赤旗新聞の劣化は目を見張るばかりー第2弾


平成26(2014)年6月2日


はじめに
  前回5月19日付けで、「赤旗新聞の劣化は目を見張るばかり」という記事を書きましたが、今回はその第2弾です。
  取り上げたのは、タイの軍事クーデター問題、アジア安保会議の中国の主張、大阪府会議員のビラです。それと、なでしこジャパン AFCアジアカップ初優勝などです。

タイの軍事クーデター

  6月1日付け赤旗は、タイの軍事クーデターの記事を載せています。しかしそれは時事通信の配信記事であり、共産党の立場性が全くないない記事です。見出しは、「大半は沈黙、政界引退も」「タクシン派のクーデター後」という見出しを掲げ、タイのクーデターで政権崩壊に追い込まれたタクシン元首相派。クーデター後、インラック前首相らタクシン派の有力者の大半は公の場に姿を見せず、沈黙を守っています。中には政界を引退を表明する活動家も出てきました。という記事を載せています。
 しかし同日付の毎日新聞では、これと全く違う記事を載せています。毎日新聞の見出しは「タクシン強硬派『軍が押さえ込んでも対抗』」「憎しみ募らせ潜伏」という見出しを掲げ、毎日新聞の記者がタクシン元首相の地盤に入り、現地からの報告記事を書いています。その内容は、「軍はタクシン派のグループ『赤シャツ派』への締めつけを強め、クーデターへの抗議デモを押さえ込む。だが、武器使用も辞さない強硬派幹部は、国境地帯に潜伏中との」情報もある。タクシン派に忠誠を誓うこの農村部の住民らは、息を潜めながら、軍を後ろ盾とする反タクシン派ら特権階級への憎しみをたぎらせている。」と書いている。
 仲間が逮捕された男性の話「人々は一時的に軍に従っているが、クーデターは軍や特権階級への憎しみを増大させただけだ」という発言も紹介している。
 また写真を載せ、「赤シャツ幹部、クワンチャイ氏の自宅周辺で警戒にあたる軍兵士ら。と説明を加え、カメラを構えると「やめろ」と叫んだ=タイ東北部ウドンタニで30日、岩佐淳士撮影」としている。
 この記事には、クーデターという緊迫感が伝わりますが、赤旗の記事は軍のクーデターで全てが終わった(終わる)ように読み取れます。赤旗はタクシン派の有力者の大半は「公の場に姿を見せず、沈黙を守っています」と書いていますが、毎日新聞は有力幹部の家は軍隊の監視下にあると伝え、その写真を報道しています。
 この二つの記事をみれば、毎日新聞の報道が正しく、赤旗は自らの意見を持たず、まのぬけた時事通信の記事をそのまま載せています。時事通信はおそらく軍幹部からの情報で記事を書いていますが、毎日新聞は農村部に入り、現地の雰囲気を生々しく伝えています。
 明らかに勝負あったという気がします。赤旗の報道には時事通信配信の記事が多く、赤旗新聞自身が全く考えずに、無責任(無内容)記事構成になっています。

アジア安保会議での中国の主張

 先のタイの軍事クーデターでも述べましたが、赤旗の国際記事は、時事通信の配信記事が多いのですが、この記事は【シンガポール=松本眞志】と署名記事になっています。しかし時事通信の配信記事と全く違わない無内容な記事です。「安倍首相演説に反論」見出しを掲げ、中国人民解放軍の王冠中副参謀長の発言を伝えています。(6月2日赤旗)その内容は安倍氏やヘーゲル米国国務長官の演説が「挑発的行動であり攻撃的だった」と反論。「中国は自ら挑発したことはないし、域内で協力と対話を重視している」と訴えました。と客観的に伝えています。
 共産党としては、アメリカや日本の主張を支持しているのか、それとも中国の主張が正しいのか、その判断ができていないのが現状です。しかし次に述べる大阪府会議員のビラは、明らかに中国側に非があると主張しています。
 同じ記事を同日付け毎日新聞はどう伝えたか、まず記事の大きさが10倍ほど違います。(大きい)見出しは、「日米は挑発的」「中国軍幹部が反論」と大きな見出しを掲げ、ほぼ赤旗と同じような記事になっていますが、次に中見出しで「疑念の多くに答えず」と分科会での王冠中氏の発言を紹介しています。(この内容が面白いのです。)
  分科会では19の質問のうち14が王冠中に集中した。質問に対して、踏み込んだ回答を避け、従来の見解を繰り返すにとどまった。としているが、中国の本音がちらほら見える。彼が回答を保留した問題にその本質がある。彼が答えなかったのは、@安倍晋三首相の考えを歓迎している国も挑発的ということか、A南シナ海で(マレーシアなどに対して)中国軍機の緊急発進が相次いでおり、防空識別圏を拡大するのか、B西沙」(英語名・パラセル)諸島で中国が石油掘削装置を設置する前に、ベトナムがどんな挑発をしたのか、などには一切答えなかったという。
 また@日本が求めている海空のホットラインを含む海上連絡メカニズムについては具体的言及せず、A参加者から南シナ海の大半を中国が領有する形で線引きする「九断線」への質問が相次いだ。「海を領土と言ったローマ帝国と同様になぜ海に破線を引いて領土のように扱うのか」という鋭い質問には、「中国の管轄権は二〇〇〇年前から確立している」など中国の従来の主張を繰り返すだけだった。
 中国は四〇〇〇年の歴史があるとよく言われるが、彼らの発想はここから来ているし、そのことに何ら疑念を持っていない。
 どこの国が「ローマ帝国」の話をしたのかわからないが、この批判は面白い。

大阪府会議員団長宮原議員がまいたビラの内容

 前から大阪府会議員団の団長の宮原氏のビラに注目していますが、相変わらずピンボケなビラを巻き続けています。(5月27日)内容は2本立てですが、一つは安倍首相勝手に憲法の解釈を変えないでください」もう一方は、「南シナ海中国の一方的行動は誤り」という記事です。彼にしては情勢にあったビラになっていますが、内容は全く無内容なものに仕上がっています。
  まず集団的自衛権の方ですが、その中身は、野田聖子自民党総務会長と加藤紘一自民党元幹事長の発言を赤旗から転載したものです。さらに野中広務、古賀誠両自民党幹事長など戦争経験者の方々は反対が多数。という記事構成になっています。
  宮原氏個人の意思表明や共産党の見解はありません。たて見出しで、「海外での武力行使 私は反対です」というのがありますが、これが宮原氏の主張なのか、野田聖子や加藤紘一の言葉かハッキリしません。
 集団的自衛権のビラを出すのであれば、まず共産党の見解を前面に出し、それを補強するものとして保守政治家も反対している。安倍氏は従来の自民党とは違い、明らかに右翼的潮流であると指摘するのであれば、この引用も頷けるが、共産党の主張が全くなく、自民党の主張のオンパレードのビラは、自らの恥をさらしているだけのビラになっている。
  つぎに南シナ海の問題であるが、このビラもとんでもない主張になっている。まず見出しは「南シナ海問題」「中国の一方的行動は誤り」下見出しに「日本共産党は、中国・ベトナム・ASEAN(10カ国)に「南シナ海行動宣言」に基づく平和解決を求めています」となっています。
 その上で、5月11日ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議は、「自制、武力不行使、緊張をさらにエスカレートさせる行動の抑止を全当事者に呼びかけました。」中国側は「中国・ASEAN間の問題ではない」と反発しています。しかし中国にとってはASEANは、日本以上の貿易相手です。
 ASEANの意向を中国は無視しにくい背景もあります。」という記事を書いています。
 
 この記事は「中国の一方的行動は誤り」と書きながら、ASEANとの貿易が多くある中国は、ASEANの意向を無視できないという形で結び、今後南沙諸島が紛争の発火点になる可能性を過小評価しています。それと同時にこの問題は尖閣列島の問題とも密接に関わっており、海洋国家としての中国の野心を過小評価した極めてノー天気な国際情勢論になっています。
  この問題の背景は、アジアの主導権をアメリカが握り続けるか、それとも中国が新たに握るかという戦いがその根底にあり、日本や、やフイリピンなどは、アメリカとの軍事同盟を強める中で中国を牽制しようとしています。中国とアメリカが全面戦争することはありえないと思われますが、中国は世界第二の経済力にふさわしい地位をアメリカに求めています。その枠内で日本やベトナム、フイリピンがどのように立ち回るかが問われています。安倍さんは集団的自衛権でアメリカとの同盟を強化し、中国と対峙する道を選んでいますが、これが国民にとってどうかが問われているのです。
  中国がASEANと貿易量が多いから、「そう強気に出ない」とうような国際情勢の分析では、現在の状況を正しく見ていない。

なでしこジャパンアジアで頂点に(赤旗の記事の締切時間)

  話は全く違いますが、AFC女子アジアカップ ベトナム 2014は25日(日)、ホーチミンで決勝戦を行い、日本女子代表(なでしこジャパン)がオーストラリア女子代表に1-0で勝利し、初のアジアカップ制覇を果たしました。この勝利が決定したのは25日の日本時間で午後12時前後だったと思いますが、赤旗には翌日その記事が載っていませんでした。赤旗の最終原稿の締め切り時間が他の一般紙に比べ、相当早い時間であることが想像出来ます。そういう意味では必要な記事が一日遅れで報道される場合も多々あります。
  さらに大阪民主新報の締切も相当早い時期に設定されています。橋下市長が市議会で共産党の議員が自分に「メンチを切った」と言って発言を拒否した事件(5月14日水曜日)も、翌日の赤旗にその記事がなく、その数日後の大阪民主新報にも載っておらず(この件は前回取り上げたが)、1週遅れの大阪民主新報にやっとその記事に載っていました。(記事として没にしたのではなく、締切に間に合わなかった。)
  大阪民主新の発行日は、「日曜日付け」になっていますが、土曜日には配達されています。先の水曜日の事件原稿が、間に合わないということは、締切はもっと前だと想定されます。(ポストなどの週刊誌の宣伝を見ていると、昨日起こった事件も記事になっています。)そう言う意味では、情報伝達のスピードという点でも一般紙や週刊誌に比べ、大きな弱点を持っています。

参照;大阪府会議員宮原氏のビラ