自民党言論弾圧対する動きと赤旗の間抜けさは、他党派や一般紙を見れがよくわかる


 平成27(2015)年6月28日


自民党改憲派の暴走の本質を赤旗は理解できず

            「報道への逆恨み」と言う【主張】を掲げた。


 6月27日(土)の赤旗の【主張】は、自民党若手議員の学習会の暴走(25日)を、「報道への逆恨み」、縦見出しで「この暴挙は見過ごしにできぬ」というキレのない主張を掲げた。
 その内容を少し長くなるが以下に引用する。
 「安倍晋三首相に近い自民党若手議員が作家の百田尚樹氏を招いた会合で、戦争法案などを批判する報道に対し、『マスコミを懲らしめるためには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働きかけてほしい』などの議員の発言や、『沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない』という百田氏の発言があったことが明らかになり、戦争法案を審議中の特別委員会でも問題になりました。いずれも戦争法案などへの批判が高まっていることの逆恨みですが、言論・表現の自由を踏みにじり、特定の新聞をつぶせなどという発言は断じて見過ごしにできません。」
 以上がこの改憲派議員の勉強会に対する赤旗の【主張】のリード部分の認識です。私はこの赤旗の認識「いずれも戦争法案などへの批判が高まっていることへの逆恨みですが」という断定は根本的に誤っているとみています。

毎日新聞は「言論統制の危険な風潮」という社説を掲げた

 同日の毎日新聞の【社説】は、「言論統制の危険な風潮」というものです。その内容を以下に引用する。
 「民主主義の根幹をなす言論の自由を否定しかねない言動が政権与党の会合ででたことに驚く。非公式な議論という説明では済まされない。一連の発言内容は不適切だと認識を首相はより明確に示すべきだ。」
 
 この二つの新聞のリード部分を比較すれば、それぞれが何を考えているかがわかります。赤旗は、「逆恨み」だという全くピント外れの批判を行っています。何か子どもの喧嘩で逆恨みの筋違いなことを主張しているかのような議論であり、問題の本質を覆い隠すものです。
 赤旗も、【主張】の中身でそれなりの政府批判や本質に迫っていますが、この主張のまとめを見れば、赤旗の政治音痴の程度が浮かび上がってきます。以下にこの赤旗の【主張】の最後4行を引用します。
 「安倍政権は報道の逆恨みするのではなく、憲法違反の戦争法案そのものを撤回すべきです。」と書いています。

毎日新聞の【社説】を見れば赤旗【主張】が如何に政治音痴かがわかる

 赤旗は、この安倍首相を支えている改憲派若手議員の勉強会が、何か最近の安保法制を巡る国民の意識の変化(反対派が増えている)が生まれていることに対して焦りを抱き、「逆恨み」(マスコミが悪い)と勘違いして批判を行っているという次元の批判でしかない。
 この勉強会の本質は、そんな単純なものではなく、戦争できる国作りには、言論統制が不可欠だと意識の下に議論が行われていることに全く気付いていない。
 戦争は軍備の増強だけではできない、国民世論を戦争へと組織していくことが不可欠である。安倍政権はそのことを十分承知しており、NHKの経営員会の人選を変え、NHKの変質を策動し、マスコミ全体を政府の広報機関に如何にして組み込むかを真剣に企んでいる。
 すでにイスラム国問題での後藤氏の誘拐事件の際は、赤旗も含め、完全に政府報道機関に成り下がった。この成功を糧に、戦争遂行に当たっては、全てのマスコミを抱き込み大政翼賛会を作ることは至上命令である。

毎日新聞の【社説】はどこが優れているのか

 毎日新聞の社説は、赤旗が見逃した視点が明確に示されている。以下毎日新聞がどのような結びを行っているかを見ていきたい。
 「自民党は昨年の衆議院選挙で報道内容をめぐり放送局に細かく要望したり、NHKや民放番組の内容を問題視して事情を聴いたりするなど報道への関与を強めてきた。」
 「今回の『懲らしめ』発言はこうした傾向が一層露骨になった印象だ。国民に多様な情報を提供する言論の自由は民主主義に不可欠であるというイロハすらわきまえていないのではないか。」
 「まるで戦前の言論統制への回帰を図る不穏な空気が広がっているかのようだ。」以下省略。

 毎日新聞は、今回の自民党の改憲派の勉強会は、民主主義のイロハである言論の自由を弾圧し、戦前の言論統制への回帰を目指すものだ」と批判している。この議論の鋭さと正統性は、圧力をかけられているマスコミの主張としては立派なものであり、「自民党と真っ向から対決するという共産党」は、ある意味では言論の自由が保障(ここで議論された広告収入に頼っていない)されているのもかかわらず、イスラム国問題でもそうであったが、他のマスコミ先駆けて言論統制下の主張のような批判になっている。
 

自民党の勉強会の問題点の核心は

 今回の自民党の勉強会の議論に対決するためには、言論の自由を如何に守るかであり、この自由が守れないとき、戦争への道へ突き進むことを多くの国民に訴えていくことである。
 安倍政権が「逆恨み」でこの議論を行っているというような捉え方は、単に相手方を「嘲笑」しているだけであり、物事の本質を覆い隠し、安倍政権に対する援護射撃にすらなってしまう。
 なぜか最近共産党は物事の本質がつかめなくなってきている。

金曜日の深夜「朝まで生テレビ」が放映された

 番組の初めに議論されたのは、自民党、公明党が相次いで参加を断り、出席を回避したことが話題となった。今回の狙いは各政党の若手の論客を集め、現在国会で議論されている安保法制の問題で議論を戦わそうというものであった。
 自民党は改憲派の若手議員の勉強会の出の議論が問題となっている最中に、朝までテレビに参加してされに失言が取られることを警戒し、自公ともに体調不安等のウソの理由で参加を見合わせた。(注1)
 参加者からこれに対して相当な批判がなされたが、そこになぜか猪瀬前東京都知事が参加しており、自民党の現在の状況を「『共産党化』した」と発言した。その趣旨は、党内に言論の自由が無く、中央集権で統制されている。自民党も若手の自由な発言を嫌い、参加を押さえた。と主張した。

余談ではあるが

 この猪瀬元知事の批判に対して共産党は激昂すると思ったがスルーした。しかし、確かに中央集権には問題点はある。今回の問題でも、「言論の自由」にその核心があることに共産党は気付かない。それは日常的に党内で「言論の自由こそが民主主義の根幹」だという思想で当運営を実践していない弱さがある。
 政権を握った社会主義国は一律に言論を弾圧した。今も中国は言論を弾圧している。日本の共産党は言論を弾圧しないといくら叫んでも、その経験のない人に、言論の自由の重大さが分からない。この自由の大切さは、日常不断に空気の様に吸い込み体験していく中で自分の身についてくる。
 イスラム国問題で、志位委員長が主張した「イスラム国の解体」発言等は、民主主義に対する経験不足な発言だと思われる、自分の意に沿わない勢力は「解体」と叫ぶのはまさに「スターリン的」発想である。
 この件については、安倍首相も「償わせる」と発言したが、その後、「法に基づき償わせる」と発言を訂正している。志位発言のみが突出しているが、訂正したとは聞かない。ここに共産党の問題がある。

注1:毎日新聞6月28日付に29面「与党議員TV出演辞退」「勉強会問題 火消し急ぐ
  党本部」という記事を書いているが、一点だけ見逃せない問題がある。
   それは「出演した民主党の蓮舫は27日、取材に『平時なら与党は議員をテレ
  ビにだすのに必死なのに、都合がよくないと出ないのは権力のおごりだと』反
  撥した」と書いているが、当日の番組に蓮舫氏は出ていない。
   この「朝までテレビ」のタイトルは、「激論!若手政治家が日本を変え
  る?!」「 若手国会議員がスタジオに集結!」「 戦後70年、未来の総理
  (?)に問う!」であり、蓮舫議員は若手ではない。おそらくこの記事は、こ
  の事態に対して蓮舫議員がツイッターで「野党、与党だけテレビ出演させるこ
  とに対してテレビ局に意見を言うのはまだ「中立」と理解するが、これはどう
  なのかな。」とつぶやいたことを、インターネット上で蓮舫議員も参加として
  紹介されたことを、蓮舫議員そのものがこの討論会に参加していたと勘違いし
  たのであろう。
 しかし、毎日の電子版は私がこれを書いている28日午前10時頃、未だにこの記事の誤りに気が付いていない。赤旗にはこのような間違いは度々あるが、天下の毎日新聞がこのような間違いをすることに驚いた。毎日新聞の記者は、このような重要な議論が行われているテレビ番組を誰も見ていないのか、それとも自社の新聞を読んでいないのか、その脆弱性に驚くばかりである。

 以上ここまでは昨日土曜日に書いた(注1以外は)。昨日HP上に載せなかったのは、この流れがどのように動くかもう少し見たいと思って保留していた。
 そして今日の赤旗を見てびっくりした。この問題が最大の課題として取り上げられている。一面に「自民党言論弾圧」「安倍政権批判広がる」「言論界も沖縄選出議員も」と言う記事を載せ、2面に「本音むき出しの言論弾圧」「首相の責任へ直結」「政府幹部・側近が出席」
という記事とさらに「つぶれてほしいのは『朝日』『毎日』『東京』」「百田氏今度はツィッタ―で」という記事、もう一つ「テレビ朝日系番組出演を拒否」「論戦逃げた自公議員」と言う記事を載せ、14面【社会・総合】「百田氏の『普天間基地は田んぼの中にあった』のウソ」「宜野湾市資料、写真が語る真実」「基地撤去の民意敵視」と言う記事、さらに「メディアへの弾圧」と言う記事を載せ、15面【社会】では、「戦前繰り返すのか」「百田氏『沖縄2紙つぶせ』・普天間基地暴言」「沖縄怒り渦巻く」「異論認めぬ空気恐ろしい」「地元2紙の抗議声明 言論弾圧 断固として反対」と自民党安倍親衛隊の学習会での発言批判のオンパレードである。
 この共産党の立場は正しく支持するが、昨日土曜日の赤旗【主張】(「逆恨み」発言)は一体何であったのか、共産党の主張の一貫性のなさに驚くばかりである。この実態は、赤旗は当初「逆恨み」次元でしかこの問題の本質が分からず、他党派の動きや、一般紙の主張を見て初めてこの問題の重要さに気が付き、慌てて軌道修正を図っているように見える。(注2)

注2:共産党は他党派とりわけ社民党の動きを伝えないので、この問題で社民党が  どのような主張をしているかを掲載してみたい。共産党の赤旗主張「報道への
  逆恨み」(6月27日)よりよっぽど事態を正確に捉えている。

                            平成27年6月26日
自民党勉強会における沖縄を冒涜し報道統制を狙う暴言に抗議する(談話)
                             社会民主党幹事長
                              又市 征治

1.昨日開かれた安倍晋三首相に近い自民党の若手議員が立ち上げた勉強会「文化芸術懇話会」の初会合で、講師として呼ばれた作家・百田尚樹氏が、「(普天間基地は)もともと田んぼの中にあり、周りには何もなかった。基地の周りに行けば商売になると、みんな何年もかかって基地の周りに住みだした」、「うるさいのは分かるが、そこを選んで住んだのは誰だと言いたい」、「沖縄で米兵がレイプ事件を起こしているが、沖縄ではそれ以上の件数で沖縄県民がレイプ事件を起こしている」、「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」などと発言した。作家だからといって、世界一危険な普天間基地に関する歴史的事実を無視し、思い込みで勝手なことを発言するのは許されない。百田氏の暴言は、沖縄県民及び沖縄二紙に対する冒涜であり、社民党は、満腔の怒りをもって抗議するとともに、発言の撤回を強く求める。また、こうした百田氏を報道機関であるNHKの経営委員に任命していた安倍政権の責任も厳しく糾弾する。

2.同勉強会で、出席議員から、米軍普天間飛行場の移設問題で政権に批判的な沖縄の地元紙について、「左翼勢力に完全に乗っ取られている。沖縄の世論のゆがみ方を正しい方向に持っていく」、「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけて欲しい」、「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」などの発言があった。この間、自民党自体が「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」という文書を在京のテレビキー局に送付したり、NHKとテレビ朝日幹部を呼びつけて事情聴取したりするなど、民主国家にあるまじき圧力をかけてきた。政権に批判的なマスコミを規制すべきだとする上記の発言は、こうした政府・自民党の動きと軌を一にしたものであり、若手議員の発言だからとはいえ断じて看過できるものではない。報道介入や言論弾圧を示唆し、権力による報道統制を肯定する暴言に断固抗議する。

3.「文化芸術懇話会」は自民党青年局長の木原稔議員が代表であり、首相側近の加藤勝信官房副長官や、萩生田光一・党総裁特別補佐も参加した。今回の百田氏や若手議員の暴言・妄言は、安倍政権の本音と体質が露呈したものにほかならない。憲法で保障された表現の自由に対する重大な挑戦であり、第二次世界大戦以来の沖縄県民と沖縄の新聞の歴史認識への根本的な欠如を憂慮する。社民党は、報道・言論の自由を含む表現の自由を抑圧する動きに対して断固反対するとともに、沖縄県民と連帯し、広く国民世論・国際世論に訴えて、何としても辺野古新基地建設を阻止するため、全力を挙げていく。