反米・反基地闘争を放棄した共産党?


平成25(2013)年12月19日


 12月16日神奈川県三浦市三崎の埋め立て地に米海軍厚木基地所属のヘリコプター「MH60S」不時着しようとして失敗し横転した。これを赤旗はどう伝えたか(毎日新聞との比較の中で見ていきたい)

毎日新聞は、1面準トップ扱い、赤旗は、1面の三番目の記事

 まず17日の赤旗の紙面構成であるが、一面トップは「稲森勝利で示そう」、「沖縄新基地押し付けノー」が最大の記事であり、二番手が「米ファンドへの売却否決」「大阪府議会「維新」の暴走阻止」三番手が「米軍ヘリ不時着・横転」「神奈川・三浦 乗員2人けが」という紙面構成を組んでいる。
 毎日新聞は、一面トップは「泉北高速売却白紙」「本会議も否決 維新4人造反」であるが同時に一面トップ扱いで米軍ヘリの不時着を伝えている。さらにこの写真に対する解説のような見出しは「住宅地から100メートル」と書いている。(記事は29面に記載)

 この二つの新聞を手に取った際、毎日新聞の方が米軍ヘリの不時着・横転を、インパクトを持って伝えている。赤旗は、駅売りは無いが、新聞は二つおりになって配達されたり売られたりしている。毎日新聞は二つおりされた紙面に、米軍ヘリの不時着・横転の姿が目に入ってくる。(それとその写真が市街地に落ちた事が分かる写真である。赤旗の写真はヘリコプターしか写っていない。)
赤旗は二つおりにした場合、米軍ヘリの記事は全く見えない。(注1)有名な話だが東スポなどはこの見出しの善し悪しで売り上げが決まる。そういう意味では駅売りをしていないから、見出しの重要性が分かっていない。

注1:資料毎日新聞と赤旗の紙面参照(クリックしてください)

そもそも赤旗は、米軍ヘリの不時着・横転を一面トップに持ってくるべきであった。一般紙と赤旗は政治姿勢が違う、共産党は、日本がアメリカの従属状態にあり、基地問題が国民を苦しめているという立場に立っている。その立場から、この事故を告発する立場で記事を書く必要がある。

毎日新聞は「住宅地から100メートル」、赤旗は「乗員2人けが」(見出しのセンス差は見逃せない)

  当日の紙面、赤旗は確かに「沖縄の新基地押し付けノー」と書いているが、この見出しより米軍のヘリコプターが、住宅地から100メートルの所に不時着・横転した記事を載せる事の方が、基地反対の戦いを応援する記事になる。この視点が赤旗には無い。
  一面のトップで無い事も気に入らないが、記事見出しも気に入らない。毎日新聞は、「住宅地から100メートル」と書くことによって、住民の命が危険にさらされた事を糾弾している。基地の怖さを主張している。
  これに対して赤旗は、乗員(アメリカ兵)の安否に気遣った見出しを掲げている。(乗員2人けが)恐らくこれらの記事は時事通信等から配信されてきて、それをどう加工するかがそれぞれの新聞社の腕前だと思うが、まさに見出しは、その新聞社の政治的センスや立場性を表している。
 この記事では、毎日は住民を主語に持ってきた、赤旗は米兵(乗員)を主語に持ってきた。この差の原因が、赤旗には政治センスが無いのなら仕方が無いが、共産党の方針として、アメリカの悪口を出来るだけ書かないというのがあるとすれば問題である。

共産党はすでにオバマ派?

  私のHPで、ある記事で、「共産党は中国よりだ」みたいな記事を書いた際、それは違う共産党はアメリカよりでオバマ派だと指摘した人がいたが、志位委員長が訪米し、「我々はアメリカに敵対していない」と明言されたと聞くが、この視点が赤旗の編集方針になっているとすれば、共産党の共産党である所以の「日本を基本的に支配しているのは、アメリカ帝国主義と、それに従属的に同盟している日本の独占資本である。わが国は、高度に発達した資本主義国でありながら、アメリカ帝国主義になかば占領された事実上の従属国となっている。」(第8回大会決定の綱領:1961年)という視点はすでに放棄してしまったのか。「従属」を「異常」や「害悪」・「ゆがみ」など言葉替えをしているが、言葉替えだけで無く、そうした根本的な考え方をすでに放棄したのか、今回のアメリカ海軍のヘリコプター不時着・横転記事から伺い知り得る。
  赤旗は政治的センスが無いのか、すでにルビコンを渡った(アメリカを敵としない)のかこの辺が分からない。26回大会決議案では確か二カ所であったが、「対米従属」という言葉が使われていた。共産党は「異常」・「害悪」・「ゆがみ」と言う言葉で表現し、対米従属という概念はすでに放棄したのか、その辺の説明を求めたい。(注2)

毎日は「維新造反」、赤旗は「維新」暴走阻止、

  ついでに、泉北高速鉄道関連の記事でも、赤旗は「維新」暴走阻止と書いているが、毎日の「維新4人造反」の方が正確であり、何が起こっているのか読者によく分かる。維新がほころびだした。大阪府会で過半数を失う可能性が出てきた。大阪都構想を粉砕する(できる)ことが現実的課題になったと読み取れる。
 赤旗の政治的劣化は著しい。嘆かわしい限りだ。拡大が進まない原因がこんな所にもある事を、党幹部は気づかないのであろうか。

注2:26回大会決議案で「対米従属」という言葉が出てくる章
   【一カ所目】
    第一章「自共対決」時代の本格的な始まりと日本共産党
     (1)「自共対決」時代の本格的な始まり
         A社会の土台では、「二つの異常」を特徴とする政治が崩壊的危機に
   この「二つの異常の説明として
     「異常な財界中心」の政治を続けてきた結果、日本は、働く人の所得が減り続け、経済全体が停滞・縮小す
    る国となり、国内総生産比での長期債務残高が「先進国」で最も高い水準の国に落ち込んでいる。
   「異常な対米従属」の政治によって、米軍基地問題の矛盾が限界点をこえるとともに、TPP(環太平洋連携協
    定)問題にみられるように日本の経済主権・食料主権が根底から破壊される危機に直面している。
 
   【二カ所目】
    第3章 自民党政権の反動的暴走と対決し、新しい日本をめざす
     (15)原発とエネルギー――原発政策の発展と焦眉の課題
       「原発ゼロの日本」をめざすたたかいは、「原発利益共同体」ともよばれている利権集団を解体し、「ルール
     ある経済社会」をつくるたたかいの重要な一部である。それは、エネルギーの対米従属を打破していくたた
     かいでもある。日本共産党は、このたかいを、「二つの異常」をただす綱領的課題の一つとして位置づけ、全
     力をあげて奮闘する。


資料:毎日新聞と赤旗の紙面参照(クリックしてください)