なぜ箕面市議会選挙は惨敗したか(4名から2名へ)

   選挙を科学としない共産党幹部の古ぼけた思考の結果である。



  7月12日投開票された箕面市議会選挙は、改選前は4議席であったが2議席へ後退するという惨敗であった。当選した2名も18位、20位(23人中)というものであった。これは票の割り振りを失敗したというような負けでなく、他の政党に比べ体力が無いことが明確になった選挙である。

箕面市議選党派別開票結果(表1)

 

得票数・率

当選数(立候補)

 

今回

 前 回

   今 回

   前回

 日本共産党

4102

9.64%

5645

11.34%

2(4)

4(4)

 維新の会

7743

18.20%

4(4)

 

  自民党

2745

6.45%

2192

4.41%

2(2)

1(1)

 公明党

5631

13.24%

6218

12.50%

3(3)

3(3)

 民主党

2639

6.20%

6288

12.64%

2(2)

3(3)

 諸派・無所属

19676

46.26%

29416

59.12%

10(18)

14(21)

 合 計

42536

100.00%

49759

100.00%

23(33)

25(32)


 

  ※:この表は大阪民主新報からの転載である。
  ※:余談ではあるが、大阪民主新報はこの票の足し算を間違っている。合計得票数は、42536が正解であるが、
    民主新報は42495票にしている。前に高槻民報の足し算の誤りを指摘したが、同じ誤りをしている。(表計算
    ソフトを利用せず、ソロバンで足しているのか?)


上記結果から何が読み取れるのか(表2) 

 

 

得票数

前回との差

 

  今回 (20012年)

  前回 (2008年)

      票数

       率

 日本共産党  

4102

5645

-1543

72.67%

 維新の会

7743

7743

;

 自民党

2745

2192

553

125.23%

 公明党

5631

6218

-587

90.56%

 民主党

2639

6288

-3649

41.97%

 諸派・無所属

19676

29416

-9740

66.89%

  合  計

42536

49759

-7223

85.48%

 
 ※:この表は上記表に基づき、私が作成したものである。

※:箕面市では、みんなの党の候補者はいなかった。
 ※:後述する高槻・枚方に比べ、公明党の党勢が比較的弱い地域だ。


  この結果を見れば明らかなように、今回の選挙で共産党の獲得した票数は、前回の72.67%であり、3割近くの票を逃がしたことになる。これに対して公明党は前回比90.56%を維持しており、議席数に変動が無く勝利をおさめている。

 この3割近い票の減少の原因はいろいろあると思うが、第一に挙げられるのは維新候補の躍進の結果、そのあおりを受けて共産党が敗北したと思われる。

 共産党は現在の政治状況を捉まえて、「自民党もダメ、民主党もダメ、既成政党は国民から見放された、共産党の出番だ」と党内にゲキを飛ばしている。しかしこの間の選挙結果が教えているのは、既成政党のうちで橋下・「維新の会」などいわゆる第三極に一番蹴散らされているのは共産党である。

 この現状を正確に分析することなく、ノーテンキに前回と同じ数の候補者を立て多くの議席を失っているのが、この間の市会議員選挙の特徴である。(一斉地方選挙の高槻市(5名から3名)・枚方市(6名から3名)ですでに実証済み)

 なぜ、共産党はこの第三極、とりわけ橋下・「維新の会」に勝てないのか、それは、選挙というものの性格を理解できず、時代を読む力が欠如し、橋下・「維新の会」と真っ向から戦っていないからである。

<まず選挙とは何か>

 選挙とは党派間の戦いであり、陣地戦である。いかに自らの陣地を固め、相手陣営に攻め入るかが求められている。この間の敗北した選挙戦は、全て与党思考で、行政的用語(安全・安心・やさしい大阪)というようなスローガンで戦っている。羽曳野の市長選挙では、「幸せが実感できる市政」であったがこれも選挙で勝利した市長の施政方針演説原稿である。

  箕面選挙でも、共産党は「消費税大増税の実施ストップ、暮らしと福祉、箕面の自然とみどりを守る」と訴えて戦ったと大阪民主新報は伝えているがこの牧歌的方針(自然と緑を守るのでなく、原発の死の灰の恐怖から命を守ることが求められている)が勝てない理由だと共産党は全く気付いていない。  

「原発反対一千万人署名」に結集した人こそが我々の陣地だ。共産党はこれがどうしても理解できず、消費税反対が陣地だと錯覚している。原発反対の戦いは時の政府をも打ち倒す戦いに高揚してきている。この戦いの意義が理解できていない。(消費税も50%は反対だが、この戦いが政権を覆すまでにいたっていないのが現状である。)

<現在国民を二分(革新と保守に)している政治課題は何か>

  この間の、鹿児島知事選、山口知事選を見れば、明らかなように、国民がこの国の将来のあり方に対して明確に自分達も参加しようとしている。国の進路を誤らせないために自ら立ち上がる国民意識の向上は、官邸前の原発反対デモでも明らかに示されている。このかつて無い国民意識の高揚を共産党は全く捉えることができていない。

  今日の状況下で選挙を戦うとしたら、先ず原発の無い日本を作るが第一義的課題である。共産党は3.11後の一斉地方選挙で、「安全優先の原子力政策」を掲げ惨敗した。その後「原発ゼロ」に舵を切ったが、「安全優先の原子力政策」の誤りを認めず、共産党の政策は一貫していると主張するがゆえに、この方針転換を末端の地方組織は理解できていない。箕面の選挙戦を見ても明らかなように、選挙戦の戦いの柱が「原発反対」にあることに共産党は気づいていない、相変わらず「消費税」だと思っている。

  国民は今急速に、国家のあり方に自らも参加し始めている。子どもの未来を守るためにも、原発の無い自然豊かな国へとこの国を作り変えなくてはならないと立ち上がっている。この流れに呼応できないものは、政党として政治家として全く時代から取り残されていく運命だ。国民は明らかに身近な利益(消費税)よりも将来的利益(国のあり方)に目を向け始めている。この国民の政治的成熟に気がつかない者に未来は無い。

<橋下・「維新の会」と戦かったか>

 共産党は橋下・「維新の会」と戦うことが大切と連日赤旗や大阪民主新報の載せているが、具体的な局面になると全く戦えていない。先の一斉地方選挙でも府会議員の選挙公報に橋下・「維新の会」と戦うことが全く記されていなかったし、具体的な選挙スローガンも「安全・安心・やさしい大阪」であった。

  その後の羽曳野市長選も、今回の箕面市議選も橋下・「維新の会」との戦いを前面にすえていない。(大阪民主新報の記事からではあるが)

  さらに次期衆議院選挙の大阪10区の候補者のビラが今手元にあるが、そのビラに「私の約束」として6項目掲げられているが、そこには橋下・「維新の会」と戦う決意は何処にも無い。そしてこのビラの裏面で「「橋下・維新」でも、くらしは悪くなるのでは?」という見出しの文書があるが、全く間の抜けた見出しである。(戦う相手に投げかける言葉ではない。)

  この見出しの日本語的解釈は、たとえ橋下・「維新の会」が選挙で勝利しても、彼がいかに偉大でも、現在の日本経済の停滞を打ち破るほどの力量は無いのでは、結局は同じでは」とおよそ評論家みたいな主張しているに過ぎないように読める。これが共産党のお人よしで間抜けなところである。

  今日の大阪府民や市民の生活破壊の元凶が、橋下・「維新の会」であると具体的実例を挙げて、戦わないと、こんなビラでは屁の突っ張りにもならない。(もうどうしようも無い政治的堕落である。)

  もう一つ具体例を挙げれば、「大津・注2自殺事件」でこれをチャンスと橋下市長は自らの持論である「クソ教育委員会」論を展開している。こうした一つひとつの彼の策動を丁寧に打ち破らない限り、彼のメッキは剥げない。現在の共産党の橋下市長に対する戦いは、オーバーコートの上から背中を掻いているような状態であり、彼には全く打撃を与えていない。

  再度、箕面の敗北の総括であるが、上記3点の問題点が基本ではあるが、選挙技術上の問題もある。維新が選挙に参加した以降の共産党の候補の票の出方の総括をキチットおこなわず、現在4名の議員だから、4名を立てるという無謀な冒険主義が議席を大きく後退させている。以下参考に一切地方選挙で敗北した高槻市と枚方市のデータを添付する。これらの分析の上戦うべきであった。

高槻市議会選挙(5議席から3議席へ)(表3)

 

         得票数

       前回との差

 

 今回 20011年 

  前回 2007年

      票 数

          率

 日本共産党

12452

14495

-2043

85.91%

 維新の会

14231

 

;

 自民党

14069

22042

-7973

63.83%

 公明党

26273

26756

-483

98.19%

 民主党

16697

14034

2663

118.98%

 諸派・無所属  

60803

61000

-197

99.68%

  合  計

144525

138327

6198

104.48%


 ※:高槻維新の会は、この選挙の時点では橋下・「維新の会」の正式な下部組織ではなく、立候補者2名が自
    主的名乗ったものである。(ちなみにこの2名は1位と2位の得票数を得ており、1位当選者は前回選挙では
    最下位当選者であり「維新効果」のすごさが伺われる)

  ※:諸派・無所属議員には、みんなの党2名と社民党1名が含まれている。
    みんなの党の獲得票数は、6873票、社民党は2425票である。(2011年分)


 この選挙結果の特徴は、維新の風が吹いても鉄壁なのは公明党である。前回選挙比98.19%の票を獲得している。ところがこの風に一番吹き飛ばされたのは共産党である。前回選挙比85.91%である。

 これは、三匹の子豚の話に似ている。共産党は陣地を守らず、他へ手を広げようとする。(保守との共同)これに嫌気をだして去っていく人が全く見えていない。(今回の市会議員選挙の敗北は、維新旋風と共産党のオール与党への参加への批判である。)陣地が掘っ立て小屋(藁の家)なのである。強風に吹き飛ばされてしまう。公明党は陣地を鉄筋コンクリートで固めている。だから強いのだ。(宗教という鉄筋が通っているから強い)

 しからば、共産党に鉄筋は無いのか、無いのではなく、忘れているのだ。共産党の鉄筋は革新の統一だし、憲法という筋金を守ることである。さらに現状では、原発反対を前面に掲げることが大切である。これが共産党の筋金である。

枚方市議会選挙(6議席から3議席へ)(表4)

 

得票数

前回との差

 

 今回 (20011年) 

 前回 (2007年) 

  票数 

  率   

 日本共産党

15769

18788

-3019

83.93%

 みんなの党

8915

 


 自民党

17379

13359

4020

130.09%

 公明党

31416

32956

-1540

95.33%

 民主党

40648

35828

4820

113.45%

 諸派・無所属

31275

46066

-14791

67.89%

  合 計

145402

146997

-1595

98.91%


※:枚方市では維新を名乗って立候補した者はおらず、「改革派」のイメージはみんなの党がさらった。


 この高槻市の選挙結果と枚方の選挙結果はほぼ似通っており、これが現在の共産党の置かれた立場である。私は公明党との対比の中で共産党を見ていくことが、共産党の今後を見ていく上で大いに役立つと見ている。

 この選挙結果から分かることは、公明党はここ30年ぐらいの間に共産党の2倍の国民の支持を得られる政党に躍進した。(注1)なぜ、私が公明党との比較で見るかと言うと、対象としている国民の層が似通っているからである。やはりこの二つの政党は、社会の底辺(言葉は適切でないが)の支持を最大の基盤としている。

注1これについては意見書7「共産党はなぜ公明党の2分の1政党になったのか(党建設の誤り)」が詳しい。

 公明党が共産党の2倍の勢力になったのは、共産党との戦いでこの社会の底辺層をほぼ公明党が抑えきり、共産党をこの層から追い出すことに成功したからだと思っている。これは行政マンとしての経験から言えることであるが、公明党からの市民要求の照会が他の政党に比べて圧倒的に多い。彼らは市民の「護民官」という地位の確保に成功している。これに比べると共産党からの働きかけと言うのは皆無に等しい。本当に市民要求が共産党に結集されているのか極めて怪しい現状である。選挙は一夜漬けでは勝てない。公明党の地道な努力が確固たる堅牢な陣地を築いたといえる。公明党から学ぶことも沢山ある。こういう柔軟思考を行わない限り、共産党は政治の世界でますます孤立するであろう。

※:参考資料:次期衆議院選挙の大阪10区の候補者のビラ