「大阪都構想」反対の共産党の戦い方の稚拙さは目に余る


平成27(2015)年3月22日


基本方針が定まらず、主張がコロコロ変わる4年前と同じ弱点を有している。


 橋下維新の掲げる「大阪都構想」は、一斉地方選挙、5。17市民投票を間近に控え、いよいよ最終局面を迎えている。
 反対勢力は安倍首相によって公明党中央が切り崩され住民投票賛成に回り、毎日新聞での世論調査でも賛成・反対は拮抗しており、予断を許さない情勢になっている。
 「大阪都構想」を粉砕し、橋下氏を政界から葬りさることは、共産党にとっても極めて重要な課題であるはずだが、共産党の戦い方は4年前の選挙と同じで、なぜ「大阪都構想」がダメなのか、その論点が明確でない。未だに迷走し、赤旗や大阪民主新報の記事を見ていても主張がバラバラである。
 

「都構想」真の狙い知らせて(読者のひろば)・・大阪民主新報

 3月22日(日)付大阪民主新報が昨日配達されたが、この新聞を見ているだけでも共産党の混乱がうかがわれる。6面「読者のひろば」に「都構想の真の狙い知らせて」という読者の声を載せている。これは大阪民主新報を読んでいても、「大阪都構想」の狙いがわからないことを白状したような記事である。さらに8面(裏一面)に「『都』構想にノー!」「維新・公明が大阪市廃止の『協定書』可決」「『大阪市つぶすな』」「市民グループが多彩な行動」と見出しを掲げた大きな記事を載せている。しかし、その中身出しは「訳分からんものには反対」という記事から始まっている。この立場こそが共産党のマヌケさである。
 「訳分からん」という形で「大阪都構想」を捉えれば、それは橋下氏の狙うところであり、単なる人気投票に変えてしまえば、橋下氏が勝つに決まっている」この「読者のひろば」が求めているように、市民の声は「真の狙い知らせて」である」
 

「たかじんのマネー」での共産党の主張・・橋下市長の引き立て役に利用された。

 この件で思い出されるのが、「たかじんのマネー」で共産党がとった態度である。この番組には橋下市長が出演し、「大阪都構想」の宣伝の場として設定されていた。局側は、このままでは放送の不偏不党に問題があると思い他の野党にも働きかけ出演交渉したが、共産党以外は全て出演せず、共産党のみが出席した。他党派は橋下氏の企みを事前に察知し、参加を拒否したが、共産党だけがノコノコやってきた。(この共産党の出席がこの番組の成立を支えた。・・この共産党の鈍感さが安倍政権や橋下氏の補完勢力と批判される所以でもある。)
 私は一般的に共産党が出演して自らの主張を行うことに反対はしないが、橋下氏との戦いでは勝ち目がなく、他の党派が全て参加を拒否したように、橋本氏の宣伝の場に利用されることは目に見えていた。
 たかじんさんはすでに亡くなられているが、彼は橋下氏の大応援団であり、橋下氏自身もたかじんさんの後押しがあって出馬を決意したと語られている。その番組に対する警戒感も何もなく、さらに決定的な弱点は、橋下氏の主張に対してどのような主張をすればもっとも効果的に彼と戦えるかの準備もなく出席し、まさに橋下氏の独演会になってしまった。

宮原府議員団団長がもっとも強く主張したのは、プールの数が減るであった。

 この番組に参加した宮原議員が唯一批判したのは、大阪24区にプールが一箇所ずつあるのが、大阪都構想が実現すると9箇所減るという主張であった。この私の話は嘘のようなホントの話であり、私自身この断定は誤っていないか、私は何か聞き逃したのではないかと自問自答していたが、放送後発行された大阪民主新報の記事もプールが9箇所減るであったし、大阪府議会で可決(17日)後の宮原大阪府会議員団団長の談話もやはりプール等が何箇所減るであった。
 その談話を紹介すると「『都』構想は、大阪のプールや子育てプラザなど6施設122箇所を50箇所減らすなどさらなる『市民犠牲』であり・・・府民をだますやり方だ」と批判しました。(赤旗18日付4面【政治・総合】)というのが彼の一貫した主張である。
 彼は確かに、市民の目線から「都構想」を捉え、市民生活が如何に破壊されるかを説く事が、「都構想」反対に効果があると見ている。彼はわかりやすさを狙っていると思われるが、しかし、彼のこの主張こそが都構想の本質から市民の目を逸らすものであり、本質隠しに手を貸している主張だと私は思っています。

共産党以外の正党は、都構想をどのように批判しているか

 たとえば毎日新聞3月14日(土)付の新聞に大阪市議会可決の記事が載っていますが、その見出しは、「廃止か残すのか大阪市」と大見出しを掲げ、横見出しで「橋下市長『説明尽くす』」と「自民『市会が死んだ日』」という見出しを掲げています。この自民党の「市会が死んだ日」の方が都構想の本質をついています。さらに都構想案に反対(造反)した維新の市会議員の談話が載っていますがその内容は「『元々の都構想から懸け離れた協定書になっている。議会ばかりで住民の声を聞いていない。血の通わない政治に納得できない』と理由を語った。」と書かれている。それぞれの受け止め方の違いはあると思われるが、私は自民党が叫んだ「市会が死んだ日」とか維新の議員が語った「血の通わない政治」の方に政治家としての言葉に魅力を感じる。
 宮原議員が盛んに主張する「どこどこの施設がいくら減る」ということは、基本的には「大阪都構想」の本質でなく、橋下・維新政治の市民軽視の政治の一局面でしかない。ここに大阪府委員会の最大の弱点があると見ています。


大阪都構想と如何に戦うか

 私は大阪都構想と闘う共産党の戦い方に政治的稚拙さを感じており、気持ちとしては焦っています。本来どのような戦いをするべきか以下に私の考えを書いてみます。

第一は、未だに大阪都構想の本質が暴けていない。

 大阪民主新報を見ていても、全く論理性に欠けている。まず「大阪都構想」を一言で表すキャッチフレーズを定めることが大切である。基本的には「大阪市の解体」という言葉の延長線上の言葉がふさわしい。最新の大阪民主新報は「大阪市解体案」可決と書いている。まず大阪市民にこれは「大阪市がなくなる」ことだというイメージで闘うことが重要である。
 もし世界の有名都市でたとえば「パリ」や「ロンドン」がなくなることが考えられますか、日本でも京都市がなくなることが考えられますか、京都で提案されれば絶対に通らないと思う。なぜ京都で通らない「京都市廃止案」が大阪で通る可能性があるのか、それは文化に対する価値観の相違であると思われる。
 京都市民は古都京都というフレーズに愛着を持っているが、大阪は「笑いの街」であり、街頭インタビューでも全ての人が面白さを重点に対応する。大阪には「吉本党」という「影の党」があり、西川きよし、横山ノック以来の吉本芸人を政治家としてトップを占めることを期待する雰囲気があります。現在の政治に愛想を尽かした者が、それなら笑いの時点で政治を見てやろう(批判してやろう)という流れがある。
 今回の橋下人気を支えているのもこの100万票と言われる「吉本票」が大きく作用します。「単に面白さやノリに流されず、本当に大阪市がなくなって良いのか、会話を重ねて行くことが重要です。」
 堺市がなぜ維新に屈しなかったのか、これも堺という歴史ある都市が、大阪市に吸収されることを市民が拒否したからだと思っています。大阪市という都市に対する愛着が、本当に吉本でいいのかも大事な争点だと思っています。しかも橋下氏は吉本というお笑いの仮面をかぶりながら、実際は、個人の政治的野心のために大阪市民が犠牲になることに何ら痛みを感じない人です。
 卑近な話で申し訳ないですが、最近同窓会ソフトというのがあってそこを検索してみたのですが、いつの間にか私の卒業した小学校も中学校も廃校になっていました。やはり寂しい気がします。大阪市という都市の魅力、それに対する愛着あるいは文化的側面も大事な争点だと思います。

第二には、大阪都構想と憲法改悪は繋がっているという視点で戦うことが重要です。

 何回も言っていますが、「『今年の政局は5月17日だ』と、ある高官が語った」と独立総合研所 所長の青山繁晴氏が関西テレビで相当前に語っています。安倍首相は「大阪都構想」を支援し、これの実現に手を貸し、その見返りとして橋下・維新は憲法改正を支えるというものです。その際、安倍氏は「与党のパートナーとして公明党と維新をチェンジする覚悟だ」とも彼は言いました。これは政府側からの公明党に投げかけられた「ブラフ」でもあります。
 今回、集団的自衛権行使のための「戦争立法」の与党内議論ももう少し公明党が健闘するかとみていましたが、あっさりと政府提案を受け入れました。これは与党の旨みを維新にとって変わられると焦りが出ていると思われます。
 公明党は、大阪都構想で重大な裏切りを行いました。あれだけ反対だと言ってきた大阪都構想の議案に大阪市・大阪府と相次いで賛成に回り、住民投票に持ち込みました。住民投票では安倍首相の介入で今度は自民党が裏切る可能性があります。もし自民党が裏切り、都構想案が通れば、今度は憲法改正に維新が賛成し、日本が「海外で戦争できる国」へ一直線で進んでいきます。
 この政治的な重要な局面で、大阪府会議員団団長の「プールが24箇所から9箇所減る」という論議は、物事の本質を隠蔽する役割しか私は持たないと捉えています。

第三は、民主主義の問題です。

 橋下氏が考えているのは独裁です。大阪というこの組織の権力を一元化し、自分の思うとおり運営したいというのが彼の狙いです。
 しかし、彼のこの狙いがこの間大阪行政を如何に混乱させて来たかは明らかです。彼のやった人事(民間出身の校長や区長あるいは大阪府の教育長)は全て破綻しています。
 しかし大阪都構想を通じて、彼が狙っているのは、大阪市議会の解体、労働組合潰し、及び民主的な教育の破壊です。彼は独裁を狙っていますから、どこに権力があるか狙いを定めその権力の解体を狙っています。
 既存の大阪市の権力構造にも問題があったため、彼のこの「解体新書」は市民から一定の支持を得ていますが、しかし議会や労働組合は、民主主義にとって重要な組織です。取り分けて大阪市は部落解放同盟との癒着が、当局側のみでなく組合側にもあり、その矛盾が大きかったため、橋下氏の「ぶっ潰す」論議に賛成する人もいますが、この主張が如何に危険かも訴えていく必要があります。

第四は、二重行政解消の議論です。

 「大阪都構想」の実現で本当に市民生活が豊かになるのか、具体的な批判が重要です。大阪市の財源が2200億円も府に吸収され、それらの財源が本当に市民のために使われる保証があるのかの点検も重要です。(京大教授藤井聡氏の主張)

 これらの論点を正確に分析し、赤旗も大阪民主新報も同じ立場で訴えて行くことが重要です。

次に敵勢力は万全かについて少し書いてみます。


 4年前大阪維新の会は大勝利しましたが、この4年間様々な問題を起こしています。選挙違反でも維新議員が目立ちます。また維新から出て行った議員もいます。「大阪都構想」最終決着の場(市議会)で造反者が1名出たのも大きいです。しかもその造反議員の批判が共産党よりも的を射ています。
 さらに、面白いのは、安倍氏が橋下氏に近づき大阪都構想を支持すると言っている最中に、京都大学大学院工学研究科教授で、第2次安倍内閣・内閣官房参与の藤井聡氏が大阪都構想を批判し始めました。これには橋下市長もカンカンで、藤井教授がインターネットの動画上で橋下氏を「ヘドロチック」などと批判したことに、「この、チンピラだけはただしていきたい」と激怒。「京大の山極寿一総長に見解を求め、総長の回答次第では、自身が最高顧問につく維新の党が、国会で問題として取り上げ、京都大学の総長を吊るし上げる」とまで息巻いています。
 この藤井教授の大阪都構想反対の主張は的を射ておりなかなか面白いです。さすが「京大を舐めてもらったら困る」と言い切るだけのものであります。共産党の主張よりもよっぽど分かりやすいものに仕上がっています。
 共産党は、安倍首相と橋下氏を引き離すためにも、藤井教授を大切にする必要がありますが、そんな才覚もありません。今大切なことは、大阪の自民党が公明党のように裏切らないよう支えていく必要性があります。また藤井教授の主張を赤旗でも大きく取り上げ、みんなが学べるようにしなければなりません。
 市民の中に入っていく際にも、安倍首相に近い京都大学の藤井聡教授が橋下氏を批判しているというのは大きな説得力になります。

橋下氏は今マスコミに圧力をかけ、学者等の「大阪都構想」批判を封じ込めています。

 橋下氏は、京大教授の藤井聡氏がテレビに出ることを極端に嫌がっています。(注1)それほど藤井聡教授の主張「大阪都構想の不都合な7つの事実」が橋下氏にとって都合が悪いのです。
 その彼が「たかじんのマネー」では、共産党の府会議員団長である宮原氏対して、開口一番に、この方は立派な方だと褒めました。京大の藤井教授は「チンピラ」と呼び、宮原氏に対してはいい人だと彼が言ったのは、宮原氏が出席しなければあの番組が成り立たなかったからです。完全な偏向番組になってしまいます。宮原氏は橋下市長に対して有効な反論ができず、彼に見事に利用されただけです。

闘う前から敗北を認めている敗北主義、藤井聡教授との連帯が不可欠

大阪民主新報(3/22)が主張した「訳分からんものには反対」という大阪民主新報(共産党)の主張は、敗北主義です。「大阪都構想」の問題点を誰にでも分かるように整理して宣伝戦を行う必要があります。
 共産党の大阪都構想に対する批判はその論点が未だ明確になっていません。大阪府会議員団団長の宮原氏が、プールの数が減るとの言う次元の批判をしている限り、橋下氏にとって共産党は怖い存在ではありません。
 今、橋下氏が恐れているのは、藤井聡教授の「大阪都構想不都合な7つの事実です」これを基本に共産党の考えをまとめる必要があります。その際共産党らしく、橋下氏は自治の否定と民主主義の否定を狙っているという項目をしっかり立てて、大阪市議会の解散や組合つぶしの企み、独裁化を図ろうとしていることを追求していく必要があります。
 この対案の良し悪しは、橋下氏が共産党の対案にヒステリックに反対してくれば、彼にこたえていることが分かります。
 現在のように一緒にテレビに出て、褒められているようでは、完全に舐められているということです。そのことがなぜ共産党に理解できないのか私には不思議でたまりません。
 最後にもう一度言いますが、「大阪都構想」の戦いに藤井聡教授が絡んできたことは、反対派には大きな戦力です。これをうまく活用することが大切です。

注1:2015.3.5 15:35 サンケイ
維新、テレビ局に藤井京大教授の出演自粛求める
 維新の党の看板政策「大阪都構想」をめぐり、内閣官房参与の藤井聡京都大大学院教授が反対の立場で中立性に欠ける発言をしているなどとして、同党がテレビ各局に出演を自粛するよう要請する文書を送っていたことが5日、分かった。
 同党最高顧問の橋下徹大阪市長は自ら指示したことを認めた上で、「藤井氏は反対派のタウンミーティングに参加するなど政治活動をしている。選挙が近づいてきているので、メディアも報道の自由を言うのであれば自ら律して中立性を保たないといけない」と語った。
 文書は松野頼久幹事長名で送られ、藤井氏の番組出演は「都構想に反対している政党や団体を利することになる」とした。
 藤井氏は「当方は賛否などの政治的呼びかけはしない。学者としての所見を申し上げているのみ。そもそも放送法は、意見が対立している場合には多面的論点が必要とうたわれているはずだと認識している」と反論している。