赤旗【主張】「新たな疑い次々、国会で追及を」(「森友」「加計」疑惑)の問題点


平成29(2017)年8月20日



赤旗の【主張】は、未だ腰が定まらない。(四点の弱点がある)

 8月20日赤旗【主張】は森友・加計学園疑惑を取り上げた。この【主張】は基本的には「良」とするが、やはりまだ腰が定まらない弱さを持っている。
 私が違和感を禁じ得なかった行は@「昭恵氏が『森友』と財務省を仲立ちした可能性もあり」という表現とA「国や大阪府の補助金をだまし取っていた疑いで籠池氏らが逮捕されています」、さらには、B「改造内閣も疑惑隠し内閣だということを証明するだけです。」C見出しも「新たな疑い次々、国会で解明を」という見出し倒れであって、中には新たな疑惑がほとんど書かれていません。以上四点の書き方に不十分さを感じます。

赤旗の森友・加計学園疑惑追及の【主張】の上記四点の書き方のどこが問題か?

★第一点目の疑問は、安倍昭恵氏の『仲介』は「可能性」という次元か?

 昭恵氏に対して、「『森友』財務省の仲立ちした可能性もあり」と昭恵氏への疑惑を「可能性」という言葉で表現したことです。安倍昭恵首相夫人つき秘書として働いていた谷査恵子氏を通じて『仲立ち』したことは「可能性」というような次元ではなく、ほぼ100%黒です。
 安倍昭恵氏の仲立ちは、籠池氏が国会の証人喚問の際(午前中)に証言しており、それに慌てた官邸側が、谷査恵子氏氏が財務省に申し入れ、財務省から回答があったFAXを、証人喚問当日の昼休みに、菅官房長官側から新聞記者等に配布された経過からして明らかです。
 谷査恵子氏はこの事実発覚後姿をくらましており、自分の職場である経済産業省に出勤していません。最近イタリアの日本大使館に一等書記官として赴任(8月16日付)し日本から「逃亡」しています。ネットでは「ローマの休日」と揶揄されています。

★第二点目は、籠池氏らが逮捕されています。この状態をどう見るかの判断が無い

 籠池夫妻逮捕は、森友疑惑の本丸が財務省の不当なダンピングにあるのに、籠池氏夫妻の補助金詐欺に矮小化して、この問題を終息するという安倍政権の意図の下に行われています。逮捕時に籠池氏は「国策捜査」だと言いましたが、正にその通りです。
 さらに籠池氏の拘留機関は8月21日までであったため、大阪地検は今度は大阪府や大阪市に対する補助金詐欺で再逮捕する予定です。籠池逮捕は森友疑惑が核心に迫られないように意識的にでっち上げ逮捕を行い、国民の追及が安倍夫妻や近畿財務局に向かないようにしています。赤旗は籠池逮捕がこのような目的であるという主張から一貫して目をふさぎ、籠池氏逮捕が当たり前だと主張をて行っています。
 籠池氏逮捕の不当性は、元長崎地方検察庁次席検事であった郷原弁護士も、一貫して批判されています。その主張の根本は、逮捕理由が「補助金適正化法違反」でなく「詐欺罪」になっていることは、間違いであること、交付金を出す根拠を国が独自に判断せず、籠池氏の要求を下にしたのであれば、国側にも過失があること、さらには籠池氏はすでに交付金全額を返済していること等からこの逮捕は行うべきでなかったと主張されています。
 蛇足ですが、交付金5600万円全てが詐欺の対象でなく、そのうち2000万円位が対象であり、額の少なさからも常識的には逮捕は異常であると言われています。

★第三点目は、改造内閣も疑惑隠し内閣だ。・・これが結論ですか?

 主張の最後が、「改造内閣も疑惑隠し内閣だということを証明するだけです。」というのが意味が分かりません。そんなことは最初から分かっており、国民も改造内閣に少しだけ評価をしましたが、安倍氏個人の評価は改造内閣後も落ちています。(注1)
 確かに最後にはもう一行あり、「安倍政権に政治を任せられないことはいよいよ明らかです。」という行がありますが、最後は「国民の声を結集して安倍内閣打倒まで追い込んでいく」ぐらいの決意を書くべきだと私は思います。

注1:安倍内閣に期待できない(18.2pアップで43.6%に!)TBS
   〇TBS「支持できない」理由
     @安倍首相に期待できない・・・43.6%(18.2p↑)
     A自民党中心の内閣だから・・・19.1%( 5.7p↓)
   各社世論調査で内閣支持率は若干上昇していますが、注目すべきは不支持率の理由
  の変化。(8月8日発表)
     〇読売新聞    「首相が信頼できない」49% ⇒54%
     〇共同通信    「首相が信頼できない」51.6%⇒56%
     〇日経新聞        「人柄が信頼できない」44% ⇒48%
      テレビ東京

★第四点目は、見出しの「新たな疑い次々、国会で解明を」・・これも本質をついていない

 抽象的であり、新たな疑惑が何か説明されていない。戦いの場所を国会に限定していることも大いに疑問を感じます。
 「新たな疑い」という表現も弱く、書くなら「新たな疑惑」と書くべきです。さらにはその疑惑の例示を行うべきです。その主要な問題は、森友学園問題では、近畿財務局との交渉の経過が新たなテープが公開され、近畿財務局が金額の交渉をしていた経過が白日のものとなったこと、加計学園問題では、設計図が表に出て、加計学園がわが主張する建設費に大きな疑惑があることが判明したこと(森友以上の大掛かりな補助金詐欺)、さらには今治市が加計学園の幹部とともに首相官邸を訪問していたこと、また政府の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)に加計学園の職員が参加し、発言まで行っていたいたこと等が新たな疑惑である。それらの具体事例を列記しない「新たな疑い」という見出しは疑問が残る。(赤旗の【主張】では、これら新たな疑惑の内、加計学園の幹部が首相秘書官と会っていたことと、「国家戦略特区」関連会議(WG)の出席とその議事録の捏造された疑いのみ記載されている。)
 そもそも疑惑を追及するのは、安倍内閣打倒が目的であり、「疑惑隠し内閣だということを証明」するためではありません。「疑惑隠し内閣だ」ということにはすでに国民の中に共通認識があるが、退陣にまで追い込めていないところに問題があるのです。

毎日新聞の時代の風の方が読んで痛快だ

 いつも毎日新聞と比較して恐縮ですが、本日付(8月20日)毎日新聞は、時代の風 藤谷浩介(日本総合研究所主席研究員)の「森友・加計問題が問うもの」という記事を載せています。本文見出しは「法治の国か人治の国か」と問いかけ、「あるべき書類や面談記録が出ていないことも法治国家として大失態だ。」と断罪し、さらには、稲田問題を取り上げ、「もり・かけ問題を議論することが北朝鮮への対応の邪魔であるというなら、かかる大臣を任命し、何度もあった更迭の機会に頑固に首をふらず、結果として最悪のタイミングの辞任を招いたしまったのは何なのか。」と森友・加計疑惑との関連で自衛隊の日報問題にも鋭い突っ込みを入れている。
 赤旗のへっぴり腰の見出し「新たな疑いが次々、国会で解明を」より、読んでみて納得のできる記事である。