コロナウイルスは、日本の政治勢力の分解・再編を推し進めている。


令和2(2020)年4月5日


 コロナウイルスは、生命・財産の危機で国民を脅かしているが、この事態の中でコロナウイルスは、日本の政治的潮流にも大きな影響力を与えている。
 経済的視点から見れば、最大のポイントは、国民生活を守ることに重点を置くか、それよりも財務省主導の財政規律を守るのか、その回答が迫られている。
 現在までの保守と革新という分類とは違う政治の流れが生まれつつある。財政再建派は、赤字国債を出せば子や孫に借金を負わすことになると盛んに宣伝していますが、財政出動積極派は、日本は赤字国でなく黒字だ、他国から借金するわけでなく、日銀がお金を刷れば足りることで、経済の活性化を図れば税収も伸びると言います。
 コロナウイルスによる経済被害は欧米でも深刻なものがあり、その対応を見ておく必要があります。欧米では、すべての国が労働者や個人営業者の自損の保証を行う経済政策を行おうとしています。そういう意味では日本だけが小規模経営者等の被害補償を行わず、貸付という方策を採用しようとしています。(注1)

注1:アメリカのトランプ政権は今月、2兆ドル、日本円で220兆円にのぼる緊急の経済対策を計画し、
  議会で審議が進められています。
   これは、2008年のリーマンショックの際の緊急対策を大きく上回る規模で、個人に最大1200ドル、
  日本円でおよそ13万円の現金を給付する措置のほか、航空業界や中小事業者への資金支援が含まれて
  います。
   イギリスでは外出が事実上、禁止され、スーパーや薬局などを除くすべての店舗を閉鎖する措置が
  とられたほか、企業の間で事業を休止する動きが広がっています。
   このため政府は雇用が維持されるよう従業員の賃金の80%を月2500ポンド、およそ33万円を上限に
  肩代わりすることを決めました。このほか3300億ポンド、43兆円規模の資金繰り支援策なども打ち出
  しています。

 コロナウイルスによる経済的破綻を@「現金支給と消費税をゼロにすることによって保障する」か、A「消費税を維持し、現金支給は一部行うが、基本は経済的損失については自己責任で、国は融資でもって救済する」という潮流に分かれます。
 かつては保守か革新かで経済政策が別れていましたが、今回は右翼的な潮流や自民党内からも。消費税ゼロ%こそが社会的弱者を救う唯一の道だと主張しています。
 消費税の10%維持を主張しているのは、自民党の安倍政権支持派(財務省主導派)、公明党、立憲民主幹部という政治にねじれが生まれ初めています。
 以下主だった政治潮流のコロナウイルスによる経済的な損失をどのようにして回復していくかの主張を見ていきたい。
【政権側】
●自民党
1.自民党安倍政権は、プライマリー・バランスを重視する均衡財政主義派が主導権を握っている。国民
 の生活を守るより、財務省の言い分を重視する派でもある。(麻生副総理も)
2.自民党内に消費税減税派の有志議員が2派立ち上がった。この2派政治的思想は違うが、「消費税減
 税」という点でのみで結束した。その代表は安藤裕衆院議員(「日本の未来を考える勉強会」)と青山
 繁晴参院議員(「日本の尊厳と国益を守る会」)である。
  安藤氏は自民党の中での良識派と思われ消費税ゼロを主張してきた(約50名)もう一方の青山氏は
 自民党の中の右派勢力であるが消費税5%を主張してきた。(約50名)合わせて約100名の消費税
 ゼロ派が自民党の中で生まれた。(注2)
  その主張は「景気の致命的下降あるいは恐慌を食い止めるため、『消費税減税』は欠かせない」と緊
 急声明をだした。(3月30日)
  また先の国会では自民党の古参議員である西田昌司議員も安倍首相に財政均衡主義を捨てて、消費税
 ゼロ政策が重要だと迫った。
注2:安藤氏は財務省が主張するプライマリー・バランスを重視する考え方に反対し、国民の生活を重
  視し、現状では消費税ゼロと現金給付が大事だと言う主張を行っている。(これは青山氏もほぼ同じ
  である。)
●公明党
  公明党は、内部には批判もあるが安倍内閣への追随派だと思われる。
【野党側】
●立憲民主党
  立憲民主は、不思議なことに消費税10%維持派である。枝野氏が消費税8%と最近舵を切ったようだ
 が、基本的には維持派だ。野田氏は、現在は立憲ではないが、総理大臣であった時、消費税増税を掲げ
 て選挙で敗退したが、現在も消費税増税派である。
  しかし立憲の若手の中には、消費税減税派も多くいると思われる。
●れいわ新選組
  野党側はれいわ新選組が消費税ゼロを掲げ頑張っているが、令和は野党統一戦線を組むため「消費税
 5%に減税」を旗印にまとめようとしている。
●共産党
  共産党は、選挙戦等で10%値上げ反対と唱えたが、消費税反対は掲げなかった。最近は令和と共同
 戦線を築くため、消費税5%にすると主張している。
●国民民主も令和の主張を受け入れ、消費税5%派での統一に賛同している。

【右翼と言われてきた文化人等】
  一般的に右翼と言われていた文化人の中に、消費税ゼロの主張をする者が増え始めている。
1.チャンネル桜(社長水島総)というユーチュブの動画番組があるが、この人達は、安倍政権を支持し
 てきた右翼的な論陣派の巣窟であったが、最近は安倍内閣を徹底的に批判し、消費税ゼロを主張してい
 る。(このチャンネル桜に京都大学の藤井先生や自民党の安藤裕衆院議員などが出演し、消費税ゼロを
 主張している。)

2.東京では放映されていないが、関西では土曜日の午前中朝日放送で、「正義のミカタ」という番組を
 行っている。この番組の司会者は吉本芸人の東出幸治であり、学者が5〜6人と、吉本芸人が5〜6人参
 加して意見を述べるという番組である。吉本芸人は基本的には安倍支持派であり、自民党の応援団であ
 るが、この番組には消費税反対の右翼的な評論家3名が参加し、常にコロナウイルス下の最大の対策は
 消費税ゼロだと主張している。(注3)

注3:3名とは、京都大学の元内閣官房参与藤井聡教授、相愛大客員教授の宮崎哲弥、元大蔵官僚高橋洋
  一氏である。宮崎氏の「処女評論集」の名前が「正義の見方」1996年であることから、この番組の名
  前に引用されたのかと思われる。)
   吉本芸人は「ほんこん」が出ており、最近相当政治的発言が目立ち基本的には安倍支持派である
  が、この3人の評論家の阿部政治批判には反論しない。
3.さらに三橋貴明氏という経済評論家がインターネットや先に述べたチャンネル桜等に出演し、簡単で
 分かりやすい説明で、消費税ゼロこそが日本を救うと相当宣伝しまくっている。
4.チャンネル桜の水島社長は、東京都知事選挙に際して、れいわ新選組の山本太郎が主導権を握り、消
 費税5%で、れいわ、共産、国民、社民等が統一戦線を組めば小池も落選すると常に恐れている。
5.共産党が「市民と野党の共闘」を発展させる統一戦線を発展させるという方針を出す前は、「保守と
 の共闘」という方向性を出した時期があった。私は猛反発していましたが、今日の状況を見た場合、従
 来の保守と革新という分け方ではなく、消費税反対か賛成が重要な分岐点であり、この勢力の結集が大
 切だと思われます。
6.消費税の問題は、国民の生活を守るという点で極めて重要な分岐点であり、消費税のゼロ%の実現は
 社会の底辺層に一番恩恵が与えられる施策だからです。チャンネル桜に集う経済評論家は、社会の最底
 辺の人に光が当たる政策だと盛んに言います。現金支給は、ネットカフェなどで寝泊まりしている人に
 は届かない、住所がないと政府がくれる2枚のマスクすら届かない。
  彼らの生活を守るに最も良い政策は消費税ゼロだと主張する。さらにはネットカフェ等の住民に「命
 を守ってください、生活保護を受けてください」と呼び掛けています。
  私は右翼の人が国民生活をまもれと、こんなに真剣に議論する姿に驚いています。
7.共産党は、先の選挙でも消費税10%の増税反対は主張しましたが、共産党の主張は常に消費税の現
 在の「%」のままでそれ以上、上げないとの主張です。5%から8%の時は8%反対、8%から10%
 セントの時は10%反対と主張しています。これは逆に言えば8%は容認になっています。
8.今回共産党は5%の消費税論を行っていますが、これはれいわ新選組の山本太郎さんが「これが飲め
 ないなら共闘しない」という脅かしのために5%の主張を言い始めています。
  消費税の弊害を論理的に語らず、国民の気分感情(値上げ反対)に寄り添い、票を獲得するという選
 挙目当ての消費税論です。
9.れいわ新選組やチャンネル桜、その他の評論家達が主張しているのは、そうした人気取りの立場から
 の主張でなく、日本経済の持続的な発展のためには、消費税は百害あって一利なしという設定で反対さ
 れています。そこにある共通点は当面の弱者保護と長期的な日本経済の発展のための消費税増税反対、
 消費税はゼロにせよとの要求です。
10.この流れに乗り遅れているのは、自民党の主流派と公明党及び立憲の一部指導者及び共産党です。
11.共産党は、消費税増税反対ですが、日本経済の立て直しからの観点が決定的に抜けています。(注4)
12.消費税反対派の主流は、国民の生活擁護と日本経済の立ち直りを同時に実現する派が主流です。そ
 れはれいわ新選組、国民民主、自民党安藤・青山派、右翼のチャンネル桜などです。政治的潮流に新し
 い流れが動いています。共産党はこの流れを見てこれに乗るとは思いますが、出遅れ感があり、これで
 は主導権は握れません。立憲民主もこの流れに食らいつかないと、政治勢力としては没落していきま
 す。恐らく立憲も遅れて参加してきます。

注4:3月31日、BSフジの番組「プライムニュース」日本共産党の志位委員長
   経済対策にかかわって志位氏は、日本経済は昨年10月の消費税10%増税で土台が壊れ、そこに
  新型コロナの打撃が加わる「二重の打撃」を受けていると指摘。このもとで、労働者、小規模事業
  者、フリーランスに対する緊急の補償とあわせて、消費税5%減税の政治的決断が必要だと強調。与
  野党を超えて、消費税減税の動きが出されていることに触れて、「ぜひ野党で、消費税5%減税で足
  並みをそろえたい。財源は富裕層や大企業に対する不公平税制を是正し、応分の負担を求めていく」
  と話しました。
 右翼の側の消費税ゼロ論議は、日本の中での最底辺の国民、住民票もないネットカフェの人たちに対す
る気遣いや、同時に日本経済の立て直しに消費税の減税が絶対に必要という未来予測等も優れている。消
費税減税を階級対立ではなく(共産党は、財源は富裕層や大企業に対する不公平税制を是正し、応分の負
担を求めていく)、すべての国民が幸せになる道筋だと主張している。
 共産党の主張では、財務省のいうプライマリー・バランス論の枠内で処理しようとしている。「正義のミカタ」に出てくる三人の学者は、財務省の言うプライマリー・バランス論こそが最大のウソであり、これが日本経済をダメにしていると主張している。ここまで議論を前進させないと、階級対立に持ち込めば、逃げられてしまう。ここは「国民の生活を守る」の一点ですべてが団結すべきだと思われます。
 当面の政治目標を安倍政権の打倒に絞るのであれば、弱者救済と日本経済の再生を目指し。保守と革新の枠を超えて消費税反対で統一戦線を組むことが重要ではないかと思います。

☆参考:マスク2枚配布に対する安倍応援団の反応(百田氏、上念氏)
【百田氏】
 1日夜、「一つの家庭に2枚の布マスク?なんやねん、それ。大臣が勢揃いして決めたのがそれかい!アホの集まりか。全世帯に郵便で2枚のマスクを配るって…。そんなことより、緊急事態宣言とか、消費税ゼロとか、金を配るとか、パチンコ店禁止とか、エイヤッ!とやることあるやろ」「これ、エイプリルフールのつもりか。もしかして全閣僚が集まって考えついたウソか?」とツイートした。
【上念氏】
 経済評論家の上念司氏も「お肉券、お魚券がなくなったかと思ったら何だこれ?マスクじゃなくて金配れよ!」「布マスク2枚配布という『大胆な政策』に市場は失望した模様。もう官僚の言うことを聞くのやめた方がいいよ。マジで政権失うと思います」とツイート。