赤旗の中国報道は明らかに変化(香港「本土派」議員の資格問題)


平成28(2016)年11月7日


  日本共産党は、中国を「社会主義を目指す国」と評価し、現在まで中国での人権侵害や共産党幹部の腐敗堕落問題、幹部間の権力争いや格差社会が深刻になり貧困問題が国民を苦しめている問題など中国に不利になる報道はできるだけ避けてきました。
 この共産党の中国共産党に対する評価はおかしいのでないかと党内外から批判がありましたが、共産党は、中国批判は内政干渉になるから公に批判できないと主張してきました。公党間には信義があり、一方的に批判することは許されず、批判点については公式のルートを通じて適宜行っているという態度を堅持していました。
  私は中国の現状は、一般的な社会主義の様々な原則に照らしてもすべて逸脱しており、社会主義国というより、社会帝国主義であり、この中国を支持する姿勢を変えない限り、日本において共産党の躍進はかなえられないと批判してきました。
 

中国共産党との決別を意識し始めた日本共産党(9/11)

 赤旗(9/5)の「『クアラルンプール宣言』日本共産党のとった立場」という記事を読んで、共産党は中国との関係について整理に入ったなと思いました。 
 この記事で赤旗は中国共産党代表団にに対して以下のような批判を行いました。「中国のやり方は、総会の民主的運営に反する横暴きわまる方法で『核兵器禁止条約のすみやかな交渉開始をよびかける』を削減し、ICAPPのこれまでの到達点を大きく後退させた中国共産党代表団のふるまいは、まったく道理がなく、厳しく批判されなければなりません。」と日本共産党は中国共産党を厳しく批判した。(注1)

注1: ICAPPは、イデオロギーの違いをこえ、与野党を問わず、アジアの全政党に開かれた包括
     的な会合。今回の主要テーマは、核兵器廃絶をめぐり焦眉の課題となっている「核兵器禁
     止条約のすみやかな交渉開始」であった。
         参加政党は、37か国から日本共産党など与野党合わせて89党の代表が参加、日本共
     産党は志位委員長をはじめ、緒方靖夫副委員長など4名が参加 (赤旗日曜版より引用)


香港「本土派」議員の資格問題(中国全人代が判断)

  先の赤旗記事の延長戦の記事がこの記事である。この記事は、香港の立法会(議会)での香港独立志向の強い「本土派」議員二人の宣言が認められていない問題である。(民主派は6日、中国当局の介入に13,000人が参加した抗議するデモを行った)
 この記事を赤旗は6日に6面【国際】で大きく扱った。一般紙はどう扱ったかをインターネットで検索したが、毎日新聞5日(土)22:39配信のべた記事、朝日11月4日19:27の記事そう大きくない記事である。
 手元にある毎日新聞では、6日に記事はなく、7日に抗議デモの記事を載せているが、そう大きな記事ではない。
  赤旗の記事は、【北京=小林拓也】北京特派員の発信記事になっている。今まで北京に特派員を配置しながら、中国情報は時事通信の記事をべた記事で載せていた赤旗が、北京特派員の記事を載せている。(赤旗の独自取材であり、その内容も共産党の立場性がはっきりと表れている。)
 その主要な内容を箇条書きにすると
●全人代の介入に対し、香港では「一国二制度」を破壊するとの批判も起きています。
●二人は10月12日の立法会で就任宣誓を行う際、「香港は中国ではない」と書かれた旗を肩にまとうなどし、宣誓が成立しなかったと判断された。
●香港基本法104条は、就任時に基本法を守ると宣誓し、「中華人民共和国香港特別行政区」に忠誠を尽くすと明記。二人はこれに違反したとされます。
●中国全人代常務委員会は4日、基本法104条の解釈について報告を受け、議論すると決定。
●3日付の中国共産党機関紙・人民日報は「『香港独立』勢力の言動は『一国二制度』の最低ラインに抵触し、国家の核心的利益にと中央の権威に挑戦している」と強く批判。
●『香港基本法』は、基本法の解釈と改正権を香港側でなく、中国全人代にあると定めています。
●中国返還以降、全人代は基本法の解釈を4回実施、香港市民から、香港の「高度な自治」を壊すものだとの批判が起きたこともあります。
●今回は、香港の高裁が審査中で結論が出る前に、全人代が主導的に基本法解釈を行うという前例がない事態。
●香港弁護士会は2日、「香港の独立した司法権に大衝撃を与え、香港人民の『一国二制度』への信頼を著しく損ない、『百害あって一利なし』と懸念する」声明を発表した。

 と書いています。現在までの共産党の理論ではこれは明らかに内政干渉です。赤旗の報道は明らかに中国共産党批判であり、香港の民主化の動きを応援しています。さらにこの記事の最後に学者を登場させ、中国批判をさせています。以下引用
   香港政治に詳しい嶺南大学の陳允中(ちんいんちゅう)准教授は本誌に、「全人代の基本法は解釈は、香港の三権分立を破壊する行為で『一国二制度』の破壊に等しく、立憲政治に危機をもたらすだろう」と述べました。という発言で締めくくっている。
 さらにご丁寧にも『一国二制度』の解説まで載せている。ついでにそれも以下に引用しておく。
 1998年に香港が英国から中国に返還された際、香港を特別行政区とし、外交・軍事以外の分野で、中国本土と異なる政治・経済制度を維持すうことを認めたもの。99年にマカオがポルトガルから返還された際にも適応されました。

 今回この問題でこれだけ詳しい記事を挙げたのは共産党のしんぶん赤旗だけだと思われる。共産党は明らかに中国離れを画策し始めている。