共産党の選挙総括を切る。公明党との違い、東京と大阪の違い等から


平成29(2017)年11月11日


選挙戦の総括、共産党より公明党の方が民主的。幹部に対する批判を認めている。


 共産党の選挙戦の総括は投票日の翌日に発表されている。これは他の政党に比べすごく早くて分かり易くて良いが、しかしこの総括に党内の声が、あるいは支持者の声が反映されているのか疑問です。
 本日付(11/11)の赤旗に公明党の選挙戦の総括記事が出ています。その記事の中で山口那津男代表の発言があります。「衆院解散時の『35議席維持』との目標に届かず6減したことについて『党執行部の責任だ』と言明」と赤旗は書いています。
 赤旗の総括は、電光石火のごとく開票日の翌日に出され、その敗因は「私たちの力不足にあると考えています」(日本共産党中央委員会常任委員会)と集約されています。
 この赤旗の姿勢は、選挙総括を党の常任委員会以外は誰にもさせない(発言させない)これが総括だといち早く出し、全党を上げてこの総括の学習を行い、それを承認させる運動を行っています。公明党の方がよっぽど民主的な政党に見えます。
 本日付赤旗には8面【党活動】では、共産党のこの動きを大々的に報道しています。見出しは「常幹声明」「一気に討議し新たな前進へ」というものです。各地での取り組みが紹介されていますが、石川県の取り組みに以下のような記事があります。
 「常幹声明の討議、国会議員団総会での志位委員長の挨拶を学習するなかで『逆流を放置すれば改憲二大政党化が進み、日本の民主主義が危機に瀕する危険があったなか、逆流に抗して野党共闘の大義で奮闘したわが党の役割に確信が持てた』との思いも広がっています。」・・・「最初は選挙総括に否定的な意見を出していた県委員も『確信を持った』発言しました。」
 この記事はまさに洗脳であり、独自の見解を表明した者を、「常幹声明の立場に立たせる」指導の場になっています。共産党としては、「県委員でも反対の意見が出せる・・・民主的運営が行われている。」という宣伝に使おうとしているのだと思いますが、投票日の翌日に選挙総括の常幹声明が出され、それに従わない奴はこの組織では生き残れないという儀式に見える。
 私が活動していた時、共産党の赤旗拡大一辺倒の運動に不満を持っていた私は、ある日私の家に泊まった仲間にこの話をした際、彼は「赤旗は読むものではなく、拡大するもの」と言い切った。この人物はその当時大阪の国会議員とも親しくしていた人物である。

 話が横にそれたが、選挙総括を具体的に行わず、「私たちの力不足」という曖昧な総括(負けたにだから力不足に決まっている)でお茶を濁していれば、何も教訓を学べない。次の選挙でも負ければまた同じ総括になる。問題点を見出してこそ、次回の躍進につながる。

共産党第27回大会決議案の用語解説(2016/11/21が面白い

 この中に、選挙活動の四つの原点の解説が行われている。
(1)国民の切実な要求にもとづき、日常不断に国民のなかで活動し、その利益を守るとともに、党の影
   響力を拡大する。
(2)大量政治宣伝と対話・支持拡大を日常的におこない、日本共産党の政策とともに、歴史や路線をふ
   くむ党の全体像を語り、反共攻撃にはかならず反撃する。
(3)「しんぶん赤旗」の役割と魅力をおおいに語り、機関紙誌の読者拡大をすすめ、読者との結びつき
   を強め、党を支持する人々を広く党に向かい入れる。
(4)さまざまな運動を組織・団体の中で活動を強め、協力・共同関係を発展させる。日本共産党後援
   会を拡大・強化する―――などです。

 選挙活動の四つの原点とされていますが、全ては強大な党建設の課題になっています。自分の党の建設だけに重きを置くこの選挙方針を国民が知ったら、誰がこの党を支持しますか?私は非常に疑問に思います。
 通常選挙で必要なのは、【地盤・看板・鞄】と言われています。この世間一般の常識を外した方法では選挙戦は勝利しません。そのことを立証したのが今回の選挙で、希望の党が地盤を全く無視し、候補者の地盤を放棄させ、小池氏が勝手に選挙区を指定したため、有力前職が落選しています。(注1)また希望の党で小池氏が決めた候補者は1名しか勝利していません。この彼は小池氏の元部下で比例近畿ブロックで優先され当選しましたが、180名ぐらいが全て負けています。勝利したのは、地盤を持っている、前民主党議員がほとんどです。

注1:毎日新聞11月10 小池劇場の役者たち 落選を語る
   福田峰之元副内閣相の事を取り上げています。
   福田氏は20歳で自民党に入党。横浜市議を経て2005年参議選から連続4回、神奈川8区から立候補し
  たが、いずれも江田憲司氏に敗れた。09年を除く3回の当選は比例代表での復活。自民党の大勝に救
  われた議員バッチともいえた。
   彼は希望に救いを求め、自民党の副大臣を辞任し、希望の党に走ったが、選挙区は東京5区に割与
  えられた。結果は散々で4万5737票。自民党候補の半分にも至らなかった。(同じ事例は、小沢鋭仁
  氏も比例近畿から東京25に変えられ落選している。)

 選挙用語を少し説明しますと、「地盤」とは、選挙区内の支持者の組織です。一般的には本人の個人後援会をさします。保守系の議員はこの地盤を世襲して醸成し勝利します。共産党はこの地盤を否定し、個人後援会は作らず、共産党の後援会です。(組織が議員を送り出すという発想です)昔、創価学会の池田会長が俺が「デェイジン」にしてやるといった発想です。宮本委員長も須藤五郎氏の発言を捉えて「役者がセリフを間違えた」と発言したことがあります。
 「看板」は知名度です。どれだけ候補者個人に対する認知度があるかです。共産党は候補者個人の役割を全く否定しています。候補者の魅力で票を集めるという発想がありません。
 三番目の「鞄」は、共産党には難しい課題です。お金をさします。これは永遠に無理ですが、上記二点を重視しない限り、選挙で勝つことは難しいです。
 
衆議院選挙(比例区の結果)から、東京都と大阪府の比較を行う。

 東京都と大阪府では大きな違いがある。以下具体的に見ていきたい。

 ※比率は東京を1とした場合大阪の倍率を表しています。例えば日本維新の会は東京に比べれば大阪は
  8.10倍の力があるということです。公明党も大阪は強く東京の1.48倍の力を持っています。逆に共産
  党は大阪では弱く、東京の88%の力しかありません。

●上記表から見えてくること
★立憲民主は全国政党であるが日本維新の会は地方政党である
 東京・大阪とも得票率一位は自民党であるが、二位は東京は立憲民主党であり、大阪は日本維新の会である。立憲民主は大阪では4位であり得票率は14.20%あるが、日本維新の会は東京では6位であり得票率も3.32%であり、共産党の3分の1以下の得票率である。立憲民主は全国政党と呼べるが、日本維新の会はまさに大阪の地方政党に過ぎない。

★希望の党も地方政党か?
 希望の党は東京では、17.44%を獲得しているが、大阪では6.01%である。公明党の15,95%、共産党の9.13%にも及ばない。やはり小池百合子頼りの地域偏重型政党である。ただ「三都物語」といって維新と希望は棲み分けを行ったことが影響しているのかも知れない。

★立憲民主党と希望の力関係は
 東京では、立憲民主が23.58%、希望の党が17.44%であり立憲民主が希望の1.4倍獲得している。大阪では、立憲民主は14.02%に対し希望の党は6.01%であり立憲民主は希望の2.3倍獲得している。これは希望の党が大阪維新と似通った政党であり、大阪での希望の党の存在価値がないと見られたと思われる。
 
★自民党と立憲民主+希望の党の力関係は 
 一般的に政党が分裂すれば、戦う力がそがれると思われるが、民進党は四分五裂に分解して勢力を伸ばした。忍法分身の術のような感じがする。自民党対立憲民主+希望の党の票数は自民党18,555,717票、旧民進計は20,762,414票獲得しており(無所属で立候補した票を加えていない)自民党より220万票も多く獲得している。 
 大阪で同じ比較を行えば、自民党が943,711票、立憲民主+希望の党で694793票であり、自民党の約74%にしかならない。これは大阪維新の会が強いためと思われるが、他の政党が全て大阪維新に荒らされている中で、自民党だけは大した影響を受けていない。正に腐ってもタイの貫禄がある。(自民党は全国で約33%獲得しているが、東京では東京では30%、大阪では27%である。)
 大阪の立憲民主の獲得した票数486243票は、前回民主党が獲得した293606票を大きく上回り(1.7倍)さらに希望の党の票数を加えれば694793票となり、前回民主党の2.4倍の票を獲得したことになる。(それでも自民党の74%にしかならない。)

★公明党と共産党の力関係について
 東京では共産党は、618,332票、公明党は644,634票とほぼ拮抗している。これに対して大阪では、共産党316,651票対公明党553,451票であり公明党は共産党の1.75倍獲得している。私は共産党と公明党の比率は1:2だと思っていたが、東京では意外に共産党が奮闘していることに驚いた。(公明党の得票率は大阪では15.95%、東京では10.81%である。)
 
★新党ブームに共産党は押し流されているのか?
 今回の共産党の比例の得票は4,404,081票であった。これは得票率で言うと7.9%であり、前回の11.4%より3.5%落としている。票数では1,658,881票逃がしている。(これは3割逃がしたことになる。)
 東京は10.37%あり、まあまあだが、大阪の9.13%は負けすぎである。(両方とも全国平均よりは良いが・・・)

★社会党に未来はあるか?
 革新の老舗の社会党の現状は、共産党より悲惨であるが、今回の選挙でほぼその役割は終わったと思われる。大阪では前回48,946票であったが、今回は25,447票である。ほぼ5割しか獲得していない。国会議員だけでなく、地方議員も当選が難しくなるのでは・・・
 社会党のこうした衰退は、労働組合運動に頼り切った組織であったことに大きな原因がある。労働組合を社会党だけを推薦するで固めてきたが、労働組合そのものが資本の圧力の前に右傾化する中で、社会党は存在価値を失いつつある。
 憲法問題で、「憲法を守れ」で頑張っているが、非武装中立路線が現在の国際情勢の中で説得力を持ちえない。さらには、学生運動の過激派や部落解放同盟の理不尽な運動を支持してきたことも社会党の衰退を推し進めた。

★共産党に未来はあるのか
 立憲民主党が成功するか、数年で消え去るかにかかっていると思われる。(通常新党ブームは短時間で終わっている。)おそらく旧社会党的な安全パイ的イメージで支持を固めるのでは思っている。もしこの立憲が成功すると共産党はその立ち位置が難しくなる。
 憲法改悪反対は国民のおよそ半数の勢力があるが、社会党や共産党(?)がいう非武装中立的立場から反対している人は少数派だと思う。枝野氏の立憲民主は、自衛隊は認めるが、海外に侵略する軍隊は認めないという主張で多くの国民の心をつかんだ。
 共産党も自衛隊に対する方針を確立しないと、支持は増えない。政党として、国を預かるものとして、国民の生命と財産を守る事は最大の課題である。軍拡競争は馬鹿げているし、多くの国民も北朝鮮を軍事力で蹴散らしてしまうことには賛成しないだろう。しかしそれでは我々の安全はどこで保証されているのか確かな言質を求めている。
 共産党のいう、自衛隊の解散は当面行わない。国民の多数が自衛隊の解散に賛成するまで自衛隊を解散しない。という方針には説得力が全くない。安全はいかにして守るのか誰が聞いても納得できる説明が必要である。
 現在の共産党の安全保障政策では、選挙で勝利することはできない。あるいはどの政党も共産党とはタッグを組まない。そのことを見据えて議論すべきだ。国民の命を守るを政策が、いの一番に語らない政党は、支持を集める事はできない。憲法改悪反対派の中には自衛隊容認派が多くいることを理解しないと、反対運動は広がりを持たない。
 命を守る方法は平和を求めて戦うことが、最もそのことを実現する近道だと言うなら、そのことの論理体系を整理し、説得運動を推し進めなければならない。ガンジーの唱えた無抵抗主義が平和をもたらすなら、それも理論化しなければならない。
 どうしたら戦争を防ぎ、国民の命が守れるのか、そのことを整理して国民に提示できない限り、支持を増やすことはできないと思う。
 55年体制から社会主義の崩壊で世界の情勢は変わった。この世界情勢の中でいかにして平和を求めるのか、新たな理論構成が求められる。中国や北朝鮮が日本に銃口を向ける事がないと言う保証を示さない限り、国民は不安がっている。麻生氏は選挙に勝ったのは北朝鮮のおかげだと言った。正にその通りである。
 安倍政権は北朝鮮の危機を煽り選挙に勝った。トランプ氏は日本に大量の武器を買わす事に成功した。全ては無責任なあおりで国民をだましている。その時に選挙戦の最初のビラで「北朝鮮にきびしい抗議を」というビラを撒く共産党の心理構造が分からない。明らかに政府側を利するビラだ。
 こんな国民を扇動するようなビラでなく、いかに平和を求めて戦うかその道筋こそが共産党に求められている。

自民党山本一太氏の発言に注目する。

 テレビの政治討論会をユーチューブで見たが、確か小池書記局長も出席していたが、その席で山本一太議員が面白い発言をした。
 「私は共産党を信頼していると言うより尊敬している。その内容は終止一貫してしていてぶれないことだ」と言った。
 私はこれは褒め殺しであって、新たな反共攻撃だと思う。共産党は情勢の変化に対応できない、すでにガラパゴス化した政党だということを、国民に印象づけている。インターネットを見ていても共産党は保守だという書き込みを見る。先日私も書いたが赤旗が共産党が保守だと言われることを嫌がっていない。
 しかしいつの間にか革新のイメージが消されているのではないか?、やはり55年体制の崩壊後の世界情勢の分析を行い、憲法問題も一字一句変えないでは、時代に対応できないと見られるのではないか。
 上田浩一郎はアメリカの核は侵略のための核だが社会主義国の核は平和のための核と言い切った。私はそれを信じていたし、アメリカを日本から追い出すことが重要だと捉えていた。しかし現在中国は我々日本国民に平和をもたらしてくれるか、安全を保障してくれるかその保証は全くない。
 この時点で日本国民の安全を如何に守るかを提起できずに、憲法守れだけでは単なガラパゴスとのレッテルを貼られ、勝利できないのではと思っている。時代に合わせた護憲運動の考え方を明確に示すべきだと思う。