平成28(2016)年11月12日
「安全無視の再稼働もうやめよ」しんぶん赤旗(11月12日付)
共産党は3.11東日本大震災後の一斉地方選挙で、「安全優先の原子力政策」という【主張】を投票日前日の4月9日に掲げた。何回も批判しているが、選挙戦での候補者の活動は原発反対を訴え、赤旗もその活動を伝えていたが、投票日前日の赤旗【主張】はそれらの運動を否定する「安全優先の原子力政策」が日本共産党の政策だと言い切った。
選挙戦は敗北し、共産党は原子力政策の見直しを余儀なくされた。(同時期4月24日の世田谷の区長選挙では、社民党の保坂のぶと氏(社民党を離党)が原発反対を前面に掲げて戦い圧勝した。(注1)
注1: 《開票結果》 世田谷区長選挙 |
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得票順位 |
当落 |
候補者氏名 |
党派名 |
得票数 |
得票率 |
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1 |
当 |
保坂 のぶと |
無所属(社民) |
83,983 |
30.70% |
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2 |
落 |
花輪 ともふみ |
無所属(民主系) |
78,444 |
28.68% |
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3 |
落 |
川上 和彦 |
無所属(自民) |
60,340 |
22.06% |
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4 |
落 |
すがや やすこ |
無所属(民主党) |
40,831 |
14.93% |
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5 |
落 |
けいの 靖幸 |
無所属(共産党) |
9,963 |
3.64% |
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273561 |
100.00% |
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この結果から明らかなように、原発反対を前面に掲げた保坂氏が圧勝し、原発問題に消極的であった共産党系無所属の候補は、保坂氏の1割強しか取れない惨敗であった。
選挙戦の結果を受け、共産党は2011年5月1日のメーデー会場で志位委員長が「原発ゼロ宣言」を行った。この志位発言は注目され、翌日の一般紙は大きく報道したが、赤旗には掲載されないというおかしな状況があった。
その後共産党は「原発即時ゼロ」(2012年9月15日赤旗)と原発反対の政策をより確固たるものへと発展させていった。
この記事で面白いのは、共産党の政策は一貫しているというのが共産党の常套句であるにも関わらず、この記事では「国民の多数が『即時原発ゼロ』を求めている状況をふまえて、昨年の提言を一歩進めて「即時原発ゼロ」の提起を行うものである。」と政策を変えたことを公式に認めたことである。(安全優先の原子力政策⇒;原発ゼロ宣言⇒「即時原発ゼロ」へ)
現在の共産党の原子力政策は「即時原発ゼロ」だと私は認識していたが、本日つけの赤旗の【主張】は明らかに原子力政策を「安全優先の原子力政策」に後戻りさせてしまった。
「安全無視の再稼働をもうやめよう」で共産党は何を語っているのか?
単純に読めば、「安全無視の再稼働はやめよう」だから「安全重視の再稼働なら認めてよいと」いう共産党の本心が透けて読み取れる。共産党はいつの間にか「即時原発ゼロ」政策を引っ込め、「安全優先の原子力政策」に先祖返りしてしまっている。しかもこの変更を公式には発表していない。
今日の【主張】を裏読みすれば分かるという卑劣な方針転換である。以下記事内容を見てみたい。
まず原発を巡る情勢が書かれています。その内容は「国民・住民の再稼働反対の声は広がっています。安倍晋三政権は規制委員の審査を口実に原発の再稼働を急いでいますが、安全無視の再稼働は、やめるべきです。
この共産党の主張は、明らかに安全優先の原子力政策の立場に立った情勢判断です。「安全無視の再稼働は、やめるべきです」という主張は、「即時原発ゼロ」政策とは全く矛盾し、安全が確認されれば稼働して良いという主張です。
国民の中にある原発反対の運動は、このような限定的な運動でしょうか?
2011年9月21日開催されたさよなら原発6万人集会の主張は、「核と人類は共存できない」であり、そういう意味での「さよなら原発」である。共産党はこの集会に参加し赤旗でも大きく報道しているが、この集会の本当の意図を伝えず、自らの思想「安全優先の原子力政策」の立場からこの集会を見ている。(評価している。)そのため参加者の発言にも共産党のフイルターを通して編集されている。(この模様を私は「正義の味方 真実の友」という赤旗の標語が泣いているいう立場で記事を書いた。)
しかしその後赤旗や大阪民主新報にも、「さよなら原発」という言葉がよく顔を出し、共産党は「核と人類は共存できない」という方針を受け入れたと思っていた。(原発反対の運動の写真を赤旗が載せた場合、「即時原発ゼロ」のスローガンは目立たず、「さよなら原発」の方が目立っていた。)
「共産党の政策は一貫している」共産党はどうしてもこの主張が守りたい。
共産党は原子力政策を「安全優先の原子力政策」から「原発ゼロ」へさらに「即時原発ゼロ」に変えた際、これは共産党の政策は一貫していますとは言えなかった。そこで国民の多数がそう言っているので、共産党も「即時原発ゼロ」に政策変更しますと、一貫性の放棄を国民の多数の思いの前に屈服した。
しかし、これは共産党にとって屈辱であった。原発即時廃止の運動が一定下火となり、現状では再稼働反対が各地域で起こっている現状をとらえ、「即時原発ゼロ」方針を後ろに追いやり、「原発再稼働反対」に方針をずらし、さらに安全でない原発再稼働反対へとポイントをずらし、4月9日の【社説】「安全優先の原子力政策」へと党の方針を先祖返りさせた。
この方針転換は、政策の一貫性を守るという時代錯誤的感覚(注2)ともう一つは原子力の平和利用という党の昔からの思想をやはり重視しているのだと思われる。
注2:共産党は政策の一貫性が重要であり、そのことが国民から支持されるとみているのか、
「一貫している」ということを強調します。国民は果たして「一貫性」を求めているのでしょ
うか?昔から「君子豹変す」という言葉があり、小泉氏は政策の一貫性を付かれて「公約=
膏薬ははがせば終わり」と語りました。安倍首相もTPP国会で、「自民党は結党以来強行
採決はしたことがない」と言いました。そのすぐ後に強行採決しました。トランプ氏もそうで
す。彼の掲げた政策は、ほぼ実現できないと思います。(国民は政治には一貫性がないと
見破っています。)
共産党の原子力に対する基本的視点は、原爆に対する評価の際、帝国主義の核は戦争のための核であり、社会主義の核は平和のための核であるという思想が根底にあります。
社会主義社会が実現した際、原子力の平和的利用で国民生活を豊かにできる可能性があるのに、それを現代の段階で否定してしまうのは、非科学的思考であるという考えがある。日本共産党の幹部は不破氏をはじめ物理学者が多い。
核の平和的利用に魅力を感じている。今、核の平和的利用の芽を摘むことに反対である。(注3)
そのことを語っているのが、震災後の「安全優先の原子力政策」であり本日付赤旗主張「安全無視の再稼働もうやめよ」である。
注3:毎日新聞2011/08/25東京朝刊 11ページ
私の書いた「正義の味方 真実の友」・・・これは何の標語かわかりますか?に転載し
ている。
「安全無視の再稼働もうやめよ」は「即時原発ゼロ」(2012/9/14)とどう違うのか?
この赤旗の主張、何が言いたいのか、その真意がつかみにくいが、「もうやめよ」は、「やめよ」という命令形なのか、「もうやめよ」は「もうやめようや」という呼びかけ(懇願)なのかよく分からない。
されに「もう」という意味は、現在稼働分は認めるが、これ以上増やすのはやめようやと懇願しているようにも見える。
要するに「即時原発廃止」=「人類と核は共存できない」という思想が全くなく「国民は原発運転望まない」という最終段落でも、「国民・住民は、危険な原発再稼働を望んでいません」と書き、「即時原発ゼロ」でなく、暗に「安全なら良い」を滲みだしています。
しかし共産党のいう安全な原発という基準は何なのか、本当に安全な原発はあるのか明確にしていません。
ただ言えることは、自らが掲げた「即時原発ゼロ」という言葉を一切使わず、「安全無視の再稼働はもうやめよ」という言葉の中に「安全優先の原子力政策」2011年4月9日【主張】が透いて見えます。
参考:これまでに原子力政策について多く書いています。(関連で読んでみてください)
〇「正義の味方 真実の友」・・・これ何の標語かわかりますか?
さよなら原発6万人集会の記事に、共産党に都合の良い加工が加えられている。
共産党の核の平和利用に対する志位発言(毎日新聞から引用)
〇大飯原発再稼働を報じる赤旗紙面
一般紙との差別化が図れない間抜けた姿を露呈
〇「さよなら原発」一千万人署名運動・・・784万人に到達
これに対する赤旗報道の姑息さを笑う
〇共産党の原子力政策は何か(いまだ揺れ動いている)
「さよなら原発」一千万人署名が原発反対の運動の主導権を握る
〇「原発ゼロ」(9月14日赤旗)は、原発反対運動の追い風になるか、
はたまた運動の分裂につながるのか?
〇「脱原発」と「原発ゼロ」とは何が違うのか?
この違いに問題の本質がある