従軍慰安婦報道と赤旗新聞


平成26(2014年)年8月18日


朝日新聞 

   吉田清治氏の発言に基づく20数年前の従軍慰安婦関連の記事を取り消す。


 8月5日6日の朝日新聞の従軍慰安婦関連の記事が大きな話題を呼んでいる。強制連行の証言を行った、吉田 清治氏の証言が事実でなかったことを朝日新聞が公式に認めた。しかし朝日新聞の立場は、彼の証言が虚偽であったことや、従軍慰安婦と挺身隊の混同が行われていたことは認めたが、このことをもって、過去の軍が主導した従軍慰安婦の存在そのものが否定されるものではないと主張している。
 また朝日新聞社としての責任の問題は触れず、「その当時朝日新聞だけで無く、他のマスコミも吉田証言を元にした従軍慰安婦関連の記事を書いていた。」という主張を行い。責任逃れを行った。(注1)

注1:朝日新聞は1997年3月31日に吉田の「著述を裏付ける証言は出ておらず、真偽は確
  認できない」との記事を掲載したが、訂正記事は出さなかった。今回(2014年8月5
  日)付記事「『済州島で連行』証言 裏付け得られず虚偽と判断」で、吉田証言に関
  する記事の正式な取り消しを行った。

 ここで「もう一人の当事者」もこの問題に対する見解を求められていることを見逃してはならない。それは共産党及び赤旗新聞である。従軍慰安婦の記事は、吉田証言が元となり、朝日新聞や赤旗が主導して、この論陣を張ったことが、すべての事の始まりである。1965年(昭和40年)6月22日に日本と大韓民国との間で結ばれた条約。通称日韓基本条約。日本の韓国に対する莫大な経済協力、韓国の日本に対する一切の請求権の解決、それらに基づく関係正常化などの取り決めがある。
 この取り決めの際、従軍慰安婦の問題を戦後補償の問題として韓国側は何ら提示していない。明らかに従軍慰安婦の問題は、日本発で火が付いた経過がある。この問題は、91年の8月の朝日新聞や赤旗の報道がその根底にある。

吉田証言が虚偽である事は、歴史学者の泰郁彦氏が早くから指摘


 この吉田証言が虚偽だということは、日本の歴史学者の中では早くから目を付け批判を加えていたが、最初は右翼的立場の人たちの理不尽な主張と思われていたが、著名な歴史学者である秦郁彦が済州島で取材を行い、その事実がないことを立証した。(注2)

注2:秦氏はこれらの調査を産経新聞 1992年(平成4年)4月30日で発表、『正論』1992
  年(平成4年)6月号にも調査結果を公表した。この論文は『昭和史の謎を追う』
  (文藝春秋1993年3月)にも掲載し、菊池寛賞を受賞した。その著書の中で吉田を
  「職業的詐話師」と称している。

吉田氏自身も、これが事実に基づくものではなく自分が脚色したことを認めた

 
 吉田清治氏は、1995年に「自分の役目は終わった」として著書が自身の創作であったことを認めたが(注3)、朝日新聞や赤旗が、その主張を引っ込めなかったため、従軍慰安婦問題における吉田証言の果たした役割については今日まで検討は行われず、多くの研究者から吉田証言の怪しさについて批判がなされていたが、それらが右派的ジャーナリズムであったため、共感を寄せる者は少なく、朝日新聞や赤旗の主張の方が正しいと思ってきた人の方が多数派を占めてきたと思われる。

注3:1996年5月2・9日付け週刊新潮インタビューで吉田氏の語ったこと。
   「まあ、本に真実を書いてもなんの利益もない。関係者に迷惑をかけてはまず
  いから、カムフラージュした部分もある。事実を隠し、自分の主張を混ぜて書く
  というのは新聞だってやることじゃありませんか。チグハグな部分があってもしょ
  うがない。」と語り、自らの証言を創作(フィクション)を含むものであることを
  改めて発言した。
   この発言は自らの本を売るために嘘をついていた事を白状した内容である。この
  彼の嘘に朝日新聞や赤旗は踊らされた。しかもこれが日韓の最大の懸案事項になり
  友好が損なわれた。この彼の罪は重いと思われる。  
 
 今回朝日新聞は、従軍慰安婦の問題で強制連行に携わったという吉田証言は虚偽であったことを認めたが、しかしこのことでもって、強制連行が否定されたわけでも無く、従軍慰安婦問題は日本として解決しなければならない問題であることに代わりが無いと主張している。
 
 この問題のもう一人の当事者である、共産党、及び赤旗新聞は、どう捉えているのか、この問題が重要である。不思議なことに赤旗新聞は、この問題が日本と韓国の友好関係を築く上で最も重要な問題であるにもかかわらず、朝日新聞の見解発表後も沈黙を守っている。国民政党としてもジャーナリズムとして失格である。

毎日新聞の対応:報道の自由を持ち出し、政府に対して牽制

 
 毎日新聞は、朝日のこの間の姿勢を批判しながらも、ジャーナリズムの果たす役割を強調し、自民党の石破幹事長が「地域の平和と安定、隣国との友好や国民感情に大きな影響を与えてきた報道だ。検証を議会の場でも行う必要があるかもしれない。真実を明らかにしなければ、この先の平和も有効も築けない」と述べたことに対して、【解説】で「報道の自由に懸念」という見出しで、「吉田清治氏の証言についても研究者の間では信用性が薄いという評価が既に定着しており、・・・改めて検証すべきものがあるとは思えない。」小黒純・同志社大大学院教授(ジャーナリズム論)は『政治的に利用しようとしているのを感じる』と話した」という解説を載せている。(8月6日毎日朝刊一面トップ記事)
 さらに毎日新聞は翌日社説で「慰安婦報道 国際社会に通じる論で」という見出しでこの問題を扱った、少し長いが全文引用する

 朝日新聞が慰安婦問題に関する過去の自社報道を検証し、一部に誤りがあったと認めた。慰安婦問題は歴史認識を巡って鋭く対立する日韓関係の最大の懸案だ。不確かで行き過ぎた報道がこの問題を冷静に議論する場を奪ってはならない。
       
 朝日新聞は1980年代から90年代初めにかけ、朝鮮半島出身の女性を強制連行して慰安婦にしたという故吉田清治氏の証言を16回掲載し、慰安婦問題を追及した。今回、朝日新聞は証言を虚偽だったと認めて取り消したが、同氏の「慰安婦狩り」証言などに基づく朝日新聞のキャンペーンは、日本国内で激しい論争を巻き起こす契機になった。
 慰安婦問題とはそもそも、戦時下において女性の尊厳が踏みにじられたという、普遍的な人権問題だ。国際社会に通じる感覚と視点で議論していくことが求められる。
 にもかかわらず、朝日新聞が吉田証言を前提にした報道を続けたことで、国内論議は慰安婦の強制連行の有無にばかり焦点があてられた。その結果、女性の人権という問題の本質がゆがめられたのは残念だ。もっと早く訂正すべきだった。

 朝日新聞は、他紙も吉田氏のことを記事にしたとしている。毎日新聞(東京本社発行版)は92年8月12日と13日、吉田氏がソウルに行って謝罪したという事実を短く伝えたが、吉田証言には信ぴょう性に疑義があるとの見方が専門家の間で強まり、それ以降は報じていない。

 毎日新聞は慰安婦問題について、法的には国家間で決着済みとする政府の立場を踏まえつつ、これを人権問題として考え、医療や社会福祉などの面で救済措置を講じることができないかと提案してきた。

 河野談話に基づき95年に設置された「女性のためのアジア平和国民基金」が、首相の「おわびと反省の手紙」を添えて韓国、台湾、フィリピンなどの元慰安婦に1人あたり200万円の「償い金」を渡すことにしたのは、当時の日本としてできる最大限の措置だったといえる。

 しかし、韓国側はこれをいったん評価しながら、その後、あくまで国家賠償を求めるとして受け取りを拒否した。これが、慰安婦問題がこじれて今日に至った大きな原因である。

 もつれた糸を解きほぐすには、双方が知恵を出すしかない。

 ただ、「旧日本軍の関与」という言葉で政治決着させた河野談話を安倍政権が引き継ぐと世界に約束した以上、広義の強制性か狭義の強制性か、といった国内論議に改めて時間を費やすのでは、国益を損ねる。戦時下の女性の尊厳というグローバルな問題と捉え、日本の取り組みを再構築していくべきだろう。【以上朝日7日社説】
 .      
 私は、毎日新聞のこの立場を基本的に支持する。吉田清治氏の発言は虚偽であったことを認め、その虚偽発言がもたらした影響の検証を行うことは必要であるが、これが虚偽であったから従軍慰安婦問題はなかったと短略的な思考から国際的に日本が発言を行えば、日本は国際社会から袋叩きに会うと思われる。この問題は再度歴史的な検証をしっかり行った上で慎重な発言が求められる。日本政府の言う、軍の管理のもとに行なわれたという書類は一切認められないから、事実ではないという発言は認められないと思う。なぜなら敗戦時日本側に不利な書類はすべて破棄されたと思われるからである。
 韓国側が現実に被害者がいるというのであれば、その内容を聞き取り、ひとつひとつ丁寧に対応していくことが必要であろう。本人の思い違いや、事実と異なる場合もあるであろう。しかし本人が実際にそう思い、日本側に謝罪や、賠償を求めているのであれば、それはそれとして解決していくことも重要である。一切日本側に非がなかっただけではこの問題は解決せず、日韓の友好の大きな妨げになるであろう。現在の安倍政権は「河野談話」に否定的であるが、河野談話は日韓の友好親善という意味で未来志向から発せられた談話だと思われる。
 安倍政権の「河野談話」の見直しは、韓国だけでは無く、アメリカも大きな嫌悪感を示しており、日本の国益を守ると言いながら、結果的には、日本は国際的に孤立し、日本の国益を失っていることを見ておく必要がある。

共産党・赤旗新聞はこの問題に対してどう対応したか 


 朝日新聞の、「吉田清治発言は虚偽発言と断定した」という朝日の主張を見て、赤旗はどのように主張するか注目して見ていたが、赤旗はこの問題に一切触れていない。唯一10日(日曜日)のテレビ番組「報道2001」に出演した小池副委員長が発言した内容を伝えこの問題の沈静化(責任逃れを)図ろうとしている。

 この問題を共産党は、正々堂々と自らの主張を語る義務がある。その第一はこの吉田某が共産党員であったことが一つは大きい。第二には朝日のキャンペーンが主力ではあったが、やはり同じ立部で共産党もこの吉田証言を元に従軍慰安婦は軍が強制連行して集めてきたと主張してきた。(注4)

注4:1992年11月14日、赤旗は吉田自身が最低950人、多くて3000人の朝鮮人女性の強制
  連行をしたと報道した。

「吉田清治証言」の重み

 
 これは私の個人的経験談ですが、私の職場の同僚であった共産党員のA氏に、この問題だけでなく、南京大虐殺や、高槻の特殊性から言えば、タチソの洞窟で働いていた朝鮮人労働者の数など、今まで我々が真実だと思っていたことが、右翼の地道な活動によってひとつひとつ潰されてきている。例えば南京大虐殺の証拠写真などもそのほとんどが他の写真であることを彼らは立証し、ピース大阪も、展示品の撤回にまで追い込まれている実態があると話した際、その彼は、我々が今まで学んできたことに誤りがあるはずがない、右翼の指摘を受けて見直しが必要だと言うのは裏切りだと何時間も絡まれたことがある。(彼はだいぶ酒を飲んでいたが)
 なぜこんな話を書いたかと言うと、小池氏は、吉田証言が嘘だということはみんなが知っていた。河野談話でも吉田証言は何ら影響を与えていないと主張したが、河野談話作成の際に吉田氏に聞き取り調査を行い、さらに吉田証言が虚偽だという2名(泰郁彦氏と吉見義明氏)に聞き取りした。その結果、河野談話には吉田証言は全く採用されていないと主張した。
 その当時の河野内閣官房長官が、吉田証言を全く信用せず、あの談話を出したとも思われない。河野談話は明らかに従軍慰安婦に関して軍の関与を認めており、強制連行についても広義の意味では強制連行があったことを認めている。
 
 すくなくとも先にあげた私の経験でも、朝日新聞や赤旗の過去の主張を100%正しいと信じている人がいるという事実は重要である。
 私は、従軍慰安婦問題について、日本が胸を張って何らやましいことはないという主張を行おうというものではない。「河野談話」を継承し、韓国側が納得する形で国家としての責任の取り方を模索すべきであろう。
 しかし、吉田氏が証言した済州島で1000人の人を従軍慰安婦として強制連行したという話はまったくの虚構だと思っている。これについては韓国の地元紙も「吉田証言の裏を取ろうとして回ったが、何も証言を得られなかった」と言っていることからして、まったくの彼の作り話だと思っている。今回朝日新聞はこの点を認めたことが重要である。先に挙げたフジテレビの「報道2001」(10日)もこの立場での検証映像を流した。
 赤旗は、小池氏が、吉田証言は嘘だということは、すでに皆が知っている公然たる事項だと主張したが、そんな話を、赤旗を読む限りまったく目にして来なかった。朝日新聞と赤旗新聞は同じ立場だと理解してきた。赤旗新聞は多くの読者が赤旗(正義の見方・真実の友)の主張こそ真実だと思って読んでいる実態をどう捉えているのか? 小池氏の発言「吉田証言が虚偽である事はみんな知っている、『河野談話』にもなにも影響を与えていない」はあまりにも無責任である。赤旗は、何時『吉田証言』は『虚偽』だということを認めたのか、その年月日、及びその内容を明らかにすべきだ。
 5〜6年前であったかと思うが、従軍慰安婦の問題を「朝まで生テレビ」で取り上げられたことがあった。この際この吉田証言等も話題に上り、泰郁彦さんも参加されていて、この『吉田証言』はまったくの『虚偽』であり、私は現地をくまなく歩いて調査したというような発言があった。私は共産党や社会党関係の学者も参加されており、この泰郁彦氏の主張に論理的に反論されることを期待したが、その場の論議は従軍慰安婦の強制連行等について、否定派は鋭く論陣を張ったが、肯定派は全く押され気味であった。
 従軍慰安婦問題の理論武装が必要だと思ってインターネットを検索したが、強制連行がなかったという論理の主張が圧倒的に主流をしめ、しかも資料等も豊富で論理的であることに気がついた。強制連行を主張している人の論理を捉え、それがすべて論破されていることを知った。
 「朝まで生テレビ」であまりにも強制連行主張派の議論が弱いので、出てきた人たちがあまり能力のない人かと思ったが、既に歴史学者の世界では完全に論破されていることに気がついた。参加していた強制連行支持派は、泰氏の虚偽だという主張に有効な反論はできなかったが、泰氏の指摘している『虚偽』だという主張に賛同もしなかった。(小池氏の主張のように吉田証言が虚偽だという主張が全員の意思ではなかったと記憶している。)
 そこで前に述べた発言、「従軍慰安婦の強制連行」等の議論は、怪しい面がある、論壇では彼ら批判派の意見の方に圧倒的威力があると発言し、裏切り者と何時間も絡まれた。しかし、理論戦線では「従軍慰安婦=強制連行」派は完全に反対派の前にその発言力が弱くなっている。
 小池氏は、吉田発言は虚偽だと言うのは、誰でもが知っていることで、「『慰安婦』問題で問われている「強制性」というのは、無理やり連れて来たかどうかという手段だけの問題ではない。甘言や人身売買などで、本人の意思に反して連れてくれば、それは強制です。」と主張した。(注5)
 また同席していた金慶珠・東海大学准教授も「吉田発言だけが『慰安婦』問題の根拠になったのではなく91年8月の元『慰安婦』金学順氏の証言に大きな意味があった」と述べた。

注5:この小池氏の主張は、「河野談話」の趣旨と同じであり、その限りにおいては十
  分納得できるものであるが、問題は官憲によって強制連行されたか否かが、吉田証
  言を基に論争になってきていたのである。
   我々がこの間見た映画やテレビの従軍慰安婦の映像の中には明らかに軍関係者が
  突然現れ若い女性を無理やりトラックに乗せ、引っ張っていくという映像をたくさ
  ん見ている。
   「従軍慰安婦はあのような形で形成されてきた」という「とてつもない戦争犯罪
  を日本軍は行って来た」と頭に刷り込まれてきた。これらの映像がなぜ流れたの
  か、それはやはり吉田証言が大きかったと思われる。
   おそらく、朝日新聞が公式にこれらの吉田証言に基づく記事を否定した 以上、
  今後の戦争時代を扱った映画には、こういう場面は挿入されないと思う。
   吉田証言は、それほど大きな影響を与えた。(吉田証言が何にも影響を与えなか
  ったという小池発言は理解できない。)

元『慰安婦』の「金学順」氏の証言は、歴史の検証に耐える証言か?

 
 「報道2001」を見る限りにおいては、吉田清治氏の『虚偽証言』は全員一致の認識になった。小池氏は、強制連行の証拠は「金学順証言」だとは主張しなかったが、市田書記局長にはその発言がある。(注6)
 金慶珠准教授は吉田証言ではなく「金学順」氏の証言が決定的な証拠だと主張したが、この「金学順」氏の証言も怪しががつきまとう。すでに多くの点で批判されている。

注6:2013年5月15日(水)赤旗
   金学順(キム・ハクスン)さんが日本の軍人に無理やり連れ去られたのは17
  歳のときでした。姉とともにトラックに乗せられ、空き家で服を引き裂かれ、犯さ
  れました。殴られ、蹴られ、殺すぞと脅されながら。それから毎日、軍人の相手を
  させられました▼金さんが勇気をふるい、日本軍の「慰安婦」だったことを証言し
  て以来、同じ被害にあった女性たちが次々に声をあげます。だまされ、暴力によっ
  て拉致され、地獄の日々を強いられる。ほとんどが未成年でした▼日本軍が組織的
  につくった慰安婦制度。人間の尊厳をうばわれた彼女たちに少しでも寄り添えば、
  口が裂けてもいえない言葉を平然と口にするのですから▼慰安婦問題では安倍首相
  や閣僚からも歴史に反した言動が相次いでいます。程度のちがいはあっても、戦争
  責任への無反省さが土壌にあります。「私を17歳に戻して」。いまは亡き金さん
  らの心の叫びを聞けない国になっては、世界から孤立するだけです。(市田共産党
  書記局長)。

   また、8月16日付け赤旗13面【社会】に「慰安婦」問題”解決急げ”「大阪でデモ
  「『日本は逆行』」という記事がある。
   この記事の中で、「このデモの主催である、日本軍『慰安婦』問題関西ネットワ
  ークの方清子(パン・チョンジャ)さんは1991年に韓国の金学順(キム・ハクス
  ン)さんが『被害者として名乗り出たから明らかになったことで、被害者の勇気あ
  る訴えがあったからだ」と指摘。『国際社会が問題解決や性暴力をなくそうと立ち
  上がる中、日本だけ逆の動きをしている』とはなしました。」と書かれている。
   この赤旗記事だけで無く、共産党は「従軍慰安婦強制連行」が存在したことの
  信憑性の根拠を「金学順証言」に求めている。

この「金学順証言」(91年8月)を最初に報道したのは「朝日新聞」


 1991年8月11日に朝日新聞が「元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀重い口開く」(植村隆韓国特派員・ソウル発)記事で元慰安婦の金学順について「女子挺身隊の名で戦場に連行された」と報道した。
 しかし、この記事には、金学順が「身売り」だった事実が書かれていない。金学順が日本政府に宛てた訴状には「十四歳の時に四十円でキーセンに売られた」とはっきり書かれている。(注7)

注7:証言 「強制連行された朝鮮人軍慰安婦たち」 韓国挺身隊問題対策協議会・挺身
   隊研究会編集  明石書店
   母が私を中国で一九二四年に産んで、その後百日もたたずに父が亡くなったとい
  います。どのように亡くなったかくわしい事情はわかりません。(P.42)
   母は私をキーセンを養成する家の養女に出しました。〜(中略)〜母は養父か
  ら四〇円をもらい、何年かの契約で私をその家に置いていったと記憶していま
  す。(P43)

 当時の、一九九一年八月一五日付け韓国のハンギョレ新聞にも、「生活が苦しくなった母親によって一四歳の時に平壌にあるキーセンの検番(キーセン検番・・・キーセンの養成学校。)に売られていった」とはっきり書かれています。(注8)

注8:1991.8.15 ハンギョレ新聞  
   生活が苦しくなった母親によって14歳の時に平壌のあるキーセン検番に売られ
  ていった。三年間の検番生活を終えた金さんが初めての就職だと思って、検番の義
  父に連れていかれた所が、華北の日本軍300名余りがいる部隊の前だった。

 この朝日新聞の植村記者は韓国語もできるので、当然、このような事実を知っていたはずなのに、意識的にこの点を書かなかった。 
 朝日新聞のスクープは、「金学順」が韓国で記者会見する三日前であり、なぜ朝日(植村記者)がスクープできたかは、この訴訟の原告組織「太平洋戦争犠牲者遺族会」のリーダー的存在である梁順任常任理事の娘の夫という存在だったという。 
 つまり、原告のリーダーが義理の母であったために、金学順の単独インタビューが取れたというおかしな立ち位置があるのです。
 植村記者が自分の義母の裁判を有利にするため、意図的に「キーセンに身売りした」という部分を報じなかったという疑いが持たれる記事なのです。

 そういう意味では、この金学順の証言(朝日新聞がスクープ)した記事は、客観性が保証されているかが疑わしく、証拠能力のない発言(記事)です。
 一説には、この植村氏の義母の「梁順任氏」は詐欺で摘発されたという情報もあり、この証言は信憑性が薄く、従軍慰安婦が日本軍の強制連行によって形作られていたという根拠にはなりえないと思われる。

 「吉田証言」は嘘だが、「金学順の証言」はこの問題の動かぬ証拠になるという主張は危なかしく、吉田証言の二の舞になる危険性がある。現に彼女が日本政府に出した訴状に「キーセンに売られた」と書いているのは、日本軍に売られたのでなく、親に売られたことを表している。(注9)

注9: 「強制連行あった派」の吉見義明氏は「『従軍慰安婦』をめぐる30のウソと真実」
  (吉見義明・川田文子編/大月書店/1997.6)で以下のように述べている。
   問題は慰安婦にされた事情だが、『証言』では、養父は北京で日本軍将校にスパイ
  と疑われてつれて行かれ、彼女は別の軍人によって慰安所に連行されたと記されて
  いる。しかし、かせぐために中国につれて行かれたとすれば、養父に売られた可能
  性があるとみるのが自然だろう。(P.75)

共産党・赤旗新聞が行わなければならないこと


 毎日新聞は、吉田証言については、朝日新聞と同じ立場の報道をしたことがあるが、92年8月12日と13日、吉田氏がソウルに行って謝罪したという事実を短く伝えたが、吉田証言には信ぴょう性に疑義があるとの見方が専門家の間で強まり、それ以降は報じていない。と毎日新聞としてどの段階で吉田証言を「虚偽」と認定したかを明確に批判している。
 朝日新聞が、今日までこの問題を引きずったことを批判しながら、同時にこの問題を国会で検証するという自民党幹事長の石破発言には、報道の自由を侵す可能性があると批判している。これがマスコミ人として取るべき立場であろう。
 小池副委員長が、吉田証言が虚偽であるのは、すでにすべての人が知っていたと言うのは詭弁であり、朝日新聞や赤旗新聞の読者は、この証言を基に従軍慰安婦の強制連行を実際あったこととして認識してきた。
 さきに述べた5〜6年前の朝日放送の朝まで生テレビでも、「吉田証言は虚偽であり済州島で強制連行された事実はない」と言うのは出演者の一致した意見ではなかった。おそらく共産党員及び支持者は、赤旗が否定しない限り、この「慰安婦狩り」があったと認識していると思われる。しかし「報道2001」に出演した小池氏は、「吉田証言の虚偽性はすでに共通認識でありと語りながら、『強制連行』を『慰安婦狩り』的視点からずらし、『河野談話』の言う広い意味での強制連行はあった。」に論理のすり替えを行った。(同席していた金慶珠准教授は吉田証言ではなく「金学順」氏の証言が決定的な証拠だと、その証拠証言の対象者を別の人で証明しようとした。・・・先に述べたがこの証言にも疑いがある。) 
 共産党は国民に責任を持つのであれば、どの時期に吉田証言の虚偽に気づき、どのような釈明記事を上げたのか、またこの証言のもたらした影響をどのように捉え、その責任を果たしたのか説明すべきである。
 「報道2001」年の小池氏の主張では、共産党は、従軍慰安婦問題で狭義の意味で強制連行(吉田証言にある慰安婦狩り)を放棄し、「広い意味での軍の関与があった」にまで、主張を変えたのか明確にする必要がある。
 また、小池氏は、「『河野談話』に吉田証言は影響を与えていない」と主張したが(共産党の責任はない)、韓国世論に吉田証言が影響を与えたことも否定できるのか、朴大統領の就任演説での「加害者と被害者という歴史的立場は1000年の歴史が流れても変えることはできない」という発言に、この吉田証言は影響を与えていないと言い切れるのか、共産党はその立場を明確にすべきである。

 私はこの吉田発言は日韓有効にとって大きな障壁を生み出した源流だと思っている。さいど従軍慰安婦問題を検証し、「慰安婦狩り」のような強制連行があったのかなかったのかを明確に述べることが共産党に望まれている。その際、金慶珠准教授が主張したように、「いやこの人の証言が重要だ」みたいな、証言者の交換を行って逃げ続けることは無意味である。個人の証言には限界があり、必ずその主張は潰されてしまう。

 20万人もの人が強制連行され従軍慰安婦にされたと主張するには、どの程度の立証が必要か、その枠組みを最初から想定し、取り組まないと、何人かの証言を得られたから「事実だ」という主張の脆さを知るべきである。

最後に

 
 従軍慰安婦の問題が、韓国が主張することがすべて正しかったとしても、私は現在の韓国の対応は誤っていると思っている。朴大統領は、「侵略した日本と侵略された韓国との関係は1000年の歴史を経ても変わらない。」と言った。
 この理論を認めれば、日本国民は、韓国に対してあと900年もお詫びと賠償を続けなければならない。この彼女の論理建ては完全に誤っている。この批判を行わず、従軍慰安婦の問題を語れば、共産党は日本国民の利益のための政党か否かの基本的存在価値が問われる。
 数日前早稲田の学生が40人ぐらい(日本人20人、韓国10人、中国人10人)が合宿を行い、戦争責任論の徹底議論を行っている風景がテレビに映し出された。その際韓国の学生が、「謝れと言うのは被害者側の傲慢だ、こんな主張ではなにも解決しない。」と発言したが、まさにそのとおりである。この彼女の発言にこそ真実がある。と私は思っている。

 先にも述べたが、8月16日付け赤旗13面【社会】に「慰安婦」問題”解決急げ”「大阪でデモ「『日本は逆行』」という記事がある。
 この記事は見出に、『日本は逆行』という主語が気になる。『日本政府』はとすべきではないか? この書き方だと、韓国国民と日本国民が対立しているように見える。日本国民はすべて原罪論意識を持たなければならないのだろうか。戦争責任というのは何時どのような形で解決すべき問題なのか、疑問が湧いてくる。
 同じ日の赤旗7面【国際】には「米国最高幹部 ベトナム訪問」「協力強化で中国けん制」という記事がある。この記事では、アメリカとベトナムの友好関係の進展と「ある国の侵略的行為が、ベトナムと他のアジア諸国の連合(ASEAN)加盟国、米国を含む複数国の利益の脅威となっていると指摘」とデンブシー米軍統合参謀本部議長の発言を伝えている。

 アメリカとベトナムの戦争は約40数前の戦争であり、アメリカ側にはなんの大義もなかったが、ベトナムでは甚大な被害が出た。アメリカが戦争中に行った枯葉作戦で巻かれた薬剤は、ベトナムにとって甚大な被害をもたらした。
 こうした戦争被害の問題がすべて解決したわけでもないのに、アメリカとベトナムは友好関係の促進を約束させようとしている。
 従軍慰安婦問題は約70年も前の話である。この問題を唯一の問題として日本と韓国の友好関係が進まないというのは、極めて異常な事態である。あの戦争で日本は大きな誤りを犯した。同時に原爆投下や、東京大空襲など多くの制裁も受けた。これらのアメリカが取った行為が正しかったかの検証もされるべきだが、日本政府は、加害者との負い目もあるが、その問題で永久にアメリカを恨むというような政策を行っていない。
 戦争の加害者と被害者の関係を朴大統領の言うように1000年引きずることが果たして正しいのであろうか。どこかで終止符を打つことが必要ではないか。
 この点で、朴大統領の主張に無批判に追随してく共産党の立場は、真の日韓友好の立場ではない。昔共産党が日中友好の中で自民党や公明党の態度を土下座外交だと批判したが、現在の日韓友好の姿は韓国側の主張を全面的に認めるものであり、土下座外交と言われても仕方がない姿である。早稲田の学生(韓国人)が述べた被害者の傲慢という視点を持つべきであろう。

再度、最後の最後に


 産経新聞が、韓国の検察に「大統領の名誉毀損」で出頭要請され事件について
2014.8.9 23:22 [韓国]

 この記事を赤旗の「ニュース@NEWS」 という欄で読んだ。引用しようとして取っておいたつもりでその記事をなくしたが、他の記事を下記に引用したがほぼ同じ内容であった。

 【ソウル=名村隆寛】産経新聞ウェブサイトに掲載された記事が韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉を毀損(きそん)しているとの告発を受け、ソウル中央地検が産経新聞ソウル支局の加藤達也支局長(48)に対し、12日に出頭するよう求めた問題で、韓国の通信社、聯合ニュースは9日、検察の話として、「同地検刑事1部が加藤支局長に出国禁止を通告した」と報じた。YTNテレビも同日、加藤支局長に対して検察当局が「出国禁止措置をとった」と伝えた。
 加藤支局長は、9日夜の時点で出国禁止の通告は受けていないとしている。

 聯合ニュースは、検察が加藤支局長を2、3回呼び出し、問題とされている報道の根拠とその取材経緯などを調べた上で、刑事処罰の可否を決定する方針だと報じている。

 問題はこの記事に赤旗として何らコメントをつけずに報道していることに疑問がわく。悪く勘ぐれば、産経は右翼的な新聞で従軍慰安婦問題でも韓国政府の立場を批判しているから、こうした呼び出しを受けても当然と思っているのかと勘ぐりたくなる。

 従軍慰安婦の問題で朝日新聞が過去の吉田証言に基づく記事を取り消した際、石破幹事長は、国会で検証する必要があると、報道の自由に圧力をかける発言を行った。この際も、毎日新聞は牽制したが、赤旗はなにも語らなかった。
 韓国での事件であっても、報道の自由が侵されようとしているとき、敏感に対応する必要がある。赤旗新聞には、ジャナーリズム精神がないのかと疑いたくなる。あるいは韓国との友好を第一義的課題に据えているのか疑問がわく。