それを見極め支援に入ることが重要です。その点では共産党がネットカフェに住んでいる人たちの生活破たんをクローズアップされないところに疑問を感じています。テレビや毎日新聞も大きく取り上げています。原点にもどることが大切だと思っています。
 最後にこの記事を書いて赤旗(4月12日付)を見たら、ネットカフェの記事がありました。赤旗も取り上げていたのを見逃したな、記事を変えようと思いましたが、読んでみると突っ込み場所満載の記事でした。
 一番大きな見出しは「次の住居決まるまでは」「休業要請の都内ネットカフェ」「オーナが滞在者支援」という記事になっている。この記事は美談で満ちている。このような良心的経営者もいますが、全国的には行き場もなく困っている人がたくさんいます。その現場を明らかにするのが記者の役割です。テレビでは1800円を手に握りしめ行き先を探しているネットカフェの住人が映し出され、街をさまよっていました。赤旗の記事は美談と一般社団法人をつくろい東京ファンド代表の話で記事を構成しています。共産党がこの問題の解決にどのように奮闘しているかの姿が全く出てきません。他人行儀の記事に仕上がっています。これでは信頼は勝ち取れません。

参考:大阪茨木市会議員の教訓は何か(赤旗の総括を批判する)平成29(2017)年1月29日