共産党 10年遅かった「中国は社会主義をめざしている国」か否かの判断


令和元(2019)年11月10日


28回大会へ提案される日本共産党の一部改正綱領案の問題点


 共産党第28回大会で提案される綱領の一部改定案が発表された。その中で最も注目されるのは「中国は『社会主義をめざす国』とはみなす根拠はなくなった」という項目であろう。共産党はこの決定が重要な決定であり、多くの国民に注目されるとみているが、この決定は、中国の振る舞いを正確に見ていれば10年遅れの決定であり、国民から見れば共産党もやっと中国の本質が分かったと見られるだけであろう。(注1)
 自らの綱領の変更を鬼の首でも取った勢いで主張しているが、「中国が社会主義国で無い」と言う判断は、既に日本社会での常識である。日本共産党以外の政党で「中国は社会主義だ」と言っている政党は皆無である。

注1:正確には一部削除を持ってそのことを語っている。削除部分を下に記す。
  (削除)今日、重要なことは、資本主義から離脱いたいくつかの国ぐにで、政治上・経済上の未解決
   な問題を残しながらも「市場形態を通じて夜会主義へ」取り組みなど、社会主義をめざす新しい探
   求が開始され、人口が一三億を超える大きな地域での発展として、二一世紀の世界史の重要な流れ
   の一つとなろうとしていることである。という部分を綱領から削除した。

 ところが共産党は恥も外聞もなく、11月6日の赤旗1面で綱領一部改正案の対する志位委員長結語を述べているが、その内容は驚くべきものである。以下引用する。
 
 「中国の大国主義・覇権主義的行動から生まれる社会主義のイメージで日本共産党前進の障害になっている事実に対し、一部改正案がこれらの誤解・偏見を解きほぐし、日本共産党の魅力を広げていくうえで大きな力を発揮することは間違いないと指摘」(注2−1)
 「同時に、中国の大国主義・覇権主義、人権侵害に対して、事実と道理にそくした正面からの批判の動きが世界でも弱い中で、日本共産党がいまの中国の誤った行動を批判することは、世界の平和と進歩を進める上で大義ある取り組みだと強調しました。」と書いています。(注2-2)
 日本共産党の中国に対する評価の誤りを率直に自己日批判するのでは無く中国共産党への評価の間違いが日本共産党だけでなく、一般的に存在しており、いち早く共産党がそのことに気が付き、中国が社会主義を目指している国でないと指摘したことは政治的に大きな意味をもち、今後この方面での活動の先頭に立ちたいというような発言をしている。
 この共産党の政治的音痴には恐れ入る。中国が社会主義を目指している国だと評価している政治的潮流がこの日本にあるいは世界のどこにあるのか教えてほしい。日本共産党だけが取り残されてきたのが事実であろう。

注2-1:まちがいだらけの共産党(共産党に二度と花は咲かない。NO.3(平成24年10月4日)
   不破さんや志位さんは中国を社会主義社会として評価する。しかし中国が社会主義のモデルである
   なら日本国民は社会主義社会の実現を望まないであろう。いまの中国の何処に日本より優れた政治
   的統治機能があるのか、共産党の幹部は明らかにすべきだ。既に中国は完全な資本主義社会になっ
   ている。ただ権力を握っている政党が共産党だから社会主義だというならお笑いでしかない。とこ
   こで書いた
注2-2:中国の実態を覆い隠す赤旗に未来はない(平成25年1月14日)
     ●「中国は本当に社会主義を目指すのか」(平成25年3月13日)
   これは「さざ 波通信」に荒川岳志氏と言う方が、この質問を行い、党中央に対して4回質問し、
    党中央から貴重な回答を得ています。(4回目は回答せず。)この党の回答は極めて重要な文書
    であり、共産党の本音が読み取れます。私は党中央に対する荒川氏の質問と党中央の回答を突き
    合わせ、荒川氏の発言に全面的に支持する立場から、一定のコメントを入れています。日本共産
    党の社会主義論のいい加減さが分る極めて重要な文書です。
 
 既に誰もが知っている事実を、共産党は新たに「発見」したようにはしゃいでいるが、はしゃげばはしゃぐほど、共産党が国民から如何に遊離してきたかをみんなが知ってしまうという結論に落ち着くことを共産党は理解できていない。

中国が「社会主義を目指している国」とは何をもって判断しているのか?

 共産党は社会主義を目指している国の概念を科学的に説明していません。共産党の主張は「その国が社会主義を目指しているかいないのかは外から観察している我々には本当の事は分からない。だから社会主義を目指している国の判断基準は明確なモノは無いと主張し、基本的にはその国が社会主義を目指していると表明している国を『社会主義を目指している国』と規定している」と答えています。
「但し北朝鮮だけは例外でどう見ても社会主義を目指しているとは思えないので、社会主義を目指している国から外している」(24年の23回党大会)というのがまず基本的な説明です。
 次に先に注2-2で引用した荒川氏は2009(平成21)年にこの質問をされています。その際、中国は、日本よりルールなき資本主義のように思えますがどのように考えますか?と質問しています。
 さらに具体的には、今の中国での共産党による一党独裁・言論の自由の弾圧などについて日本共産党は、どのように考えているのですか。また経済的にはめざましく発展していますが、経済格差が拡大し、共産党幹部による汚職や利権あさりが横行している現状をどのように考えていますか。と荒川氏は切り込んでいます。
 それに対する党中央の回答は、「1998年に中国共産党との関係改善が図られ、その段階では『白紙』で臨み、中国が『社会主義を目指す国』といえるのかについても、判断を保留してきた。」と答えています。その後、いろいろ研究し、23回大会で、中国が「社会主義を目指す国」と位置付けたとしています。
 それに対して荒川氏はさらに、社会主義を目指す国の指標は何かと追及しています。それに対する党中央の回答は@「不破哲三の『21世紀の世界と社会主義 日中理論会議で何を語ったのか』を読んでくれと、A「市場経済を活用しながら資本主義の矛盾を乗り越えた経済社会のとりくみ」とさらにはB幹部の「真剣さ、誠実さ」が根拠だと言っています。

 私は、この党中央の回答に対して「政府や党の指導勢力の真剣さ、誠実さがその国が社会主義を目指しているか否かのメルクマールになるという共産党の判断基準を全く知りませんでした。(注3)

 しかも、この判断を行うのが事実上不破氏一人であるという共産党の回答は、まさに現在の共産党の弱点をさらけだしています。この回答者はまじめな方であり。この回答がおかしいということに気づいていません(不破教の信者です。)という論評を入れています。

注3:志位委員長の報告は、「現綱領を改訂した当時(2004年)は、この判断・規定には一定の合理的根
   拠がありました。日中両共産党の関係正常化にあたって、中国指導部が日本共産党に対する過去の
   覇権主義的干渉の誤りを認め「真剣な総括と是正」を公式に表明した」事が理由であり、合理的
   根拠があったと主張していますが、これは日本国民が理解できる理由ではなく、党と党の関係の正
   常化が相手国を「社会主義を目指す国」と認定されても、「はー、それどう関係があるの?」とい
   う
   のが常識的判断だと思われる。
、 
荒川氏は「『社会主義をめざす国』という以上、中国の社会体制が具体的に社会主義的であることをわれわれに示す必要があります」と反論されました。
既に荒川氏や私などは、中国が社会主義国では無いと2009(平成21)年頃かから指摘してきましたが、共産党は理由にならない理由を挙げて、「中国は社会主義を目指す国」だと言い張ってきました。
そのような中、2010年ノーベル平和賞を貰った劉暁波氏を中国政府を批判したと有罪にし、服役中に肝臓がんのため中国遼寧省瀋陽の病院で亡くなるという弾圧を行う事件が発生した。(2017年61歳だた。)
この件は世界に報道されており、これだけを見ても『中国が社会主義を目指している国』でないことは立証されている。

このような蛮行を行う国が、『社会主義を目指す国で無い』ことは誰にでも分かるのに共産党(しんぶん赤旗)は、中国批判を押さえて来た。
その共産党が急に中国は社会主義を目指す国では無いと表明し、中国の蛮行に対する世間一般の批判が弱すぎると述べたことは共産党の社会的常識の欠如だと思われる。

なぜ共産党は、「中国を社会主義を目指す国」という判断を10年間も誤ったのか?

 そこには共産党の「詭弁」をもってこの問題に対応してきたからです。
「共産党はなぜ中国を『社会主義を目指す国だ』と言われるのですか?」という問いに共産党は「いや我々は『中国は社会主義国とは言っていない』、中国が『社会主義を目指している』と言っているのでその主張を尊重している。」それに対して、「だって中国は貧富の差がひどく、自由も民主主義も無いのでは?」と問われた際は、「共産党は他国の国内政治を評価しない。それは内政干渉になるから、それぞれのやり方の違いはあるが、『社会主義を目指している』と言っているのでそれを尊重している」と答えてきた。
 なぜこのような間違いが起こったのか、その決定的な理由は、共産党は他国の社会主義を評価する場合の最大の基準が、党と党の関係から見ているからです。共産党は中国を一貫して社会主義国と評価していたのではなく、文化大革命の時は、世界中が中国の改革を評価し絶賛する中で、日本では産経新聞と赤旗だけが文化大革命を単なる権力闘争だと徹底的に批判した。 
これは赤旗の先見性の立証の大きな財産であるが、1967年に共産党の駐在員が、中国共産党と決別して日本への帰国の際に、北京空港で暴行を受けるという事態に直面し、それ以降中国を徹底的に批判した。その後1998年に中国が誤りを認め関係が回復しました。その後はまた中国批判をやめました。
そして『中国は社会主義を目指している国』だと評価し始めました。その際の評価は先に触れましたが、中国共産党幹部の「真剣さ・誠実さ」があると不破氏が評価したからですと答えています。(注4)
要するに判断基準が違うのです。我々は中国が社会主義かそうでないかを判断する場合、第一に国民の生活の実態を見ます。本当に平等が実践されているか、あるいは自由や民主主義が徹底されているか、外国に対して対等平等の立場を貫いているか、領土拡大の野心を抱いていないかなど、そうした評価基準があると思いますが、共産党の判断は中国共産党が日本共産党に対して対等・平等の対応を行ったか否かに、『中国が社会主義を目指す国か否か』の判断基準があります。

注4:綱領の一部改定案の説明を志位委員長が報告いていますが、そこには3点の理由を挙げています。
  @尖閣列島問題、力による現状変更を進める覇権主義的な行動
  A国際会議の民主的な運営を一方的に覆す、覇権主義的なふるまい
  B香港で起きた大規模デモに対する武力による威嚇
を挙げています。ここには中国社会における格差社会や人権問題の軽視、および自由や民主主義が確立されていない問題など、国内問題は一切触れていません。日本の国民が中国を社会主義国家と見ない最大の原因は貧富の差だと思われる。資本主義が格差社会で、社会主義は平等の社会だと国民は思っているはずである。そのことにはまったく触れていない。国際会議で日本共産党の主張を踏みにじり、中国が結論を誘導したことなど、国民にはまったく関心のないことである。(センスがずれている)

今回はなぜ共産党は、『中国は社会主義を目指していない』と判断したのかは平成28年の「第9回アジア政党国際会議」で中国が日本共産党に対して理不尽な対応をしたことに端を発しています。
この会議で志位委員長の発言が評価され、それが全体のまとめになるはずだったのに、実際の決議は違うものになっていた。中国共産党が裏で動き自らに都合の良い内容に変えてしまったことに対する怒りから、共産党は中国共産党の評価を変えた。(注5)

注5:中国共産党との決別を意識し始めた日本共産党
   この件についての詳しい解説は平成28年9月11日の私のHPの記事を見てください。

 このおかしな判断基準に共産党のおかしさがあります。今回の綱領一部改正案では、まだ中国に気を使い中国を名指しで批判していません。なぜこのような配慮がいるのか不明です。(説明では中国のことだと説明していますが・・・)
 最後に私の邪推を書きますが、不破元委員長が中国共産党から世界一のマルクス主義者という事で中国での講演が行われてきたことも中国の評価に関連してきたのではないかと思っています。