橋下氏と共産党(橋下氏に政治家としての軍配があがる)



  昨日(3日土曜日)朝10チャンネルで辛坊治郎さん司会の「ウエークアップ!ぷらす」で4党&橋下市長という番組をやっていました。橋下徹市長と民主党大塚耕平氏、自民党世耕弘成、共産党穀田恵二氏が生出演し、公明党の石井啓一氏が他のスタジオから参加していた。議論は橋下・「維新の会」が策定した「船中(維新)八策」について行われました。

  話は多岐に渡たりましたが橋下氏の優位性は揺るがなかった。彼は首相の公選制を唱え、今選挙をやれば俺が当選するという自信のもとに討論をリードしていました。私がその中で注目したのは原発の議論と生活保護の議論です。

 まず、橋下氏は関西電力の節電の申し入れを断った経過に触れ、「一体どれだけの電力が不足するのか示すことなく節電を求めてきた関西電力のやり方は「脅し」だと批判した。さらに「なぜ既成政党は関西電力の言い分をそのまま信じて、対応するのか、なぜ電気がいくら必要でどの程度の対応能力があり、どれぐらい足りないのか明確にして、節電の協力要請をするべきだ」と主張し、「なぜ関電と戦わなかったのか」と問い詰め、「こんな簡単な対応をなぜ既成政党はできなかったのか」と追求した。(注1)

 これに対して穀田恵二氏は、われわれも情報開示を政府に求めたが、政府が資料を開示しなかったと主張しました。大塚氏はその穀田氏の発言を受けて政府の情報公開に不十分さがあったと認める発言をしました。民主党は共産党の肩をもった感じでしたが、私は違うと思っています。まさに橋下氏の主張こそが正しく、共産党は完全に敗北しています。なにが問題か以下に述べます。

<関西電力の節電要請>

  1. まず橋下氏は、最初から政府や関西電力(東電等を含む)発表が眉唾ものだと疑って  かかっています。つまり福島の原発事故の際、政府は東電とグルになって計画停電を実施し、国民生活を相当困難に陥れた。共産党をはじめとする既成政党は、この企みを暴くことができなかった。
      これは明らかに原発推進勢力による国民に対する「脅し」であり、原発を認めないのなら「原始的生活に舞い戻るのですよ、どちらをとるのですか」と国民に迫ったものです。(橋下は、計画停電の狙いを見抜いていた。)
  2. そもそも日本の電力は、原発依存を行わないと需要を満たすことができないという主張が正しいのか、基本的な予備知識がなく、すぐにこの政府・東電の策動に乗ってしまった。これが「ウソ」であったことは、関西電力は電力の半分を原発に頼り、原発なしには絶対にやっていけないと主張していたが、関電の原発がすべて止まった今日現在、電力需要に応えきれなくなったという状況を一切聞かない。(ちなみに今日(3日)の電力予報は65%である)
      この「原発がなければ日本の電力需要がまかなえない」という「常識の嘘」をすでに  前から主張していた学者がいた。(私もこの主張は「ほんまかいな」と思っていたが、これが「ほんま」であることがこの間の経過が立証した。)

なぜ共産党は橋下氏のような対応ができなかったのか、それは原子力の平和利用が根底にあり、「安全であればよい」という視点でしか捉えることができなかった。つまり共産党は原発問題の本質をまるで捉えていなかったのである。(注2)

原発推進勢力の本当の狙いは、電力の需要に応えることが真の目的でなく、原発の技  術水準を維持することに最大の目的がある。なぜなら日本が原子力の制御技術の最先端にいることが、平和利用から軍事利用の転換を容易にし、たとえ核爆弾を保有しなくても、抑止力になりえると考えているからである。(注3)
 残念なことに日本共産党もこの原子力の科学技術の発展を望んでおり、自民党の国防族と波長が合ってしまっている。(注4)

注1:橋下徹市長の発言が如何に冴えているか、一般には分かりにくいと思いますので、具体例を挙げます。私
      は、ある大きな市役所でアルバイトとして働いています。その庁内放送で定期的に節電に協力要請のアナウ
      ンスが入ります。「冬場は電力が不足します、とりわけ午前9時以降は需要がピークに達するため、市民一人
      ひとりが節電に取り組んでください。ただし、体を壊さない範囲でしてください。」と「ほしがりません、勝つまで
      は」見たいな放送を延々と流しています。もう冬が終わろうとしており、一度も電力予報が危機的になっていな
      いにも関わらず、放送し続ける(実態との関連でおかしいと思わず当初の計画どおり放送する)この間抜けさ
    が橋下氏の批判するところです。(これが行政の実態です。)

注2:一せい地方選挙の共産党の原子力政策は、「安全優先の原子力政策」でした。(4月9日赤旗主張)

注3;自民党;石破氏「原発維持すべき。核兵器をつくろうと思えば造れる潜在的抑止力は必要。ただし核武装かに
      は反対」2011年12月21日中国新聞のインタビュー
       さよなら原発集会(9月19日開催)は、上記視点(石破氏)に反対する立場から原発反対を捉えている。主
    催者側の挨拶(落合恵子さん)の発言などで・・・詳しくはブログ内の「正義の味方真実の友」参考

注4:毎日新聞2011年8月25日:ザ・特集での志位委員長の発言「私たちは核の平和利用の将来にわたる可能
     性、その基礎研究までは否定しない。将来2,3世紀後、新しい知見が出るかも知れない。その可能性までふさ
     いでしまうのはいかがかという考えなのです。」 

<生活保護の議論>


 生活保護受給者がどんどん増えすでに200万人を超え、その費用は3兆5千億円弱に達し、他の制度(年金等)との整合性にも問題があると紹介され、さらに大阪市では18万4千人以上の生活保護受給者がおり、西成区では4人に1人が生活保護、その中には不正受給者も多くいるという実態が報告され、討論が始まった。この議論ではまず自民党の世耕氏が、私は党内の生活保護の改善のチームの責任者もやっており、8000億円の削減を考えていると主張したが、橋下氏に、「最初から削減を決めて取り組むのではない」と釘を刺されてしまった。(これが、橋下氏の政治感覚の冴えである。)

 橋下氏が、なぜ不正受給などの問題が発生しているのか、国会議員の先生方は分かっているのかと問われ、誰も意見を述べることができず、橋下氏が、市長村長に全く権限がない(不正受給か否かの調査権限すらない)からだと押さえこまれてしまった。まさに地方への権限委譲で生活保護制度の立て直しができるという主張に理があるように見えた。(大阪都構想の実現が大切)

 ここに彼の政治家としての議論のうまさがある。不正受給の問題を取り上げながらも、直ちに生活保護支給額の減額に踏み込まず、適正な需給を促すという彼の主張には誰も反対できない。(彼は私にやらせてくれと訴えている。)

 各政党は生活保護をどう立て直すか、積極的提案がなされなかった。

<橋下議論の特徴と共産党の誤り>

 なぜ橋下氏の議論が持てはやされるのか、それは大衆の気分感情を冷静に分析したところから議論がなされているからだと思う。私は政党というのは国民の様々な階層の中からどの階層の利益を代表しているかを明確にしない限り成り立たないと考えています。共産党は労働者階級の政党であり、働く者の利益を代表する政党と捉えてきました。最近の共産党は支持者を増やすため、その基盤の拡大を狙い、保守層との連携を盛んに唱えています(四中総)。共産党の最近の停滞はこの方針の誤り(革新陣営の構築を主眼とせず、保守との共闘に現を抜かす)に負うところが大きいと見ています。(注5)

注5:共産党は、大阪ダブル選挙で、決定的な敗北をした。共産党は知事選挙での敗退した(共産党の基礎票すら
     獲得できなかった)ことを市長選挙の平松票を評価することによって覆い隠そうとしている。

  私はうがった見方かも知れないが、共産党が最終版「わたし候補」を降ろし、平松支持に回ったのは、両選挙とも敗者になるのを避けたのでは思っています。さらに深読みすれば、今回のダブル選挙の政策の不可思議さであります。従来、共産党は同和問題を積極的に取り上げ行政の改革を訴え市民の支持を得てきました。今回は同和問題について全く語りませんでした。これは当初から平松陣営との対決を避け、いつでも抱きつける準備をしていたのではと思われます。

 事実、今日のテレビ討論の中でも、橋下市は、大阪市の行政運営は腐りきっていた。既成政党はその膿を出してこなかった(共産党の市会議員ががんばってこなかった。)と批判した際、穀田氏は同和行政の歪みと共産党は真っ向から戦ってきたと主張しました。ならば、なぜ今回の選挙中にその主張をしなかったのか、それはその主張を行えば、平松氏との共闘が組めないと判断したからではないかと疑問に思っています。ここで一番何が言いたいのか、保守との共闘路線を共産党の前進の活路を見出す戦術と捉えているようですが、自らの主張を引っ込めた共闘は野合でしかなく、国民から見放されることを知るべきです。今回の大阪府知事選の敗退、あるいは高槻市議会選挙での敗退、全てが自己の主張を前面に出して戦わなかったからです。

  この間の選挙で躍進した勢力は、すべて敵を作った者が勝っている。小泉も橋下も敵を作ることによって見方を鼓舞している。今日の日本経済の行き詰まりの状況下では、増えたパイを誰が取るかではなく、限られたパイを如何に分配するかに議論は集約されてきています。(消費税の議論もこの議論である・・誰がババを引くか・・誰が負担するかです。)つまり国民のそれぞれの階層のどの部分に手厚くし、どの部分に泣いてもらうかの議論になっている(所得の再配分も議論)。このことは多くの国民はすでに覚悟している。

 共産党はこの状況を理解せず、大阪ダブル選挙では「安全・安心・やさしさの大阪」というスローガンでたたかった。こんなばら色の世界が当面ないことをみんな理解しています。(小泉の痛みを伴う改革のほうが国民に受けている。)橋下氏は「既得権益」の打破を唱え、打破できれば、あなた方の取り分が増えるような幻想を振りまき勝利した。(つまり、既得権益者より、権益を持たない府民の方が多いということである。)注6

  彼のうまい所は関電でも敵に回すところです。電力需要の資料も提示せず、節電要請はおかしいと。関西電力の筆頭株主として断固切り込むという。これを見て府民は橋下氏を大企業の代弁者とは府民は思いません。それに対して共産党はなんと言ったか「安全優先の原子力政策」、どう見ても橋下氏の方が国民目線に見えます。共産党の敗北はここにあります。(共産党の原発政策は、関電よりの政策といわれても仕方がない状況です。)

  しかも共産党は、選挙戦の敗北の原因分析を行わず、赤旗の拡大との関連でしか総括できず、相変わらず赤旗の拡大の大運動に取り組んでいます。しかし全党が一丸となって戦いながら、現実は赤旗の部数は後退しています。(注7)衆議院選挙が行われおそらく敗北すると思いますが、その際の総括は今からでも判ります。「党中央は時期にかなった方針を提起したが、末端の党員が十分決起しなかった。だから負けた。」(悪いのは党中央でなく、その呼びかけに応え決起しなかった末端の党員であると。)いつもいつも同じ総括を行いよく飽きないものだと感心しています。

  何回も言いますが(このブログで)戦わないものは敗北します。戦いは陣地戦であり、自らの陣地を固められない者は勝つことはできません。保守という敵の陣地に手を伸ばせば、勝てると思うのは幻想でしかありません。敵に勝てるのは、敵を殲滅したときだけです。(これが「イクサ」の原則です。)いまの共産党の姿は保守に手を伸ばすというより、むしろ擦り寄っていくという手法です。(尖閣列島の方針など)これほどばかげた戦術はないと思われ、必ず敵の罠にかかり失敗することは目に見えています。

  橋下氏が言っているのは、「イクサ」は天才的指導者がいる方が勝つ。戦いは総大将で決まると。だから首相を公選制にして、私が勝ち取ると。

  共産党は、赤旗を増やして味方の陣地を固め、敵を包囲して勝つといっています。これも戦い方のひとつではありますが、その赤旗が果たして味方の統合の旗印になりえるか?これはなりえないと思っています。それはここ何十年の共産党の歴史を見れば歴然です。赤旗を党活動の基本にすえる方針はすでに破綻しています。今回の大運動も拡大どころか減紙を生み出しています。(注7)この事実に背を向け、赤旗拡大の号令ラッパを吹き続けることは、まじめな党員に対する裏切り行為であると思われます。いつの日か必ずこの総括が行われるだろうと私は思っています。

注6:共産党の掲げた方針「安全・安心・やさしい大阪」が何故誤りなのか、それはこのスローガンは全ての人が一
     致でき、何の議論が巻き起こらないからです。政治とは議論を戦わすことであり、橋下は常に議論を巻き起こ
     している。だから注目が集まり、敵も出来るが見方も出来る。この見方を増やす戦いが政治だと考えています。

注7:2月3日赤旗8面「「大運動」の飛躍にむけ、緊急支部会議開催の「特別機関」に取り組もう」に「大運動」で、新
   入党員を迎えた支部は2割弱、「赤旗」読者拡大では、2月度は、日刊紙、日曜版とも後退する結果になりまし
   た。」と書かれています。